TCGアニメの世界で硬派なドラゴン使いになりたいのに、美少女カードにしか縁がない 作:織葉 黎旺
「ん~美味しい♡ お酒とこの焼きそばのおかわりをお願いしたいな」
「……あいよ」
空き皿を山のように積み上げていく皇凪に、店主は少しだけ眉を顰め、獣人たちの顔は山の高さに比例するように青くなっていく。関わらなきゃよかったぜ、という思いが伝わってくるようだった。
ぶどうみたいな果物を飲み込んでから、俺は獣人に問う。
「で、肝心の情報のことなんだけど」
「あ、ああ……人龍の女の目撃情報だよな? それなら、ここから南に行ったところにある、ラグナディアって街だ。なんでも、とんでもない強さの龍が現れて、そこの闘技場を荒らしてるとか」
「とんでもない強さ……」
うちの子だとしたら、恐らく奴だろう。仮に違うとしても、もしかしたらこれからの戦力になってくれるかもしれない。
「一旦、
「食いながら話すな」
ごくん、と喉を鳴らし、麦酒を流し込んでから皇凪は言った。
「あー、かなり食い溜めできた。それじゃお会計よろしく~」
「……あいよ」
獣人たちが、ようやくか、という顔をした。本当に、尻の毛まで毟る勢いだったもんな。ちゃっかり携帯食と水のボトルまで購入してるし。
「じゃ、ありがとね~。ご馳走様でした♪」
『二度と来んな!!』
獣人たちの罵声を尻目に、俺たちは店を出て、街の外へと向かう。
「……じゃあ、そろそろ話を聞かせてもらうか」
三歩後ろを歩く、濡れ羽色の髪の女を見上げる。薄いヴェールのかかった顔からは、相変わらず感情が読み取れない。
「えっと……《悪夢龍》、まずは助けてくれてありがとう」
「ん……当然」
「でも、お前はいったいなんなんだ……? 俺、お前を積んだ覚えも見た覚えもないんだけど」
無論、皇凪のケースに入っていたなんてこともないはずだ。アイツの嫌いな
「……御主人様に、拾われた」
「俺が……?」
表情は変わらずとも、どこか不満げに発せられた声に記憶を辿る。
《ナイトメア・デスサイス》を出すためのカード、《空無覚醒》を引いた時に感じたデジャヴを元に、答えは出た。
「あっ、もしかして合宿の時の……!」
「……そう」
──合宿の際の肝試し。祠の上にある目印を持って戻るという時に、置かれていた黒いカード。どうやら、ソレがこの子らしかった。その後の、
「でも、なんで俺が御主人様……?」
「……わたしのこと、連れ出してくれたから」
「もしかしてキミ、あの祠を壊したんじゃないか?」
皇凪が芝居がかった様子で言った。
「《機関》の保養所の裏山には、ある強大なカードが封印されている──ってウワサがあったからね。その正体がこの子だとしたら、納得だ」
「壊した覚えなんてないんだけどなあ」
「……賑やかだったから、気になって」
「自分で抜け出したのかよ」
自由すぎる。全然封印されてないじゃん。
「とはいえ、なんで今まで出てこなかったんだ?」
「……見極める必要が、あった」
そう呟いた彼女の眼差しには、どこか重く、真剣な色が見えた。
「俺や相棒たちが、信頼できる奴かどうかをか?」
「…………?」
「違うんかい」
まあ、何にせよお眼鏡に適ったなら何よりだ。いま大事なのは、多少強引だったとはいえ彼女が俺を助けてくれたことと、俺たちはいま猫の手も借りたい状況だってこと。
「なあ、《悪魔龍》。よければこれからも、俺たちのために力を貸してくれないか?」
「勿論。わたしは、御主人様の
「いや、全然そんなことないよ?」
そんな自分を卑下するようなこと言わないでほしいが。それに、そこまで懐かれるようなことをした覚えもないけど……
「……なるほど、そういうタイプね。いやあ、ハッキリしてるのは分かりやすくて好感が持てるね」
「?」
「なんでもないよ。それより、もっと考えることがあるんじゃないのかい?」
皇凪の意味深な反応に疑問を抱いたが、その通りなのもたしかだ。改めて、彼女に向き直る。
「呼び方、変えてもいいかな。《悪夢龍》って呼ぶのはカッコイイけど長いし、なんか他人行儀だから」
「……道具の銘は主が決めるもの。御主人様の好きに呼んだらいい」
「んーと、じゃあ……メア、ってのはどうかな」
「……メア、それが、わたしの呼称」
「ああ。
「……
満足気に頷いたメアに、そっと手を差し出す。
「改めてよろしく、メア!」
「……よろしく、御主人様」
黒いレースの手袋に包まれた冷たい手の平が、俺の手に重なった。その様子を皇凪だけが生温かく見守っていた。