TCGアニメの世界で硬派なドラゴン使いになりたいのに、美少女カードにしか縁がない   作:織葉 黎旺

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第四十話「機関の中に」

 

 

「く……負けた。ウェポンの選択を間違えたか? いや、結局時間をかけさせたのがよくなかったか……伸びたリソースを活かしてワンショットされたし……連パンは咎められていたのだから、《龍血》対策で導き手は攻撃しておくべきだったか……? しかしそれだと盤面の破壊で上昇を溜めて、結局一撃でライフを削りきられていただろうし……」

 

「あの、草汰……?」

 

 俺の声で戻ってきてくれたようで、ハッとした様子の草汰が「ああ、すまない……考え込んでしまっていたね」と、眼鏡を指で上げながら言った。

 

「改めて、対戦ありがとう。悔しいけど、課題の見えるいい試合だった」

 

「いや、こちらこそありがとう。メタられることへの意識と、その越え方について考えさせられた」

 

 ぎゅっと握手を交わす。込められた力には、『次は勝つ』『次も負けない』という、お互いの思いが籠っている気がした。

 

 

「……さて、全卓終わったみたいだね。それじゃ結果を発表するよ。優勝は四勝一敗で、焔龍一!」

 

「よしっ!」

 

「く、あそこで勝てていれば決勝戦に持ち込めたというのに……」

 

「まさかボクがアヤカさんに勝てるなんて……!」

 

 悔しがるアヤカ。そのアヤカを下したらしい翔は、ニコニコとしている。

 

「みんな合宿の成果を感じられたみたいだし、いい大会になったんじゃないかな。次こそは負けないよ」

 

 それは全員の総意だった。健闘を称えつつ、静かな闘志を滾らせ、俺たちの合宿は幕を閉じた──

 

「おーい、迎えに来たぞ〜」

 

「あ、おじさん」

 

 鍵束をクルクルと指で回しながら、虎次おじさんがやってきた。

 

「大会やってたんだったか? 誰が勝ったんだよ」

 

「龍一が勝ちましたよ」

 

「ほーん、やるじゃん。流石はオレの甥っ子」

 

「接戦だったけどな……で、なんかおじさんがくれるんだっけ?」

 

「おん。まあお前なら、帰ってから渡せばいいか」

 

「ちなみに、景品とは一体何なのですか?」

 

「ん〜〜〜、ちょっと()()()の品」

 

「えっ」

 

 おじさんの言葉に、思わず眉を顰めた。

 

「それ全然景品じゃなくない? てか何かの実験台にしようとしてない?」

 

「大丈夫だって、危ないもんじゃねえし…………たぶん」

 

「間が怖いって」

 

「でもワンチャン、次の戦いに役立つ秘密兵器に化けるぜ。その辺はお前次第だな」

 

 そう言われると、「やってやろうじゃんか」という他ない。負けられない戦いで、相手の現在の実力は未知数なのだから、リスクくらい背負わないと超えていけない。

 

「いやあ、そういって貰えるとオレも危険を押して頑張った甲斐があるぜ」

 

「き、危険なの……?」

 

「もしかして、近頃《機関》の科学部で分析されていた件ですか?」

 

「そーそー。アレ? 一応シークレットにやった奴なんだけど、ウワサになってた?」

 

「はい。あの『爆炎の猛虎(ボンバイガー)』が科学部に出入りして、何やら怪しげな実験をしている、と」

 

「か〜、有名人も困ったもんだぜ」

 

「秘密機関の有名人って問題じゃないかしら」

 

 耀がもっともなツッコミを入れた。……いや、しかし冷静に考えると、たしかにそれは()()()()()なんじゃないか? 

 

「ま、そのへんは後でな。荷物まとめて帰るぞ」

 

 各自、キャリーケースやらボストンバッグやらをトランクに詰め、ミニバンに乗り込む。エンジンがかかって、みるみるうちに合宿所が遠のいていく。

 

「また、来年もみんなで来ようね」

 

 翔がぼそりと、小声で呟く。「当たり前だろ」と大晶が笑って小突いて、俺たちも小さく頷いた。

 

 

 *

 

 

 エンジンの音と、運転の心地好い振動を感じながら、俺は流れていく景色を眺める。

 

「寝てもいいんだぜ?」

 

「眠くないし、大丈夫。それに俺が寝たらおじさんが寂しいだろ?」

 

「それこそ大丈夫。オレ、全然一人で無限に喋れるから。虎次のハイウェイ・レディオーッ! 本日のお相手は〜!?」

 

「やっぱ寝ようかな。みんなを起こしたら悪いから」

 

 ちらり、と後部座席を振り返る。肩を寄せあったり窓に寄りかかったり、思い思いの体勢で全員寝ていた。今日の大会で疲れたのと、連日騒いで寝不足だったのと半々か。

 

「じゃあまあ、小声で喋るか」

 

 一段階声のトーンを落として、それからおじさんは、一呼吸置いた。

 

「《機関》の中に、恐らく裏切り者がいる」

 

「……!」

 

 おじさんの言葉に俺は、驚きつつも納得していた。

 そもそも今回、綾吊に襲われたのはかなりイレギュラーな事態だ。仮にもあそこは《機関》の保養所で、一般の人間が知り得る場所じゃない。

 

 俺たちのことを尾行していた可能性は薄い。何故なら、こちらには仮にもトップエージェントが二人いるのだ。片や現役を退き、片やまだ中学生とはいえ、露骨につけられていれば気づく。相手が上手(うわて)だった可能性もあるが、先程話題に上がった《機関》内での情報漏洩を考えると、どこかに内通者がいて情報を取られていると考えた方が納得する。

 だとすると、わざわざ自分の存在を知らせるように、得た情報を噂にした意味が分からなくなるけれど……

 

「まーお前らが気にすることじゃないが、頭の片隅くらいには置いといてくれや。分かってると思うが、学校で機密情報とか喋んなよ?」

 

「今以上に気をつけさせるよ」

 

 とはいえ人の口に戸は立てられないし、子供の我慢には限度があるので、どうなるかはわからないけど。

 

「闇札会の動き自体は、しばらく大人しいはず。伝言の口振りからして、ひと月くらいはお互いに準備期間になると思う」

 

「だと有難いな。例のヤツの、慣らし運用期間に丁度いいからよ」

 

「……結局その、()()()()()って奴は何なの?」

 

「おん。ほら、最近マッドデッキケースの分析とかしてただろ? その副産物で出来たカードで──」

 

「本当に大丈夫なんだよな!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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