※ミヤコ
春うららかな桜の下で、スラリと高身長な美人で肉付きの良い女の子が、カワイイ童顔の女の子に告白されている——
ここはドラマの現場。
周りのTVマン達は静かに固唾を飲みながら演技を見守り、かなと女同士カップルを演じるダイア。
「あなたのことが……、私……大好きなんだけど……。変、かな?変だよね、女の子が女の子を好きになるなんて……」
「別に恥じることなど無い!うぬは我に必要とされている。だいたい、我が女を愛して何が悪いか!我が覇道を拒むものは、全て灰燼と帰すであろう」
「本当にいいの……!?私……、女の子なんだよ?」
「無論だっ!ただ最後に我の隣にいれば良い……」
「拳王様……!」
盛り上がったところで二人は抱きつく。
かなさんは嬉しそうに涙をカメラに見せつけながらダイアに抱きつき、ダイアはいつものように不動の大樹の如くそれを受け入れる。
「はいカーット!第2話、カット37オーケーでーす!」
「お疲れ様、ダイア、かなさん」
「お疲れ様です、ミヤコさん」
「………」
ダイアは何か不服なようだ。
「『どらま』の現場と聞いていたが、本当に我は『拳王様』の役で良いのか……」
「あら珍しい。いつもは迷いなんてなさそうなあなたが迷ってるの?」
「無論! 役にはふさわしい役というのがあろう!」
「でも拳王様って言ったら、もう日本中どこを見渡しても貴方の代役なんてできる人いないわよ?」
「ぐぬぬ……!解せぬ……!!だが我が天に立つならばやむを得ないこと……!」
ダイアを宥めるのはまだ少し怖いけれど、それもかなさんが宥めてくれた。
「いいじゃない!あなたはあなたにしか出来ない役があるんだから……。スーパーアスリートアクション女優枠なんて、日本中、古今東西見渡してもあなただけよ……」
――対して、私は……どこにでもいる少し演技ができるだけの普通の女……
落ち込みそうになっているかなさんをみて、少し慌てる様子のダイア。
「むぅ……!落ち込むでないわ!かな!貴様は巨星としての自覚を持て!」
そうして、二人のやりとりが再開すると、かなさんは少し嬉しそうにしていた。
※アクア
テレビの火曜夜8時の黄金時間帯と呼ばれる時間帯の一角を任されるに成長した我が姉、それにウチの事務所に移籍したかなの二人。
10年前のあれから、かなとのダブル出演が人気を博している。
なんでもハイパースーパーアスリート幼女として、来たエンタメ案件スポーツ案件を全てことごとく超絶にかっ飛ばしていく内容に、かながレポーターとして動員され……。
――毎回泣かされる話である。
毎回泣かされていたら飽きたり可哀想扱いされそうなものだが、それでもダイアが最後に超絶いいことを言って、励まして仲直りするので……、
――なんだかんだバラエティー枠のリアクション芸人枠を
――この二人がいい感じに収まっている
かなはリアクション要員として。
ダイアはアクション&不動のキャラ立ち要員として。
(ファン達は何故か拳王軍と名乗っており正直少し怖い)
思春期にして180cmを突破した高身長な姉は立っているだけで、低身長のかなとのギャップで、キャラ立ちしすぎているので……
――正直我が姉ながらズルいと思う。
身長差もあるし、筋肉の量も違うし、何より可愛いかなに対し、ブラウン管や液晶越しでも圧倒的武威を感じさせるダイア。
かなは毎回、最初は強気な姿勢を崩さないのに、だんだん今でいうところの『分からせ芸』として定着しつつある。
ダチョウ倶○部さんの『俺が俺が!』の鉄板芸並に、『絶対、今回はあんたに泣かされてやらないんだから!』と言いつつ最後には『うぇ〜ん!』と泣きべそを書くまでが様式美になっていた。
しかも、インターネット黎明期のブログでふたりして、遊びに行ったとか、初プリクラしてみたとか、お互いに誕生日を祝ったとか(プレゼントは当然小学生や中学生らしく微笑ましい値段のものだ)、あるものだからもはや公然の芸と言えた。
そしてツンデレなるオタク発祥のブームの謎の追い風を受けた。
ツンデレ芸は星の如く現れては消えていったが、それだけで10年近く食べてるのだから、有馬かなは大したものだ。
そして……、小学校高学年あたりから、男子にいじめられたかなを毎回ダイアが瞬間移動してきて庇うのだ。
しかも……。
「北斗無想流舞!(これは常人から見たら瞬間移動にしか見えない)我が盟友かなに手を出すやつは神が許しても我が許さぬ!」と言ってかなを守るのだ(物理)。
そして「我に相対するからには、相応の覚悟をうぬは持っているのだろうな……」と無言の圧力(物理)をかけるものだから、小学生女子にあのスパダリ感は強すぎた。
小学生男子なのに白髪を持つ奴が増えたとかなんとか聞こえてくる。
しかも姉は、お金は持っているし、下心は持たないし、同性にも異性にも相手が敬意を払えば丁寧に接してくれる。
しかも人助けのエピソードには事欠かない。
「我に1発入れることができたら100万円、被災地に寄付しよう……!我が嘘をつくかと思うか!? 否!! 我は正気!」
とテレビ番組に企画を投げつけ、全国から集まったケンカ自慢を生中継で全員コテンパンにし!!(しかも1«幼女»vs100«チンピラやヤンキー»の戦いだ!!正気の沙汰じゃない!!)
