TCGアニメの世界で硬派なドラゴン使いになりたいのに、美少女カードにしか縁がない   作:織葉 黎旺

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第三十七話「分の良い賭けではあるぜ」

 

 

「──それで、最後は《獄炎龍》に進化したフェルの攻撃で、アイツを倒したんだ」

 

 合宿所のリビング。一息に皇凪(おうな)との因縁を語り終えた俺は、気の抜けたサイダーを飲んで一息ついた。

 こう思い返すと、中々濃い日々を過ごしていたのだな、と思う。『ビースト暴走事件』の後も、『辻スピスト事件』とか、『闇賭博事件』など、色々な問題があったし。その辺りから、ダークネスデッキケースが使われ始めて、命懸けの──苦しいスピストが始まったんだったか。

 事件の度に、アイツは俺の前に現れ、言葉を交わした。敵なのだろうと分かりつつも、情報収集と言い訳して続けた雑談。みんなには話せないそれらと、その()()に少しだけ思いを馳せて、それからみんなの顔を見た。

 

「なるほど……龍一達と闇札会のこれまでの戦いが、よくわかりました」

 

 ですが、とアヤカが続ける。

 

「大事なのはこれからです。ボスが復活していて、残党たちがより本格的な活動に移ると分かった以上。早急に、それを踏まえた、現実的な対応を考える必要があります」

 

「で、でもこっちから動くのって、難しいんじゃないの……? さっきの龍一クンの話の中だと、上手くいってたみたいだけど……」

 

「組織のマヌケな下っ端を()けたんだっけか? つってもいまは、その下っ端すら出てこねえもんな」

 

「大晶の言う通りね。龍一が何回か襲われたみたいだけど、ミエミエの隙を見せない限り出てこないんじゃない?」

 

「マッドデッキケースのエネルギーを集めるのに、下っ端が必要ないというのも大きいかもね。配る仕事くらいはあるかもしれないが、一度渡せば後は持ち主が勝手に働いてしまう。それに、奴等だって馬鹿じゃないから、二の舞を演じる真似は避けているんじゃないかな?」

 

 草汰の考察に、うーん、と一同は小さく唸った。

 相手は犯罪者で、基本的にアンダーグラウンドに潜む存在なので、どうしても後手に回ってしまう。そしてこのままだと、皇凪の言っていた『近いうち』が訪れてしまう。

 

「たしか、マッドデッキケースへの対策は注意喚起されてたよな?」

 

「そうですね。関係各所への通達も終えているようなので、周藤プロのような例は生まれないかと。とはいえそれまでに、何件かケースを用いた事件が起きてしまったようですが」

 

「それもあって、本格的に宣戦布告してきたんだろうね。()()()()()()()()、と取って相違なさそうだ」

 

「…………」

 

「りゅ、龍一クン……もしかして、何か策があるの?」

 

「ああ、いや。そういう訳じゃない」

 

 翔の言葉で、みんなの視線が俺へと集まった。何かないかと考えてはいたが、別にまだ思いついてはいない。

 

「ただ……闇札会に先手を打てずとも、その布石くらいは打てるかもな」

 

「本当!?」

 

「ああ。しかし……」

 

 みんなを見て、改めて思う。

 

「絶対反対される」

 

「……何か危ないことしようとしてるでしょ」

 

 耀が俺を薄く睨んだ。

 

「そう思われても仕方ないことを、しようとしてる」

 

「だ、ダメだよそんなの! わざわざそんなことするなんて……」

 

「まあ、概ね大丈夫だと思う。少なくとも生命に関わるような事態にはならないし、お前らには迷惑かけない──はず」

 

「テメェなあ……」

 

 大晶ですら呆れたように嘆息している。

 

「勝算はあるのですか」

 

「ある。しかも分の良い賭けではあるぜ」

 

「……具体的な内容によりますね」

 

「ちょっとアヤカ!」

 

「勿論、それを聞いてから判断してもらって構わない」

 

 

 ――そうして俺は、一つの案をみんなに伝える。

 

 

「およそ、まともな作戦とは言い難いね」

 

「思いつきと言った方が正しいわね」

 

「そ、それで乗ってくるかなあ?」

 

「意外といけるんじゃねえか?」

 

「そうですね。他に今できることもないですし、試してみてもいいかもしれません」

 

 大晶とアヤカが頷く。それを見て嘆息した耀が「どうせ、止めてもやるんでしょ?」と観念したように言った。

 

「悪いな」

 

「予め言うようになっただけ、成長したんじゃないか?」

 

「それはそうだけど……ハア」

 

 草汰の言葉に、耀は呆れたように嘆息する。

 

「さて、話もまとまったしそろそろ休もうか。合宿はまだまだこれからだからね。明日も6時には起こすからそのつもりで」

 

「げっ、折角の休みなのによ……!」

 

「……平時より余裕がありますね」

 

「ああ、 そうそう」

 

 ぽんと手を叩く。草汰の言葉で、言われてたことを思い出した。

 

「合宿の最終日なんだけど、ちょっとトーナメントをやろうと思う。優勝者には、『ナッシュ』からなんか出るらしいから楽しみにしてろよ」

 

「成長した力を試すには丁度いいわね」

 

「よ、よしっ。それならいまのうちに、スピストの練習を──」

 

「負けねーぞ! おれもスゲーコンボでも考えるか!」

 

「合宿中の伸び代を加味した上で、全員のプレイ傾向と対策を練ると──」

 

「お前ら、寝る気ある?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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