鑑定を使って集めた宝剣を、貸し出したり授けたり見せびらかしたりもっと集めたりする道楽冒険者   作:かてい

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1 宝剣はこの世界にある。

 俺が転生した世界には、宝剣というアイテムがある。

 一般的には伝説の剣とか魔剣とか、そういう風に呼ばれるアイテムを一緒くたにして宝剣と呼ぶのだ。

 剣という名はついているものの、その形状は剣に限らない。

 槍もあれば、斧もある。

 弓や魔術に使う杖すら、それが伝説級のアイテムなら宝剣だ。

 鎧だって宝剣だし、なんなら指輪や本すら宝剣扱いされる。

 とんでもない世界だ。

 

 そんな世界で、俺は宝剣に魅入られた。

 というか、俺が転生した時に手に入れたチートは、まさに宝剣を扱うためのチートだったのだ。

 そうすると、宝剣を扱って無双するのが楽しくて楽しくて仕方がなくなる。

 最終的に俺は宝剣を集めるためにダンジョンを潜り、魔物を倒すようになっていた。

 

 結果、すごい数の宝剣が手元に集まってしまったのである。

 こんなに集めてどうしろと?

 というくらい大量だったものだから、俺はその扱いに困ってしまった。

 だってこれだけあっても、一度に使える宝剣は数本がせいぜい。

 せっかく宝剣を集めたのに、腐らせてしまうなんてとんでもない。

 ならばどうするか。

 

 考えた末に出した答えは――店を開くことだった。

 自慢の宝剣コレクションを見せびらかすために。

 とはいえ、ただ見せびらかすのは宝の持ち腐れ。

 だから店としては色々とやっているわけだが。

 まぁ、はっきり言って客は少ない。

 

 それが俺の店、「宝剣の棚」。

 しかし、別に客は少なくてもいいのだ。

 何せこの店は――俺が道楽でやっていることなのだから。

 

 

 +

 

 

 朝になると、俺はまず店の掃除を始める。

 開店の二時間前くらいにおきてきて、せっせと宝剣達を手入れしていくのだ。

 もちろんこれは、コレクションである宝剣を眺めて悦に入るためである。

 掃除は真剣にやるけどな?

 

 で、掃除が終わったら軽く朝食を済ませて、身支度を整えて店を開ける。

 時刻は十時を回るかどうか。

 至極一般的な開店時間だ。

 

 まぁ、客なんてそうそうこないから、カウンターで時間を潰すしかないのだが。

 やることと言えば、おもに2つ。

 本を読むか、宝剣を眺めるか。

 割と前世の転生モノみたいな軽いノリの娯楽小説とか存在するこの世界では、暇なら本を読んで時間を潰すのが普通。

 俺の場合は、そこに宝剣を眺めて悦に入るという独自の趣味が加わる。

 まぁ、なにもない日は本当にそれだけで一日が終わるんだけど。

 それくらい、この店は暇だ。

 客が来ない。

 

 ――が、この日は違った。

 

 不意に、扉が開いたのだ。

 俺は先程から眺めていた宝剣をカウンターに置いて客を出迎える。

 

「いらっしゃいませ」

 

 それに気付いた俺は、客を迎え入れるべく挨拶をする。

 挨拶は大事だ。

 “挨拶剣オジギ”もそう言っている。

 

「失礼するわ」

「……って、シェリカか」

「シェリカか……とはなによ、()()()

 

 一週間ぶりの客だったので、少しだけ気合を入れて挨拶したのだが。

 やってきたのは見知った顔だった。

 ――なお、アズマというのが俺の名だ。

 名字はない、平民の出だからな。

 

 そして、やってきたのは重そうな金属鎧に身を包んだ金髪の女性。

 ウェーブがかった髪を一つにまとめ、ポニーテールにしている。

 如何にも女騎士といった容貌の少女だ。

 名をシェリカ・パスフィールド、俺の店の数少ない常連である。

 

「相変わらず、見る人が見たら卒倒しそうな品揃えね」

「それは褒めているのか? それとも貶しているのか?」

「褒めてるのよ、だってほら――」

 

 そういいながら、シェリカは店に並んだ剣に視線を向ける。

 この世界基準で成人している割に小柄な女性なので、見上げないと剣が目に入らないのだ。

 

「――ここにある剣、()()()()でしょう?」

「そりゃそうだ、『宝剣の棚』なんて名乗っておいて、棚に宝剣以外があったら詐欺だろ」

「一般的には、棚にある品物が全部宝剣って言う方が詐欺臭いわよ。それこそ――貴方じゃなければ」

 

 そりゃまた、ずいぶんと買ってくれたもので。

 この店の宝剣を見て、そう言ってくれるのはシェリカくらいなものかもしれない。

 他の連中は、そもそもこれが宝剣だと信じなかったり、信じているからこそ圧倒されて何も言えなくなっているからな。

 

