…………3週間??(驚き)
※黒川あかね
帝国ホテル。
日本最高級の高級ホテルの一室で、苺プロの社長が激怒していた。
その姿は、煌びやかな芸能界とは裏腹に、
――まるで反社会集団を想定させるような、
強烈なビジュアルと怒りを秘めていた……!
「殺す……」
「落ち着いて、あなた……!」
動揺しながらも止めるミヤコさん
苺プロダクション最大の修羅場が誕生していた。
――これもアイさんの嘘が原因
――その全ての精算の時が来ていた
※ツクヨミ
「ついにこの時がきちゃったか……」
「ボクの考えだと、終わらない最終回程最低なものはない」
「僕の役割はあとちょっとだね……」
「北斗現る時、天これまた乱るる……」
「そういうこともあるかもね……」
「でもこれで二世代……、いや三世代を超えた因縁が解決するなら……」
――それでもいいのかもね
※黒川あかね
ホテルの大会議室、それも帝国ホテルの最上級ラウンジを貸し切りにして(一泊100万円らしい!!)家族会議と称して、ダイアちゃんが一堂を集めていた。
ダイアちゃんに呼ばれ、慣れないスイートルームにオドオドしていると、後から入室してきた社長に私とかなちゃんは声をかけられた。
「……?正式な家族会議じゃなかったのか?なぜ有馬と黒川がいる?」
「……すみません、ダイアちゃんと、私、一応付き合っているので……」
「わ、私も……。すみません、お邪魔なら帰ります。……やっぱり不釣り合いですよね」
もとより、ダイアちゃんに集められた時から、不釣り合いなのは感じていた私たち。
社長の冷たい目線を、——ダイアちゃんが止めてくれた。
「かなもあかねも我の女!すでに家族である……!だから家族会議をに呼んだのだ……!」
注意された私たちをかばうダイアちゃん。
「重大な家族会議と聞いてきたんだが……。お前がかばうのでも容赦しないぞ」
「よい!だが、それは沙汰の後である!あかね、うぬの頭脳を使うときだ……」
(家族!!!!!!!)
(ダイアちゃんから家族宣言!嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい)
かなちゃんも私も思わずニヤけてしまうが、
——社長は冷静だった
このあとの超ブチギレ状態となることを知らずに。
「……ダイアがそう言うのなら。だがこれから、センシティブな話をする、らしい……。俺も詳しくは聞かされてないがな。二人とも、心して聞くように」
「はい」
かなちゃんだけは聞かされていないようだ。
ごめん、かなちゃん。
でも……、悩んでたら、ダイアちゃんの助けにはなれない。
――今日の主導権は私が握らなくちゃ……。
――たとえ、新参の家族だとしても……。
そうこうしているうちに、――神木プロダクション社長、カミキヒカルが現れた。
※ミヤコ
——神木プロダクション社長がどうしてここに!?
それが私と壱護の感想だったと思う。
繋がらない私に対し、アイさんも壱護も動揺していた。
私だけが(元アイさんのマネージャーだったから)気付いたが、
――アイさんはそれをおくびにも出さない。
うまいこと元の表情に戻り、取り繕っている。
「神木くん久しぶり~☆ どうしてここに~!?今日は家族会議だから部外者厳禁のはずだけど……」
「僕も呼ばれたんだ……。ダイアちゃんにね……」
「………………」
——緊迫する空気。
皆の双眼がダイアに向かう。
浮足立つ皆と違い、ダイアは相変わらず不動の大樹のようだ。
※黒川あかね
星々が夜に見えることと同じように、その存在は不変。
ダイアちゃんは変わりない。
悩むことはあるだろう。
……でも今日呼び出されたのはダイアちゃんのためだ。
――私の覚悟は決まった。
「役者が揃った!始めよ!あかね、司会を頼む」
「はい……!」
修羅場の空気で司会を頼まれる。
――芸能業をやっていても初めてだ。
といってもまず、
――アイさんの爆弾発言から始まった。
「実は、私、15の時に妊娠して出産したんです。だから、その時いったん活動休止してました☆」
「おい……、アイ、今更その話を言う気になったはいいとして、相手がまさかこの神木って野郎じゃないだろうな……!」
「あ、あなた……、落ち着いてください」
いきなり殺気立つ社長。
同じく怒っているが抑えるように促すミヤコさん。
「実はそーなんだ、社長。ごめんね♡言うのが遅くなって☆」
「アイ。おめーは後で折檻だ」
社長はアイさんにキレッキレだが、それ以上に神木さんにブチギレ状態だった。
「神木……。おい……、てめぇ……。うちのアイドルの大事な時期に傷ものにしたんだ……。覚悟はできてるだろうな……」
社長が強面ですごむ。
対して、カミキさんはまるで柳のように流す。
「僕とアイが出会ったのは、彼女が15歳、ボクがまだ中学生の時……。子供ができても、私は、彼女との結婚を望んでました……。それでも、彼女から別れ話されたんです」
「そこまでは本当。私も15歳だし、彼も15歳だった。彼も私も救われたかった。『愛』って言葉をまだよく理解できてなくて……」
「ボクも、当時姫川さんのお母さん、つまり自殺した姫川愛梨さんに性的搾取されていたんです。今思えば児童虐待なのかな……。気付いたら初めてを奪われてました。その時僕は空っぽになりました。それで、ボクとアイさんは互いに『愛』を知るために、2人で一緒になったんです」
「神木ヒカル……!お前が性的搾取された話は正直どうでもいい。……アイを妊娠させていい理由にはならないだろうがよ!」
高そうな樫の木の一枚板のテーブルを殴る。
社長は相変わらず怒り気味だ。
「私もそこまでされるとは思ってなくて〜」
と呑気なアイさん。
「もう、癖になっちゃってるの。人の前で嘘をつくのが」
愛さんは目を黒く妖しく光らせると……。
疲れたように話し始めた。
それをみて動揺する2人。
――ルビーちゃんとアクア君。
おそらく、今まで見たことがないのだろう。
――闇のアイさん
――私を成長させてくれた人
――見たことあるのは私だけ
