TCGアニメの世界で硬派なドラゴン使いになりたいのに、美少女カードにしか縁がない   作:織葉 黎旺

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第五十二話「仲間としてそう呼ばせてほしい」

 

 

「ん~美味しい♡ お酒とこの焼きそばのおかわりをお願いしたいな」

 

「……あいよ」

 

 空き皿を山のように積み上げていく皇凪に、店主は少しだけ眉を顰め、獣人たちの顔は山の高さに比例するように青くなっていく。関わらなきゃよかったぜ、という思いが伝わってくるようだった。

 ぶどうみたいな果物を飲み込んでから、俺は獣人に問う。

 

「で、肝心の情報のことなんだけど」

 

「あ、ああ……人龍の女の目撃情報だよな? それなら、ここから南に行ったところにある、ラグナディアって街だ。なんでも、とんでもない強さの龍が現れて、そこの闘技場を荒らしてるとか」

 

「とんでもない強さ……」

 

 うちの子だとしたら、恐らく奴だろう。仮に違うとしても、もしかしたらこれからの戦力になってくれるかもしれない。

 

「一旦、ふひのほふほーはそれえいいはほへ(次の目標はそれでいいかもね)

 

「食いながら話すな」

 

 ごくん、と喉を鳴らし、麦酒を流し込んでから皇凪は言った。

 

「あー、かなり食い溜めできた。それじゃお会計よろしく~」

 

「……あいよ」

 

 獣人たちが、ようやくか、という顔をした。本当に、尻の毛まで毟る勢いだったもんな。ちゃっかり携帯食と水のボトルまで購入してるし。

 

「じゃ、ありがとね~。ご馳走様でした♪」

 

『二度と来んな!!』

 

 獣人たちの罵声を尻目に、俺たちは店を出て、街の外へと向かう。

 

「……じゃあ、そろそろ話を聞かせてもらうか」

 

 三歩後ろを歩く、濡れ羽色の髪の女を見上げる。薄いヴェールのかかった顔からは、相変わらず感情が読み取れない。

 

「えっと……《悪夢龍》、まずは助けてくれてありがとう」

 

「ん……当然」

 

「でも、お前はいったいなんなんだ……? 俺、お前を積んだ覚えも見た覚えもないんだけど」

 

 無論、皇凪のケースに入っていたなんてこともないはずだ。アイツの嫌いな女の子(メスドラゴン)だし。小さい翼がある程度だから、分かりづらいけど。

 

「……御主人様に、拾われた」

 

「俺が……?」

 

 表情は変わらずとも、どこか不満げに発せられた声に記憶を辿る。

《ナイトメア・デスサイス》を出すためのカード、《空無覚醒》を引いた時に感じたデジャヴを元に、答えは出た。

 

「あっ、もしかして合宿の時の……!」

 

「……そう」

 

 ──合宿の際の肝試し。祠の上にある目印を持って戻るという時に、置かれていた黒いカード。どうやら、ソレがこの子らしかった。その後の、綾吊(あやつり)による襲撃のゴタゴタで、完全に忘れてしまっていたけれど。

 

「でも、なんで俺が御主人様……?」

 

「……わたしのこと、連れ出してくれたから」

 

「もしかしてキミ、あの祠を壊したんじゃないか?」

 

 皇凪が芝居がかった様子で言った。

 

「《機関》の保養所の裏山には、ある強大なカードが封印されている──ってウワサがあったからね。その正体がこの子だとしたら、納得だ」

 

「壊した覚えなんてないんだけどなあ」

 

「……賑やかだったから、気になって」

 

「自分で抜け出したのかよ」

 

 自由すぎる。全然封印されてないじゃん。

 

「とはいえ、なんで今まで出てこなかったんだ?」

 

「……見極める必要が、あった」

 

そう呟いた彼女の眼差しには、どこか重く、真剣な色が見えた。

 

「俺や相棒たちが、信頼できる奴かどうかをか?」

 

「…………?」

 

「違うんかい」

 

 まあ、何にせよお眼鏡に適ったなら何よりだ。いま大事なのは、多少強引だったとはいえ彼女が俺を助けてくれたことと、俺たちはいま猫の手も借りたい状況だってこと。

 

「なあ、《悪魔龍》。よければこれからも、俺たちのために力を貸してくれないか?」

 

「勿論。わたしは、御主人様の()()だから」

 

「いや、全然そんなことないよ?」

 

 そんな自分を卑下するようなこと言わないでほしいが。それに、そこまで懐かれるようなことをした覚えもないけど……

 

「……なるほど、そういうタイプね。いやあ、ハッキリしてるのは分かりやすくて好感が持てるね」

 

「?」

 

「なんでもないよ。それより、もっと考えることがあるんじゃないのかい?」

 

 皇凪の意味深な反応に疑問を抱いたが、その通りなのもたしかだ。改めて、彼女に向き直る。

 

「呼び方、変えてもいいかな。《悪夢龍》って呼ぶのはカッコイイけど長いし、なんか他人行儀だから」

 

「……道具の銘は主が決めるもの。御主人様の好きに呼んだらいい」

 

「んーと、じゃあ……メア、ってのはどうかな」

 

「……メア、それが、わたしの呼称」

 

「ああ。()()()()()そう呼ばせてほしい」

 

「……()()みたいで、悪くない」

 

 満足気に頷いたメアに、そっと手を差し出す。

 

「改めてよろしく、メア!」

 

「……よろしく、御主人様」

 

 黒いレースの手袋に包まれた冷たい手の平が、俺の手に重なった。その様子を皇凪だけが生温かく見守っていた。

 

 

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