TCGアニメの世界で硬派なドラゴン使いになりたいのに、美少女カードにしか縁がない   作:織葉 黎旺

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総合日刊入りのおかげかめちゃくちゃ伸びてて恐縮しております。皆様ありがとうございます!

今回ルール説明をガチガチにしたせいで結構長い上に肝心のルールが分かりづらい可能性が高いので、雰囲気で読んでください。例えるなら、シャドバディバトルマスターズ王くらいの感じ。ごちゃごちゃ過ぎだろ!!


第五話「貴様らはその贄となれ」

 

 

 

 

「で、できたー!」

 

 出来上がったカードの束──デッキを掲げて、翔がキラキラと目を輝かせた。

 

「うん、有り合わせにしてはいい物ができたんじゃないかな。構築自体も分かりやすいし、あとは回しながら調整していこう」

 

「龍一、相手してあげたら?」

 

「え、俺? 草汰のが教えるの上手いだろうし、耀のがやっててオモロいだろ」

 

「教えるのが上手いからこそ、後ろにつくのさ」

 

「それに、飛車角落ちの今なら丁度いいんじゃないかしら?」

 

 そう言われてしまうと、その通りではあった。フェルだけのいまは、出力が全然物足りないので。

 

「主! 是非とも戦いたいぞ!」

 

「わっ、急に出てくんなって」

 

 デッキケースから飛び出したフェルが、俺の腕に飛びついてきた。同時に、ガタッと翔の椅子が揺れた。

 

「き、綺麗なお姉さんだ……」

 

「ふっ、見る目のある小童ではないか! 新入りか!?」

 

「転校生の翔と、相棒の《ムーンライト・ドラゴン》だ」

 

 一人と一匹は揃って、静かに会釈した。それを見て、初めは上機嫌そうだったフェルが眉根を寄せる。

 

「……主。絶対戦うぞ」

 

「え、まあいいけど……」

 

 フェルが飛び出してきた時点で、初めからそのつもりではあった。彼女にはこの前、闇札組のバトルで大活躍してもらったからだ。命を懸けたファイトをした分、こういうカジュアルな部分でガス抜きしてあげたかったので。

 

「んじゃ、決闘場(バトルフィールド)に行くか」

 

 店内入って左がレジ。奥がシングルやオリパ、サプライコーナー。

 右側にあるのがスペースで、その端にある特徴的なスタンディングテーブル──それがこの店唯一の、決闘場への転送装置。

 観戦者は近くに立ち、対戦者は向かい合ってテーブルにデッキをセットする。すると俺たちの身体は光に包まれ、決闘場へと運ばれる。

 

「わあ、すごい……!」

 

 翔が瞳を輝かせてあちこちを見る。俺たちの目の前に広がる、芝生の広いフィールド。すぐ側に数十名ほどが座れる観客席があり、二人がそこで見守っている。

 そこだけ見るとサッカーのフィールドのようにも見えるが、俺たちの間にあるのはラインではなく、前四(まえよん)後二(うしろに)の大きなマスだった。

 

「ここが決闘場。スピリットたちのいる異世界《アナザー》と僕たちの世界との境目に存在する空間さ。スピストをするためだけに作られていて、ここでならスピリットたちも自由に戦える」

 

 観客席で、草汰の《ライガー》と、耀の《ラファエル》が()()顕現した。大きな大会ではマナー違反だが、客席に余裕があったり、こういったカジュアルな場であれば許可されている。

 

「よし、んじゃ早速やるか」

 

「はいっ!」

 

「「『レッツ・ストラグル』!!」」

 

 宣言と共に山札から自動的にカードが5枚引かれ、俺たちの目の前で浮遊する。そして山上から2枚が自動的に()()()()エナゾーンにセットされる。カードから抽出された無色のエナ──エネルギーの結晶で、小さな宝石みたいな見た目だ──が、ふよふよと手札の周りを漂う。