「……私、空っぽだった。お母さんは施設に入って迎えにこないし、アイドルは楽しいけど、みんな仮面をつけた私、嘘をついている私を楽しんでいるだけ」
「まるで愛玩動物みたい」
「……だからこそ、子供、家族を作ると満たされると思った。……だって、私には愛とか家族ってよくわからないものだったし……」
神木さんも続ける。
「ボクも愛に飢えていたんです……。今になってようやくわかる。搾取されたものは、搾取して取り返すしかない。……それに、当時はアイさんが好きなのもありました。今思うと幼稚な『好き』だったかもしれませんが、当時は本気だったんです」
でもアイさんは首を横に振る。
「そして赤ちゃんが出来て……。でも、私は彼が好きだったけど、彼の愛が重くて、これ以上衝撃を与えたら彼が壊れちゃうかもって思って……」
「でも本当は彼と一緒に人生を歩みたかった。持っているものを一緒に背負いたくて、でも……、それは彼のためにもできなかった」
「だから別れようって切り出したの……」
「……アイさんに振られたのもあって、……今でもみじめで、引きずってますが、アイさんに……恋していました。だから、一緒になりたかったんです……。でも……」
「私だけの収入じゃ生活できないし、彼も不安定だし……」
——だから別れを切り出したの
そう言うと、アイさんはカバンの中に手を入れて何か探しているようだった。
※アイ
私は忘れていたが、カントクに一枚のDVDを渡していたらしい。
「アイ、例の15年目のDVDだ」
「なんだっけ、それ……?」
「忘れたのか? お前が15年経ったら俺に渡して欲しい、って頼んでたDVDだよ。15年目の嘘……?だっけか?」
「そっかー☆ありがとね!!」
「……本当にお前に渡して大丈夫か?」
「うん!大丈夫……!あとでアクアとルビーとダイアと見るね!」
——今日そのDVDが私の手元にある。
※黒川あかね
「ええい!まどろっこしいわぁ!」
ダイアちゃんは神木さんとアイさんの頭を持つと、
——ぶちゅわ!と互いがつぶれない程度に両方の唇をくっつけた!!
――ブッチュ〜〜〜〜!!!!
と、皆の脳内に擬音が流れる。
それぐらい強引で、濃厚なキスだった。
「何をするんだ……!」
「そうだよ、ダイア……」
と二人は怒り気味だ!
特にダイアさんのお母さん、アイさんは涙目だ。
強引にキスさせられたせいか、鼻がぶつかり、痛いのだろう。
少し腫れてる。
「痛いよ、ダイア……!」
「これも母上への愛!!だまって受け取るがいい!」
そういって、ダイアちゃんはドスっと座りなおすと、これにて一件落着!と満足気だ。
……まるでギャグマンガのような絵面になったが、事態はシリアスだ。
——まるで解決していない!
※アクア
「ダイア……。お前、まさかこの程度で収めようとしているんじゃないよな……」
壱護さんの発言に、これには僕も擁護せざるを得ない。
「そうだ。どうして、母のアイは殺されそうになったのか、その説明をしてもらわないと……」
神木ヒカルは申し訳なさそうな顔をしながら言う。
(アイツは役者出身だそうなので、そのあたりは信用していない)
「……良介くんをけしかけたのは悪かったと思っている」
「悪かったじゃ済まねえんだぞ!」
壱護さんはスイートルームのオークの一枚板でできたテーブル代を再びバンッ、と叩く!
その拳は割れたのか血が滴っていた。
「うちのタレントを傷ものにしかけたんだぞ!それに、15年前とはいえ、殺されかけたんだ!……時効だと思っているなら大間違いだぞ……!」
「アナタ、落ち着いて……」
斉藤社長は珍しく激怒している。
「そうだ!暴力団でもなんでもいいから、有形無形の力をかけて、ぶっ殺してやる!!」
そこにダイアちゃんが待ったをかけた。
「壱護……、うぬは彼奴が許せないのだな……?」
「当たり前だろ!」
「うぬは死ぬほどの思いをすれば、許してやってもよいのだな……」
「殺してやりたいがな……、許してもいい……。お前が代わりに制裁してくれるならな……」
ミヤコさんも「今はそんな時代じゃない」と言って止めるが、ダイアちゃんに期待した素振りを見せる。
——が、ダイアちゃんは意外と何も言わない。
私が助け舟を出すときだ。
「部外者の私が聞いていいのか、分かりませんけど……」
「部外者が口を出すんじゃねぇっ!」
とブチぎれの社長。
——怖いけど!
——怖いけど、ダイアちゃんのため!
自分を奮い立たせる!
「要は神木さんが死ぬぐらいのことが起きればいいんですよね……?」
「できれば、そうだな……」
社長も私という部外者を入れて、頭が冷静になったようだ。
「でも、私は許してるよ……」
アイさんが割って入り、話を進める。
「私が許してるし………。何より、彼との生活を再開とまでは言わないけど…………。またやり直したいとも思ってる。……………ダメ、かな……?」
社長は葉巻を取り出し、丁寧にカットする。
マッチ一本一本すらも丁寧に選ぶようにして、一服した。
――まるで怒っている自分を諌めるかのように。
「すぅー…………はぁ。もうB小町第一世代は解散ムーヴに入った。…………、どうしてもって言うなら、お前が好きに決めたらいい」
「社長、本当にいいの……?」
「いいかどうかはお前が決めろ……。俺は死ぬほどムカついてるけどな」
ドカッと椅子に座る斎藤社長。
部屋には葉巻特有の甘く、重いが立ちこめる。
「…………あとは家族の問題だ。ルビーとアクアとダイアと好きに相談しろ」
「社長……!ありがとう〜!!!」
アイさんは社長に抱きつくが、社長は嫌そうな顔をしている。
それでも、ミヤコさんはほっとした顔をしていて……。
――これにて一件落着、かと思われた。
――でも、アクア君とルビーちゃんは違った。
二人は突如立ち上がると、幽玄としたオーラを纏い、
神木ヒカルの前に立ちはだかった。
「……それ、私たちが許すかどうか別問題だと思うんですよね」
「俺も……そう思う」
どこか、二人の様子はいつもと違っていた。
まるで……、ダイアちゃんのよう……!
