TCGアニメの世界で硬派なドラゴン使いになりたいのに、美少女カードにしか縁がない   作:織葉 黎旺

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第三十八話「容赦なく勝つよ」

 

 

 

 非日常というのはあっという間に過ぎ去るもので、長かった合宿も、いつの間にか最終日になっていた。

 予備のテーブルや椅子を持ち出して、即席の会場となった合宿所のリビングで、俺たちは向かい合う。

 

「それじゃあ始めようか。レギュレーションはシングル形式の総当たり戦、ただしサイドボードでの調整は可能。勝数が同じ人間がいた場合は決勝戦を行って、それが複数人だった場合は勝敗の質順(オポネント)順にシードを組んで決勝トーナメント。いいね?」

 

『はい!』

 

「………………」

 

 最初はトーナメントのつもりだったのだけど、六人ということもあって、それは少し味気ないという話になり、そういった調整に長けた草汰に任せたところ、なんか、思ったよりガチな大会になった。が、少し気になる点がある。

 

「今更だけど、シングルなのにサイドボードありって変じゃないかしら?」

 

 サイドボードというのは本来、マッチ形式の大会において、お互いのデッキが判明した二戦目以降に、対面に応じた有効札や不要牌を入れ替え、勝率を高めるためにある。シングル形式なら、あまり意味はない。

 

「本当の大会なら変だけど、これはあくまで闇札案件(ダークカードケース)と関わる上で強くなるための合宿だからね。例えば闇札会のボスみたいな、何を使ってくるのか分かっている相手とやる時に、その対策を行わないのは甘えだよ」

 

 眼鏡をカチャリと触って、草汰は言った。

 

「これに関しては、むしろ俺たちの方が顕著だからな。こっちが少数精鋭なのに対して、向こうはデカイ組織だ。送り込んだ人員から得た情報で、メタを張られることは多いぜ」

 

 そして、そのメタに引っかかり、越えることができなければ、そこで終わりなのだ。悪の組織とのスピストはマッチ戦ではない。

 

「だから、適宜調整できる体勢を作るのは大事なんだ。その練習と思ってほしい」

 

「なるほど、合理的ですね」

 

 全員草汰の言葉に納得したようで、それ以上の意見は出なかった。俺としては一つ、少しだけ気になった点もあったのだが……まあ、いいか。

 

「それじゃあ始めるよ。みんな準備はいいね?」

 

『レッツ・ストラグル!』

 

 

 *

 

 

「《獄炎龍》で攻撃!」

 

「そのまま受けるわ……く、悔しい〜! あと一歩のところまで追い詰めたのに!」

 

「むしろそれがよくなかったな、《獄炎龍》のパンプ効果の起動圏内に入れちゃったし。あそこで削らずに貯めるプレイしてたらヤバかったと思うぜ」

 

「でもあそこで削りにいかないと、返しのターンでの詰め(リーサル)がなかったのよね。難しいところだわ……」

 

 試合後特有の感想戦をしているうちに、いつの間にか全卓終わっていたらしい。草汰がホワイトボードに戦績を記入している。

 

「さて、四試合終わって次がラストだね。今のところの戦績だと、龍一が三勝一敗、アヤカさんが三勝一敗──そして僕が三勝一敗で、同率トップか」

 

「クソ、優勝はもう無理かよ」

 

「く、悔しいね……」

 

 肩を落とす大昌と翔だが、それぞれアヤカと草汰に土をつけているため、かなり大金星ではある。(ちなみに俺の一敗はアヤカに付けられた)

 次の試合の結果によっては決勝戦になる。が、幸い、面倒なトーナメントになることはなさそうだ。何故なら──

 

「よろしくお願いします」

 

「ああ、よろしく」

 

 俺の前の席に、草汰が座る。定型的な挨拶を済ますとデッキを眺め、サイドボードとスムーズにカードを入れ替えていく。

 

「お前、今日は本気だな」

 

「いつだって本気だよ。手を抜くと思う?」

 

「言い方が悪かったな。()()()()()()()本気で勝ちに来てるよな」

 

「ふ、そうだね。()()()()()

 

 ──今回のルール。筋は通っているし、間違ってはいない。ただ、()()()()草汰と相性がいい。

 

 TCGのプレイヤーには大きく分けて三タイプある。デッキを回してプレイを効率化させていくことをメインに楽しむ《プレイヤー》、流行りのリストなどを調整、最適化していく《チューナー》、そして新たなアーキタイプを生み出す《ビルダー》。

 それで言うなら、草汰は《チューナー》寄りの《ビルダー》だ。無限大のカードプールがあるTCG世界においてこれは大きなアドバンテージであり、今回のように入念に準備できるフォーマットにおいての強みは計り知れない。

 

「……龍一はいいの?」

 

「ん?」

 

 雑談しながらディールシャッフルをしていると、草汰は不思議そうに聞いた。

 

「サイドボードとの交換だよ。用意してないのかい?」

 

「ああ、大丈夫だ」

 

 俺の言葉に、草汰が怪訝な顔をした。慌てて「いや、舐めてるとかそういう訳ではない」と訂正する。

 

「用意してはいるんだけど、結局デッキの根幹までは変わらないからな。お前なら、俺のサイドチェンジを鑑みて既に調整してるだろうし、下手なことをするならそのまま戦った方がいい。闇札案件を考えるなら、それこそメタられても勝つくらいの気概じゃないといけないしな」

 

「なるほどね……理解()した」

 

 納得()していなさそうな口振りだった。プライドの高い草汰のことだから、舐められてると思ったのかもしれないし、或いは俺のサイドボード調整を前提に、彼自身のデッキも調整してあるのかもしれない。

 まあ何にせよ、草汰の冷静さを失わせられたなら何よりだ。

()()()()()()()()()()()

 

「容赦なく勝つよ」

 

「こっちの台詞だ」

 

「『レッツ・ストラグル!』」

 

 

 

 

 

 

 

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