TCGアニメの世界で硬派なドラゴン使いになりたいのに、美少女カードにしか縁がない   作:織葉 黎旺

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アンケートありがとうございました!とりあえずルールとカード情報を冒頭に入れておきました。たぶん適宜追加したり、気が向いたらキャラごとに整理したりします。引き続きよろしくお願いします。


第十二話「妾の主か?」

 

 

「くぅ……」

 

「ふわぁ……」

 

(せめ)ぇ……」

 

 寝返りも打てない状態で必死に息継ぎをしながら、俺は嘆息した。

 

 稀にうちの子たちは、ベッドに潜り込んでくることがある。しかし一人来ると対抗心からか芋づる式に全員来るので、結果的に狭狭の大惨事になる。この歳にしては大きめのベッドだが、複数人が入ることは想定されていない。

 

 よりにもよって最悪なのは、夏場はリザに寄って怒られ、冬場はフェルに寄って怒られることである。しょうがないじゃん、寒かったり暑かったりするんだから。無意識のうちにもう片方から距離を取るのも許してくれ。今みたいに春とか、秋とかならまだ丁度いい気温だからいいが。いやむしろ、押し退けづらくて面倒臭いかも。

 

 

「ん……?」

 

 絡んでくる腕と足を外側に払いながら寝返りを打てば、枕元が何やら光っているのが見えた。

 明らかに、デッキケースが発光している。これは一体と起き上がると同時に、神々しく光る()()()()が顕現した。

 

『貴殿が、妾のマスターか?』

 

「そうだけど……!?」

 

 暗闇でも発光する、類まれなる光としなやかで美しい体を持つ、細身の黄龍。

 好みすぎる、美しい上に格好いいデザイン。しかしどこか既視感がある声と、口振り。

 少しして、俺はすべてを察した。

 

「もしかして、《アンフィスバエナ》?」

 

『そうですけど、何か?』

 

 三人目の相棒は──記憶喪失らしかった。

 

 

 *

 

 

「ということで、《アンフィスバエナ》ちゃんが戻ってきました。記憶は戻ってないけど」

 

『ちゃん付けなど馴れ馴れしく呼ぶな』

 

「わっ……」

 

「そんな感じだったのか……」

 

 二龍の目が心なしか生あたたかい。まあ、それもしょうがないか。

 居心地が悪そうな《アンフィスバエナ》は、『ふん、このような者共が同輩か? こんなので本当に大丈夫なのか?』と皮肉を言う。

 それは奇しくも、俺のトラウマと被っていて。

 

「そ、それは……」

 

「大丈夫に決まってますよ」

 

「なんたって、過去のお主のお墨付きじゃからな?」

 

『身に覚えがない話をしないで頂戴!』

 

 思わず言い淀んだが、二龍のアシストでどうにか事なきを得た。一度大きく深呼吸してから、言葉を続ける。

 

「……そうだよな。記憶がないのに、申し訳ない。ただ仮にも俺たちは一緒に戦ってきた仲間だったんだよ。色々辛いこともあると思うけど、よければ少し、一緒にいてくれないか? 勿論その間に何かあったら、遠慮なく見限ってくれていいから」

 

『ふん、下手に出ようが妾の態度は変わらんぞ? 勿論そのつもりよ!』

 

 

 

 *

 

 

 ある日の夕方。

 

「旦那様、今日の夕餉は何がよろしいですか?」

 

「そうだな、フェルは何がいい?」

 

「肉じゃ!」

 

『…………』

 

「わかりました。では酢豚ですね」

 

「酸っぱいの嫌じゃ!」

 

「仕方がないですね。甘めに作って差し上げます」

 

 今日はリザが晩ご飯の担当なので、俺たちはスーパーへと買い出しに来ていた。わいわいと騒ぎながら、混み合いだしたスーパーを進む。

 

『…………』

 

「あー……一緒にいてくれとは言ったけど、無理してついてこなくても大丈夫だぞ?」

 

『何度も言っているでしょう。記憶がないとはいえ、仮にも妾が心を許していた場所なら、それを見定める義務がある』

 

()()状態の澄ました仏頂面で、《アンフィスバエナ》はそう言った。

 

 あれから数日。コイツは、この調子でひたすらついてきていた。俺たちも今までの距離感がリセットされている以上イマイチ距離感が掴めなくて、少しだけ気まずさがある。たぶんだけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。何故なら、俺たちと出会ったときの彼女は既に──

 

「あ、そうだ。リザ、夕飯はオムライスにしてもらってもいいか?」

 

「ああ、成程。勿論構いませんわ」

 

『なんだ、その食べ物は』

 

「まあ、食べればわかるよ」

 

 卵玉葱鶏肉と足りてなさそうな調味料を買い足して、帰宅。手際よく調理を進め、オムライスが完成した。

 

『おお……』

 

 さしもの《アンフィスバエナ》も感嘆の息を漏らした。

 皿の上では、ラグビーボールみたいな卵がチキンライスの上にでかでかと鎮座している。その身にナイフを入れれば、中からとろとろの卵が現れ、ドレスのようにライスを包む。

 和食の方が得意なリザだが、いくつかの洋食はよく作らされるので慣れたのだ。

 

「さあ、召し上がれ」

 

「いただきます」

 

「いただくっ!」

 

『……いただきます』

 

 口に入れた瞬間の、とろっとした卵の感触が心地良い。チキンライスも下味がバッチリだし、卵も俺好みに味濃いめで作ってもらっているおかげで、ケチャップなどをかけなくても十分美味しい。

 

「流石、美味しいよ」

 

「認めてやるぞ!」

 

「はいはい、有り難うございます」

 

 いつものやりとりをしつつ、ちらりと視線を奴の方にやる。

 彼女は、小さな手でスプーンを握り、小さく一口を口に運んだ。

 

『…………』

 

「どうした?」

 

『……美味、かも』

 

「だろ?」

 

「あら、それはよかったです」

 

 ほほほとお上品ながらも嬉しそうに、リザが笑った。そして、奴はどこか居心地悪そうにしつつも、ばくばくと山を崩していく。

 

『……なんだか、懐かしい味かも』

 

「まあ、お前が好きだった料理だからな」

 

 そう言うと、奴は目をぱちくりと瞬かせて。

 

『そうなのね……』

 

 と、困惑気味に言った。そりゃあそうだよな、悪い。

 

 

「まあ、美味かったならよかったよ。たしか、まだあるよな?」

 

「ええ、多めに作ってあります」

 

「おかわり!」

 

「貴方のはちゃんと玉葱を多めにしてあげますからね」

 

「嫌じゃああああ!!!」

 

『……なら……その分のタマネギ、貰おうか』

 

「おお!! 利害の一致じゃあ!」

 

「貴方のはただの食わず嫌いですが……まあいいでしょう」

 

 渋々リザはチキンライスを盛りつけ、卵を作り始めた。賑やかなその様子に思わず苦笑しつつ、おかわりのタイミングを逃したことに気づいて、少し首を倒した。

 

 

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