迫る息子と娘に対し、落ち着きを求めるアイさん。
「私……、彼のこと、ヒカル君のことを許してるんだよ……。それでも……、許してくれないの……?アクア、ルビー……」
アイさんが神妙な顔で言うが、ダイアちゃんは毅然という。
「うぬらとは弟妹の誓いがあるので母上には言えぬが……」
——この二人は殺された程度のことはされている。
その一言に、私は衝撃を受ける。
殺されたこと……、それに匹敵する内容……!?
点と点がつながらない。
――養子
――星野性とは別の斎藤性
――カバーの名義
――これは確定
――にしても『殺されたも同然?』
――ここの辻褄が合わない
――アイさんが刺されたらしいが、その時に同時に刺された……?
分かっていない私だったが、二人は立ち上がると、
――ダイアちゃん同様の構えを見せた。
両手を掲げた独特のファイティングポーズ!!
だが、幽玄と纏う空気の歪みを見て私は気づいた!
ダイアちゃんも驚いている!!
「うぬぅ……!まさか北斗神拳究極奥義!『北斗無想転生』……!まさか弟妹が目覚めるとは……!」
——あれは愛と哀しみを知るものしか使えぬ!
——知ったというのか!愛と哀しみを!!!
「ごめんなさい、お姉ちゃん。お姉ちゃんと言えど、その男を守るなら絶対に許せない」
「ルビーと同感だ……!そいつを……、殺す……!」
ダイアちゃんの発言から気付かされる。
愛と哀しみを通して、北斗無想転生の奥義を習得したとらしい、ルビーちゃんとアクア君……!!!
まさかの1対2。
大丈夫……、ダイアちゃんなら勝てる……!
「がんばれダイアちゃん!!」
だが、――勝負は瞬殺に終わった。
「ぶぁりゃ!」
「ダイアちゃんっ!」
倒れ伏すダイアちゃん。
――初めて見る光景に、
――私たちは動揺していた
――血反吐を噴くダイアちゃん
――全身血に塗れるダイアちゃん
彼女が倒れると、最高級ホテルの!最上級スイートルームが!
――本来無縁なはずの血に染まっていく
――最強の『拳王』が地に倒れ伏す
再び、神木さんに向かって歩き出すアクア君とルビーちゃん。
でも、そこに待ったをかけたのは、
……まさかの、かなちゃんだった。
※有馬かな
「お願いだから……、家族のことで争わないでよ……」
――存在する記憶
――ギスギスした家庭
――一家離散寸前まで行く私たち
――結局、有馬家は解散しなかったけれど……
――家族の愛と苦しみを!
――売れたときからの落差を!
――その絶望がゆえに!
――だれよりも知っていると自負している
「どいてくれ、有馬……」
「どかないっ……!!!」
「どいてくれないと……、先輩でも殺すよ……?」
「どかないっ!!!」
かなちゃんの涙を溜めた問答の末、
――逆にためらったのはルビーちゃんとアクア君
あまりのかなちゃんの裂帛の気合に押されたのか。
動きを止めるルビーちゃんとアクア君。
床に臥せるダイアちゃんを見る。
ぴくり、と指先は動いているが、動く気配はない。
(私も……、ダイアちゃんのために時間稼ぎをしなきゃ!)
――ダイアちゃんなら絶対に起き上がってくる……!
確信が、ある!
そう思って、ルビーちゃんとアクア君を見る。
――ルビーちゃんとアクア君は『闘気』を放っていた。
――凄まじい殺気
「はっ!?」
私はダイアちゃんの彼女なのに、その闘気に一歩足を引いてしまっていた。
――ダイアちゃんの彼女なのに!!!!!
ガクガクと震える足が止まらない。
恐怖が全身に走り、ガチガチと歯が音を立てる。
二人の目の前に立てるかなちゃんすごい!!
かなちゃんすごいかなちゃんすごいかなちゃんすごいかなちゃんすごいかなちゃんすごいかなちゃんすごいかなちゃんすごいかなちゃんすごいかなちゃんすごいかなちゃんすごいかなちゃんすごいかなちゃんすごいかなちゃんすごいかなちゃんすごいかなちゃんすごい!!!!!
さすがかなちゃん!
でも……!
私だってダイアちゃんの彼女なんだから……!
「かなちゃん……、私も戦う!!!」
構えは見よう見まねだ。
一歩前へ出る。
多分、拳法に目覚めたアクア君とルビーちゃんに、私は瞬殺されるだろう。
でも……、これがダイアちゃんのためになるなら……!
「ふふ……、まさかアンタと一緒に闘うことになるなんてね……」
かなちゃんの言葉で!
思わず挫けそうになっていた心が、勇気で満たされ、復活するのを感じる!
運命、いや……!
「これは宿命……!」
「気張りなさい、私たちじゃ歯牙にもかけられないわ」
「分かってる……!」
闘気を発する二人には瞬殺されるかもしれない……!
あまりに圧倒的な戦力差に勝てるはずもない。
でも、かなちゃんと私でダイアちゃんのためになれるなら……!
私もかなちゃんも、死を覚悟して一歩踏み出そうとしたところで……!
――後ろから安らかに手が置かれた。
――ダイアちゃんの手だ!!!
――自らの血にまみれ、
――血みどろとなろうとも、
――その不動の大樹のような圧倒的な自我は、
――その圧倒的な力は、何人たりとも!
――何人たりとも揺るがすことがない!
「大丈夫だ!かな、あかねよ!!」
その巨木のような存在感に、心の中の恐怖はつゆと消えゆく……!