 

「今回は俺が先攻を貰ってターンの流れを説明するぜ」

 

 まずはスタートフェイズ。直前のターンにレストさせていたエナやスピリットをスタンド状態に戻すが、最初の1ターン目は特にやることがない。

 

「次にアップフェイズ、準備段階だな。まずは山札から1枚引いて、そのあと手札から1枚を()()()()エナとして置ける」

 

 手札を1枚足元に投げると、カードの色に対応したエナが発生した。ここまでで先攻の処理は一度終わる。

 

「で、ようやくメインフェイズに突入する。エナを消費してスペルを使ったり、スピリットを出したり、なんでも自由にできるタイミングだ。とりあえず、《ベビー・ドラコキッド》を召喚」

 

 無色のエナが2つ、中央左のマスに投下され、それが光とともに割れると同時に、腰に卵の殻を付けた小さなドラゴンが現れた。このデッキの数少ない純粋なドラゴンであり、癒し(マスコット)である。

 

「《ベビー》の効果で、手札から1枚をエナへ。更に無色エナを1消費して、ウェポンカード《ドラグ・スピアー》を、ライトに装備」

 

「龍一クンが武器を持ってる……!?」

 

「スピストの醍醐味の一つだね。プレイヤー自身もウェポンを装備して、スピリットと共に戦うことができるんだ」

 

「このままアタックフェイズといきたいところだが、先攻1ターン目は攻撃できない。このままエンドフェイズに移行して、翔にターンを譲るぜ」

 

 盤面を分かりやすく整理しておくと、

 

  ■ ■

 ■■■■

 ■竜■■

  ■ 槍

 

 という状態である。いや、分かりづらいかも。

 

「ぼ、僕のターン! スタートフェイズ、でアップフェイズ?」

 

 辿々しい手つきで山札からカードを引き、迷いながらもエナに置く翔。そのあとに、フィールドに広がるマスが、ガガガと音を立てて広がった。

 

「わ、何これ?」

 

「アップフェイズでは、『クオリア』も1増えるのよ! 先攻1ターン目はないけどね」

 

 クオリアというのは、要するにサイズ上限だ。

 スピリットはそれぞれ、スピリット同士の戦いで参照する『BP』と、プレイヤーのライフを削る時に参照する『クオリア』を持っていて、盤面のスピリットのクオリア合計は、プレイヤーのクオリア上限を超えることはできない。

 クオリアは最初は2から始まり、アップごとに1ずつ増えていく。数値に上限はない。

 

「エナとクオリアという2つのリソースを如何に稼ぎつつ戦うか、基本的には隣接したマスしか殴れないスピリットをどこに展開するか──それらの高度な戦略性を意識しながら、相手の10点のライフゲージを削りきるのが『スピリット・ストラグル』なんだよ!」

 

 草汰が熱弁した。実際それは、スピストの醍醐味ではある。

 

 クオリア上限を意識しながら10個のライフゲージを削り取るのは、中々に難しい。順当にリソースを稼いで圧殺(コントロール)するのか、逆にそれを早期に吐ききって速攻(アグロ)するのか、相手の動きに合わせながら展開(ミッドレンジ)するのか──それらは、プレイスタイルにもよるし、どれが一概に正解とは言えない。

 

「む──難しそうだけど、とっても面白そう! ボク頑張るよ! メインフェイズ! 中央右側に《ベビー・ドラコキッド》を召喚!」

 

 先程と同じような演出で、別色(2Pカラー)の小竜が出てきた。うちの小竜と向かい合い、お互い小さく火を吹いて威嚇し合っている。かわいい。

 

「さらにボクは、後列レフトに《竜鱗の盾》を装備」

 

 翔の左手に光が集まり、盾の形になった。ウェポンには武器や防具などいくつか種類があり、見た目である程度性質がわかる。翔が付けたのは無論防御を上げるものだ。

 

