鑑定を使って集めた宝剣を、貸し出したり授けたり見せびらかしたりもっと集めたりする道楽冒険者   作:かてい

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2 俺には鑑定がある

 俺、アズマは転生者である。

 そんな俺がこの世界に転生したばかりの頃。

 「鑑定」以外のチートらしいチートスキルが俺にはなかった。

 とはいえ、鑑定スキルは非常に便利なもので、鑑定した相手の能力、スキル、他にも様々なものが解る優れもの。

 これがあったからこそ、凡庸な現代オタクでしかなかった俺が異世界で生きていくことができたのである。

 ただ、この鑑定スキルには欠点があった。

 

 俺自身を鑑定することができないのだ。

 

 それの何が問題かと言うと、俺の強さがわからないことである。

 そうなると、果たして俺にはどんなことができるのか、どんなスキルが眠っているのかがわからない。

 この世界のスキルの中には、単独でドラゴンのような強大な魔物を打ち倒せるチートとしか言えないものも存在する。

 だが、どんなスキルが自分に宿っているのか、使えるようにならないとわからないのだ。

 中には、とんでもないチートスキルを腐らせている人だっている。

 俺だってもしかしたらそうかも知れない。

 すくなくとも、自覚的に使える強力なスキルは「鑑定」だけだったのだ。

 自分に対して鑑定が使えれば、たとえ強力なスキルが鑑定だけでもあきらめが付くというのに。

 

 ただ、俺にはスキル以外にもチートクラスの強さを手に入れるアテがあった。

 「宝剣」だ。

 俺の鑑定スキルは、人間以外相手にも有効だったのである。

 この世界には様々な武器があって、中には見た目だけならなまくらにしか見えない武器も存在する。

 だが、そんな武器にも実は特別なエンチャントが付与されていたりして。

 そのエンチャントが付与された武器――宝剣を利用して強くなろうと、俺は考えたのだ。

 

 とはいえ、宝剣を見つけるのも簡単ではない。

 何せ普通の宝剣は、たとえ見た目が貧弱でも使えば特別な能力があることは明らかで。

 そう簡単に、普通の剣の中に埋もれていたりはしないのだ。

 だから俺は各地を回って武器屋で鑑定を行い、隠された宝剣を探し続けた。

 いくら向こうが気付いていないからとはいえ、本来であれば人が一生遊んで暮らせるほどの剣を普通の剣と同じ値段で買い取るのは気が引けたが、そこはそれ。

 そもそもそういう剣は俺でなければ有効には使えない。

 得したと思っておくことにしようとか、そんな事を考えつつ。

 

 やがて、俺はある剣を見つけた。

 とある地方都市のハズレにある、少し寂れた武器屋の棚に、一本の剣がおいてあったのだ。

 見た目はどこにでもある普通の剣だが、鑑定をした時自分の目を疑った。

 とんでもないスキルを有した宝剣だったのだ。

 思わず目が飛び出るかと思った。

 それから、俺はすぐにその剣を買い取ろうとして――

 

 店主の、どこか胡散臭い――狐みたいな雰囲気のエルフ少女からこう言われた。

 

「君はその剣を選ぶのか」

 

 ――と。

 後に俺は、その少女店長とそれなりに深い関係を築くことになるのだが。

 彼女は剣の性能を理解っていたのだ、その上であえて無造作にならべていた。

 いつか、その剣の真の価値に気づく者が現れることを願って。

 

 そして、俺が現れた。

 

 まるで運命のようだと、今でも思う。

 宝剣とは、運命的に人々を導く神からの賜り物だと言われている。

 俺もまた、導かれてその剣を手にした。

 それと同時に――

 

 

 俺は、宝剣に魅入られたのである。

 

 

 その、どこか神秘的で、けれども人を惑わせる力のある剣に。

 どうしようもなく、魅入られたのだ。

 

 

 +

 

 

