不慮の事故が多発してしまいそれの事後処理で忙殺されていました、更新が遅れてしまい大変申し訳ございません...
稚拙な文章ですが、最後まで見てもらえたら嬉しいです。
よろしければ感想・評価お願いいたします!
追記:サブタイトルを仮決定のもののままにしてしまいましたので変更致しました
直近の定例会議から一、いやニ昼夜ほど明け、アビドスの面々は普段通りの生活を送る様になった。
事務仕事。学校の点検。バイト。サイクリング。ショッピング。昼寝。それぞれがそれぞれの役目...かどうかは怪しいが、普段通りの日常へと戻っていった。
そして、それは振り子事務所の2人にも同じことが言える様で。
「ヒフミ」
「待ってください...!」
「いやでも」
「あともう少し...もう少しで当たるはずなんですっ...!」
ブラックマーケットのそれほど深くない場所に構えられた、古ぼけた怪しい露店に3人の男女が集まっている。
露店には『くじ引き』とダンボールにマッキーペンで雑に描かれた看板と思わしき物が立て掛けてあり、ボロボロな材木でできた支柱1本でテントの様に建てられている。
側から見れば、浮浪者が適当な金儲けのためにテキトーに作ったものなのだろう。オブラートに包んでも、こんな露店には間違っても誰も寄り付かない。
「今度こそ...今度こそ...!」
「ヒフミちゃん...そろそろ諦めなよ...気付いてるかどうか分からないけど、もう3万円も溶かしちゃってるよ...?」
「まだあと5万は出せます! 私、まだやれます!」
「やめとけ!?」
「ものすごいよね、ヒフミちゃんのその執念さ...軽く恐怖を感じるよ」
...まあ、そんなところで多額の金を落とす客もいるのだから、建てた意味が無いわけでもないが。
「...っと、そろそろくじが少なくなってきたようじゃの...」
ヒフミが大量に引いたせいで、山のように積もったくじの亡骸。それを確認した店主のロボットは、ボロッちいテント...もとい店の奥から両手サイズの袋を取り出した。
よくよく見てみると、その半透明な袋の中には大量の紙が入っているようで。
「...おい、店主のじいさん? まさかそれ、追加のくじってわけじゃないよな...?」
「? そのまさかじゃが?」
「えぇ!? そんなのズルじゃないですか!!」
「...なあヒフミ、やっぱり方法を変えないか? このじいさんをスクラップにしてからペロロを強奪したほうが早いと思うぞ」
「それはダメです! そんな野蛮な方法で手に入れてもうれしくないですっ!」
ロキのあまりにも物騒な発言にギョッとする店主をよそ眼に、ヒフミは力説し始めた。
「愛があるからこそ、ペロロ様のグッズは全部私自らの手で掴み取りたいんです! それがペロロ様への、私の『覚悟』です!!」
「す、すごい覚悟...これがファンの鑑...!?」
「...あ、そう。なら口出しはしないでおく」
ヒフミの迫真の力説に納得させられたロキは、一歩引いてヒフミの
・
・
・(一時間後)
・
・
「ダメでした...」
「そりゃそうだろ」
トボトボと足取りを重くして悲しげの漂う顔をしながら歩くヒフミがそう呟くと、当たり前だと言わんばかりの口調でロキが無慈悲に告げる。
あの覚悟の宣言から一時間と少し。例の覚悟も虚しく、ものの見事にハズレを連続で引き続けたヒフミは、引くたびに山のように追加されるクジ引きという悪魔のギャンブル────そも、アタリが入っているかも怪しいが────の前に、とうとうヒフミは所持金をすべて溶かしてしまった。
散在した額、驚異の8万。これを大負けと言わずして何と言おうか。
「どうしてこんな目に...」
「ヒフミちゃんって、モモフレンズのこととなったら途端にブレーキが壊れちゃうよね...」