「フハハ!!!拳王は死なん!!!!!ルビー、アクアよ……。貴様らを拳法を使えぬ弟妹と思い、侮っていた。ゆえに、貴様らを強敵(とも)と認めよう」
ダイアちゃんは手を肩の高さにまで上げた独特の構えを取る!
「まさか姉さんと闘うことになるなんてな‥…」
「例えお姉ちゃんでも、神木ヒカルを守るなら罪! 私の恩人を殺した罪、庇った罪! どんな大河でもそそげやしない!!」
「後悔などない!我は母を守ると誓った身!」
ゆらりと迫るダイアちゃんに、アクア君とルビーちゃんもやる気だ!!
「我のかつての弟は言った。ならば我もそれに倣おう」
――我は愛のために闘おう!!
ダイアちゃんが構えをとると、
――第二ラウンドが始まった!
※ダイア
(無垢の魂故、愛と哀しみを背負うのはたやすいか……!しかし我の強敵(とも)たちには及ばぬわ!)
――我が二人の弟妹、ルビーとアクア!
――真の強敵(とも)と認む!
「出し惜しみ等せぬ……!互いに『究極奥義無想転生』をまとったならば、奥義は武器にならぬ!ぬぅぇいっ!」
北斗七星を模すが如く、ゆらりと左右の手を上段下段に構える!
「天を掴むは我ひとりでいい。ぬぁは〜〜〜〜っ!!」
※黒川あかね
ルビーちゃんとアクア君に襲いかかるダイアちゃん。
「おああ!!」
「おおっ!!」
――アクア君もルビーちゃんもためらず迎え撃ったが、
――北斗神拳の基礎能力が違いすぎた。
私では追いきれない数多の拳を受けるルビーちゃんとアクア君!
「んぬばぁっ!」
「ぬぐあっ…!」
床に倒れ伏すアクア君、かろうじて膝をつくに留めるルビーちゃん。
「がはぁっ!」
でも、ルビーちゃんも塊のような血反吐を吐く!
辛うじて膝立ちだが、それも気力を振り絞ってギリギリといったところだ!
「ルビーちゃんっ!」
「だめ、あかねちゃん、近づかないで……! 私、絶対に許せない……!これは宿命……!あの矮星、神木ヒカルを私は許すことができない……!」
そして再びルビーちゃんは立ち上がり、ダイアちゃんと殴り合った。
まるで子供の姉妹喧嘩のよう……!
でも、それはどこか透き通っていて……!
「見える……、見えるわ……!」
「かなちゃんも……!?」
「ええ、なぜかわからないけど……、病院着をきた女の子と……、ダイアの本当の姿……!」
それに、倒れ伏してるアクア君の中にある……、謎の白衣を着た青年……!
でも、勝負は一方的だった。
拳士としての鍛錬を積んできたダイアちゃん、一方アイドルとして美を鍛え上げてきたルビーちゃん。
一瞬の隙をついて、ダイアちゃんがクリーンヒットを入れる。
「ああっ!」
気づいたら、ルビーちゃんが膝をついていた。
――その目には血涙
周りに愛されるための純真なアイドルではなく、
――愛憎故のドス黒い血涙
ドス黒い血涙が、ルビーちゃんの白く美しい肌を穢していく。
そうして、ダイアちゃんとルビーちゃんの決闘が果たされようとしたところで、
――黒装束の女の子が入ってきた。
「ちょっとこのDVD借りるね」
「えっ。ちょっ……?」
圧倒的闘気が満ち満ちたこの一室。
誰もが動けない中で、彼女だけが歯牙にも掛けない様子で動いている!!
「私でも、この宿命の対決の先は見えないんだ……。だから、こうするしかないんだ。ごめんね」
彼女の物騒な言葉とは裏腹に、アイさんのカバンから取り出したDVDを、
――なんて事のないそぶりで
――テレビにセットする黒装束の少女。
「さーて、ホームビデオの時間だよ」
血まみれの一室に相応しくないホームビデオが始まった。
——
『きっとアクアは私たちがどうして別れたか、そこが気になってるよね』
『彼はもう限界だったの』
『芸能界の闇ってやつに侵されて、私に依存するみたいになっちゃって』
『もう壊れる寸前だった』
画面に映る15年前のアイさん。
その背景には、ホームパーティーなのか、『HAPPY BIRTHDAY』とキラキラ飾り付けがしてある。
今の血まみれのホテルルームとは全く違う、マンションの長閑な一室。
その光景に、私たちは釘付けにされていた。
『そんな中、お腹に子供がいるって分かって』
『流石にこれ以上はヤバいなって思って』
『だから、言っちゃったんだよね』
――キミを背負えないから別れよっ
――私はキミを愛せないって
ビクンと震える神木ヒカル。
――『愛は嘘』だって思うことにした
『私達がいなくなれば、きっとまだ彼は大丈夫だと思った』
『でも本当は彼とずっと一緒にいたかったから』
『彼の背負ってるものを一緒に背負って』
『彼の子供達と一緒に未来を生きたかった』
――愛とかよく分かんない私が、
――愛したいと思った、初めての人だから
その言葉に、神木ヒカルの目から涙がこぼれ落ちた……。
『ねえアクア、 15年後の君たちから見て』
――あの時の言葉はちゃんと嘘だった?
――愛せないなんて、嘘だったよね?
