TCGアニメの世界で硬派なドラゴン使いになりたいのに、美少女カードにしか縁がない   作:織葉 黎旺

58 / 59
第五十六話「ど〜〜〜でもいい」

 

 

 

「やっと着いた……!」

 

 ──往来は、熱気だけでなくスピリットの活気に溢れている。

 カラッとした直射日光が肌を焼いているが、それに負けじと大通りは客と商人で賑わっていた。

 ここが、人龍の目撃情報があったという街──ラグナディア。

 

「異国情緒あるねえ。観光でもしてく?」

 

「後にしろ。まずは情報収集からだ」

 

 とはいえ、どうやって調べよう。

 足で探す? いやいや、途方もない。

 聞き込み? それはもうキリがない。

 一旦皇凪を酒場にでもぶち込んで、情報を拾ってきてもらうか……などと考えていたところで、近くにいた男たちの会話が耳に入った。

 

「なあ、今日の闘(・)技(・)は誰に賭ける?」

 

「今日のメンツなら『破壊者(ブレイカー)』と行きたいところだが、最近の勢いを考えるとアイツも捨て難いな。ほら、新参の──人(・)龍(・)の(・)女(・)」

 

「…………!」

 

 去りゆく男たちの背中を見つめ、詳細を確かめようとして、それが不要なことに気づく。

 彼らが向かう先に見えるのは、この街で一番大きな建物。器のような形をしたソレは恐らく、闘技場(コロッセオ)。

 

「目的地が決まったね」

 

「ああ……」

 

 まったくもって不確かな情報。本当に相棒なのかも分からない。

 しかしそれでも、俺は隠し切れない期待を抱いて、闘技場へと歩き出した。

 

 

 *

 

 

『お待たせしました。本日の闘技を開戦致します!!』

 

 司会らしき猿のスピリットの宣言に、会場中からウオオオオ、と雄々しい歓声が上がった。

 

『まずは乱戦の部ですね。北側から《掃除屋(スイーパー)》東側から《戦闘狂(バーサーカー)》』

 

 紹介と共に、対応する方角の格子が音を立てて開き、闘士達が入場してくる。

 

「西からは大本命の《破壊者(ブレイカー)》。そして南側からは最近のダークホース!」

 

 とてとてと、やる気なさげに入場してきたのは──

 

「今日はどんな結果を見せてくれるのか!? 《強欲龍(グリーディー)》の入場だーッ!」

 

 手入れのされていない、ボサボサの長髪。それを隠すように深く被られたフード。イカつい男たちに引けを取らない恵体。

 

「ふに子……!」

 

『さあ、それでは今回勝ち残るのは誰なのか──試合開始です!!』

 

 再会の衝撃を、闘技場に鳴り響く銅鑼(ゴング)が搔き消した。

 同時に、《戦闘狂(バーサーカー)》が駆け出し、《破壊者(ブレイカー)》へと襲いかかる。

 

「獲物はっけーん! ぶち殺す!!」

 

「つまりオマエは壊してイイヤツってことだよな!?」

 

 斧と剣がぶつかり、甲高い音と共に火花が散る。一合ごとに上がるボルテージと、会場全体に高まっていく熱気が、目の前で行われているのが命懸けの戦いであることを感じさせる。

 

「アタシも仲間に入れてよ♪」

 

「がっ」

 

「クッ!?」

 

 そこに、鞭の一閃が割り込む。

 振り手は勿論《掃除屋(スイーパー)》。鋭く的確な一撃は男たちの動きを怯ませ、悲痛な悲鳴を上げさせる。

 

「なんだい、張り合いがないねえ」

 

 目にも止まらぬ早さで複数回叩きつけられた鞭に、《戦闘狂(バーサーカー)》《破壊者(ブレイカー)》が苦悶の声を上げながらダウンする。

 

「さあ、アンタはもう少し楽しませておくれよ!」

 

「………………」

 

 鞭がしなり、空を切り、地を打つ鋭い音が響く。男二人を軽く倒した驚異的な鞭の音に、しかしふに子は顔色を変えない。

 

「………………いい」

 

「え? なんだい? ボソボソ喋らずにデカイ悲鳴を上げなァ!」

 

 口上の後、鞭が亜音速で振るわれる致命的な音が響く。しかしそれに続いたのは悲鳴ではなく、バシュッという短く乾いた音。

 

「な……!?」

 

「ど〜〜〜でもいい、つってんの」

 

 ふに子が振られた鞭を片足で踏みつけ、そのまま掴んだ得物を引ったくり、《掃除屋(スイーパー)》の身体は宙を舞った。

 落下音と、肺から絞り出されたような小さな悲鳴。敵は呆気なく倒れ、最後に立っているのは緑の龍のみ。

 

『き……決まったァァァ! 刹那の決着、乱戦を制したのは強欲龍(グリ──ディ──!)』

 

「ワァ────!!」

 

 会場中の歓声が、彼女へと送られる。しかしふに子は小さく嘆息して、興味なさげに踵を返す。

 

「おい、待てふに子! ふに子──────ッ!」

 

 ふに子は俺に気づくことなく、暗い闘技場の内側へと消えていった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。