【完結】北斗神拳、アイドル界に炸裂!   作:朝比奈小町

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第二話 悲しみを知る男、ラオウ!母をバーターとする女、ラオウ!

※星野アクアマリン

アリーナというアリーナが埋まり、観客に埋め尽くされた金曜日の夜、僕らは姉の試合を見に来ていた。

「レイディイズ!エンドジェントルメン!! 世紀の対決がやって参りました! 赤コーナー、最年少の挑戦者! 星野ォオ!ダイアァアアアモンドォオオオオオオ!!!」

 

リングアナが声高に叫ぶ度、この埼玉ハイパーアリーナを壮絶な歓声が埋め尽くす。

熱狂が渦を巻いて観客のアドレナリンを高める!

会場のボルテージが高まっていく!

 

「対するは〜!青コォナァア! ミック・タァアイソォオオン!!!」

 

リングに上がる黒人の総合格闘家、ミックタイソンが上がると更なる歓声が沸き起こる!

ミックタイソンは1990年代後半に大活躍した総合格闘技の王者だ!

この歓声と熱狂に、格闘技にあまり興味のない僕でも思わず叫んでしまう!

体に炎、情熱、ドーパミン、脳汁、そういった興奮の全てが駆け上がり、この対戦がいかなるおかしな挑戦であろうとも、いかに偉大な挑戦であるとわかる!

 

年齢も30中盤を過ぎ、流石に全盛期とは言えないが、王者は貫禄が違う。

数々の総合格闘技の大会を白星で終わり、優勝賞金の総額は100億円以上というスーパープレイヤーだ!

――王の中の王——

 

そういっても、過言じゃない!

だが僕の姉も、王者という意味では負けてはいない!

――姉についた渾名は【拳王】

今まで全てのスーパープレイヤーをワンパンでKOにしてきたからだ!

 

姉は幼女にしては肉付きのいい体をしており、決してデブではない。

むしろ、そのフレーム、骨格にしてはかなりの筋肉が載っていて、体は引き締まり、皮膚はまるで鋼のようだ。

しかもアイの系譜を引いたせいか、とても美人な顔つきでもある。

 

将来はアクション女優かな?なんてことも期待できるぐらいには、とてつもない華というかオーラがある。

姉のダイヤは92cm、32kg。

対する相手は178cm、134kg

 

普通は100kg近い体重差の試合などできないだろう。

でも姉はできる!

何故なら北斗神拳の使い手だからだ!

――でも僕も誰も北斗神拳とは何かわからない。

――アイもカンフー程度にしか良くわかっていないらしい

 

一子相伝とは言っていたけど、アイが嘘をついていなければ、あれは多分前世のものだ。

 

話がそれた。

僕は姉のダイアの事は一切心配していない。

むしろ相手のことが心配なくらいだ。

ちなみにルビーは格闘技に興味なさそうだが、三万人近くの人を集めている姉の試合にはワクワクしているらしい。これほどの人の集まりは見たことないそうだ。

ミックタイソンは入念にウォームアップしているが、姉のダイヤは無用!とばかりに一切していない。

ウォームアップの必要性は識者でも分かれるところだが。

 

そうして、試合が始まる。

 

――姉の本当の意味でのデビュー戦が始まった。

 

ミックタイソンが先に仕掛ける。

——姉には強烈過ぎるローキック!

 

しかし、姉はいとも簡単に片手で受け止め、半身を沈めたかと思うと、

——もう片方の腕を縦方向に伸ばし、

——へそへ向けて突きを放った!

 

——一見何てことのない指突き

——しかしそれでも!

——姉にとっては一本の指で十分だった。

 

泡を吹いたのち、リングに倒れるミックタイソン!

審判がカウントを取り始めるが、意識を戻す気配はなく、そのまま——僕の期待に違わず一発KOした!

——会場はどよめきと歓声に包まれた!

 

姉が手をあげるだけで、会場は「拳王様!拳王様!」とシュプレヒコールが上がる!

皆、興奮の面持ちで新たなスターの誕生を祝っていた。

 

これは新たな巨星の誕生の物語だ!