『彼が今も迷ってるなら、彼を救ってあげて欲しいんだ、私と一緒に』
アクア君は膝から崩れ落ちた。
対照的にルビーちゃんはキッと画面を見つめている。
『次は〜♪ルビーにお話があるよ〜!』
怒っているルビーちゃんとは対照的に、画面の中のアイさんは笑顔だ。
『多分、これを見てるってことは、お兄ちゃんは多分真相を知りたいんだと思う。だから、どんな結果であっても……』
――お兄ちゃんを支えてあげてね、ルビーの唯一のお兄ちゃんなんだから♡
「ママ…………、私、どうしたら…………」
「ルビー………」
アイさんも困ったような泣き顔を見せる……
「私っ!!どうしたらっ………!!」
ルビーちゃんも膝から崩れ落ち、アクア君がそれを支えた。
「弟妹よ……、落ち着くのだ……!」
ダイアちゃんも慰めの言葉をかけるが、ショックでルビーちゃんは耳に入らないようだ。
ルビーちゃんの目には涙。
さっきまでの闘気はない。
「私は……!私はどうしたらいいのよ……!せんせを……、せんせを……!返せ……!」
ルビーちゃんの言う『せんせ』に心当たりはない。
だけど、アクア君がルビーちゃんを抱きしめる。
そして、ダイアちゃんは私に、仲裁を求めた
「あかね…………。頼む………」
「う、うん………!」
さっきまでの死闘とはうってかわり、急に空気が弛緩したかのように思えた。
でも――
「お兄ちゃん、私……!やっぱりそいつに死んでほしい……!」
「ルビー……」
「たとえお姉ちゃんが相手でも……、そいつ、許せないよ……!」
母であるアイさんは許してるようだが、ルビーちゃんは許していないようだ。
アクア君の胸の中でさめざめとして泣いている。
私も改めて決意して一歩を踏み出す。
――結果はまた違ったものとなった。
………………
…………
……
「まとめると、こういうことだね?」
急遽ホテルから借りてきたホワイトボードに私はまとめる。
――ルビーちゃんは神木さんに死んでほしい
――アクア君も同様
――アイさんは、神木さんに生きてほしい
――でも、自分を殺しにかかったことを許していない
――折衷案としての『精算』
「神木さんは……、どう思ってるんですか?」
「そうだね……。アクア君やルビーちゃん、それにアイの言う通り、死ぬほどの『禊』が必要だと思っているよ……」
アイさんは今までにないほど、動揺した様子だ。
「本当にやるの、神木くん……」
「ああ、もちろん……」
そこにダイアちゃんが割ってはいる。
「神木ヒカル、今までうぬの周囲で不審死が相次いでいるのは分かっている」
「バレバレなんだね……」
そうだ。
この目の前の男は、私を登山道で突き落とそうとした男だ。
私の発言も加わり、今までの神木ヒカルの所業が明らかになるにつれて、だんだんと表情が厳しくなっていく面々。
アクア君もルビーちゃんも真剣だ。
「あかねちゃん、警察に通報するってはどうなの?」
「疑義不十分で釈放される可能性大だね……」
「でも、ここで私刑って訳にはいかないでしょ……?」
「多分、警察の捜査でバレるね……。それにさっき、大量に血を流しちゃったから、ここで人1人行方不明になると捜査から必ずバレる……」
「…………」
「でも、私たちには不可能を可能にする人がいる……」
そう言って、私はダイアちゃんを見る。
彼女は私に頷き返す。
「…………無茶を押し付けるかもしれないけど、大丈夫?」
「無論!」
私が思案を巡らせているところで、答えは意外なところから返ってきた。
「ウチの神社、使うかい?」
さっきの黒装束の幼女だ!
まるで『うちの家こない?』と気安く言っているが、
――誰もこの子のことを知らない!!
「うぬは天の一柱だろう……。なぜ我、いや我らに加担する……」
「神サマは気まぐれなのさ……。それに、違う結末もみたい」
なぜかダイアちゃんだけ『神様』って納得してるけど……、
――こんな幼女な神様、あり得るのかな?
会話は続く。
「それにうちの神社を使えば、証拠の一つや二つ、それに人一人なんて消すのは訳ないさ」
「なんたって、ウチの聖域だからね。死ぬも人を殺すのも自由自在だ」
静まる皆。
「どうだい?キミの『北斗無間地獄拳』を使えば……。三日三晩、この『神木ヒカル』なる男の罪をそそぐことができるかもしれない……」
「知っておったか……」
「そりゃあ私は『神サマ』だからね。知っているとも」
ルビーちゃんが割ってはいる。
「どんな大河の水量をもってしても、罪を雪ぐことなんてできないよ!」
「キミの言うことも分かる。まぁ話を聞きたまえ」
自称『神サマ』は自慢げにドヤる。
「『北斗無間地獄拳』と言うのは、君のいう『禊(みそぎ)』に相応しいよ。なにせ……」
――三日三晩の苦痛が続くし、
――肉体的な苦痛だけでなく、精神的な苦痛も伴う
――例えば、過去の悪行がフラッシュバックしたり、
――絶望的な未来を幻視したりする
「うぬの言うとおりだ」
「でしょ……?」
「…………そんな技名一つ当てただけで、私が食い下がると思う?」
ダイアちゃんと自称神サマの間にルビーちゃんが再度割り込んだ。
「キミは熱狂的だねぇ……。それじゃあ神秘を一つだけ見せてあげよう」
――ほらね
そう言うと、さっきまで血みどろだったホテルの一室が彼女の手元の一点に吸い込まれていく。
そこにはボーリング程の血の球体が指先で回転していた。
まるでビー玉のような質感を放つ、ドス黒い液体。
――部屋中の血液を集めたんだ!!!
――尋常じゃない!!!
手品か何かと疑ったけど、そんなものじゃない……!
血に濡れたカーペットは来たときのようにクリーンだし、ダイアちゃんやアクア君の破けて血に塗れた格好がタイムスリップしたかのように、血だけ吸い取られている。
これなら警察の追及も流すことができる!!
思わず周りを見渡すと、皆その光景に驚いていた。
「…………嘘、手品とかじゃないよね?」
「そんなに手品したいなら、僕はこんな血生臭いところにいないで今頃マジシャンにでもなってるよ」
神様はボーリングの球ほどの血をトイレに流すと、『これで生理って言い張れるね』とよくわからないことを言う。
この自称『神』を信じてもいいのだろうか……!?