――でも1時間枠のはずが……
――僅か3分で終わった
そして集まった人数100人×100万円の1億円を個人で被災地に寄付していた。
……とても小学生の器じゃない。
空虚となった時間を埋めるCMだけが57分間流れ続けていたのはもはや伝説となり、MyTubeでは定期的に無断転載され毎回3000万再生を突破している。
そしてさぞや恐ろしい存在かと思いきや、見た目が凛々しく相手が丁寧であるならば優しいのだ。
小学生女子には輝かしい王子様に見えることだろう。
もちろん、アイの遺伝子を含んだ三つ子なのだから、当然なのだが。
――ここはアイとダイアのファンとして俺の鼻も高い
そうして、二人はコンビ芸人のようにダブルでエンタメ作品への出演が決まる。
なんと『エクスペントリプルズ』という歴代のハリウッドアクションスターが一堂に会す作品の!
――初めての女アクションヒーローという役だ!
それはもちろんダイアの暗殺拳の達人という設定が功を成したらしい。
――周りが濃い顔で銃をぶっ放している中、
――一人だけ流麗な北斗神拳を美しく披露するものだから、
――余計に一人だけ際立って見える。
もちろん映画は全世界で大ヒットした上に、若くしてスタント(代役)無しの新世代ヒロインに世界中が熱狂した!!
余談だが『Japanese ninja』としてWWWWAなるプロレスも打診されたが、それは断ったとか。
なんでも鏑木Pはエンタメアクション女優としての星野ダイアモンドを使いたがり、バーターとしてだが確実に出演作を増やし、エクスベントリプルズに出演し、毎回ちょっとだが、ハリウッドで役をもらえるようになった有馬かな。
かなは分かりやすいが、姉もなんだか少し嬉しそうだ。
※ルビー
「ねえ、拳王様……、私と付き合って、みみみ、みませんか……?」
と女の子に告白される我が姉ダイア。
屋上で女の子に呼び出され、告白されている……!
いつも見てる姉のはずなのに、私もつられてドキドキしてしまう!!
なんでこんなことに……!
ただ、一緒に帰ろうと呼びに来ただけなのに……!
彼女がどこかへ行くものだから気になってついてきてしまった……!
「よいのか。我は女だぞ。ゆきの子を産むこともできなければ、お前の家を継ぐことも、継がせることもできぬ」
「それでも……、私はいいんです。私、2番目……いえ、何番目の彼女でもいいので……!」
ひぇぇぇぇぇ!
我が姉、罪な女すぎる……!
母が刺されそうになってから10年経ち、私たち3人はスクスクと成長していた。
ゴローセンセのアクアは美男子へ、私は自分で言うのもアレだけど、アイの血を継いだ美少女へ!
そしてダイアモンドだけは何故か美少女系ハイパーアスリートアクション女優へ……。
まるで最盛期のアンジェリーナジ●リーだ……!