 俺の店、『宝剣の棚』は宝剣だけを扱った特殊な店だ。

 当然、そんな店が儲かるはずもない。

 なにせ宝剣はとても高価だからな。

 一本で百万とか余裕でする。

 俺がシェリカに見せた“殺害剣キラー”ですら、数十万くらいの値がつく。

 鑑定スキルがそういっている。

 まぁ、鑑定スキルが教えてくれるのは相場だけなので、実際にいくらの値段をつけるかは商売人次第なのだが。

 うちは常に鑑定スキルが教えてくれた値段で売ってるよ。

 

「んじゃ早速だが、どういう使い方をするんだ?」

「大型魔物の討伐よ」

 

 というわけで、そんな中で俺が少しでも商売っぽいことをしようと思って始めたのが宝剣のレンタルだ。

 まぁぶっちゃけ、俺はそもそも商売なんてする必要がないくらい蓄えがあるのだが。

 それでも商売っけくらいは出せと、キツネ先生――俺が初めての宝剣を買った店の店長――が言うものだから。

 んで、この宝剣のレンタル。

 これ自体は結構サービスとして好評だったりする。

 

「その魔物の部位――討伐する魔物から取れたものじゃなくてもいい――はあるか?」

「これよ。城の倉庫に数十年前に討伐したやつの角が残ってたわ」

 

 そう言って、シェリカはなにもない場所からあるものを取り出す。

 異世界特有のアイテムボックスってやつだな。

 んで、取り出されたのは無骨な白い角だ。

 めちゃくちゃでかい、俺の顔よりでかいぞ。

 

「どれどれ? ――<鑑定>」

 

 早速俺は、鑑定スキルを使用する。

 すると俺の右目の前に青い魔法陣が出現する。

 その魔法陣を通した視界には、角を通して魔物のステータスが表示されるのだ。

 

 表示されたステータスはだいたいこんな感じ。

 

<狂い角の黒猪>

◯能力評価

・危険度:A

・魔力総量:C

◯スキル

『強突撃:A』

『地ならし:B』

『魔力撃:D』

『炎耐性:B』

『氷耐性:B』

『斬耐性:B』

………

……

 

 これが俺の鑑定で見れる情報の全てというわけではない。

 今俺がほしいのは、この魔物の脅威度を図るのに必要な情報だけだ。

 だから鑑定の仕方を変えると、また別の情報が見える。

 たとえば今は角を通して魔物のスキル等を鑑定しているが、やり方を変えると角の値段の相場とか、武器に加工した際どんなスキルが付与できるかを鑑定できる。

 

「相変わらず、貴方のユニークスキルは便利ね」

「魔法陣のせいで、鑑定を使ってるってことがバレバレなこと以外はな」

 

 一応、この魔法陣を隠すこともできるけれど、それでもやっぱり瞳が青く光ることには変わりない。

 人前で何食わぬ顔で使ったりとかはできないんだよな。

 まぁ、できたとしても失礼だからやらないけどさ。

 

 んで、俺の鑑定はユニークスキルだ。

 俺だけの特別なスキル、魔法陣が出るのもその一環。

 普通の鑑定スキルもあるのだが、そういうスキルは俺の鑑定スキルほど万能に全てを読み取れない代わりに使っても相手にバレない。

 

「しかし<狂い角の黒猪>ね……ネームドじゃないか。大丈夫なのか?」

「アタシ一人で挑むわけじゃないもの。まぁ……死人は出さないように頑張るけど」

 

 そこで死人が出る可能性が生まれるあたり、異世界はやはり殺伐としてるな。

 とにかく、この<狂い角の黒猪>っていうのはネームドに分類される強力な魔物だ。

 普通の魔物は、こんな風に名前はつかず<ゴブリン>とか<スライム>とか呼ばれる。

 カタカナだとモブ、それ以外の呼び方だとネームドで分けることができるな。

 