「よかろう」
「ダイアちゃん!?」
「さっすが北斗神拳候補者……、話が早い」
「うぬがこれ以上我を『候補者』と愚弄するならうぬから殺す。我はいずれ天を握る者、うぬから始めたってよいのだぞ」
「はは……」
銀髪の自称『神サマ』は苦笑いだ。
ルビーちゃんが続ける。
「…………あなたが、なんとなく超常の存在だという事は分かりました」
「なんとなく、ね。…………これでも君の事をずっと見てきたんだけど、ね」
「…………??」
「ま、いいよ。そのことは私だけ分かってればそれで良い」
彼女は一呼吸おく。
「神様の神秘は一回だけってのが定番だけど、今回は追加で一回やってあげよう。代償は後でいただくけど」
そうニッコリと笑う彼女は、人なのに、
――人じゃないナニカを想起させる笑顔だった。
………………
…………
……
…
結局、あれから私たちは宮崎に戻ってきていた。
宮崎のとある神社の社の前にいる。
「本当にいいの、ヒカル君……」
「ああ。それで皆が納得してくれるならね……」
アイさんは寂しそうだ。
それもそのはず。
これからかつて愛した男性、
――神木ヒカルが死ぬかもしれないんだ!
「三日三晩、僕がダイアちゃんの技に耐えたら、僕を許して欲しい」
「…………」
「…………」
「アクアくんとルビーちゃんはまあ、そうだろうね……。僕のことを許しはしないよね……」
だんまりなアクア君とルビーちゃんは複雑そうだ。
それもそうか……。
アイさんを殺そうとしたやつを、これから禊と称して許すのだ。
アイさんの熱狂的なファンである二人は、彼女を害そうとした人を許すことはないかもしれない。
それでも、神木ヒカルは『禊』の道を選んだ。
神木ヒカルは白衣の神官衣装を着ており、その面持ちは厳かだ。
とてもこれから死ぬ程の思いをしに行く人とは思えない。
「………さて、準備はいいかい?」
「ああ…………」
そう言うと、自称『神サマ』は銀髪を翻しながら、鳥居を潜って、本殿へ向かっていく。
続いて、アイさんと神木ヒカルとダイアちゃんはその背を追う。
かなちゃんはなるべく口出さずにいる。
それでも、不安な私に気を遣ってか、手を握ってくれている。
その手の温もりや心に染み渡る。
「ルビーちゃん、アクア君……。追わなくていいの……?」
「あとは…………、天に任せるよ……」
「ルビーがそう言うなら、俺も任せよう」
かなちゃんと私はアイさんについていくと、ちょうど神木ヒカルが本殿に入るところだった。
ダイアちゃんと神木ヒカルが敷居で分たれると、ダイアちゃんが構えに入る。
「ヒカル君……」
アイさんは固唾を飲んで、動揺しながらも見守っている。
そうして、
――宿命の時は訪れた!
「北斗無間地獄拳っ!」
「ねやばぁっ……!」
ぬうぁっ!と一瞬我慢するも、血涙が流れ、白装束を赤く染めていく。
「それじゃ……」
神様が襖を閉めると、「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛
〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!」と猪のような雄叫びが聞こえてきた。
まるで死に瀕した動物の断末魔のようだ。
――バシャアッ!と真っ白な障子に血飛沫が飛ぶ。
――敷居から血がジワリ、と滲んできて床を汚す
ビクッと、アイさんが震えている。
それにそっとダイアちゃんが肩に手を乗せようとするが……、それは振り払われた。
――こもごもとした気持ちがあるのだろう
――実の娘のダイアちゃんすら拒絶するほどに。
「行こうか……」
「…………」
払われた手にショックを受けるダイアちゃんだったが、その手を私が握りしめる。
反対側の手はかなちゃんが抱きしめた。
ある程度、離れてから、今度は私たちでダイアちゃんを抱きしめる。
「ダイアちゃんが地獄に落ちるなら……、私も落ちるからね……」
「地獄に行くなら私も混ぜなさいよね!!!!」
かなちゃんと私とでぐわっと抱きしめる。
かなちゃんのその小さな手からは、熱い体温が伝わってきて、私たちへの優しさ、気遣いを感じられる。
そしてダイアちゃんの圧倒的な肉体も。
………嬉しい。
「我はどうすれば良かったのだろうか……」
「どうにもならないよ。皆、利害対立が凄まじいからね……」
「………あんたたちが考えても決まらないなら、誰がやっても一生決まらないわよ………。…………複雑だけど、これで良かったんじゃない?」
「かなちゃんは意外とドライだね、私たちの義理の父親になる人物だよ?」
「…………警察に引き渡しても裁かれないし、ルビーの激憤は収まらない、…………本当はよくないのだけど、しょうがないわよ。彼が、三日三晩の苦しみに耐えたら、私たちはそれで許してあげましょうよ」
「うん…………、そうだね……」
かなちゃんとのやりとりで、ダイアちゃんが再び真っ直ぐ巨樹のような姿勢を取り戻す。
――私とかなちゃんで、ダイアちゃんを支えていくんだ!