 

 

※アイ

少し前にさかのぼる。

事件の引っ越し後、ウチで社長と打ち合わせしていると、社長が不思議そうにダイアを見ていた。

ダイアは堂々と睨み返している。

 

あれからダイアはずっと私の後をマネージャーと共について回っている。

マネージャーの子供、ということになっているが、子供がいない佐藤社長夫婦には申し訳なかった。

 

「本当にこの子が強いのか、アイ?なあ、嬢ちゃん」

「俺は嬢という名前ではない。母にもらった素晴らしい名前がある」

「……そっか、それはすまなかったな、ダイアモンド」

「分かればよい」

 

部屋で交わされる会話。

セリフだけ聞くと男の子のそれだ。

……女の子なんだけど。

——それもまだ四歳の。

 

「アタシも刺された時の光景がどうにもうろ覚えで半信半疑なんだけど、確かにアタシを救ってくれたのはダイアなんだよ」

「お前、何か教えたのか?」

「んーん、ずっと部屋の中で何か舞は練習してたのは知ってるけど」

「そうか。じゃあ、何かやってみてくれよ、ダイア」

「俺の舞は死の舞、常人に見せること能わぬ!」

 

社長は頭を抱えている。

 

「一応、これでも大学で空手部だったんだが……」

「……良かろう。うぬが拳法をしていたのであれば是非はない。鈍(なまくら)なようだが、一本打ってみよ」

 

そうして、どうやら構えたダイアモンド。

だが、周囲の空間は何故かゆがみ始めた。

 

「え?え?」

 

動揺する私を余所に、社長はブルブルと震え始めた。

そうして、パンチを放つまでもなく、

 

——失神し、後頭部から倒れた。

 

「あ、あなた。大丈夫ですか!?」

 

ミヤコさんが介抱するまもなく、冷や汗をダラダラと流し、みるみるうちに白髪が増えた社長。

再びガクガクと震え、気をつけた様子で起き上がると、一言言った。

 

「苺プロはダイアモンドを格闘技の選手として、子役タレントとしてウチで預かる」

「な、何言い出すんですかあなた!」

「……これほどの巨星、見た事ねぇ。これを逃したらウチはとんでもないめくらだ。契約するぞ。……ダイアモンド、いくら欲しい」

「母を守護(まも)れる立ち位置。そして我の武威を示せる立ち位置」

「……安すぎる。だが、いいだろう」

「アイさんの確認取らなくていいんですか?」

「お前はどうなんだ、アイ?」

 

佐藤社長が私に話を振るも、私は問題なかった。

何より、娘に守られるのは恥ずかしいけど、こういうのもダイアにとって親孝行なのかもしれない。

それでダイアの気が良くなって、私の身辺が守られるなら万々歳だ。

それに何故かよく分からないけどダイアは異様に強い。

よく分からないけど……、——さすが私の子!

 

「いーよ。条件はよく分からないけど」

「うし、決まりだな」

 

そうして、私の娘のダイアの所属は決まった。

——これから快進撃が始まるとも知らずに。

 

※ルビー

我ながら姉が凄すぎて唖然としている。

前世の運動音痴が未だに直りきらない私とは大違いだ。

 

——スキージャンプをやれば初めてなのにK点越え!

——投げやりをやれば陸上競技場向かい側のスタンドに刺さり!

——200mの水泳は無呼吸で泳ぎ切り、非公式ながらにして日本レコード!

 

そして、なんと言っても、

——空手、ボクシング、レスリング、柔道、フェンシング!

——全ての大会で小学生以下の部、全優勝を納めた。

 

…………本当にアタシはこの人と三つ子なのか、不安になった。

後になって知るんだけど、……姉の成長スペックにはまだ余地があったらしい。

 

彼女は生まれる星を間違えたんじゃないだろうか?

お姉ちゃん、本当にアタシ達の次元を生きてる?

 

※鏑木P

あの三つ子タレントのダイアモンドのこと?

ああ……、なんとなく知っていたよ。

なんでも、空手大会、柔道大会、ダンス大会、陸上大会、水泳大会、全ての個人競技の運動系の大会を総なめにした5歳児でしょ?

当時俺もワイドショー関わってたから特集組んだの知ってるよ。

 

【ハイパーアスリート幼稚園生】ってね。

 

今やもう日本どころか、世界のスーパースターだけど、当時はまだ無名というか、格闘技やアスリートの界隈でしか知られてなかった。それに、小学生ぐらいの大会だと、野球やる選手とサッカーやる選手が同じ土俵にいたりして、スーパーアスリートは変な話、どこにでもいた。

 

それこそプロ野球に入る子は小学校の頃は皆エース兼4番だ。

小学生の時はみんなスーパースターさ。

 

問題は、10歳をすぎたら、みんな凡人、ってやつさ。

でも彼女だけは違った。

 

……なんていうかなぁ、目つきかなぁ……。

いろんな芸のある人を見てきたからわかる。

彼女は只者じゃなかったね。

 

俺、これでもフリーのPだからさ、顔見せの企画以外は数字に拘って、スポンサーや出資者、上の人間に対して黒字だから仕事できてるんだよ。

 

そのPとして、色々な『人』を見てきたボクが直感したんだ。

21世紀で間違いなく一番大きい新人がでてきた、ってね。

 

だから、一番最初に苺プロに仕事を持って行ったんだ。

こういうのはさ、先につばを付けておくに限る。

 

……その方が後々、やりやすいだろう?

