TCGアニメの世界で硬派なドラゴン使いになりたいのに、美少女カードにしか縁がない 作:織葉 黎旺
「「最初はグー、じゃんけんぽん! あいこでしょっ!」」
拳と拳がかち合った後、俺は手を変える。現れたピースサインに対し、草汰は拳のまま応戦していた。縁起を担いだら普通に負けた。
「龍一のジャンケンにおける初手は、チョキが最多の46%。3手以内にチョキを出す確率は72%だから、概ね勝てると思っていたよ」
「え、そんなことまで分析してんの!?」
「可能な範囲で勝利への努力を行うのは、当然のことだろう?」
なんでもないように言ってのけたが、相当すごいことだ。やけに草汰にジャンケンで勝てないと思っていたが、そんな陰の努力があったのか。
「でも言っちゃってよかったのかよ? 今後は勝てなくなるぜ」
「構わないさ。その時は分析し直せばいいし──いまジャンケンに勝った事実と、今日勝つことが何より重要なんだから」
そこだけ聞くと少し、闇落ちしたデータキャラみたいに見えた。いや、別に軽口を叩いてるだけなんだけども。
「先攻はもらうよ、ドローからエナチャージまで。僕は3コスト払って、中央左マスに《剣の導き手》を召喚。効果で、山札上から7枚見て、その中のウェポン1枚を回収するよ──ふむ」
草汰は一瞬だけ、迷うような仕草を見せた。それから、1枚のカードを机に置いて見せる。
「《破龍の剣》を回収。残りは好きな順番で
「テキストいいか?」
「どうぞ」
公開された《破龍の剣》を確認する。名前からして、露骨な
3《破龍の剣》
5000/1
攻撃時:相手の場に、名前か種族に《龍》か《ドラゴン》を含むカードがある場合、このカードのBPとクオリアを倍にする。
『2回攻撃』
「なるほど……ありがとう」
このタイプのピンメタか。俺が何か盤面に出すだけで10000/2の2回攻撃が襲ってくるのは脅威だが、俺の動き自体を阻害しないなら、まだやりようはある。
「じゃあターン貰って、スタート、アップ、メインまで。俺は2エナで中央右に《ベビー・ドラゴニュート》を召喚。効果で手札の《氷龍ブリザード・ワイアーム》をエナへ。更に2エナでプッシュスペル《龍の献身》発動。自分のドラゴンを破壊して、そのコスト分まで①〜③を繰り返す」
①山札からカードを1枚引く
②山札から1枚を表向きでエナゾーンに置く
③クオリアを1上昇する
ので、今回は1引き1加速である。多少ディスアドもあるが、ドラゴンを残さずに済んだし、初動としては十分だろう。
「俺はこれで終了だ」
「上手く躱したね、でもそれも計算のうちだよ。ドロー……エナチャージして4コスト。パッシブスペル《ウェポンベルト》発動。そのままアタックフェイズ、《剣の導き手》で攻撃。更に攻撃時効果で、手札を1枚捨てて、3コスト以下のウェポンをコストを払わずに装備できるよ。僕は《破龍の剣》を装備」
「げ」
厄介なウェポンを持たれてしまった。面展開しなければコスト不相応のスタッツだし、手張りならその分
「一旦それは通す」
「続けて《破龍の剣》で攻撃」
「ライフで受けてカウンタースペル、《雨降地恵》発動。山札からエナチャージ」
「このままターンエンドだよ」
スタッツの低い2枚に殴られたおかげで、ライフ自体は2点しか削られていない。しかも盤面はガラ空き、エナ数は十分と、
「まあそれならそれで利用させてもらうぜ──スタート、アップ、メインまで。俺は3コストの《仔龍の真価》を、5コスト支払って発動。自分の場の《ドラコキッド》から
中央左マスに出す。これで一旦、準備は整った。俺は「アタックフェイズ」と宣言する。
「《アックス・ドラコキッド》で攻撃。更に攻撃時効果で、相手の場のカード1枚を破壊し、1枚引ける。《破龍の剣》を破壊したいが、通るか?」
「破壊までは通すよ」
「1枚ドロー。そのまま攻撃」