かなちゃんとダイアちゃんの手を握り返しながら、私はこの三人の幸せが永遠に続くように願った。
………………
…………
……
三日三晩経ち、神木ヒカルを迎えにいくと、虫の息だったがかろうじて生きていた。
三日前に見た白装束は真っ赤に染まり、すでに血の一部はどす黒く固まっていた。
毛穴という毛穴から血が吹き出たのか、全身は血に固まり、カサカサとなっている。
「三日三晩耐えたよ、許してくれるかい?」
銀髪の幼女が、虫の息で喋れない神木ヒカルを代弁する。
「よっぽどの苦痛があったんでしょうね……」
ルビーちゃんが今にも絶命しそうな神木ヒカルを見下ろして言う。
「お姉ちゃん、やっぱりこれって相当辛いの……?」
「人によるが、三日間を過ぎて生きているのは超人の類だ……」
「文字通り、死ぬほど辛い思いをしたってこと?」
「うむ」
「そう……。そうなんだ…………」
ルビーちゃんはアイさんへと向かう。
「ママ……。私、完全に許すことができないけど……」
「…………」
「これから少しずつ、わだかまりが溶けるように、祈ってて……」
ルビーちゃんは本殿から立ち去り、後ろでアクア君と抱き合っていた。
「ルビー……」
娘が去る様子を見る彼女は、孤独なひとりの母親に見えた。
嘘ではなく、孤独な1人の母親だった。
そこにダイアちゃんが肩に手を乗せると、三日前とは違い、優しく握りしめられた。
家族の和解は遠そうだけど……、ダイアちゃんがいるから、……なんとかなるかもしれない。
私たちとかなちゃんは、ダイアちゃんが神木ヒカルに生命力強化の秘孔を押したのを見届けてから、帰りの途についたのだった。
…………
……
…
あれから9年後。
「「「「「「みんなで食べれば美味しい!ポッキン!!!!」」」」」
グリーンバックの背景で、私たちはオフィススーツ姿でポッキンを5人でカリッと食べる。
「はいカーット!!」
五反田監督の合図をもとに、スタッフさんが目まぐるしく入れ替わり、配置換えを行っている。
アレの事件以降神木さんはルビーちゃんに贖罪するかのように、こちらへ様々な仕事を回してくれている。
苺プロは五反田監督と、副監督のアクア君を抱えて、B小町やその他インターネットアイドルVTuberや配信者を抱える事務所と化し、その撮影を一挙に担っていた。
「アクア、ここは背景は小洒落たオフィスにしろ。合成だ。お前の腕を全国に見せつけてやれ」
「はい」
「B小町4Seasonsの皆もお疲れ。今日はあと、皆でブランド名の吹き込みのカットだけだ。よろしく頼む」
「「「「「はい!」」」」」
どうやら後で知ったのだが、五反田監督はこういうCM案件もやるようだ。
『映画案件で食ってけるだけのスーパースターじゃねぇのよ』とぼやいていたが、作る映画は予算内で隙のないように作る&赤字を出す率が少ないため、堅実に売る監督としてひっぱりだこに最近なりつつある。
「『ブツ撮り』は得意じゃないんだが……」
と、ご自宅でボヤいていたがそこは『美をこだわる』アクア君が担当しているらしい。
私も後で知ったが、『ブツ撮り』とは商品の宣材写真などの、物(ブツ)を撮る仕事のことを言うらしい。
そして……
「美を世の中に知らしめることがボクの使命なんだ」
と、公言して憚らないアクア君はB小町4Seasonsのカメラマンとしてこの9年間走り回り、今も現場を駆けずり回っている。
カメラを持ち、ケーブルを引き回す姿はどこか楽しそうだ。
「お兄ちゃんっ!今日の私どうだった!?」
「ああ、今日も可愛かったぞ、ルビー」
「えへへ〜〜〜♪お兄ちゃん、だ〜〜〜〜いすき!」
早速アクア君に抱きつき、胸元で頬擦りするルビーちゃん。
あれからアクア君とルビーちゃんは独り立ちして、同居生活を始めている。
以前にもまして明るくなった二人には影はなく、むしろイチャついているように見える。
心なしか、どこか吹っ切れているようだ。
「やっぱり、あの二人の執着はどこか異常よねぇ……」
そう言って、膨らんだお腹を抱える副社長のミヤコさん。
最近、二人目を懐妊されたらしく、仕事は別のマネージャーさんに変わりつつある。
斉藤社長も二人目のお子さんが生まれると言うことで、今までのヤクザ家業のような荒々しさはなりを潜めつつある。
これから落ち着いていきそうな、幸せそうな家庭感を醸し出している。
斉藤社長もあれ以来、日常の生活も落ち着いた。
アイさんが刺されかけたとはいえ、もはや約25年前の出来事。
ダイアちゃんが代わりに私刑を極秘裏に行い、虫の息となった神木ヒカルを見て満足したようだ。
それに、刺されたが『アイさんが死んでいない』ことの方が強いのだろう。
これから3代目B小町、アイドルの発掘をやろうとしている。
あの事件から数年後、初代B小町は、『B小町ラストライブat東京ドーム』と銘打ったラストライブで盛大なB小町解散式を行った。
ダイアちゃんの秘孔によってばっちり仕上げられた初代B小町は、文字通り光り輝いた。
スポットライトを浴びては観客に返す、星のような明るさだった!
ファンも満足、スタッフも満足、演者も満足な伝説的ライブとなった。
B小町のニノさんを始め、それぞれタレントとして定着し、ニノさんは定期的にオヒルナンデス!というワイドショーに引っ張りだこだ。
専業主婦向けの枠として登場しているらしい。
それから、アイさんと神木さんにも変化があった。
解散式から半年後、アイさんと神木ヒカルはそれぞれ同居し、1年後には式をあげた。
約9年経った今でも、ルビーちゃんやアクア君からはまだ少し距離を置かれているアイさんだけど、それでも息子娘といる時は幸せそうだ。
神木ヒカルは微妙な顔をしてるけど、私としては時間が解決することを願いたい。
…………もしかしたら、一生このまま疎遠になる可能性もあるが、
――距離が近いからといって、家族は幸せとは限らない
こればっかりは如何ともしがたい。
そして……、私の頭にはどうやったらダイアちゃんの助けになれるかしか頭にない。
「アンタねぇ……、そんなに眉間に皺ばっかり寄せてると、ほんとの皺になっちゃうわよ」
「かなちゃん……」
あれから、かなちゃんと私とダイアちゃんで、私たちは同棲生活を始めている。
「…………アンタが調子悪いと、ダイアまで調子悪くなっちゃうんだから、勘弁してよね」
「気をつけます……」
そうなのだ。
かなちゃんか私が調子を崩すと、ダイアちゃんはオロオロとするばかりで、普段の大樹のごとき不動さが失われてしまうのだ。
ダイアちゃんに『家庭のことが苦手』なんて側面があって、おかしくて!
