TCGアニメの世界で硬派なドラゴン使いになりたいのに、美少女カードにしか縁がない   作:織葉 黎旺

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第四十六話「その力の極みへと目醒めよ」

 

 

 ──俺の眼前で、巨槍の穂先が止まる。いや──彼女たちの身体で、見えなくなる。

 

『《龍の依代》の効果だよ〜〜〜』

 

『あるじが負ける時、下に入った龍(わたしたち)2枚以上ごと、すべて墓地に送れば、一度だけライフ1で耐えられる!』

 

「アン、ふに子……!」

 

 半透明の彼女たちが、俺を敗北から守り──そして、光の粒子となって消えていく。

 

『あるじ、負けてあの女の物になったら許さないかんね!』

 

『そーだよ、ますたーはもうあたしたちのものだからね〜〜〜』

 

「ああ──当たり前だぜ」

 

 彼女たちの姿と、巨槍が消失する。

 異形の龍は、構えを解いて彫像の如く固まる。

 それは即ち、脅威が去ったことを意味していた。

 

「命拾いしたね、ターンを返そう──何かできれば、だけど」

 

 手札は(ゼロ)。盤面も(から)。エナは7枚(ギリギリ)。《(セブンス)》による制約で、例え何を引こうが7コスト以上のカードは使用できない。

 

「ワタシはね──前回の戦いで学んだんだよ。すべて制圧して、ご都合主義みたいな逆転を防げばいいって。そのために、時を止めたんだ」

 

 俺の腕には、未だ小さな槍が刺さり続けている。

 でも、こんなことをされなくてもきっと──ずっと前から、そうだったんだと思う。

 

 

「──皮肉だな」

 

「何?」

 

「前回の戦いから──俺たちの時は止まり続けてるんだよ。あの敗北に囚われるお前と、あの勝利を引き摺る俺。自信がなくなって、相棒たちの在り方にすら疑念を覚えて……なんならスピストから離れようとすらしてたんだぜ?」

 

『俺はもうスピストをしない』──なんて、幼稚な逃げ方もしていた。俺が馬鹿にされるのは別に良かった。でも、相棒たちを馬鹿にされたくなかった。

 だがそんな俺を、もう一度連れ出してくれたのも、彼女たちだった。

 

「でも、俺の時は再び進み始めた。相棒たちと共に、壁を乗り越えて強くなって。その果てにある進化は、決してご都合主義なんかじゃない。勝利に向かった、努力の結果だ」

 

「能書きはもういいよ。何を言ったって、デッキトップは変わらないんだから──いや、姿を変えるつもりなのかな?」

 

 俺は答えない。コイツには嘘だと思われるかもしれないが、俺は、都合の良い進化なんかに頼るつもりはない。

 何故なら、引いてきた手札(ありのまま)で戦うことこそが、カードゲームなのだから……! 

 

「ドロー……! ッ、このカードのコストは墓地の6コスト以上のドラゴン1枚につき1下がる! 3軽減7コストで、()()()()()()()()、《龍極覚醒》を使用!」

 

「なんだ、そのスペルは……!」

 

 皇凪が、目を見開いて驚愕する。

 これは、俺が相棒との絆で得られた新たな力。今、この瞬間のために秘していた隠し弾。

 

「元のコストが10だから、《(セブンス)》のロックには引っかからないぜ。《龍極覚醒》の効果で、墓地の色が違うドラゴンを1枚ずつ選び、それらが条件を満たしていれば『覚醒(アウェイク)』させる。俺が選ぶのは勿論、《獄炎龍》《刻輝龍》《殼緑龍》」

 

 フィールドに、半透明な姿になった彼女たちの姿が現れる。こちらに振り返って頷き合うと、その身体は眩い光に包まれる。

 

「龍たちよ、その力の()()へと目醒めよ──!」

 

 ──光が晴れる。

 ミニスカートの赤いドレス。大きく露出したその胸元では、真紅のネックレスが鎮座する。

 丈の長い、スリットの入った黄色のドレス。その耳元では、黄金のイヤリングが揺れている。

 足先に向けて大きく膨らんだ緑のドレス。その首元では、翡翠のチョーカーが主張している。

 

()()炎龍インフェルノ・ドラグーン》、()()輝龍アンフィスバエナ》、()()緑龍ファフニール》に『覚醒(アウェイク)』ッ!」

 

「素晴らしい……! どんな力なんだい!?!?」

 

「『覚醒』は、アウェイクスペルを用いることで、条件を満たしたアウェイクスピリットを、アディショナルデッキから呼び出す効果だ」

 

 アディショナルデッキは、『スピリット・ストラグル』初の()()()()()。メインデッキの何かの効果に反応して、そこから特定のカードが呼び出される。

 

「これがキミたちの生んだ新たな可能性……! だが、その力は『滅びを刻む秒針(バニシング・カウント・クロック)』に届くのか!?」

 

「届かせるさ……そのために、まずはあと一人呼ばないとな! 《(ごく)輝龍》の覚醒時効果(アウェイクスキル)! 山札の覚醒条件(アウェイクコード)を満たしているドラゴン1枚を『覚醒』させる!」

 

「やっぱり全員揃ってないと、ねっ!」

 

 アンが軽やかに舞うと、光の扉が開き、そこから彼女が現れる。

 青いマーメイドラインのドレス。青いオペラグローブの上には、蒼玉のブレスレットが付けられている。

 

