TCGアニメの世界で硬派なドラゴン使いになりたいのに、美少女カードにしか縁がない   作:織葉 黎旺

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第十五話「そんな気はしてたぜ」

 

 

 

「ということで、アンちゃんの記憶が戻りました」

 

「いぇーい、ただいま」

 

「ちゃん付けで馴れ馴れしく呼んでるけどいいのか?」

 

「このような者共が同輩ですみませんね」

 

「ちょ、やめて! この前のは全部忘れて!!」

 

 顔を赤くして、アンは身振り手振りで否定した。

 あの後。なんだかんだで一時間くらい寝てしまって、限界を迎えたアンに叩き起こされて、家に帰って虎次おじさんに軽い報告だけして、そして今に至る。

 二人ともやはり記憶を失っている間の彼女の行動に思うところはあったらしく、しっかり意趣返ししている。

 

「何はともあれ、記憶が戻ってよかったぜ」

 

「ね! もし戻んなかったら……わらわは永遠にあの黒歴史モードで、キャラ変のタイミングも作れずに生きていく羽目に……」

 

「まあ……アレからコレへの移行って、高校デビューで思い切る奴くらい振り幅あるもんな……」

 

「小学生が何を言ってるのじゃ……」

 

 絶対いるんだから。なんか不自然なヘアセットして、初対面でもわかるくらいの空元気でクラス中にグイグイ行く変な奴。

 

「お固くて陰湿そうな自分が嫌で、そのキャラに変えたということですか?」

 

「陰湿は余計だけど、まあそんな感じ。この前言ったと思うけどさ、わらわ、ずっと友達とかいなかったの。立場のせいだとも思ったけど、何より口調と、それに引っ張られた性格が悪いなーって。だから軽くした!」

 

「そんなダイエットみたいなことある?」

 

 実際、染み付いたものを捨てるっていうのは相当難しい。元が真面目な性格だし、ひたむきに努力したのだろう。

 

「NyanNyamとか読んで勉強した!」

 

「え、雑誌知識!? アナザーにもあんの!?」

 

「あんよ。サブスクで読めるし」

 

「サブスクって世界越えても通じるんだ……」

 

「だから言葉遣いがビミョーに古いんじゃな……」

 

「古くないでしょーが!!」

 

 ドラゴンの年齢スパンが人間のソレとは大きく違うことを知っているので、俺は何も言わない。畏まりたくないが故に、彼女たちの年齢も明確に聞いていないレベルである。

 

「うんうん、やっぱり女三人寄ると姦しくていいねえ」

 

「普通に喧しいだろ」

 

「あ! あるじひどい、わらわたちのことはおじピくらいの器量で受け止めないと!」

 

 食卓に皿を並べながら、うんうんと虎次おじさんは頷いていた。アンタのは器がデカいっていうか、底に穴が空いてるだけだよ。

 

「旦那様はお淑やかな方がよろしいんですものね? そう、わたくしのように……」

 

「お淑やかな女って、そんなグイグイいくもんじゃないじゃろ……あっ店長、もう食べてもいいか!?」

 

「色気より食い気過ぎだろ」

 

「リザもフェルも相変わらずだね〜、まあわらわも、久々のおじピメシ楽しみだけど」

 

 夜ご飯はハンバーグだった。

 ドラゴンの生態には明るくないが、少なくともうちの子たちは肉が好きなので、ハンバーグはウケがいいのだ。

 

「まてまて、いまタレかけるんだから。フェルがトマトソースで、リザがおろしポン酢で、アンがホワイトソースな」

 

「「「わーい!」」」

 

 各々のハンバーグに、ストックしてあったソースがかけられていく。好みがバラバラなので、常に複数のタレがストックされているのだ。

 

「悪いねおじさん、いつもたくさん用意してもらって」

 

「このくらいはいいさ。どちらかといえば、あることに味を占めて、毎回何かけるか分からん甥っ子の方が困るなぁ?」

 

「う……どれも美味いから選べないんだもん」

 

「で、今日は何にするんだ?」

 

「じゃあ……バジルソースで」

 

「そんな気はしてたぜ」

 

 卓上に、四色のハンバーグが並んだ。もう待ちきれないと、手を合わせる音が隣から聞こえて、苦笑しつつそれに倣う。

 

「「「「いただきます!」」」」

 

「はいよ、召し上がれ」

 

「うん、相変わらず美味いのう!」

 

「流石の腕前ですわね、わたくしも見習わなくては……」

 

「実家のご飯より全然美味しい! サイコー!」

 

「おっと、褒めてもおかわりくらいしか出ねえぜ?」

 

「出すな出すな、それ明日の朝用の奴でしょ」

 

 ワイワイと賑やかに食事は進んでいく。だが、賑やかさは同時に、欠落と寂しさも感じさせる。

 俺は、バジルソースのたっぷりかかったハンバーグを一口食べて──早くハンバーグだけでなく、この場にも四色揃って欲しいと、心の底から思った。

 

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