思わず笑っちゃったけども、
――私とかなちゃんはそれで友誼を深めた。
昔ほどギクシャクしてない。
むしろうまくやれていると思う。
今の所、夫婦?円満だ。
20代中盤になり、円熟してきた私たちは、パートナーシップ証明を提出するか三人揃って悩んでいる。
結局、宮崎のあの事件の後、自称『神サマ』の幼女は苺プロで少女役の役者として売り出し中だ。
本人曰く……、
「せっかく天界から降りてきたんだ。もうちょっと、肉体の身を味わってもいいだろう?それに二つ目の神秘の代償も奉納されてない。神として由々しきことだ」
と準大手事務所となった苺プロの後押しもあり(強引に後押しさせたらしい!本人曰く『代償』とのことで)、本人も引っ張りだこ。ご満悦な様子だ。
彼女はアクア君とルビーちゃんの住む家、それに私たち三人が住む家に交互に遊びにきている。
「…………せっかく貰い受けた魂が、どうなるのか見てみたいじゃないか。」
とは本人の弁。
…………北斗神拳や天界に関係あるんだろうけど、私にはわからない。
少なくとも『もうちょっと』では帰らなそうだ。
私としては彼女がいると、『夜の営み』に気を使うので早く帰って欲しいのだが……。
(もちろん神木ヒカル騒動を解決に助力してくれたこと、感謝してる)
あれからMEMちょさんはアイドルとして精一杯活動しまくっている。
配信業は続けているものの、動画編集はアクア君に一任しているらしい。
「配信は自分でやらないとできないけど、動画編集はアクたんに任せた方がいいものができるから」
だそうだ。
加えて……、
「30代も折り返しそうだし!今まだ戦えるうちに!目一杯アイドルとして駆け抜けておかないと!」
って強弁して、B小町4Seasonsの中で誰よりも一番アイドル活動している。
先日3冊目の写真集を出してそこそこ売れたらしい。
さらにファンの間では年齢不詳の謎が深まっているらしい。
一番アイドル活動を楽しんでいるのも彼女だ。
撮影担当はもちろんアクア君。
無論、MEMちょは秘孔のおかげで20代中盤の見た目だ!
リバースエイジングの秘孔が強すぎる!!
(もちろんB小町4Seasonsのメンバー全員押してもらってる!)
おかげで私もかなちゃんも見た目はまだハタチぐらいだ!
そしてB小町でも写真集を出す案が事務所から出たことがあるけど……、アクア君が乗り気じゃなかった。
「妹の肌を他人に見せるのは絶対嫌だ」
「このシスコンめ!!」
とかなちゃんに突っ込まれ笑われていた。
気持ちは同情する。
だって私もダイアちゃん以外に肌は見せたくないし……。
私とかなちゃんはまだアイドルを続けている。
私たちの気持ちは一緒だ。
――アイドルを辞めたくない!!
だって、
――ダイアちゃんと一緒がいい!
その気持ちは二人とも変わらない。
今ではありがたいことに日本の芸能界を席巻する女優へと手前味噌ながら成長した。
そうこうして、感慨に耽るうちに、社長が現場に駆け込んできた。
「ダイア、お前宛に重大な連絡が来たぞ!!」
ゼーハー言いながら、老境に差し掛かった白髪を振り回しつつ、ダイアちゃん宛の連絡を読み上げた。
「与党から国会議員に『タレント枠』でならないかと打診が来たっ!!」
「断る!!!!!」
ステータス、地位としては最高峰の一部である国会議員を!!
即答で断るなんて!!!
――唖然とするスタッフさんたち
――仲間のかなちゃんも!私も!MEMちょも!ルビーちゃんも!
――驚いていたっ!
――与党からの国会議員の『タレント枠』を断る!?
だって、誰もがなれる職業じゃない。
『三バン』と呼ばれるものが絶対に必要だ。
カバン(お金)、地盤(組織)*1、看板*2がないと成れない地位だ!
数年毎に数百万円、数千万円をかけた人たちが、供託金のラインに届かず総務省に没収されて涙している。
興奮に頭が沸騰しそうな一方で、冷静に計算する。
――ダイアちゃんの知名度なら当選可能ラインに躍り出るはずだ
――オリンピックメダリスト、国民栄誉賞受賞者、ハリウッド出演の国民的大女優だ!
――当選だけなら知名度でもいけるはず!なのに……!
――それを断る!?
私には、にわかに信じられなかったが……
「天に届くためには自らの脚で立つ事が肝要!」
――それを他者に用意してもらおうなど言語道断!
と宣う彼女。
唖然としてる私たちに彼女から声がかかる。
「フハハハハ!かな、あかね!!前々から思慮していたが、我の次の目標が決まったぞ!!」
――内閣総理大臣だ!!!
かなちゃんと私は揃ってダイアちゃんを見るも、次の目標に燃えているようだった。
私たちは頷く。
私たちは互いをライバル視してるが、ダイアちゃんに一生ついて行って支えることを生涯の誓いとしている!
「ダイア……、世界にはあなたという輝きが必要よ!手伝うから一緒にやりましょう!」
「ダイアちゃん……!ダイアちゃんに助けてもらったこの命、今使わないでいつ使うの!私も手伝うから、頑張ろうね!!」
こうして、――国会議員斎藤ダイアモンドが生まれてしまったのである。
生まれてしまったのである!!
――これが後の104代総理大臣となることを、
――まだ誰も知らない!
<Fin>
おかげさまで完結しました。
評価、感想、誤字修正、お気に入り登録してくださった方たち、誠にありがとうございました。
ここまで読んでくださった記念に評価とコメントくださると嬉しいですw
またハーメルンでお会いしましょう。
あとがきで書き方とか経緯とか書いたので良ければどうぞ。
前提)2024/7/18発売の本誌にて新情報が発表。
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無視して完結目指して更新?
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1,2週新情報待って完結目指して更新?