――スパダリ感
――圧倒的存在感
――カリスマ性
――そして本人が言うには愛を知った故の善性
とても中三の女の子が出していいオーラ、雰囲気じゃない。
同級生の女の子達はメロメロだし、男子達は何故か狂気の目で崇め奉っている。
体育祭はもちろんアンカーだし、ビリだったのに最後にごぼう抜きしたのは他クラスながら私も感動した。
我が姉……!
――罪なほどモテすぎるっ!!!!
一方で私たちにはもう一つの問題が迫っていた。
――高校受験だ!
※アクア
結局俺はルビーと同じ高校に行くことにした。
ダイアが世界最強な時点で、ルビーの安全は確保されたようなものだが、それでも目が離せない時があるだろう。
それに、俺が別の高校を考えていたころ……
「お兄ちゃんもっ!同じ高校にするのっ!!! 離れるのぜ〜〜〜〜〜ったいに嫌なんだから!!」
とルビーに抱きつかれてしまい……。
前世の記憶の俺も振り解くことができず、結局同じ高校にしてしまった。
アイは相変わらずアイドルをやっている。
31というアイドルでは限界ギリギリの年齢。
というか限界を突破している……!
むしろアイドルの寿命を伸ばす方向で成長していた。
姉のダイアの秘術のおかげか、今でも20に見え、B小町は時空が狂ってると度々ネットで話題になっているようだ。
姉のおかげか、それとも皆見た目の若さがあるか落ち着いてきたのか、ずっと売れ続けているせいか、グループ仲は悪くなっていないようだ。
――そうして、僕ら兄妹は同じ高校に進学した
姉はまだ迷っている様子だが……?
※有馬かな
ダイアが同性に告白されまくってる。
同じ事務所のルビーからそれを聞いた時は本当に??
と半信半疑だったけど、……バレンタインの日はホールケーキまで作って家に遊びにくる子がいて驚いた。
アタシとダイアはいつも遊んでいるから、自宅の場所を互いに知っている。
お母さんは芸能界の事務所の社長さん(苺プロの斎藤社長)と知り合えていつも嬉しそうにしている。
(社長もそれを知って、母と付かず離れずやってくれているのはありがたい)
家族仲は悪くない……、はずだ。
こういうのって人とは比べられないモノだけど。
ダイアの家の前の見知らぬ女の子のひとり(50人いた最後尾)に話しかけてみると、
「キャー!!!有馬かなちゃん!!!かわいい〜〜!!!」
「ありがとうございます(営業スマイル)」
って見知らぬ人とのいつものやり取りの後、ちょっと本命まじりの雑談をしてみる。
私も国民的タレントとしてダイアと共に有名になれて少し嬉しい……!
「私もダイアに用があってお家に来たんだけど、そのおっきい箱、どうしたの?」
「今日、バレンタインじゃないですか? たまたま……、ケーキ作ってみようと思って……余ったから届けにきちゃったんです……(照れ)」
照れ顔をしながら、ケーキをちらっと見せてくれたけれど、
――素人目の私からみても!!
――どう見ても余ってない!!
3段重ねのホールのショートケーキで、丁寧にデコレーションされてて、苺の向きにも拘ったホールケーキ!!
――どう見ても嘘!!
――本命中の本命に送る!!
――超絶完成度のケーキ。!!
中学生とはいえ、将来はパティシエになります!って決意してるレベルの子のケーキだ……!
「ここ数年、毎年贈ってるんだけどダイアちゃん、その場でパクッと一息で食べてくれるから、こっちも作り甲斐があって……。てへっ……」
自慢するように見せつけてくる彼女に私は目が点になる。
――同時に、胸がモヤモヤしてきた。
なんなんだろう……、この気持ち……!
そうして、バレンタインの行列50人を1日かけてダイアは捌き切った後、私たちは事務所に向かった。
※有馬かな
「アンタ、高校はどこか決めてるの?」
「弟妹と相談しているが、未だ決めておらぬ。それがどうかしたのか?」
「き、決めてないんだったら……あ、あなた、私のところにしなさいよね」
(思わず、どもっちゃった!変に思われないかしら……!ってか私もいつも以上に意識しすぎよ!!!!)
顔が紅潮しているのがわかる。
普段より体感温度が熱い。
なぜかわからないが恥ずかしい……!
