TCGアニメの世界で硬派なドラゴン使いになりたいのに、美少女カードにしか縁がない   作:織葉 黎旺

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第三十話「お仕事の時間だよ」

 

 

 

「ワタクシのターン!」

 

 対面の三ターン目が始まる。ここまでの動きはお互い静かな物で、エナを伸ばしながら、リソースを稼ぐパッシブスキルを設置し合っている。

 

「ワタクシは白を含めた3エナで、中央左マスに《スライスイーツ・クリーム》を召喚しますわ!」

 

 盤面に、マスコットみたいになった生クリームが現れて跳ねた。

 

「パッシブスペル《スライスイーツ・ディッシュテージ》の効果発動! 《スライスイーツ》が召喚されたから、このカードにスイーツカウンターを乗せますわ〜。わたくしはこれでターン・エンド!」

 

 特殊なカウンターを乗せるスペルか、中々にきな臭い。

 

「俺のターン。俺は緑を含む4エナを払って、《ベビー・ドラコキッド》を《シックル・ドラコキッド》に成長(グロウアップ)!」

 

 鎌を構えた、少し大柄になった《ドラコキッド》が《クリーム》を威圧する。

 

「召喚時効果で山札からエナチャージ。更にパッシブスペル《ドラグ・フィールド》の効果でクオリア上限を上昇。このままバトルだ、《シックル》でアタックするぜ」

 

《シックル》にはアタック時にエナから1枚手札に戻せる効果があるが、序盤の今はあまり使う必要がないな。

 

「《スライスイーツ・クリーム》でブロック! さらにブロック時効果で、私のライフを2点回復しますわ。んっ」

 

《シックル》が勢いよく振った鎌が《クリーム》の身体を刻む。が、勢いよく弾け飛んだクリームの欠片が相手の口元に飛び、彼女はそれをぺろりと舐めた。

 

「ターンエンドだぜ」

 

 まさか守ってくるとは思わなかった。《シックル》のクオリアは3、決して低い数値ではないが、スピリットを犠牲にして防ぐ段階でもない。ブロック時効果を使いたかったのか? 

 

「ワタクシのターン。《ディッシュテージ》の効果で、前のターンに《スライスイーツ》が破壊されているから、1枚追加でドローしますわ〜!」

 

 なるほど、それが狙いか。失ったリソースを補給できるなら、そりゃブロックした方が得だ。だが、盤面の優位性(ボードアドバンテージ)はこちらにある……! 

 

「エナをチャージして、赤含む4エナ! 《スライスイーツ・ストロベリー》を召喚ですわ。《ディッシュテージ》にカウンターが乗ります!」

 

 赤いエナが弾けて、先端部分にクリクリとした目がついた、瑞々しいイチゴのキャラクターが現れた。

 

「アタックフェイズ! 《スライスイーツ・ストロベリー》で貴方に攻撃しますわ! その時に攻撃時効果を発揮、貴方に2点のダメージを与えます!」

 

「なっ!?」

 

 イチゴの実が弾け、種と果肉が俺の身体へと降り注ぐ。ベタベタして甘酸っぱい。

 

「ただしこの効果発揮後、このカードは破壊され、わたくしのクオリア上限を1上昇させますわ。これにてターン・エンド!」

 

「俺のターン」

 

 段々と、相手のテーマのコンセプトが掴めてきた。

 つまりはコンボデッキの一種だろう。あのパッシブスペルは、リソースカード兼キーカードだ。あの貯めてるカウンターがキナ臭すぎる、いくつか溜まると何かデカい効果が発揮されると見て間違いない。

 つまり、俺がすべきは──短期決戦(アグロプラン)

 

「青2を含む6エナを払って、《酷氷龍ブリザード・ワイアーム》を召喚!」

 

「いざ、参ります」

 

 どこからか取り出した扇子を華麗に振って、リザが戦場に舞い降りた。

 

「《酷氷龍》の召喚時能力。お前の墓地の《スライスイーツ》2体を、盤面に『フリーズ』状態で蘇生させてもらう」

 

