TCGアニメの世界で硬派なドラゴン使いになりたいのに、美少女カードにしか縁がない 作:織葉 黎旺
「──それで、最後は《獄炎龍》に進化したフェルの攻撃で、アイツを倒したんだ」
合宿所のリビング。一息に
こう思い返すと、中々濃い日々を過ごしていたのだな、と思う。『ビースト暴走事件』の後も、『辻スピスト事件』とか、『闇賭博事件』など、色々な問題があったし。その辺りから、ダークネスデッキケースが使われ始めて、命懸けの──苦しいスピストが始まったんだったか。
事件の度に、アイツは俺の前に現れ、言葉を交わした。敵なのだろうと分かりつつも、情報収集と言い訳して続けた雑談。みんなには話せないそれらと、その
「なるほど……龍一達と闇札会のこれまでの戦いが、よくわかりました」
ですが、とアヤカが続ける。
「大事なのはこれからです。ボスが復活していて、残党たちがより本格的な活動に移ると分かった以上。早急に、それを踏まえた、現実的な対応を考える必要があります」
「で、でもこっちから動くのって、難しいんじゃないの……? さっきの龍一クンの話の中だと、上手くいってたみたいだけど……」
「組織のマヌケな下っ端を
「大晶の言う通りね。龍一が何回か襲われたみたいだけど、ミエミエの隙を見せない限り出てこないんじゃない?」
「マッドデッキケースのエネルギーを集めるのに、下っ端が必要ないというのも大きいかもね。配る仕事くらいはあるかもしれないが、一度渡せば後は持ち主が勝手に働いてしまう。それに、奴等だって馬鹿じゃないから、二の舞を演じる真似は避けているんじゃないかな?」
草汰の考察に、うーん、と一同は小さく唸った。
相手は犯罪者で、基本的にアンダーグラウンドに潜む存在なので、どうしても後手に回ってしまう。そしてこのままだと、皇凪の言っていた『近いうち』が訪れてしまう。
「たしか、マッドデッキケースへの対策は注意喚起されてたよな?」
「そうですね。関係各所への通達も終えているようなので、周藤プロのような例は生まれないかと。とはいえそれまでに、何件かケースを用いた事件が起きてしまったようですが」
「それもあって、本格的に宣戦布告してきたんだろうね。
「…………」
「りゅ、龍一クン……もしかして、何か策があるの?」
「ああ、いや。そういう訳じゃない」
翔の言葉で、みんなの視線が俺へと集まった。何かないかと考えてはいたが、別にまだ思いついてはいない。
「ただ……闇札会に先手を打てずとも、その布石くらいは打てるかもな」
「本当!?」
「ああ。しかし……」
みんなを見て、改めて思う。
「絶対反対される」
「……何か危ないことしようとしてるでしょ」
耀が俺を薄く睨んだ。
「そう思われても仕方ないことを、しようとしてる」
「だ、ダメだよそんなの! わざわざそんなことするなんて……」
「まあ、概ね大丈夫だと思う。少なくとも生命に関わるような事態にはならないし、お前らには迷惑かけない──はず」
「テメェなあ……」
大晶ですら呆れたように嘆息している。
「勝算はあるのですか」
「ある。しかも分の良い賭けではあるぜ」
「……具体的な内容によりますね」
「ちょっとアヤカ!」
「勿論、それを聞いてから判断してもらって構わない」
――そうして俺は、一つの案をみんなに伝える。
「およそ、まともな作戦とは言い難いね」
「思いつきと言った方が正しいわね」
「そ、それで乗ってくるかなあ?」
「意外といけるんじゃねえか?」
「そうですね。他に今できることもないですし、試してみてもいいかもしれません」
大晶とアヤカが頷く。それを見て嘆息した耀が「どうせ、止めてもやるんでしょ?」と観念したように言った。
「悪いな」
「予め言うようになっただけ、成長したんじゃないか?」
「それはそうだけど……ハア」
草汰の言葉に、耀は呆れたように嘆息する。
「さて、話もまとまったしそろそろ休もうか。合宿はまだまだこれからだからね。明日も6時には起こすからそのつもりで」
「げっ、折角の休みなのによ……!」
「……平時より余裕がありますね」
「ああ、 そうそう」
ぽんと手を叩く。草汰の言葉で、言われてたことを思い出した。
「合宿の最終日なんだけど、ちょっとトーナメントをやろうと思う。優勝者には、『ナッシュ』からなんか出るらしいから楽しみにしてろよ」
「成長した力を試すには丁度いいわね」
「よ、よしっ。それならいまのうちに、スピストの練習を──」
「負けねーぞ! おれもスゲーコンボでも考えるか!」
「合宿中の伸び代を加味した上で、全員のプレイ傾向と対策を練ると──」
「お前ら、寝る気ある?」