「うぬがそういうのなら、そうしよう」
「えっ!?本当にいいの?」
「もとより候補に上がっていた。かなの通う学校以外、この辺りだと芸能科がおらぬ。我は引っ張りだこゆえ、都合が合わなければ通信制か、高校に行かなければ良いと思っていた」
「〜〜〜〜っ!」
思わず嬉しくて、飛び上がりそうになってしまったけれど、自分の進路のことで微動だにしないあたりはやっぱりダイアだった。
※有馬かな
桜舞う4月、事務所の後輩たちは皆アタシと同じ高校に入学していた。
「あなた達、入学おめでとう!」
「ありがとう、重曹先輩!」
「ありがとう」
「うむ!」
ルビー、アクア、ダイアからそれぞれ返事をもらう。
ルビーもアクアも見知った顔だ。
だって……、私……がいつも遊びに行くの、斎藤社長のお家だし。
アイさんが何故かいつも遊びに来るけど……。
その時だけ何故かアイさんもルビーもアクアも3人揃ってデレデレしてる。
不動の大樹のような巨大な存在感を放つダイアすらもソワソワしているのは余談だ。
「ところで重曹先輩!話があるんだけど!」
「何よルビー……、改まって。いつも破天荒なアンタが改まっちゃうと、こっちが心配になるわ」
「破天荒なのはお姉ちゃんだけだよ!私は常識人!」
ムスー!と怒ったアピールをするルビーはかわいい。
ミヤコさんの美貌を引いているといえば納得だけど、どこか別の血が混ざってないかしら?
――ミヤコさん……、逆に托卵されたのかしら?
と、ありもしない考えが湧き、頭から振り払う。
「我からの頼みでもある。かな!うぬの力を借りたいのだ」
「え……、ダイアも!?」
「そんな驚くことか。我は拳王と言えど、人のひとり。盟友に頼むにあたって、道理を弁えておらぬとは失礼千万」
ダイアからも改まってとはなんだろう……。
心配になるが……。
――動揺した頭では聞ける気がしないので
――改めて放課後に聞くことにした
※ルビー
「有馬かなさん、私と一緒にアイドルやりませんか!?」
「………は?」
思わず出てしまった言葉がそれだった。
(アイドル……。アイドルねえ……。)
昔の私と違い、もっと百合営業も交えながら、ダイアと公然とイチャイチャできて、他を差し置くことができるのは胸がときめく。
今じゃ私とダイアがセットでバラエティタレントなのは公然の事実だ。
ダイアばかり売れるのは悔しいけど――
(でも……現状でも結構売れているのよねぇ……。ありがたいことに)
ダイアばかり呼ばれがちなアクションシーンではあるが、それでも私がセットで呼ばれることがある。
その時もリアクション芸を求められるし、私は求められた演技やリアクションをしてきた。
女優だから、リアクション芸ができなくもない分、親しみのこもったお手紙をファンの人からもらうことがある。
ファンの皆さんからのお手紙は目を通すたびに嬉しくなる。
――本当にっ!心が弾む!!
そんな、バラエティタレント兼女優みたいになってる私が……、純真無垢なアイドルになることはできるんだろうか?
捻くれてるわけだし……。
考えてみたら、私が一個絶対に外せない条件があることに思い当たった。
「一個だけ条件を出させて頂戴」
「条件?いいよ!何でも言って、先輩!」
「アンタねぇ……、私が燕の子安貝とか言ったらどうするつもりだったのよ……」
「ツバメの……何?」
「アンタ、もっと勉強しなさい。高校の古文でやるでしょうけど、竹取物語の一節よ」
ふぅ……、とため息をついて、一息整える。
「私の条件は一個だけよ……。ダイアもメンバーに入れること」
「かまわぬ!!」
即答するダイアに本気で驚いちゃった!
「……………………え? ダイア、あんたアイドル志望だったの??」
「うむ!些事により口外を斎藤より禁じられておるが、我は元々アイドル志望なり!」
そう言って、私にキレッキレのB小町のダンスを見せるダイア。
あまりのキレキレっぷりに私は逆に驚いてしまった。
……私はここまで踊れるかしら?
引き立て役になるだけじゃなくて……?
でも比較対象が違いすぎる。
すでに国がスーパーアスリートとして、どのスポーツ団体もオリンピック候補生として取り合っている(もうこの時点でおかしい)あのダイアだ!!