「フフ、それならワタクシの《ディッシュテージ》にカウンターが────!?」

 

「この蘇生は『特殊召喚』だ。通常の召喚で発揮される処理は、基本的には発揮しないぜ」

 

 コストを支払わない召喚(踏み倒し)は、大抵『特殊召喚』である。名前が同じため初心者は間違えやすいが、通常のメインフェイズで行う召喚とは別の処理なので、カウンターは増えないという訳だ。(増やしたら本末転倒だし)

 

「更に俺は2コスト払ってプッシュスペル、《龍鱗研ぎ》を発動! 次に使う《ドラゴン》種族のカードのコストを-3し、このカードの支払いに使用した《ドラゴン》の数だけ更にマイナスする!」

 

 タップに使用したのは《龍の舞巫女》と裏エナだから、合わせて4軽減される。

 

「このままアタックフェイズだ、《酷氷龍》でプレイヤーに攻撃!」

 

「甘んじて受けますわ!」

 

「はっ!」

 

 リザが扇子を振ると同時に、氷の礫が生成され、相手プレイヤーへと降り注ぐ。

 

「『リムーブ1』で《酷氷龍》自身を対象に、スタンドさせる!」

 

「続けて参ります」

 

「それも受けますわ〜!」

 

 礫の死角から現れたリザが、扇子を横に一薙ぎした。これで相手のライフは8。

 

「《シックル》でアタック! 攻撃時効果でエナから1枚回収!」

 

 残り6点。

 

「クイックスペル、《バドラタッチ!》を発動! 本来4コストだが、さっきの《龍鱗研ぎ》の軽減で無料(タダ)で使うぜ。対象は《酷氷龍》!」

 

「お役目御免。これにて失礼致します」

 

 恭しく一礼したリザが、宙に空いた穴へと飛んでいく。そこから出てきた紅い影が、彼女に手を伸ばしてパチンと音が鳴った。

 

「ちゃんと決めるのですよ?」

 

「任されたのじゃ!」

 

「《酷氷龍ブリザード・ワイアーム》をデッキに戻し、デッキから《獄炎龍インフェルノ・ドラグーン》を『特殊召喚』!」

 

「蹂躙させてもらうぞッ!」

 

「《獄炎龍》が攻撃する時、BP以下のスピリットを破壊できる。《ディッシュケーキ・スポンジ》を破壊! そのままプレイヤー!」

 

「道を開け、有象無象ッ!」

 

 放たれた火球の熱風で氷菓子は溶かされ、盤面から消え失せた。その勢いのまま、ソレは相手プレイヤーに向かう。

 

「受けますわ〜!」

 

 これで残り3点……! 

 

「決めろ、フェル……! 『2回攻撃』!」

 

「手札の《スライスイーツ・スポンジ》の効果を発動! わたくしが攻撃される時にスピリットがいなければ、手札からコストを支払わずに()()して、攻撃対象をこのカードに変更しますわ!」

 

「なっ!?」

 

 フェルが放った火球が、突如プレイヤーの前に巨大なスポンジ生地に阻まれ、消失する。

 

「ワタクシの場に《スライスイーツ》が()()されたので、今度こそ《ディッシュテージ》にカウンターを乗せますわよ〜!」

 

「く……これでターンエンドだ」

 

 決めきれなかったどころか、むざむざカウンターを増やしてしまった。これは少しまずいかもしれない。

 

「ワタクシのターン! 《ディッシュテージ》の効果で追加ドロー!」

 

 引いたカードを見て、相手はフッと口角を上げた。

 

「オホホ、これで決めますわ! 6エナで《スライスイーツ・クッキング!》を発動! 場のスイーツカウンターを好きなだけ取り除いて、()()を生み出しますわよ!」

 

「なっ、まさか……!」

 

 いままでの《スライスイーツ》たちが何処からか現れ、身体に入った切れ込みを活かして分身したり、噛み合ったりしていく。そうして《ディッシュテージ》の上に、それは姿を現した。

