ブルーアーカイブ ―宇宙に輝く黄金の螺旋― 作:まさみゃ〜(柾雅)
【Side:クロウ】
「……で、また電気ガス水道止められて……それどころか温泉開発部爆破の影響で建て替え中になっちゃったから此処に来たと」
「……はい」
小さな教会。
シスターの前で正座をするクロウ。
痺れてきたのか若干脚を崩している。
「いや、依頼はちゃんとこなせたんだ。ただ……」
「……はぁ。クロウちゃんの真っ直ぐな正義感は私好きよ?
でも、依頼が達成できない状況まで誰にも頼らなかったのは反省してよね? あとあの温泉開発部がとうとう此処まで来たのには驚きだわ」
「……ってことは!?」
「ちゃんと子供達の面倒とか色々手伝ってよね」
孤児院も担っているこの教会にはシスター以外に3人の子供がいる。
やんちゃな2人と大人しい1人。
そのやんちゃな2人がクロウの背後に忍び寄り、痺れた脚を突っついて苦しませる。
「っこのガキ……っ!! やめっ、ヤメロォ!!」
「キャハハハッ、くろーねーちゃん痺れてる〜」
そこにクロウに着信が入る。
待ち受け画面に表示されたメッセージを見て彼女は慌て始めた。
「クロウちゃん?」
「すまん! 姫さんから急ぎの連絡来た!」
【Side:S.C.H.A.L.E】
「我輩の時間は有限であるが大導師の命ならば致し方無し……」
「“忙しい所ごめんね”」
「なぁにちょーっと作業の進捗が遅れるだけで予定には絶対間に合うのである! 何せ我輩、いつも納期の数週間前には真面目に取り組めばほぼほぼ完成状態まで仕上げられるほどすごすご天才科学者である故なっ!!
例えるならそう、プラモデルの組み立てをしてその塗装に多く時間を割いて完成度を爆上げするような感じである」
いつの間にか取り出したエレキギターを掻き鳴らしながら彼女に此処、アーカム自治区を案内してもらう。
カンナ達はまだヒカルらを信用できていないようだけれど、私だけは彼女達を信用しようと思っている。
こうしていろんな場所を案内されてみて思ったのは、やはり何も事件がない時はどこも同じ、平和な営みがそこにある。
行き合うスーツ姿の通行人。定刻通りに到着するバス。ヘルメットを被った生徒による市民への恐喝……恐喝?
「我輩の目が黒いうちはこの街での粗相は許さないのであーる! というか混沌を生み出すのが我輩のアイデンティティ……それを奪うのは最後の楽しみに残しておいたショートケーキのイチゴと生クリームを勝手に横取りするほどの大罪!! 大罪は即ち悪!! よってこの正義の科学者、Dr.ウェストが成敗してくれる!! アァァィイムロッケンロール!!」
そして私が止めに入ろうとする前にヒカルが不良生徒めがけてギターケースを構えたかと思うと、その底の部分が開きロケットランチャーの弾が発射された。
大きな爆発と暫く煙がその場に残る。
煙が晴れると絡まれていた市民と不良生徒達はその場に気絶いていた。
「さぁ気を取り直して──」
「またテメェかヒカル!!」
「“その声はクロウ?”」
声の下方向を見ると銃を構えた大翼クロウの姿がある。
その銃口の先は西ヒカル。
しかし銃口を向けられているというのに、彼女には焦り一つ無い。
いやむしろ、さらに騒がしくなった。
「はて、我輩は治安を守る為の行動を取ったまでだが〜?」
「そこに転がってんのは何だ?」
「不良生徒……もといヘルメット団の一派であるな」
「その隣には?」
「……あら不思議な犬頭の先程まで不良生徒らに絡まれてた善良なる一般ピープルであるな」
「一般人を巻き込む治安維持がどこにあんだ!!!! 姫さんに怒られるのいつもこっちなんだぞ!!!!」
姫さん……おそらくクロウの知り合いの1人だろう。
そしてこの光景は毎度の事らしい。