実際、その通りになったけどね。

 

*有馬かな

わたしにとっては、なれたドラマのしゅつえん!

って思ったら、よていが変わったの。

知らないけど、同い年のレポーターをしないといけない、ってお母さんに言われたの。

テレビのひとも来てくれるから、わたしもっとゆーめーになっちゃうわ!

もっともっとクラスで人気者になっちゃう!

しょうめいさん、マイクさん、カメラさんのよーいができると、「CMあけます!」ってADさんが言った。

 

「こんにちは!有馬かなです!きょうはおない年にスゴイ子がいるって聞いてやってきました!場所はここ!しんしん空手、そーほんぶです!こんにちわーっ!」

 

わたしが笑うと、みんな笑いで返してくれる。

でも、道場へいくと、空気がとてもおもかった。

 

みると、20人くらい人が倒れて、さいごの人が、わたしとおなじくらいの子に飛びかかった。

 

——あの子がしんじゃう!

 

っておもったけど、その人は交わして軽くなでただけで、うごかなくなった。

 

しーんとしたどーじょー。

くうきが重い。

いきを吸うのもわすれちゃう!

 

しんこきゅーして近くによると、わたしはインタビューする。

おしごとだ!なんとかしなくちゃ!

 

「あ、あの……! あなたの、おなまえをきかせ!」

 

か、かんじゃった!頭に血がのぼり、顔がほてっちゃってるのがわかる。

 

「斎藤ダイアモンド」

 

女の子のはずなんだけど、力がつよすぎて、男の子らしくかんじちゃう。

どう見ても、女の子なんだけど……。

かっこいい……!

ロングに後ろに束ねた髪は切れ毛一つ無いし、たたかうタレントらしく、筋肉がたくましいわ!

なのに、女の子らしさはこれっぽちも失われてない!

しょーらいはアクション女ゆうさんかしら!

ふんいき?がふつーじゃない!

でも、まわりのスタッフさんも、突然倒れたりしている。

 

わ、わたしががんばらなきゃ!

ADさんが「たっきゅうたいけつ!」とスケッチブックに書いて教えてくれる!

 

「ダイアモンドちゃん! わたしとたっきゅーたいけつ、しよ!」

 

「よかろう」

 

*アイ

TVのバラエティ番組のひな壇で見てた。

卓球対決をするも、ダイアモンドの力がつよすぎて球が破裂しちゃった!

パァンっ!と響き渡る衝撃音にかなちゃんは号泣し、「怖いよ、怖いよ~!」とお母さんに抱きつきに行ってたのが微笑ましくて、現場は恐怖よりもほっこりした雰囲気に包まれた。

 

鏑木Pもどこか満足そうだった。

 

それに、私は我が子がカメラで抜かれて嬉しい。

——ダイアモンドの世界はこれからだよ。

私は彼女が一番星みたいに世の中を照らしてくれたことが嬉しかった。

 

私はカメラの奥にいるダイアモンドを見る。

むすっとした様子だ。

 

対照的に私はひな壇でニコニコしている。

マイクが回されてくる、皆コメントしているが、

 

「親戚の子どもを見ているみたいで可愛いですね♥」

「こんな物騒な子がおるかい!」

 

司会のベテラン芸人さんがテキトーなコトを言った私にツッコミを入れて、場が笑いの渦に包まれる。

 

嘘は言っていないが、本当のことも言っていない。

嘘こそが私の一つの愛だからだ。

皆、この嘘(愛)を欲している。

 

——誰も私をみていない。

 

ダイアモンド、アクアマリン、ルビー達以外は。

私たちは愛でつながっている。

それだけ、この4人で分かっていればそれでいいんだ!

 

それでも私は幸せだった。

かなちゃんだけ、ちょっと今回可愛そうだったけど。

 

後で聞いたら、どうやらあとで仲よくなったらしい。

しかもうちの事務所に入る事になるなんて、この時は思わなかったな。

 

*有馬かな

このときの事は覚えてる。

初めてダイアに合った日だ。

初めて出会う本物の『恐怖』に泣いてしまったのを覚えている。

だが、泣いた涙を拭き取ってくれたダイア。

 

——このとき私は有頂天だった。

子役タレントとしての有馬かなは、この時に全盛期を迎えていたんだ。

でも、その時にただ助言を私にしてくれたのは、今も昔も思い出せるのはダイアモンドちゃんしかいない。

 

「貴様は巨大な恒星を持つ女。増長は増長を生み、巨星すらも矮星へと変える。気をつけるのだ、有馬かな」

 

それが、彼女のアドバイスだった。

この時、何を言っていたか、言葉が難しくて分からなかったけど、今なら言いたいことが分かる。

 

そして、この時期を機に、私の仕事は減っていった。

 

……落胆するお母さん.