()()氷龍ブリザード・ワイアーム》に『覚醒』!」

 

「遅れ馳せながら、参戦させていただきまする」

 

全員参戦(フルパーティ)じゃん。ようやく場は整ったって感じかな?」

 

 相手の盤面には未だ、異形の龍が鎮座する。

 BP77777という、巨大な壁。しかしそれも、目の前の彼女たちとなら、飛び越えていける。

 

覚醒(アウェイク)スピリットの共通効果。覚醒元のスピリットのステータスを、覚醒先にそのまま加える。またこの時クオリア上限は無視される!」

 

《《(ごく)炎龍インフェルノ・ドラグーン》BP15000/5

《《(ごく)氷龍ブリザード・ワイアーム》BP15000/4

《極輝龍アンフィスバエナ》BP14000/3

《極緑龍ファフニール》BP18000/4

 

 

「《極緑龍》の覚醒時効果(アウェイクスキル)。山札からエナチャージ3して、俺のエナ1枚につき自分のすべてのスピリットのBPを+1000! 更に上昇したBP分の『覇気』を与える!」

 

「みんな、いっくよ〜〜〜」

 

 ふに子が地面を叩くと、溢れたエナが自陣の力となっていく。

『覇気』があれば、指定BP以下の相手スピリットの効果を無視できる。『誘導』などにも引っかからなくなるため、これでデカブツとの戦いに集中できる。

 

「更に《極氷龍》の覚醒時効果。このスピリットのBP、クオリア分、相手スピリットのステータスを下げる!」

 

「我々の前で、頭が高いですよ木偶の坊」

 

 リザが扇子を一薙ぎすると、猛吹雪が出現し、《Ⅶ》の手足を凍りつかせ、機動力を奪う。

 ふに子の上昇込みで、リザのBPは25000。まだまだ大きいとはいえ、《Ⅶ》のBPを52777まで削ることができた。

 

「このままアタックフェイズといこうか。まずは《極緑龍》で皇凪に攻撃!」

 

「《ドラグ・ランサー》の『誘導5』発動。5回まで、彼が攻撃を引き受けるよ」

 

「流石に固いね〜〜〜」

 

 ふに子の拳を、霜のついた巨槍で受け止め、《Ⅶ》は弾き返した。

 

「《極緑龍》には『2回攻撃』がある。《極氷龍》《極輝龍》の3体で同時攻撃」

 

「殴ってダメなら〜〜〜、これはどう?」

 

 ふに子が大地を踏みしめると、彼女の足元を起点に草木が生い茂り、やがて《Ⅶ》の足を奪い、縛る枷となる。

 

「そこを妾がサポートして、と!」

 

 それだけなら槍で振り払われてしまうが、アンが放つ閃光が《Ⅶ》の動きを妨げ、同時に草木を成長させ、より強い拘束となる。

 

「わたくしが、決めさせていただきます……!」

 

 駆けて行ったリザが、すれ違いざま、目にも止まらぬ早さで扇子を振るう。彼女が通り過ぎると《Ⅶ》の身体を無数の斬撃が襲い、扇子が閉じられると同時に爆発した。

 

「『デッキガード3』で耐えるよ」

 

「まだまだ! 《極氷龍》《極輝龍》の『2回攻撃』! 《極炎龍》も同時攻撃だ!」

 

「切り裂き──」

 

「蹴り飛ばしっ!」

 

「薙ぎ倒すだけじゃッ!」

 

 覚醒した三人の力任せな振る舞いは、それだけで『滅びを刻む秒針』の命にすら届く。

 

「『デッキガード3』だ。まだ一回分、ワタシの命には届かないよ?」

 

「《極炎龍》で『2回攻撃』。更に攻撃時効果で、一度だけ場のスピリット1体のBPをそのまま《極炎龍》に加算し、ターン終了時までそのクオリアと同じだけの『臨時X』を得る! 俺が選ぶのは勿論、《(セブンス)》……!」

 

「相手が強大であればあるほど……儂の炎はより燃えるッ!」

 

 強敵との邂逅に、フェルの炎のボルテージは上がり、その色を黒く変貌させていく。

 両手に黒炎を纏ったフェルは、それを三本爪のように伸ばし、《VII》の身を燃やし貫く。

 

「ハアッ!」

 

「『デッキガード3』で耐えよう」

 

 しかし、その身体は無数のカードで再補填され、《Ⅶ》は攻撃を受ける前となんら変わらない姿で立ち続けている。

 

「フフ、たしかに強力ではあったけれど、やはり『滅びを刻む秒針』には及ばなかったかな?」

 

「何言ってんだ、まだ終わってないだろうが──《極炎龍》の覚醒中効果! 自分の場に、覚醒(アウェイク)スピリットが3体以上いるなら、1度だけこのスピリットをスタンドし、更に4体以上いるなら『貫通』を与えるッ!」

 

「ハアアアア……ッ!」

 

 再び黒炎を滾らせたフェルが、纏う炎を一点に集中させていく。

 仲間の数だけ強くなる。俺たちの絆の、一つの到達点。

 

極炎黒獄弾(きょくえんこくごくだん)ッ!」

 

「嗚呼──これで、終わりか」

 

 黒い炎が異形の龍に着弾し、そして、敵陣を焼き尽くさんと燃え広がっていく。

 揺らめく陽炎の中で──彼女の口元が、少しだけ笑っているように見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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