「《ウェポンベルト》の効果。このカードか自分のウェポンが場を離れた時、
「分の悪い賭けだな」
「それはどうかな?」
言われてから気づく。今のデッキボトムは、先程《剣の導き手》で確認して仕込んだ物。
「墓地に落ちたのは《復讐のブラッディネイル》、そのまま装備。攻撃はライフで受けよう」
2点、ライフが削れた。これで、ダメージレースで並ぶ形になった──が、しかし。
「《復讐のブラッディネイル》の効果。このカードはスタッツを持たない代わりに、自分のライフを削ったカードを破壊できる」
「なら、『グロウガード』で──」
「効果発揮後、この効果で破壊したカードが場に残っている場合、もう一度だけ続けて破壊できる」
「なっ!?」
《アックス》が、完全に処理されてしまった。『2回攻撃』で《ウェポンベルト》まで処理するつもりだったのだが……結果的に、大きな裏目となった。
《ウェポンベルト》から処理するべきだったか? しかしいずれにせよ《ブラッディネイル》は装備されてしまうし、《破龍の剣》を処理できただけ良しとしよう。
「だがタダではやられないぜ。俺は手札からカウンタースペル《龍の恩恵》発動。ドラゴンの成長スピリットが破壊されたので、そのコストまでドロー、クオリア上昇、エナチャージを一つずつ順番に繰り返す」
《アックス》のコストは6。それぞれ2つずつ上昇する形になる。特に、増やせていなかったクオリアと、足りていなかった手札が増えるのが大きい。
「ならこちらもカウンタースペル、《便乗》を使わせてもらうよ。このカードの発動直前に相手が伸ばした数値と同じだけ、こちらもリソースを伸ばす」
「……いくらなんでもそれはズルくないか?」
「君が伸ばしたのと同じだけ伸ばしているんだから、こんなに平等なことはないだろう?」
不平等すぎる。こちらは失ったアドバンテージを取り戻すための正当な報酬を得ているんですけど!
「ターンエンドだ」
「僕のターン。スタート、アップ、メインまで。
エナを置いて、それから草汰は、引いたカードをそのままこちらに見せた。
「中央右マスに《デュアルサーベル・ライガー》を召喚」
『任せるガオ!』
「こら、出てきちゃダメだよ」
『忘れてたガオ……』
草汰の脇に出現したライガーが、しゅんとした様子で消えていった。フォーマルな試合において、ソリッドビジョン以外でのビーストの顕現はマナー違反である。
「《デュアルサーベル・ライガー》の召喚時効果発揮。山札上から7枚を確認して、コスト6以下になるようにウェポンを好きなだけ選ぶよ。コスト4《
「……もしかして、下のウェポンの効果コピーするとか?」
「正解。《デュアルサーベル・ライガー》は、このカードの下にあるウェポンすべての効果を得るよ。アタックフェイズ、ライガーの攻撃時に《碧獅子の佩剣》の効果。ターン中初めて攻撃する時、このカードのスタッツを、攻撃しているカードにそのまま加えられる!」
本来であれば《碧獅子の佩剣》の5000/1のスタッツが加わるが、この場合、《デュアルサーベル》の効果として発動しているため、加わるのはライガー自身の10000/2というスタッツ。つまり単純に倍になって、20000/4の攻撃となっている。
「一旦通す」
「『2回攻撃』するよ」
「4コストでクイックスペル、『ドラグ・コーリング』発動。このターンに受けたダメージ+2コスト以下のドラゴンを、山札から『特殊召喚』する。出すのは《ファフニール》、『誘導2』により、ターン中2回まで攻撃の対象をコイツに変更できる」
「なら、そのまま《ファフニール》を破壊」
「『エナガード1』で耐えて、さらに破壊時効果発揮。攻撃してきたスピリットのBP分、このカードのBPを上昇させるぜ」
「やっぱり厄介だね」
