TCGアニメの世界で硬派なドラゴン使いになりたいのに、美少女カードにしか縁がない 作:織葉 黎旺
──光が晴れる。
『ナッシュ』に戻ってくると同時に、俺は片膝をついた。今回も高打点の一撃を受けてしまったため、しっかり生命力を吸い取られてしまったのだと思う。
前回よりキツいところを見るに、打点に応じて吸う量は変わるらしい。死なないだけマシだが、5点でこれなら、
「ワオ……しっかり負けてしまったね……」
倒れていた周藤が、少しだけ顔を上げて、疲れたような笑みを浮かべた。
「我ながら、なんであんなことしたんだろうね……君たち二人にも、姫にも、迷惑をかけてすまなかった」
「アタシは別に大丈夫。むしろプロと戦えていい経験になったし!」
「わらわも気にしてないからね。求められること自体は……その、嬉しかったし」
「お前は悪くないよ……心の弱い部分に付け込まれただけだ」
床に転がった周藤のデッキと、闇色のケースを睨む。『カラレスサーペント』のカードが、白紙に変わるのが見えた。
「……そうだ。そのケース、どこで手に入れたんだ?」
「ううん、記憶がぼんやりしているんだが、たしかファンからの贈り物に混ざっていて……」
「ええ……?」
それでいいのかプロスピストバトラー。いや、ファンからの気持ちを無下にしないのはいいことなんだけれども。
「光輝なボクが敢えて禍々しいケースを使うのも乙だと思ったんだけれどね……」
「安易に怪しい物に触れるなよ……」
まあ、贈り物だと思っていたのなら、ファンサービスとしては相当手厚い対応だったかもしれない。そこを悪用されてしまっただけで。
遠くから救急車のサイレンが聞こえてくる。いつの間にか誰かが呼んでくれていたらしい。
「とりあえず、ゆっくり休めよ。たぶんめんどくさい説明とか事情聴取とか、色々あると思うけど……」
「ありがとう。……そうだ、キミの名前を聞かせてもらってもいいかい?」
そうか、そういえば名乗っていなかったか。
「焔龍一だ」
「龍一君。いいバトルだった! またやろう!」
疲れているとは思えない、いい笑顔とサムズアップを見せて、周藤は運ばれて行った。
*
「疑問が増えたね」
「ああ」
草汰の呟きに、俺は頷く。よくわからないと顔に書いてある数名のため、仮説を口に出す。
「大昌の時は半分狙い撃ちに近かった。明らかに付け込む隙と適性があったから、デッキケースを渡したんだと思う。だけど周藤の場合はそうじゃない」
「贈り物に紛れ込ませるって手口自体はよくできてるよ。頻繁に貰っているだろうし、接触のリスクを避けて渡せる。流石にスタッフのチェックは入ると思うけど、見た目はただのデッキケースだからね。周知されない以上、すり抜けやすいだろう」
「問題は、
メタ的に言えば、俺との関わりが多少あったから巻き込まれたのだと思う。
しかしここは現実だ。行動には理由がある。大昌が俺に溜めたヘイトと劣等感を利用されたように、周藤にマッドデッキケースが配られた理由。
「
「ど……どういうこと?」
「足が付きづらくて、その上、手に取られる可能性が高いデッキケースの配布手段として、プロプレイヤーへのプレゼントが選ばれたってことだよ。一度手に取らせたらあっちのモノだし、『
こちらからしてみれば最悪だが。やってることは無差別テロに近い。早いうちに周知させなければ、市井にマッドデッキケースをばら撒かれるだろう。
「ということで虎次おじさん、《機関》への連絡頼んだ」
「あいよ、あとでやっとくわ~」
「いつのまにいたのよ!?」
「ってか、《機関》の話しやすい知り合いだけじゃなくて、ちゃんとライカ姉にも連絡あげろよ? この前寂しがってたんだから」
「……まあ、やれたらやるわ」
やらない人の言葉だった。
「とにかく、マッドデッキケースのやばさを周知しないとまずい。もし一手遅れたら……たぶん、取り返しがつかないことになる」
使用者を狂わせる性質もそうだが、人やビーストから生命力を吸い取るというその仕様。どう考えても、何かヤバい物を復活させる時のソレだ。
「何かが起きる前に、絶対に食い止めなきゃいけない。やるぞ、みんな」
『おー!!!』