「あんな怪しすぎるクジ引きに引っかかるあたり、相当目が眩んでたんだろうな。そういう行動は自分の首を絞めるだけだ、これからは自重しろよ?」
「うぅ...」
ロキの説教じみた正論に頭が上がらない様子のヒフミであった。
そんな3人が帰るためにブラックマーケットを歩いていると、薄暗い路地裏周りに人だかりができていることにロキが気づく。そこからは、がやがや、というよりも騒めきの方が近しいような声々が沸き立っていた。
ざわめく声が多々上がっているそこに、『まあいつもの喧嘩とかそういうのだろう』とそのまま立ち去ろうとする一行であったが、ロキは無意識にも聞き耳を立てていた。そのロキの耳に、ひそりひそりと野次馬たちが口にした言葉が入り込む。
「なんだあれ...酷い有り様だ...」
「おえっ...頭がぐちゃぐちゃになってんじゃねぇか...」
「あれって...翼...? なあ、アレってもしかしてトリニティの生徒じゃ...」
「クソッ、あんなんじゃスる気も起こらないな...」
口々に発する野次馬の言葉に何やら只事ではないと感じ取ったロキは、ヒフミとユメを先に帰らせると、その野次馬の群れへと向かった。人を掻き分け、群れの先頭へと歩みを進める。
「すまない、ちょっと通してく────
ついに先頭へと立った。しかし、そこから飛び込んできた光景は...ロキの思考を停止させ、困惑、そして怒りを引き出すにはあまりにも十分なものだった。
「!!」
血肉。
まるで絵の具で真っ赤に、そして真っ黒に彩られ、無造作にこねくり回されたような粘土の形をした血肉だった。
皮膚は全て剥がれ、所々から枝木のように細く長く手足のようなものが4本ばかり、突き刺さるように生えている。その手足の2本からは羽根のようなモノがビッシリと生えているのが伺えるが、それすらも形状はまさに形容できないほどの悍ましさであった。全体的に見れば、まかかろうじて人の形状を保っている方だとは思うが...一見しただけでは何処が何か分からない状態だろう。
一瞬の逡巡。しかし、あまりにも長く...いや、もはや永遠とも思えるほどの思考を強制的にストップさせるかのように、ロキの視界の隅で何かが蠢いた。
路地裏のさらに奥。暗がりの濃い場所で何かがピカッと光ったかと思えば、その後に逃げるように走っていく人影が見えたのだ。
彼自身にもよくわからない、下人かも分からない、もしかしたら血肉に驚いて千鳥足になって逃げているだけの一般人かもしれない、あるいは物珍しさにカメラで撮った野次馬の一人かもしれない、その人影を。
ロキはどうしてか無視できずに、血肉を跨いで追いかけ始めた。
薄ら寒く湿っぽい、それでいて不気味なほどに薄暗い路地裏を、人影を追って走る。入り組んだ道を右へ左へ曲がり曲がり、何とか喰らいつくものの、どうやってもその人影に追いつくことが出来なかった。
「逃げ足が速い...!」
走っているのか暗いせいなのか、あるいは両方のせいなのか。視界は安定せず、その人影もパーカーのようなものを着ているせいで何者なのかが見当もつかない。
そんな相手に走れども距離は縮まらず、何とか見失わないようにするのが精一杯な状況だった。まるでこの路地を熟知しているかのような迷いのない走りは、それを生み出すには十分な技術だったと同時に、こちらに気付いて逃げていると確信できる材料でもあった。
そのまま幾度か角を曲がり続けると、急に夕焼けの日差しが目を貫いた。
どうやら路地の出口に来てしまったようで、向こう側には多くはない人々が行き交っている。
しかし下手人の姿は何故か見えず、忽然と姿を消してしまった。
逃げられてしまったのだろう、と諦めて路地の出口に向かうロキだった。
が、次の瞬間。