その理由として、他の市民は直ぐに興味を失って日常に戻っているのだ。
「フハハハハッ!! それが我輩に何か関係あるとでも〜? と言うかむしろその為に巻き込んでるまであるがな!! いや、1番重要なのは如何にして混沌まで繋げるかが我輩の心のルール。即ち愛!! 愛とは真ん中に心がある故に真心。つまりこの混沌とした状況も一種の愛……。しかしその愛でも君は満たされずパートナーである僕を置いて他の人へ流れて行く……。あゝ、空はこんなにも青く澄み渡っていると言うのに、僕の頬には一雫の雨がつたうのだった……というわけで今日という今日こそは荼毘に伏せ大翼クロウ!!」
何かよくわからないけど、少女がしてはいけないような表情で長く話していたヒカルが突如クロウに目がけてロケットランチャーを放つ。
咄嗟の事でカンナ達も呆気に取られてしまい、ロケットランチャーの発射を許してしまった。
けれどクロウはそれを冷静に撃ち抜き、ロケットランチャーの弾は誰にも当たることはなく、その場で強い衝撃を広範囲に放っただけだった。
「“熱風が…!”」
「……で、言いたい事はそれだけか?」
「クックックッ……調子乗りました本当にすんません」
先ほどの調子に乗った態度とは変わり、見事な土下座をヒカルはクロウに見せつける。
その流れは誰が見ても美しく、中には感動を覚えて無意識に拍手をする者すら現れるだろう。
そんな土下座に流石のクロウも
「
不意を突くように彼女は懐から取り出した謎のボタンを押す。
すると、上空から轟音と共に何かが落ちてくる影。
そしてその何かの影が大きくなり終いには地面と激突する。
「ゴホッゴホッゴホッ、グヘェエエッ!!」
呼び出した本人の近くに落下した為か、ヒカルの汚い咳き込む声が土煙から聞こえてくる。
そしてその隣には見慣れない人影が現れた。
「博士に呼ばれてただいま参上! ロボ! ……ところで博士はどこロボ?」
そこにはヘイローの無い、笹耳の少女が立っていた。
……扉と思われる鉄板の上で、ヒカルを下敷きに。
「エルザァ!! 我輩! 下! 下!」
「博士ぇ!? い、一体誰の仕業ロボ!! もしやお前の仕業かロボ!?」
「いや、お前がヒカルの上に現れたんだろ」
先ほどのギリギリ残っていた緊張感も裸足で逃げ出し、微妙と言えるような空気である。
流石のクロウも呆れたように返答していたので尚更気まずい。
「“ええと……”」
「流石に我々も西ヒカルがこれほどまでとは思いませんでした」
「むしろ他の地区に行かれるよりもこの街にいた方が安全な気がする……」
「せ、先生、我々はどうしたら……!」
謎のロボが語尾の少女とクロウの乱闘。
それの余波に巻き込まれるヒカル。
そんな混沌と化した現状に一つの横槍が入る。
「先生!!」
「“えっ──”」
カンナに引っ張られて体勢を崩す。
そして先程まで私の頭があった箇所を黒い影が過ぎ去って行き、その勢いのまま建物を切断した。
『クロウ!!』
「なっ!? こんな時に断片!?」
「なぬっ!? アル片とな!? って、ギャァァアアアアアアーーーーー!!!!」
崩れた建物にヒカルが巻き込まれる。
けれど何故だろう、どうしてかヒカルにはこのような被害を受けても謎の安心感があり、軽い心配までの感情しか湧いてこない。
「こんな街中じゃデモンベインなんて呼べねぇぞ!!」
そして、どうやらあの高速に飛び回る謎の物体を確保しようとしている流れになってきた。
しかし、それに対する対処に困っているようだ。
「“詳しい話を聞かせてくれるかな?”」
「先生!?」
『……誰だ貴様は』
以前も聞いた謎の声がクロウの携帯から聞こえてくる。
こうしてこれが私とクロウが“アル”と呼んでいる存在の邂逅だった。