ブルーアーカイブ ―宇宙に輝く黄金の螺旋―   作:まさみゃ〜(柾雅)

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07  アル・アジフの断片04

 豊穣ルリの頼みで指定の場所へ向かう途中、私は一瞬視界の端に映った光景に足を止めてしまった。

 そして見間違いでは無いかと確認すると、見間違いなどではなく、見た通りの光景がそこにあった。

 

 “拾って下さい”とマジックで裏紙に書かれた紙が貼り付けられた段ボールに、体育座りで座る西ヒカルとエルザ。

 何かに絶望したような表情を2人は浮かべている。

 流石に無視をすることができず、私は2人に声をかけた。

 

「“大丈夫?”」

 

 声をかけると2人は潤んだ目で私に縋り付く。

 

「先生ぇ〜!! どうかこの哀れな少女を助けてくれなのであ〜るぅ!!」

 

 そう言いながら西ヒカルは私の上着の裾で勝手に涙を拭う。

 そしてついでに鼻をかもうとする。

 

「“す、ストップ!”」

「“ま、まずは落ち着いて?”」

 

 2人を落ち着かせて何があったのかを訊く。

 パッと見ただけでは特に2人には怪我らしきものはない。

 

「ズビビ……うむ、まずはどこから話したものか……」

 

 急に冷静になるヒカル。

 先ほどの温度差で風邪をひいてしまいそうだ。

 

「ぐぬぬ……思い出しただけで腹が立ってきたのである! そう! 元はと言えばあのいけ好かない逆十字(アンチクロス)さえいなければこのようなことは!!」

「そうだロボ!! 特にあの皇帝ペンギンは事あるごとに博士達を挑発してきて気に食わなかったロボ!!」

「あの王冠上裸マントとか言う絶妙にダサいファッション皇帝ペンギンめぇ……!! その様な格好をするなら兜とブーメランパンツに変えて両手に盾と槍を構えていた方がまだピッタリである!!

 だと言うのに……だと言うのにあの変態に我が敬愛なる大導師が……」

 

 再びヒカルが涙を浮かべる。

 途中で横道に逸れそうな気がしたが、彼女の言う【大導師】……刻門シシネの事の方が比重が重いらしく、最後まで聞けば何とか彼女たちとシシネの現状を把握することができた。

 だからこそ、私は怒りを覚える。

 

「“話してくれてありがとう”」

 

 アウグストゥスという人物が主な要因の謀叛による刻門シシネの死。

 いくら彼女達が銃弾を受けてもそこそこ頑丈だとしても、やはりここキヴォトスにも死は存在する事を嫌でも理解させられる。

 それに、アウグストゥスなる人物は私と同じ大人の人らしい。だからこそ私には許せない気持ちが沸々と湧き上がる。

 だが、今は頼まれごとをされていたことを思い出す。

 それ故に私はヒカル達を連れて向かう事にした。

 

 

【Side:クロウ】

 

「──……クッ! 先生はまだ来ないのか!?」

『あの者が遅れるようには思えん。……もしや何かトラブルがあったのかも知れんな』

 

 今までに回収してきたアル・アジフの断片である大きな蜘蛛、悍ましき生物のもとへと繋がる鏡、賢者の儀礼剣。

 それらと比べると別の方向で厄介な断片がそこにある。

 ウサギ耳を生やした少女。

 彼女に与えた傷は周囲を巻き込んで少しずつ戻っている。

 

「これじゃ破壊が間に合わねぇ……!!」

『まさか妾達の現状では火力が足りぬとはな……』

 

 クロウと対峙する少女の足元は既にアスファルトではなくなっていた。

 撃てども撃てども、届く前に銃弾は速度を落としその場に静止する。

 そして少女が腕を振るえば銃弾は方向を変えて再び加速する。

 

 ──イベントバトル開始

 

「……っ!!」

 

 クロウが少女から発せられる衝撃波を受ける。

 その強風を腕で防御姿勢を取るが、その隙に少女は逃げる素振りを見せない。

 

『クロウ!』

「応ッ!!」

 