ドゴッ
鈍い音が鳴ったかと思えば、その直後に後頭部に強い衝撃と痛みが走る。あまりの振動に脳が振盪を起こしたのか、ロキはそのままうつ伏せに倒れてしまった。
視界が目まぐるしく揺れる中、何とか起き上がろうと地面に付けた手に力を入れようとすると、頭上の方からこちらに向かって声がした。
「さっきからずっと追いかけやがって、このストーカー野郎が」
後頭部から流れる血が額を伝って地面を濡らす。どうにかこの仕打ちをした奴の顔を拝んでやろうと、揺れる頭を制して顔を上げると。
そこには銃床部分に血の付いたライフルを持ち、パーカーを深く被った少女が警戒した顔でこちらを見下ろしていた。
「なに、しやがんだ...おまえ...!」
「あ? 正当防衛だよ、せーとーぼーえー! それとも、アンタみたいなストーカーを殴ったらダメってワケ?」
嘲るように言う少女に、拳の一つでも見舞ってやりたかったロキは、まだ揺れ動く視界の中で少女の顎目掛けて拳を振り上げる。
が、予知されたように少女はひらりと体を翻す。振り上げた拳は当たる一寸前に避けられてしまい、行き場所を失ってしまった。
「遅すぎ遅すぎ! 頭に血ィ上って雑になってんじゃん、そのまま出血死しちゃうんじゃないの? ははは!!」
「クソッ、たれ!!」
続けざまに何度も拳を振うが、軌道の甘い拳はヒラリと紙一重で避けられてしまう。1発、2発とその全てが空を切る。
「そもそも、こっちは気分害されまくりで機嫌悪ィんだよ! せ〜っかくバレねェようにルートも計画も綿密に立てたってのに、粘着質なストーカーのせいでそれもぜーんぶ狂いやがった!」
なおも避け続ける少女は、余裕そうにそう言いつつニタニタと笑い顔を浮かべる。
「ムカつくンだよなぁ? 頭で思い描いてた絵を誰かに落書きされんのがさぁ!」
ロキの拳が少女の顔スレスレを掠り外したほんの少しの隙だった。
少女はポケットから黒いナニカを取り出すと、ロキのほんの一瞬に現れた隙を突くようにそれを突き出した。
瞬間、差し込む夕焼けを覆す様な激しい光と共に、バチバチという音が路地に響き渡る。
「ッッッ!!!」
「だからアタシ、そういう奴は徹底的嬲ることにしてんだ」
少女が取り出したのは、高電圧・高電流のスタンガンだった。しかも一般的に表で流通しているものではなく、裏で取引される例えキヴォトス人であろうとも一撃で気絶してしまうほどの、圧倒的な威力を誇る代物だった。
「けっこービリビリすんだろ? コレ、アタシのお気に入りのヤツなんだ〜」
人を一瞬にして死に至らしめる電流値というのは、肌の濡れ具合や電流の種類によって多少は変わるが、一般的に100mAほどと言われている。
それほどの電流が体内を流れると、心室細動を起こすからだ。
対して少女の持つスタンガンの出力は50mAほど。キヴォトスで市販されているものと比べても10倍ほどの威力があるが、それでもキヴォトス人に対して致死性となることはあり得ない出力だ。
しかし、ヘイローも持たない一般人ならどうか。
「…んだよ、こんなンでもうのされちまったのかよ。案外弱ェんだな」
電撃を喰らい、バタリと音を立てて倒れたロキの頭を少女が踏みつける。それでも、ロキはピクリとも動かない。
「嬲り甲斐が無ぇなー...ま、どうせ殺すつもりだったし、いっか」
少女が持っていたライフルの銃口を、彼女自身が踏みつけているロキの頭に向ける。
「聞こえてねぇと思うけど、恨むなら弱い自分を恨めよストーカー野郎」
少女がライフルのトリガーに指をかけ、ゆっくりと力を込めた。
閑散とした路地に、1発の銃声が鳴り響いた。
今回は少し短めです。
次回の更新も遅くなってしまいそうですが、なる早で仕上げて投稿する所存なので、よろしくお願いします。