そもそものスタッツも低くないため、『誘導2』も相まって、実質的な延命保証となる。ふに子のこの初期形態には、何度助けられたかわからない。
「なら、《復讐のブラッディネイル》で《ファフニール》に攻撃」
「スタッツ全部0なんじゃなかったのかよ?」
「だからいいんだよ。カウンタースペル《リベンジマッチ!》を発動。このカードは、自分のカードの攻撃で、バトルした相手スピリットを破壊できなかった時に使用可能。自分のカード一枚を選んで、そのカードのBPを倍にして、その相手スピリットとバトルできる」
「それはズルいだろ!」
なるほど、スタッツがない点まで活かした、完全な戦略である。これで俺は返しのターン、0からの盤面形成を余儀なくされたし、対する草汰は《ブラッディネイル》による連パン対策と、《ライガー》の下に仕込んだ《ミスリルアーマー》でのダメージ軽減で、万全の体制というわけだ。
「当然だろう? 《ネイル》も《アーマー》も、君への対策で積んでるんだから。《ファフニール》メタで積んだ《リベンジマッチ!》も、しっかり刺さってよかったよ」
「たしかにキツい……が、まだバトルは終わってないぜ?」
「そうだね。では僕は、これでターンエンド」
《剣の導き手》を残されてしまった。ブロッカーとして運用するのは勿論、《獄炎龍》の効果を鑑みて、ライフ3以下にならないように対策したのだろう。
手札に打開策はない。何か引けなければ終わりの、非常に厳しい状況である。
「スタート、アップ……! メインまで」
「どうぞ」
「俺は4コストで《龍の転生》を発動。墓地の《ファフニール》《アックス》《ベビー》を山札に戻して、2枚引く。そしてその中のドラゴンの数まで、エナをスタンドできる……! ドロー!」
まずはここで良いカードを引かなければならない。横目で引いた札を確認する。
「引いたのは、《龍鱗研ぎ》と《獄炎龍インフェルノ・ドラグーン》だ。2エナスタンドさせるぜ」
「どうぞ」
「そのまま《龍鱗研ぎ》を使用。次に使うドラゴンのコストを4軽減する。これにより、赤2エナで、《獄炎龍インフェルノ・ドラグーン》を召喚!」
「出番じゃな!」
「だから出ちゃダメなんだって!」
「むう……」
静かに引っ込んでいったフェルに苦笑してから、気を取り直して「更に2コスト」と宣言する。
「《龍血の契約》発動。俺の場のドラゴンのコスト-2までライフを払って、払った数値以下の相手の場のカードすべての効果を無効にする! 俺は4点のライフを使用!」
「く、これじゃ《ライガー》の効果も……!」
カードの下にあるカードも、《盤面にある》という状態自体は保たれており、効果の対象や、影響を受ける。
つまり下のカードも効果が無効にされるわけで、この場合、《ライガー》でコピーすることはできない。
「更に4コストで《対抗意識》発動。自分の場のスピリット1体と同じ種族で、違う色のスピリット1体を『特殊召喚』する! 来い、《酷氷龍ブリザード・ワイアーム》! このままアタックフェイズだ、《酷氷龍》で《剣の導き手》を攻撃!」
「……通すよ」
「《獄炎龍》の効果! 俺のライフが3以下だから、相手のカードが破壊される度にBP+2000、クオリア2上昇! 続けて《獄炎龍》で草汰に攻撃、効果で《ブラッディネイル》を破壊!」
「《ライガー》の『誘導1』発動。そのまま『グロウガード2』」
「カードの破壊で、《獄炎龍》は更に炎を滾らせる! 続けて『2回攻撃』!」
「カウンタースペル《ラウンド・シールド》発動。5点以上ライフが減る時、それを0にする」
「なら《酷氷龍》の『リムーブ1』発動! 《獄炎龍》の、最後の攻撃……!」
もうこちらに手はない。草汰の3枚の手札に、何か防御札があれば負ける。祈るように、《獄炎龍》をレストする。
「……何もないです。ありがとう、いいバトルでした」
「対戦ありがとうございました!」
勝者──俺。