TCGアニメの世界で硬派なドラゴン使いになりたいのに、美少女カードにしか縁がない   作:織葉 黎旺

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第三十五話「長い話にはなるけれど」

 

 

「………………」

 

「龍一っ!」

 

 ──闇の瘴気が晴れた。目の前には、地に伏せた綾吊。

 声に振り向けば、周りにはもうみんな集まっていた。帰ってこない俺を探しに来てくれたのだろう。

 

「大丈夫。いま、終わらせたところだ……」

 

「ク、フフ……()()()、勝てませんでしたか。まぐれとはいえ、あのお方を下すだけの力は、ありますね」

 

 闇の炎に包まれていく中、目の前の綾吊が少し身体を起こす。コイツに関しては、俺の大事な相棒たちを弄んだ恨みから、倒したことに何の罪悪感も湧かなかった。

 

「おい綾吊。最後に、()()()の情報を教えろ」

 

「嫌です……と言いたいところですが、残念ながら、負けた場合はそうするようにと仰せつかっておりまして。伝言をお伝えします」

 

 小さく息を吸ってから、綾吊は言った。

 

「『やほ。残念ながら元気みたいだね。コイツに勝つってことはまあ、軟弱なメスドラゴンたちも多少は強くなったのかな?』」

 

「ッ!」

 

 それは、あの女の言葉そのものだった。イラつきとトラウマで、強く歯噛みする。

 

「『まあそんなのに負けたワタシも弱かった訳だけど……次はそうはいかないね。ワタシは、()()()()を手に入れた』」

 

 それは即ち──闇のスピリットの()()、『滅びを刻む秒針(バニシング・カウント・クロック)』の、入手ないし制御を意味していて。

 

「『()()()の支援のお陰だね。君の友達にも世話になったな。またド派手に遊ぼうよ、近いうちに声かけるからさ』……以上です。クフフ……ボス、また会える日を楽しみにしていますよ……」

 

 綾吊の身体が、闇の炎に包まれ、灰も残さないまま燃え尽きた。それが《アナザー》の闇のスピリットの元に運ばれたと分かってはいても、俺は、何やら不吉な予感を捨てきれないままでいた。

 

「……終わったの、ですか?」

 

「ああ。奴は倒した。分かったことは二つ。やはり闇札会の首領は生きて──()()()に戻ってきているということ。更に、『滅びを刻む秒針』のどれかを、手中に収めたこと」

 

「いまのって……おれのことだよな」

 

「気にする必要はないよ。大昌はある種の洗脳状態だったわけだし、気にするだけ向こうの思うツボだ」

 

 草汰の言葉に頷く。

 

「アイツは、人の心を掻き乱すことを得意としていたからな……心が弱ったヤツを唆すくらいは朝メシ前だろ」

 

 それは悪人には無類のカリスマ性を発揮し、弱者には釈迦からの蜘蛛の糸のように映る。だからこそ、闇札会などという大きな組織は生まれ、いまも残党が暴れているのだ。

 

「あ、あの、聞いてもいいかな」

 

 おずおずと手を挙げた翔に、みんなの視線が向かった。

 

「そのボスと、龍一クンたちに……一体、どんな因縁があるの?」

 

「それは、私も思っていました。貴方の話に出てくるボスの話は、単純な敵としては距離が近すぎる」

 

 解像度が高すぎる、とアヤカは言った。

 鋭い指摘だし、当然の疑問だろう。耀や草汰はずっと一緒にいたが、翔もアヤカも大昌も、俺たちの因縁について、具体的なところはほとんど何も知らない。

 

「因縁、なんてカッコイイ言い方できるほどの関係でもないけどな」

 

 腐れ縁の方が正しい。グズグズに溶け切りながらも、それでも微かな線で繋がり続けている。微かな共通点と、それによる嫌悪によって。

 

「一度、話しておこうか。長い話にはなるけれど。俺たちがどうして闇札会と関わり出して、アイツと戦ってきたのか」

 

 

 

 

 

 

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