「ならいいじゃない!これでB小町フォーシーズンズ、ここに結成だね!」
「え!? 苺プロに新しいアイドル企画があったの!?」
逆に私も驚いた。苺プロにもまだ新しいアイドルプロジェクトがあったなんて……。
確かにB小町は売れに売れている。
30代となっても、20代前半かと思うくらいメンバー皆若々しいし、全体が売れているおかげかトゲトゲしくない。
一回、同じ事務所なので練習を拝見する機会があったが、みんなどこか心に余裕がある感じがする。
そして事務所はB小町が売れた分、余裕もある。
いまはミヤコさん主導でYouTuberを多く抱えつつある凖大手事務所だ。
「……Four seasonsってことはメンバー4人いるのよね? あとひとりは誰なの?」
「先輩にはまだ教えられません。これも守秘義務だからね!」
「ぐぬぬ……」
芸能界入りたてなのに(まだ入れるかどうか決まったわけでもない。でも配信者はしているらしい……)、ドヤ顔するルビーはちょっと腹が立ったがそれはいつものことだ。
「いいわよ!やるわよ!」
「え、本当の本当にいいの?」
「…………だってダイアとずっといられるわけだし……」
「先輩、何も聞こえなかったんだけどもう一回言ってくれない??」
「あーあーあー!何も言ってますぇ〜ん!!」
アタシの煽りに泣き、アクアに抱きつくいつものルビー。
ここまでは定番の流れだったが……。
――アタシはダイアと公然と百合営業ができることに嬉しくなっていた。
※アクア
――なんかうちのクラスだけ雰囲気が違う……
そう思ったのは、選択教室でできた友人に会いに、他クラスに遊びに行ったときだった。
うちのクラスでは、男どもは何かあると血走った目で、
――拳王様!拳王様!拳王様、バンザーイ!
と叫ぶし、女子に至っては……。
――ダイアちゃん、今度私と遊びに行かない?
――ダイアちゃん……、私と手繋いでよ……ダメ?
と何かあるたびに女子はダイアとイチャつきたがる。
しかもダイアとの順番を巡って喧嘩している。
グループ分けやペアを作る時なんかもっとひどい。
前世の高校を思うと、男子も何故か色気はないがベタベタしてた時期があったと思うが……。
そうではない。
――ダイアのそれは異常だ
担任すらも……、
「こんな学級初めてだわ……」
と嘆いている。
「俺は10回目です」
「……過去の先生たちはどうしてたの?」
「最初は何とかしようとしますが、みんな匙を投げてました。大丈夫です、そのうちダイアが順番整理しますよ」
蜘蛛の糸を垂らされた罪人のように、先生は俺を見るが、現実は無常だった。
そうして、先生もダイア周辺の管理はダイアに任せることになる。
※有馬かな
「ダイア、遊びに来たわよ〜!!」
「うむぅ!待っていたぞ、かな!!」
私が来ると、皆を丁寧に押し退けて立ち上がるダイア。
その身長はゆうに190cmを超え、とてもルビーやアクアと同じ遺伝子が入っているとは思えない程大柄だ。
ロングヘアーの金髪も、ラフだがポニーテールっぽくまとめられ、動くたびに揺れ優美で美しい。
それがダイアの所作をさらに引き立てている。
「やっぱりダイかな派? それともかなダイ派?」
「両方に決まってるわよ!!!!!」
「にしても本物の有馬かなさんってかわいいんだね!!!」
「そりゃあ当然よ!公認カップルとしてわざわざ1シーズンドラマが組まれるぐらいだもの!!!!」
小声(でも私に聞こえているぐらいデカい声)で、私たちのことを話す熱量の凄いダイアの取り巻きの子たちとは別に、男子たちは男子たちで既に異常だった。
「オラァ!かな様とダイア様の道を開けろぉ!」
「かな様、ダイア様、いってらっしゃいませ!」
「ブレザーの埃、とっておきました!」
「うむ……。貴様らに感謝を。ウハァ!では参るぞ、我が盟友、有馬かなよ!!」
「「「「「行ってらっしゃいませ!!!!」」」」
小学校高学年ぐらいから、認知度が上がるにつれ、クラスが何故か毎回こうなっちゃうことに驚いたが、ダイアがいるとダイア中心にクラスが何故か回っている。
そして私も何故か同じ待遇を受けている。
…………認知されているのは芸能人として気持ちがいい!!
