TCGアニメの世界で硬派なドラゴン使いになりたいのに、美少女カードにしか縁がない 作:織葉 黎旺
非日常というのはあっという間に過ぎ去るもので、長かった合宿も、いつの間にか最終日になっていた。
予備のテーブルや椅子を持ち出して、即席の会場となった合宿所のリビングで、俺たちは向かい合う。
「それじゃあ始めようか。レギュレーションはシングル形式の総当たり戦、ただしサイドボードでの調整は可能。勝数が同じ人間がいた場合は決勝戦を行って、それが複数人だった場合は
『はい!』
「………………」
最初はトーナメントのつもりだったのだけど、六人ということもあって、それは少し味気ないという話になり、そういった調整に長けた草汰に任せたところ、なんか、思ったよりガチな大会になった。が、少し気になる点がある。
「今更だけど、シングルなのにサイドボードありって変じゃないかしら?」
サイドボードというのは本来、マッチ形式の大会において、お互いのデッキが判明した二戦目以降に、対面に応じた有効札や不要牌を入れ替え、勝率を高めるためにある。シングル形式なら、あまり意味はない。
「本当の大会なら変だけど、これはあくまで
眼鏡をカチャリと触って、草汰は言った。
「これに関しては、むしろ俺たちの方が顕著だからな。こっちが少数精鋭なのに対して、向こうはデカイ組織だ。送り込んだ人員から得た情報で、メタを張られることは多いぜ」
そして、そのメタに引っかかり、越えることができなければ、そこで終わりなのだ。悪の組織とのスピストはマッチ戦ではない。
「だから、適宜調整できる体勢を作るのは大事なんだ。その練習と思ってほしい」
「なるほど、合理的ですね」
全員草汰の言葉に納得したようで、それ以上の意見は出なかった。俺としては一つ、少しだけ気になった点もあったのだが……まあ、いいか。
「それじゃあ始めるよ。みんな準備はいいね?」
『レッツ・ストラグル!』
*
「《獄炎龍》で攻撃!」
「そのまま受けるわ……く、悔しい〜! あと一歩のところまで追い詰めたのに!」
「むしろそれがよくなかったな、《獄炎龍》のパンプ効果の起動圏内に入れちゃったし。あそこで削らずに貯めるプレイしてたらヤバかったと思うぜ」
「でもあそこで削りにいかないと、返しのターンでの
試合後特有の感想戦をしているうちに、いつの間にか全卓終わっていたらしい。草汰がホワイトボードに戦績を記入している。
「さて、四試合終わって次がラストだね。今のところの戦績だと、龍一が三勝一敗、アヤカさんが三勝一敗──そして僕が三勝一敗で、同率トップか」
「クソ、優勝はもう無理かよ」
「く、悔しいね……」
肩を落とす大昌と翔だが、それぞれアヤカと草汰に土をつけているため、かなり大金星ではある。(ちなみに俺の一敗はアヤカに付けられた)
次の試合の結果によっては決勝戦になる。が、幸い、面倒なトーナメントになることはなさそうだ。何故なら──
「よろしくお願いします」
「ああ、よろしく」
俺の前の席に、草汰が座る。定型的な挨拶を済ますとデッキを眺め、サイドボードとスムーズにカードを入れ替えていく。
「お前、今日は本気だな」
「いつだって本気だよ。手を抜くと思う?」
「言い方が悪かったな。
「ふ、そうだね。
──今回のルール。筋は通っているし、間違ってはいない。ただ、
TCGのプレイヤーには大きく分けて三タイプある。デッキを回してプレイを効率化させていくことをメインに楽しむ《プレイヤー》、流行りのリストなどを調整、最適化していく《チューナー》、そして新たなアーキタイプを生み出す《ビルダー》。
それで言うなら、草汰は《チューナー》寄りの《ビルダー》だ。無限大のカードプールがあるTCG世界においてこれは大きなアドバンテージであり、今回のように入念に準備できるフォーマットにおいての強みは計り知れない。
「……龍一はいいの?」
「ん?」
雑談しながらディールシャッフルをしていると、草汰は不思議そうに聞いた。
「サイドボードとの交換だよ。用意してないのかい?」
「ああ、大丈夫だ」
俺の言葉に、草汰が怪訝な顔をした。慌てて「いや、舐めてるとかそういう訳ではない」と訂正する。
「用意してはいるんだけど、結局デッキの根幹までは変わらないからな。お前なら、俺のサイドチェンジを鑑みて既に調整してるだろうし、下手なことをするならそのまま戦った方がいい。闇札案件を考えるなら、それこそメタられても勝つくらいの気概じゃないといけないしな」
「なるほどね……理解
納得
まあ何にせよ、草汰の冷静さを失わせられたなら何よりだ。
「容赦なく勝つよ」
「こっちの台詞だ」
「『レッツ・ストラグル!』」