 

「現れなさい! 《スライスイーツ・ホールケーキ》!」

 

「デッッッカ……!」

 

 三メートル級の巨大ケーキが顕現した。頂上に乗った《ストロベリー》が、どこかキリリとした目でこちらを睨んでいる。

 

「《クッキング》の効果で出たスピリットは、消費したカウンターの数まで手札・墓地のスピリットを成長元にできるのですわ! 《クリーム》《ストロベリー》《スポンジ》の3枚が下にありますわよ!」

 

「成長元が増えたってことは『グロウガード』の耐性増強か……!?」

 

「オーホッホッホ! そんなものではなくてよ! アタックフェイズ、《ホールケーキ》で貴方に攻撃する時に!」

 

「!?」

 

《ホールケーキ》の一箇所が裂けた。

 否。それによってショートケーキが生まれた。そうして生まれたショートケーキは、ぴょこんと飛び跳ね──

 

「《ホールケーキ》は、素材の《攻撃時》《防御時》の効果をコピーしますわ! 《ストロベリー》の効果を発揮!」

 

 ミサイルのごとく、ケーキが俺の身体に直撃した。およそありえない、悪夢みたいな経験だった。

 

「『グロウガード4』があるので、《スポンジ》を墓地に送って《ホールケーキ》は場に残りますわ! まだ攻撃は続いてますわよ!」

 

「そのまま受ける……!」

 

《ホールケーキ》本体のクオリアは2点と決して高くない。ただ、計4点のバーンダメージのせいで、俺の残りライフは4しかない……! 

 

「《ホールケーキ》で攻撃、《ストロベリー》の効果を発揮! これで終幕(リーサル)ですわ〜!」

 

 ケーキが大きくジャンプし、俺を潰さんと飛来する。しかし目前で、突如現れた網に引っかかった。

 

「カウンタースペル《ドラグ・バインド》発動! 俺のライフが3以下だから、攻撃してきたスピリットをレストしてこのターン攻撃させない!」

 

「ふん、なら『3回攻撃』でスタンドだけさせて終わりますわよ」

 

 先程の《シックル》の攻撃で回収しておいたスペルで、何とか凌ぐことができた。しかしスタンドされたのは厄介である。それはつまり、攻撃を一回防がれる上、《クリーム》の防御時効果で回復されることを意味している。

 

「……まあ、やるっきゃないよな。俺のターン! ドロー!」

 

 引いたカードを、俺はそのまま盤面に出す。

 

「俺は、緑2を含む7エナを払って、《緑龍ファフニール》を召喚!」

 

「久々の出番だね〜〜〜」

 

 緑のエナをどしんと踏み潰し。欠伸をしながら、ふに子が現れた。

 

「《緑龍》の召喚時効果で、山札から2枚を裏向きでエナチャージ! そのままバトルフェイズだ、いけ、《緑龍》! 攻撃/防御時効果発揮!」

 

「お仕事の時間だよ〜〜〜」

 

 ふに子が足を後ろに蹴り上げると、()()()()()()()()

 

「裏エナを1枚表向きにできる。そうして捲れたカードがスペルだった場合、発動条件を無視してそのまま使うぜ。捲れたのは──《ドラグ・ハウル》、スペルだから効果発揮!」

 

「がお〜、食べちゃうぞ〜〜」

 

 ふに子の緩い咆哮が響く。そんなのでも一応効果は発揮される。

 

「ドラゴンのBP未満の相手スピリット1体をレストさせるぜ。対象は勿論、《ホールケーキ》だ!」

 

「んなっ!?」

 

 ふに子の威圧にビビったホールケーキは、縮こまって固まることしかできない。

 

「そのまま《緑龍》の攻撃!」

 

「受けましてよ……!」

 

「『2回行動』!」

 

「……ふ、苦い敗北ですわ──」

 

「えいっ」

 

 ふに子の放ったパンチが、相手の頬を緩やかに歪めた。

 ──勝者、俺。

 

 

 

 

 

 

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