――でも、私が欲しているのはこうじゃないのよね………。
この時、私はまだ自分の気持ちに気づいていないのだった。
☆
ある日、私はダイアの取り巻きの女の子に話しかけられた。
「あの……!有馬かなさん!………かなさんって、本当に何も、ダイアちゃんと何もないんですか!?」
「……………は?」
「だって二人で一緒にドラマまで出て、二人はドラマで告白してて……、番組のインスタもフォローしてますけど、度々距離感近いですよね!?本当に何もないんですか!?」
「あるかないかで言えば何もないわよ……。お泊まりとか、一緒にしたことあるし、同じベッドで寝たこともあるけど、別にあなたが期待しているようなことは何も無かったわ……」
――女の子同士で何を期待しているんだろう?
って私も思っているけど、同時にダイアへの感情を理解できず、自分にがっかりしている自分もいる。
混乱、カオスの極みだ。
――私はダイアにどういう感情を抱いているのか――
全く自分でもわかっていない。
すると、ダイアに目を輝かせ、血走っている女の子から矢継ぎはやに質問される。
「じゃ、じゃあ……!?私が2番目の彼女じゃなくて、1番目の彼女になったとしても怒らない……、ってことでいいんですよね!?!?」
「………………………ハ!?」
「いやぁったぁ〜〜〜〜〜っ!!!!!言質ゲットォ〜〜〜〜っ!!!!!」
「いや別に……、ダイアのことが…………、嫌いなわけじゃ………ないし…………」
私の一言に喜びまくり、次の答えを聞いていない彼女。
私の小声で答えた返答も聞いていないようだった。
☆
「はぁ……。アタシ、何やってるんだろ……」
昨日のダイアのクラスメイトの質問以降、私は上の空だった。
おまけに学校を休んでしまった。
こんなの、まるで失恋した女の子みたいだ。
…………………我ながら言っていて妙だと思った。
確かに、ずっと、ず〜〜〜〜〜っと!!
この10年間ダイアに焼き尽くされてきた。
もちろん演技で泣く時もあったが、大体はガチで泣いていた気がする。
その時に決まっていいことをダイアがいうものだから、毎回こっちもウルウルしてた。
半分、リアクション芸兼演技だったけど、半分以上に本当の気持ちで抱きついてた。
私は彼女のこと、本当はどう思ってるんだろう?
――同業の友人?
――尊敬する後輩?
――リアクションタレントの相方?
――古馴染みの友人?
――すごく仲のいい友達?
――それともいなかった父親の代わり?
どれもしっくりこない。
最後だけは、少ししっくり来てしまった。
私もどうかしてると思う。
――それとも……、本当に……、私……、
「あーあ…………。ほんと私、何やってるんだろ…………」
私がすでに枯れてしまった観葉植物にボヤいていると――
「有馬かなっ!!!」
「ひぇっ!!!!!」
強引に入ってくるダイア。
あまりの【恐怖】と【圧】に心臓が止まるかと思ったっ!!!!
「な、なんで、急に……!」
「うぬは我とアイドルをやるのだ!」
「なんでアンタはそこまで強引なのよ!」
彼女の手には、ドアノブがあり、扉を板ごと持っていた。
――彼女の怪力はもはや見慣れてしまっていて、それが普通に見える。
――いやそれもおかしいのだが……
「うぬは巨大な恒星! 我と相対せるのはうぬしかおらぬ!!! それにようやく斎藤から許可がでた」
頭の中で合点がいく。
許可=二代目B小町、つまりB小町 Four seasons!!
今まで若すぎるからと許可が出ていなかったアイドル活動。
おそらくアイさんの事件の影響があったのだろう。
だから、今までアイドル活動が遅れていたんだ。
……スポーツが強すぎたり、我が道を行きすぎるので忘れてたわ。
――この子、本当はアイドル志望だったってこと!!