「剣以外の宝剣もあるぞ」

「いや別に、見ないし」

「ところで……新しい宝剣を仕入れたんだ、見てかないか?」

「うっ……また見つけたの? ちょっと、その聞かせたそうな顔をやめなさい!」

 

 いいながら、俺は店のカウンターにおいてある宝剣をシェリカに見せた。

 ああ、宝剣。

 素晴らしくも輝かしき宝の剣。

 これほど、人を魅了するものが他にあるだろうか。

 

「これで、貴方が“宝剣狂い”じゃないってのが驚きね」

「宝剣オタクと呼んでくれ。ささ、見ていくか?」

「オタク……? まぁいいわ。見ない……と言いたいところだけど、普通に気になる。どういうの?」

 

 お、食いついた。

 鎧姿から見て分かる通り、シェリカは戦士だからな。

 宝剣にどういう物があるか、というのは気になるらしい。

 

 見せたのは鍔に宝石のようなものが埋め込まれた、一振りの短剣だ。

 刀身が黒く、どこか妖しさが感じられる。

 

「“殺害剣キラー”。これを刺された相手は問答無用で死ぬ」

「は? いやいや危険すぎでしょ」

「と、言いたいところだが……制約は結構大きい」

 

 この世界の宝剣は、全て“◯◯剣◯◯”という命名法則で名前が決められている。

 形状に寄って剣の部分が槍になったり斧になったりするけれど。

 んで、“殺害剣キラー”は名前の通り相手を殺すための剣。

 ただし色々と使用には面倒な条件がある。

 

「まずその一、相手に呪い耐性がないこと」

「なるほど、刺した相手を呪い殺す剣なんだね」

「そういうこと。耐性スキルのランクが高いほど効果が薄れる。なんなら、最低ランクの呪い耐性でも一時間以内に適切な処置をすれば助かるだろうな」

「そこらの一般人でも命が助かる可能性高いじゃない。少なくとも、アタシやアズマ(アンタ)は絶対ムリでしょ」

 

 この世界には、当然の権利のようにスキルという概念がある。

 剣を振るうにも魔術を使うにも、スキルを持っていなければ話にならない。

 そのうえで、ランクが高くないと才能がない。

 才能が可視化されるというのが、いいことなのか悪いことなのか。

 スキルのない前世を経験した俺でも、いまいち判断はつかなかった。

 まぁそもそも、この世界でも()()()スキルを可視化することは難しいというのは置いといて。

 

「その二、魔力を流し込まないと効果が発揮されない」

「宝剣としては欠陥じゃない」

「そのうえ、相性の良い魔力じゃないと効果が薄れる」

「欠陥品のくせに、更に条件があるの!?」

「まぁ、効果は薄れるだけだから、無理やり膨大な量の魔力を流し込めば問題なく使えるけどな」

 

 この世界には魔力というものが存在していて。

 魔術をはじめとした一部のスキルには魔力が必要となる。

 剣術の中でも、剣の刃を飛ばすスキルとかには魔力が必要だな。

 

 んで、宝剣はその魔力を使用せずに宝剣が持つ特別な能力を使用できるのが基本。 

 中にはこの“殺害剣キラー”のように魔力を必要とする宝剣が存在するものの。

 そういった宝剣は、一般的に宝剣としては欠陥品と言われている。

 

 まぁ、俺から言わせてもらえば、魔力が必要な宝剣は独特な効果の宝剣が多い。

 そういう宝剣は、思わぬところで日の目を見ることもあるのだ。 

 捨てたもんじゃない。

 

「それに……刺さなきゃ効果がないのに短剣だから戦闘で使いにくいし……派手だから暗器にも向いてないわよ」

「……まぁ、この“殺害剣”がピーキーなのは否定しない」

「アンタでも擁護できない宝剣ってあるのね……」

 

 宝剣の棚の店主として、宝剣に魅入られたものとして。

 俺は全ての宝剣を愛している。

 そんな俺でも、宝剣の魅力を伝えられない時くらい……ある!

 悔しいことこの上ないが。

 

「ま、“殺害剣キラー”に関してはこのくらいだ。確かに使いにくいけど、呪殺スキルは貴重なスキルだ。使い道はどこかにあるだろうさ」

「そうねぇ……んじゃ、アズマ」

 

 と、そこで話題を切り替えて。

 シェリカが少しだけ真面目な顔をする。

 友人同士の雑談ではなく、客として俺に用があるということだ。

 

 

「宝剣のレンタルを頼みたいの。いいかしら」

 

 

 これこそが、俺の店のメインコンテンツ。

 宝剣のレンタル。

 女騎士シェリカ――如何にも国に仕えていそうな偉い騎士って感じの風貌の少女が俺の店に足繁く通う、最大の理由でもあった。




宝剣と呼ばれるマジックアイテムを扱う、最強系主人公のお話。
どちらかというと世界観は緩めだけどシリアスもなくはない感じです。
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