「じゃあこれでアタックフェイズ! 《ベビー・ドラコキッド》でアタック!」

 

『ピャオー!』

 

 指示を受けて小さく声を上げた小竜が、トコトコと勢いよく駆け出す。アタックは基本的にプレイヤーに向かうが、隣接したマスにスタンドしているスピリットがいる場合、防御側はそのカードでブロックを宣言できる──が、まあここは受けていいだろう。

 

「アタックを通す! くっ──!」

 

 飛びかかってきた小竜の頭突きが、目の前でライフの障壁に阻まれる。だがそこに小さなヒビが入って、バイブレーションみたいな振動と衝撃が、全身に響いた。

 

「だが俺のライフが減ったことで、このカードを使える。カウンタースペル《怪我の功名》を発動! 俺のライフが減ったので、クオリアを1上昇する」

 

 スペルカードはバトルをサポートする札で、いくつか種類がある。カウンタースペルはその中でも、特定の対抗条件を満たさない限り使えない代わりに、コストなしで使える特殊なものだ。

 

「楽しい──スピストって、楽しいね!」

 

 思わぬカードに目を丸くした後、翔は歯を見せて笑った。俺も釣られて微笑む。

 

「だろ? これからもっと面白くなるぜ」

 

「ボクはこれで、ターンエンド!」

 

 

 *

 

 

 そのまま順調に試合は進み、終盤戦に突入する。

 お互いエナは十分溜まっているが、手札があってライフが少ない翔と、クオリアが溜まって手札がない俺。お互い状況は五分というか、どちらが押し切ってもおかしくはない。

 

「ボクのターン──ドロー!」

 

 勢いよく翔がカードを引く。その右手は心なしか光って見える。来るか、ビーストが。

 

「白2エナと無色の3エナを払って──《ムーンライト・ドラゴン》を中央右側に召喚!」

 

『あるじは、ワタシが護ります』

 

 ずっと肩に乗っていた()()ムーンライトが、盤面に飛び出して巨大化する。

 

「ムーンライトが場に出た時、ボクのライフを3回復する!」

 

『其の身を蝕む瑕疵よ、消えてなくなれ──!』

 

 ムーンライトが翼を広げると同時に、柔らかな月の光が翔に降り注ぎライフを7まで上昇させた。神々しいドラゴン、カッコよすぎる。

 

「アタックフェイズ! ムーンライトでアタック!」

 

『グオオオオ!!!』

 

「ぐっ……!」

 

「2体の《ベビー・ドラコキッド》も続いてっ!」

 

 白い熱線が俺のライフを焼き、ドラコキッドの頭突きが続けざまにヒットする。ムーンライトのクオリアは4、ドラコキッドは1ずつ。7あった俺のライフは、一気に1になった。

 

「いくよ龍一クン! 《ドラグ・ソード》でとどめだ!」

 

 翔が、構えた剣を振りかぶって近づいてくる。障壁を破ったそれを──俺は、両手で挟んで止めた。

 

「カウンタースペル、《白刃取り》を発動するぜ。自分がウェポンで攻撃されている時、それを無効にして1枚引く!」

 

「く、ターンエンド……!」

 

「俺のターン……ドロー!」

 

 圧倒的劣勢。それを覆せるのはもう、アイツしかいない。

 

「俺は──右端に《獄炎龍インフェルノ・ドラグーン》を召喚!」

 

『待っていたぞ!』

 

 赤2エナと4エナが盤面で渦を巻く炎に飲まれる。そこから現れたのは、マグマのような赤黒いドレスを纏った、燃えるような紅髪の相棒。

 場に出ると同時に、彼女はムーンライトを指さした。

 

「ようやく屠れるな、貴様を……!」

 

「…………え、何の話? 何か因縁とかあるの?」

 

『特に心当たりはございませんが……』

 

「因縁などない! だが、貴様は──我が主の視線を奪ったッ!」

 

「……あっ」

 