「かな!この手を掴め!うぬには才がある!恒星と成り世を明るく照らす才が!」
ヌッスヌッスと力強く床を踏み締めて歩いてくる彼女。
――やっぱり彼女には敵わないわね……
当たり前の事実を確認すると同じく、
――彼女の手を取る。
とてもアイドル志望とは思えないほど、筋肉質なのに、しなやかでたおやかな手を。
「人気女優の私をこんなに呼びつけるなんて、あなただけなんだから。責任とってよね」
「責任と言われたら取る他あるまい。我は拳王故に」
「……ふふっ。そんなブレないあなたが好きなんだから」
私はちゅっ、と頬に
――友人にするものなのか、
――恋人にするものなのか分からない
キスを彼女に贈る。
だが、いつもは巌のように微動だにしないダイアも、私のキスには動揺してくれたようだ。
――それが純粋に嬉しい。
「どうしたのだ、かな」
「なんでもない」
――これからも私を、
――あなたの巨大な恒星で、
――焼き尽くしてよね
☆
※有馬かな
ついに苺プロからアイドルが発表された。
――世間はざわついた
苺プロは元々小規模なタレント事務所だったのだ。
これを大きくしたのはB小町で、彼女らはアイドルグループ。
ならばアイドルをやれば良い、と普通の人は思うのだけれど。
――斎藤社長はあえて手を広げなかったのだ。
余力を蓄えていたのだと思う。
それに新時代の馬の目を射抜いていた。
VtuberやYoutuberグループを結成させ、それを次々とアイドル化させていた。
そしてB小町引退の付近に合わせて、我々をぶつけるのだという。
――場所は東京ドーム
B小町が幾度も訪れ、
――もはやホームと化している化け物級の広さの会場
トップアーティストや売れっ子中の売れっ子しか立つのを許されない場所。
そこに……!初舞台で私たちは立つのだ!!
※有馬かな
「大丈夫?ルビーもダイアもかなちゃんも緊張してない?」
「無論!」
「もちろん!」
「はい、大丈夫です」
ミヤコさんが気にかけてくれてありがたい。
最初はバックダンサーとして登場する私たちだったが、B小町メンバーのソロ曲の歌唱の後、B小町FourSeasonsの存在が発表され、そのまま一曲やる流れだ。
この演出は炎上するか不安だった。
だって、アイドルのライブに来たと思ったら、別のアイドルの曲を聞かされるんだもの。
一応、出演者はB小町&B小町FourSeasonsとなっていたから(細かい文字でだけど)、目端が効くアイドルオタクは気づいていただろう。
どこかで出てくるだろうと。
「大体は前座なのに、本当に本番中に板の上に出ていっちゃって大丈夫なんですか、ミヤコさん」
「あら、大丈夫よ。確かにアイを中心に熱狂的なファンは多いけど、皆アイドルが好きでその妹分ユニットの一曲程度だから、全然大丈夫なはずよ。それに、私たちを信じて。……私たちはずっとB小町を含めアイドル業界を最前線で駆け抜けてきた」
「そりゃあ、事務所の実力は信じてますけど……」
だからこそ、私とダイアもハリウッドに出演できたり、バラエティ番組に出演できたりしてるのだ。
いくら今日はバックダンサーとして最初から出演するとはいえ、見知らぬ曲で一曲やるのは心配なのだ。
――でも結果は杞憂だった
――全てをダイアが持っていったのだ!!!
ボーカルは微妙だとしても圧倒的なダンス力。
――ダンス力で観客を跪かせるアイドルなんて初めてみた!!
――全ては伝説となった
わずか一曲だけだったけど、まばらだったペンライトは、
——全てダイア担当カラーの赤紫が持っていった!!!
前にB小町のソロ曲があったが、アイ以外は全てダイアが前座として平げたと言っても過言ではない。
メンバーは皆20代後半や30代となり、それでもダイアの施術(どうやらダイアの拳法の奥義のひとつを使って肉体を若返らせているらしい)によって、20歳に見えるけれども……!
それでもダイアは全てを持っていった!
気づいたら会場は(ダイアのファンが誰かいたのだろう)、「「「拳王様!」」」コールで一色となり、最後はダイアのカラーである赤紫色のサイリウムに染まった。
唯一、ルビーの色でオタ芸を離れた関係者席でやっていたのは、どうみてもアクアだったが……、必死に妹であるルビーを推していたようだ。
――関係者席でオタ芸なんてアンタ浮きすぎてるわよ!