 長時間戦闘を続けていたおかげかクロウは変身する。

 その瞬間から心なしか有効打が増えてきたと気付き、彼女達は攻撃の手数を増やし始める。

 しかし、それでも少女の巻き戻しにより消耗するばかりであった。

 

「──フ〜ハハハハハッ!!!!!! アァァィイムロックンロールッ!!!!!!」

 

 不意に聞き覚えのある高笑いが響く。

 それと同時にミサイルの雨が一気にウサギ耳の少女へと降り注いだ。

 

「なっ!?」

「あのようなアルペン少女に手こずるとは無様であるなァ? 大翼クロウ?」

 

 白衣を纏った褐色肌のキ●ガイ、西ヒカルがいつの間にか隣に立っている。

 手にはいつものエレキギターではなくハンドガンが握られており、さらに背後には大砲の様な大きさの銃を構えたエルフ耳の少女がいた。

 

「術式魔砲チャージ完了だロボ!」

 

 いつでも撃てると言う合図にヒカルが少女へと指差す。

 そして高らかに発射の指示を出した。

 

「さぁさぁ今こそ解き放つのだエルザよ!! そう、それはまるで──「我、埋葬にあたわず(ディグ・ミー・ノー・グレイヴ)、ファイア!」──ちょっ、吾輩まだ指示を出している途中!!」

 

 いくつもの光線が少女へと降り注ぐ。

 そのそれもが少女へと着弾し、その表情には驚きが見えた。

 

「なっ!? 効いてるだと!?」

 

 ──イベントバトル終了

 

 

「やはり吾輩の仮説は正しかったと言うことであるな」

 

 そう言いながらヒカルが怪しげなボタンを押す。

 その行為にクロウは嫌な予感を覚えた。

 数秒後、彼女達の上に影が出来る。

 

「さぁ吾輩の可愛い可愛いスーパーウェスト無敵ロボVer.3316よ、ミサイルのシャワーをお見舞いするのであ〜るっ!!」

 

 ヒカルの仮説とは要は物量に頼った攻撃ならば巻き戻す速度よりも破壊の速度が上回るであろうと言う脳筋的思考(インテリジェンス)なものである。

 着地と同時にミサイルの発射の爆音と衝撃が空気と大地を揺らす。

 ミサイルの着弾の衝撃故か、煙が晴れた時には少女は既に満身創痍であった。

 しかし、それでもやはりなのか、巻き戻しは行われている。

 が、一つの相違点と言えば明らかに少女は疲弊している様子だった。

 

「“クロウっ!!”」

「先生っ!?」

 

 クロウが振り向くと先生が居た。

 

「“遅れてごめん”」

「“でも今はあの子を”」

「あ、嗚呼!」

 

 先生に言われてクロウは気を引き締める。

 そして改めて二丁の銃を少女に向けて構えた。

 

「いくぞ、アル!」

『応とも!』

 

 今回はデモンベインを召喚しない。

 ただ冷静に、握る銃の引き金を引く。

 数発の発砲音の後、ウサギ耳の少女はようやくその場に倒れた。

 周囲が巻き戻る様子はもう無い。

 

『アエテュル表に拠る暗号解読、術式置換。正しき姿に還れ──』

 

 たちまち少女は粒子へ変換され、クロウの握る二丁の銃へ吸収される。

 そして吸収が完了したのか、判読不能の文字が銃の上に淡く輝いた。

 

「“……やっぱり他の所とは違うんだね”」

「そうなのか?」

「吾輩も初めてここへ来た時は驚いたであるな。つまり吾輩は大翼クロウよりは多くを知っている。

 あ、という事は……?」

 

 ニヤリとヒカルが笑みを浮かべる。

 そしてクロウを煽る様に嘲笑いながら言った。

 

「貴様は所詮は井の中の蛙。つまり他地区という大海を知らずにのうのうと貧乏探偵をしていた哀れな──ぐぼあっ!?」

 

 しかし最後まで言わせて貰えず、戦いの余波で脆くなっていたであろう建造物から落下して来た花瓶が綺麗に彼女のその頭に直撃したのだった。

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