 たしかに、デカイドラゴンカッケ〜! ってめちゃくちゃムーンライトのことを羨んで見ていた。そのせいで彼女は、嫉妬の炎を燃やしていたのか。

 

「主に、我の方がすごいドラゴンってことを見せつけてやる! 貴様らはその贄となれッ!」

 

「んじゃ、結果で示してもらうぜ──アタックフェイズ! いけフェル!」

 

「心得た!」

 

 プレイヤーへの道を阻むように、小竜と巨龍が壁になっている。隣接する二つのマスにモンスターがいる場合、プレイヤーではなくどちらか片方しか殴れないのだ。

 

「《獄炎龍》の攻撃時効果。このカードのBP以下の相手スピリットを1体破壊する!」

 

「消えろ有象無象ッ!」

 

 吐いたブレスが小竜を飲み込み、燃やし尽くして消滅する。

 

「さらに《獄炎龍》は自分のライフが3以下の時、相手スピリットが破壊される度にBPを2000、クオリアを1上昇できる!」

 

「ガアアアア!!!」

 

 フェルが殺意のボルテージを上昇させ、ムーンライトに飛びかかる。1000負けていたBPは逆転し、サイズなど関係ないと言わんばかりに、力任せに取っ組み合い、放り投げ、鋭利な爪で切り裂いた。

 

「ム、ムーンライトは『エナガード1』を持っている! 場を離れる時1度まで、エナを墓地に送って耐えるよ!」

 

『あるじを残して散る訳にはいかない』

 

 一度散った身が、エナを消費して再び舞い戻った。だが活路は開けた。

 

「《獄炎龍》は『2回攻撃』を持ってる。このまま続けて殴るぜ」

 

「脇がお留守だぞ!」

 

 腕を振りかぶって放った斬撃が《ベビー》を屠り、フェルはボルテージを高めながら翔のライフを削らんと飛ぶ。だがそこに、ムーンライトが立ちはだかる。

 

「ムーンライトの効果発動! 相手の攻撃をこのカードに誘導できる……!」

 

『この身を盾としましょう……!』

 

 ブレスから主の身を守るように、ムーンライトが立ち塞がる。炎が消えた頃にはその姿はどこにもなく、フェルもその動きを止めた。

 

「はあ、何とか耐えた……」

 

「いや──惜しかったが、これで決めるぜ。2コストでクイックスペル、《連撃》を発動! スピリットを1体選んでスタンドさせる!」

 

「怒りの炎は消えることなく燃え続ける!」

 

 火の粉を散らして、獄炎龍は再び起き上がった。

 

「このターン四回スピリットが破壊されていることで、獄炎龍のクオリアは4、BPは8000上昇している」

 

 現在の数値(スタッツ)は15000/7。大きく飛び上がったフェルは、大きく伸びた爪を構えて急降下した。

 

「獄炎龍でプレイヤーに攻撃……!」

 

「これで……終わりだッ!」

 

「う、うわーっ!」

 

 ライフゲージが一気に削れる。光とともに空間は崩壊し、気づけば元の店内に戻っていた。

 

「お疲れ。いい試合だったじゃない!」

 

「うん、初心者であれだけやれるのはすごいよ。将来有望だね」

 

 草汰と耀が翔の肩を叩いた。「あ、ありがとう」と彼は照れたように頭をかいて、深く息を吐いた。

 

「ああ、負けちゃったけど楽しかったな……でもとても悔しいな……!」

 

「普通にギリギリのバトルだったよ。翔、お前センスあるな」

 

「えへへ、たまたまだよ」

 

「次はアタシとやらない!?」

 

「いまのうちに、その次は予約させてもらうよ」

 

「うん! みんなでたくさん遊ぼう……!」

 

 ワイワイと騒ぐ三人を見て、俺は小さく口角を上げる。

 なんだかんだいっても、やっぱり俺は、スピストが好きだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 










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