……ケンカするお父さんとお母さん。

 

……段々と家の中の空気が暗くなっていく。

 

——私はありていに言って、挫折していた。

この時なんとなく文通先を聞いてたダイアモンドちゃんに「女優さんにならないの?」って聞いたのを覚えている。

 

「ならん!我は我である!」

 

その言葉が、私にとって衝撃だった。

ちょっとやそっとで倒れるはずもない強烈な自我。

 

その言葉こそが私を救った。

——どんなことがあっても、私は私だ。

 

演技しかできない私。

 

それでも私はあがき続けた。

嫌いなピーマンの歌も歌った。

振り付け付きで。

そうしたらヒットしたけど、その後フェードアウト。

 

元有名子役って何の意味もない肩書きを背負う私。

高学年になると、子役事務所はお払い箱だ。

 

本当に仕事がなくなった直後、拾い上げてくれたのが、苺プロだったんだ。

 

なんでも、拳王様と後で呼ばれることになるダイアモンドちゃんの推薦だったらしい。

そして、苺プロで再教育された後、現場に営業に行くことになった。

 

アイさんやダイアモンドちゃんのバーターとして、っていうのは後で知ったけど、私は嬉しかった。

母も再び、すこしずつ戻ってきた。

私にとっては、家族円満が一番だ。

父も、気まずそうにだけど、少しずつ戻ってきてくれている。

 

今まで勝手の違う事務所で最初は困惑してたけど、ダイアには感謝してる。

 

何であのとき、私を拾ったのか聞いた。

……そしたら。

 

「女の涙は見てられぬ!我は世界の全てを手に入れる。貴様を手に入れられないのならば、我はその程度の男よ」

 

あのとき、差し伸べてくれた手に嬉しくて感動しちゃった。

そして、遠回しに「私が欲しい」って言ってくれたのは、この先にも後にもダイアちゃんしかいない……。

この時、頭や思考が、

——ダイアモンドちゃんという巨大な恒星に焼け焦げちゃったのを感じた。

——あのときのことを思い出すと、今でも胸がドキドキする。

 

何で助けてくれなかったのか聞いたら、『哀しみを負わない人間は強くなれない』、というのが彼女のモットーらしい。

 

掌返しが手ひどくてびっくりしちゃった。

 

それって、弱り目の人間にしか手を差し出さない、ってことじゃない!

でも、移籍にあたってかなりの違約金を彼女が払ってくれたのを聞かされて、後でまたまた混乱した。

 

——それほどに彼女のファイトマネーが猛烈だったのだ。

 

でも同じくらいダイアが私のことを大事にしてくれて嬉しかった。

あとで余りにも対戦相手がいなさすぎて格闘技の方向は窄んじゃったみたいだけど。

 

そうして今度、私は苺プロの一員として、

――今度はアイという一番星に焼かれた

 

アイドル!

 

キラキラして、世界の真ん中で私を中心に世界を輝かす存在!!

私はアイドルに憧れた。

もちろん、役者の仕事もやった。

バーターとは言え、ハリウッドにもエクストラとして出させてもらったのはいい経験になった。

——むこうはよりシビアな世界だ。

 

——演技のクオリティが高いのは当然

——数字が出せる演者が求められ、

——その上で華がある役者が求められる。

 

向こうは完全ドライ。

一回切られたら即終わり。

 

こっちは持ちつ持たれつで仕事が振られてくることもある。

 

——一長一短だ

 

こうして、私も苺プロの一員となり、

——元子役の実力派役者として、

——兼バラエティタレントとして(アタシはこっちはしんどい。何故なら毎回ダイアに焼き尽くされるから。でもそんな自分も嫌いじゃないことに最近気づいた)

——独立して配給から制作までやるオリジナルフィルムメーカー、

——StrawberryFilmsの躍進に携わっていくことになる

 

役者として、アイドルとして、成長していくこと!

――世界に自分の存在を主張できることは私の誇りだ!

——この時の私は自分が『アイドル』になることを、

——まだ知らない。

前提)2024/7/18発売の本誌にて新情報が発表。

  • 無視して完結目指して更新?
  • 1,2週新情報待って完結目指して更新?
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