ルビーは曲が終わると板の上で感極まって泣いているし、それを私とダイアが抱きしめると、会場は自然な拍手に包まれた。
パチパチと少しずつ大音量になっていく拍手。
その中に、優しさ、労り、良いものを見せてくれたお礼の感謝の意味を感じた。
「あんた達……!最高だったわ!これから私たちがあなた達のことを引っ張っていくわ!辛いことがあったら、私たちのライブに来て元気出して!!!」
「うむ!貴様ら、我の歌と舞を見にくるのだ!!さすれば意気地など無限に湧いてこよう!」
ダイアの言っていることは無茶苦茶だったが、これが一番ウケている。
――さすがテレビに引っ張りだこのスーパーアスリート
オリンピック出場下限は14歳だが、今までスポーツ大会には出ていたのに、オリンピックはどこからも断っているのが謎だった。
やっぱりアイさんから離れたくないのだろうか?
「そして〜〜!!最後に重大発表があります!!!」
さっきまで泣いていたルビーは更なる爆弾発言を会場に投下する。
「B小町Four Seasonsは新たなる仲間を募集します!!!」
※アクア
あれから新世代B小町とも言えるB小町Fourseasonsにあらゆる女性が殺到した。
出願条件は満25歳以下の女性。
そこにひとつの名前があることに僕は驚いた。
「MEMちょ……!?」
会社に持ち込まれた企画書の恋愛リアリティショーで、名前を見たことがあったからだ……!
※有馬かな
「みなさん初めまして。本日は最終面接までご足労いただきありがとうございます。面接を担当させていただく、弊社の社長、斎藤壱護と副社長のミヤコです。本日はよろしくお願いいたします」
「「「よろしくお願いします!!」」」
マネージャーのミヤコさんは副社長だったんだ……。
そんなことはさておき、面接が始まった。
Fourseasonsの面々は監視カメラでこっそり覗かせてもらっている。
さすがリアルで伝説を駆け抜けるB小町の後継グループの最終オーディション。
皆顔面偏差値が高すぎる……!
歌をやっても上手い、ダンスをやらせても上手い、何かエピソードトークをさせても面白い。
こんな中で私がやっていけるのか、って思ったら……。
ひとりだけツノの生えた女の子がいた。
――ツノ?
………
……
…
後で知ったのだけれど、MEMちょさんというらしい。
なんでもインスタフォロワーも多く、人気配信者なのだとか。
――――――
あれから私たちは最終合格者となったMEMちょさんを招き入れいると……
――すぐさま意気投合してしまった。
「うぅ〜〜〜〜………! MEMちょさんも若さで泣かされていたのね……!子役事務所も酷くて……!!!」
「MEMちょでいいです、かな先輩。私も、こんないい子たちがいるグループに私も入れて嬉しいです〜〜〜……!!」
「かなでいいわよ、MEMちょ」
「かなちゃん〜〜……!」
「MEMちょ、先輩、お姉ちゃん!この四人で頑張っていこうね!! ………という訳で、お姉ちゃん!! 例のやつお願い!!」
相変わらずダイアはヌゥンと立ち上がると、謎の秘術をMEMちょに放った。
「ぬぅん!」
「ひでぶっ!!」
アイドルらしくないグロい声を上げながら、床に倒れ込むMEMちょ。
「ちょっと……、何する…………の………?」
最初は怒っていたが、体の様子がなんだかおかしいことに気づくと、すぐさま鏡の前に駆け寄る。
「あれ、お肌が赤ちゃん肌に…!?肩こりも……!あれ、あれ!?」
突然の若返りに喜び勇み込むMEMちょ。
わかる。
私も最初受けた時、あまりにも衝撃だった。
「時代はアンチエイジングじゃなくて、リバースエイジングだよ! MEMちょ!!」
「なんでダイアじゃなくて妹のアンタが誇らしそうなのよ……」
「…………」
ダイアは相変わらず仏頂面だが……。
突如社長がやってきた。
「お疲れ様です、社長」
「おう、お疲れ。ダイア、仕事の話があるんだが……、いいか?」
「無論」
いつもの流れでエンターテイメント番組か、スポーツ番組の依頼かと思ったら――
――衝撃情報が飛び込んできた
「ダイア、恋愛リアリティーショーに飛び込んでみないか?」
評価、待ってます!
前提)2024/7/18発売の本誌にて新情報が発表。
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無視して完結目指して更新?
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1,2週新情報待って完結目指して更新?