TCGアニメの世界で硬派なドラゴン使いになりたいのに、美少女カードにしか縁がない   作:織葉 黎旺

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第二十七話「食い止めなきゃいけない」

 

 

 

 ──光が晴れる。

『ナッシュ』に戻ってくると同時に、俺は片膝をついた。今回も高打点の一撃を受けてしまったため、しっかり生命力を吸い取られてしまったのだと思う。

 前回よりキツいところを見るに、打点に応じて吸う量は変わるらしい。死なないだけマシだが、5点でこれなら、一撃殺(ワンショット)なんか食らった場合、下手すると──

 

「ワオ……しっかり負けてしまったね……」

 

 倒れていた周藤が、少しだけ顔を上げて、疲れたような笑みを浮かべた。

 

「我ながら、なんであんなことしたんだろうね……君たち二人にも、姫にも、迷惑をかけてすまなかった」

 

「アタシは別に大丈夫。むしろプロと戦えていい経験になったし!」

 

「わらわも気にしてないからね。求められること自体は……その、嬉しかったし」

 

「お前は悪くないよ……心の弱い部分に付け込まれただけだ」

 

 床に転がった周藤のデッキと、闇色のケースを睨む。『カラレスサーペント』のカードが、白紙に変わるのが見えた。

 

「……そうだ。そのケース、どこで手に入れたんだ?」

 

「ううん、記憶がぼんやりしているんだが、たしかファンからの贈り物に混ざっていて……」

 

「ええ……?」

 

 それでいいのかプロスピストバトラー。いや、ファンからの気持ちを無下にしないのはいいことなんだけれども。

 

「光輝なボクが敢えて禍々しいケースを使うのも乙だと思ったんだけれどね……」

 

「安易に怪しい物に触れるなよ……」

 

 まあ、贈り物だと思っていたのなら、ファンサービスとしては相当手厚い対応だったかもしれない。そこを悪用されてしまっただけで。

 遠くから救急車のサイレンが聞こえてくる。いつの間にか誰かが呼んでくれていたらしい。

 

「とりあえず、ゆっくり休めよ。たぶんめんどくさい説明とか事情聴取とか、色々あると思うけど……」

 

「ありがとう。……そうだ、キミの名前を聞かせてもらってもいいかい?」

 

 そうか、そういえば名乗っていなかったか。

 

「焔龍一だ」

 

「龍一君。いいバトルだった! またやろう!」

 

 疲れているとは思えない、いい笑顔とサムズアップを見せて、周藤は運ばれて行った。

 

 

 *

 

 

「疑問が増えたね」

 

「ああ」

 

 草汰の呟きに、俺は頷く。よくわからないと顔に書いてある数名のため、仮説を口に出す。

 

「大昌の時は半分狙い撃ちに近かった。明らかに付け込む隙と適性があったから、デッキケースを渡したんだと思う。だけど周藤の場合はそうじゃない」

 

「贈り物に紛れ込ませるって手口自体はよくできてるよ。頻繁に貰っているだろうし、接触のリスクを避けて渡せる。流石にスタッフのチェックは入ると思うけど、見た目はただのデッキケースだからね。周知されない以上、すり抜けやすいだろう」

 

「問題は、()()()()()()()()()()()()()()ってことだ」

 

 メタ的に言えば、俺との関わりが多少あったから巻き込まれたのだと思う。

 しかしここは現実だ。行動には理由がある。大昌が俺に溜めたヘイトと劣等感を利用されたように、周藤にマッドデッキケースが配られた理由。

 

()()()()()を優先した、ということだろう。つまり半分くらい、無差別に近い……」

 

「ど……どういうこと?」

 

「足が付きづらくて、その上、手に取られる可能性が高いデッキケースの配布手段として、プロプレイヤーへのプレゼントが選ばれたってことだよ。一度手に取らせたらあっちのモノだし、『塗替(アップグレード)』したモンスターに生命力を吸収させるのが狙いなら、頻繁にスピストをする上に、そう簡単には負けないプロプレイヤーは最高の人選だ」

 

 こちらからしてみれば最悪だが。やってることは無差別テロに近い。早いうちに周知させなければ、市井にマッドデッキケースをばら撒かれるだろう。

 

「ということで虎次おじさん、《機関》への連絡頼んだ」

 

「あいよ、あとでやっとくわ~」

 

「いつのまにいたのよ!?」

 

 決闘場(バトルフィールド)から帰ってすぐの時点で、スペースの端で頬杖をついていた。なんなら通報してくれたのも虎次おじさんだと思う。

 

「ってか、《機関》の話しやすい知り合いだけじゃなくて、ちゃんとライカ姉にも連絡あげろよ? この前寂しがってたんだから」

 

「……まあ、やれたらやるわ」

 

 やらない人の言葉だった。

 同級生(ひよっこ)どもが首を傾げているのを見て、咳払いで誤魔化す。

 

「とにかく、マッドデッキケースのやばさを周知しないとまずい。もし一手遅れたら……たぶん、取り返しがつかないことになる」

 

 使用者を狂わせる性質もそうだが、人やビーストから生命力を吸い取るというその仕様。どう考えても、何かヤバい物を復活させる時のソレだ。

 

「何かが起きる前に、絶対に食い止めなきゃいけない。やるぞ、みんな」

 

『おー!!!』

 

 

 

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