 <狂い角の黒猪>は、危険度Aの魔物。

 危険度のランクはSからEまであるが、Aとなると最悪街一つが滅ぶ可能性がある。

 Sなら国一つが滅びかねない危機だ。

 見た感じ、高い突進力で防御が意味をなさず。

 高ランクの耐性で攻撃がなかなか通らない。

 実に厄介そうな敵である。

 が、しかし。

 俺はあることにきがついていた。

 

「――こいつ、『呪い耐性』がないな」

「……なんですって?」

 

 そう、何度鑑定しても、何度スキル欄を見返しても『呪い耐性』がない。

 なかなか無いことだ。

 強力なネームドモンスターは、たいてい呪い耐性を持っている。

 それを持っていないということは、あらゆる呪いが素通しになるということ。

 つまりそれは――

 

「となると……俺がシェリカにわたすべき宝剣は、こいつになるな」

「“殺害剣キラー”……」

 

 そう言って、俺は手元にあった宝剣をシェリカにわたす。

 なんというか、先程散々に言った宝剣が<黒猪>に対する最適解になるとは思わなかったのだろう。

 

「というか……ネームド相手に呪いが通るとか、考えてもみなかったわね」

「まぁ、普通にやると呪いって手間がめちゃくちゃかかるしな」

「手間かけて用意しても、はずしたら一発で無駄になるしね」

 

 呪いっていうのは、魔術師が用意した札とかを矢や剣にくくりつけて相手を攻撃することで効果を発揮するものだ。

 とかく手間がかかる上に、ほとんどのネームドは呪いが通らない。

 俺みたいにあらゆるスキルを鑑定できないのなら、気づかないのも宜なるかな。

 

「そう考えると、呪術師いらずの呪殺っていうのも便利だわ」

「問題は、使うのに結構魔力を食うことだが……」

「ん……」

 

 シェリカが、意識して魔力を“殺害剣”に流し込む。

 俺の見立てだとシェリカと“殺害剣”の相性はよくないんだが――

 

 ぼう、とシェリカの体を大きな光が包む、注ぎ込んだ魔力の余波だ。

 

「よし、これなら使えそう」

「……相変わらずのバカ魔力、魔力量とスキルに恵まれた天才は羨ましいな」

「アンタにだけは言われたくないわよ、アズマ」

 

 シェリカはとにかく本人の保有する魔力総量が多い。

 そしてユニークスキルも持っているし、それ以外のスキルも軒並みランクが高い。

 有り体に言って天才。

 若くして王国騎士団で団長を務めるのも納得だな。

 少し前まで、俺と一緒にダンジョンで冒険者してたってのに……。

 

「んじゃ、一応聞いておくけど。アンタもこの討伐に参加する気はない? 報酬は結構美味しいわよ?」

「……それ、報酬の中に宝剣はあるか?」

「ない」

「じゃあ別にいい」

 

 答えがわかりきっている質問をシェリカがしてきた。

 聞いておかないといけないから聞いただけなので、シェリカも俺が乗ってこないことくらいわかっている。

 お役所づとめの辛いところだ。

 

「わかってても聞かないといけないのよね、上層部もこいつが宝剣にしか興味ないって気づけばいいのに」

「気付いたところで、一本数百万する宝剣をホイホイ報酬に渡してたら国が傾くけどな」

「違いないわね」

 

 なんてやりとりをしつつ。

 早速シェリカは“殺害剣キラー”を借りていくのだった。

 なお、レンタル料金は『宝剣の値段×レンタル日数/1000G』だ。

 我ながら良心的である。

 

「いや安すぎでしょ、最初聞いた時は冗談だと思ったわよ?」

「いいんだよ、宝剣のレンタルなんて商売、うち以外でやってないんだから」

 

 そもそも採算なんて取ろうと思ってないしな。

 俺はただ、このレンタルでシェリカが宝剣の魅力に気づいてほしいというだけだ。

 あ、宝剣狂いになるのだけは勘弁な?




黒猪のスキルは他にもびっしりありますが省略しています。
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