鑑定を使って集めた宝剣を、貸し出したり授けたり見せびらかしたりもっと集めたりする道楽冒険者 作:かてい
この世界の宝剣には意思がある。
言葉を交わしたりするわけではない。
いわゆる「使い手を選ぶ」というやつだ。
幸い俺は、多くの剣から所有者として認められているものの、中には宝剣が所有者として認めてくれないせいで宝剣の能力を引き出せなかったりすることもある。
ここで、俺の所有する一本の宝剣を紹介しよう。
“運命剣ディステ”。
人に道を指し示す力を持つ、特殊な宝剣だ。
剣の形をしていながら、切れ味はそこらのなまくら以下。
これならまだ棍棒を握ったほうがマシという、武器としては欠陥としか言いようのない品。
しかし、その能力は本物だ。
この剣には、人と人、人と物を運命的に結びつける力がある。
一介の平民と亡国の王女様を引き合わせたり。
うだつの上がらない冒険者と宝剣を引き合わせたり。
彼らは大冒険の末、偉業をなす。
そういった運命を導く剣、それが“運命剣ディステ”。
ある意味で、最高に「使い手を選んでいる」剣というわけだ。
この運命剣、数ある宝剣の中でも珍しく同時に複数本存在することが確認されている宝剣だ。
そのうち一本が、俺の店でセキュリティを担当していた。
運命剣には人を選別する力がある。
運命剣の設置された場所に、相応しくない人間を近づけさせない力だ。
具体的に言うと「宝剣の棚」に盗人を近づけさせない。
シェリカは「運命剣に何をさせてるのよ!?」と言っていたが、運命剣は満足そうなので大丈夫だと思います。
なぜなら、運命剣は常に人と宝剣の運命を引き合わせたがっているからだ。
極度のカプ厨と考えてもらえばいい。
どれだけ引き合わせたいのかと言うと、時に空間すら歪めて人を宝剣の元に誘ってしまうくらい。
結果、俺が店を開いている街「タストー」の外の人間が空間を転移して俺の店に迷い込んでしまうのだ。
そして俺には、鑑定スキルがある。
誘われた人に対して、最適な宝剣を授けることができるのだ。
うーん、これには運命剣もニッコリ。
ちなみに代金は取らないよ。
それじゃあ運命剣もニッコリしないし、こういうのはタダで授けたほうがそれっぽいだろ?
――と言ったら、シェリカがすごい目で俺を見てきたりするんだが。
まぁ、それはそれとして。
そして、今日もまた一人。
運命剣に導かれた者が、俺の店に訪れた。
+
「――あの、ここが宝剣の棚で、間違いない……でしょうか」
金髪碧眼。
年の頃は十歳程度。
特徴的な
そして、いわゆる作務衣のような服を着ている。
女顔の――あどけない顔立ちの少年だ。
俺は、彼をその容姿と衣服から端的に表現する言葉を知っていた。
――エルフ、と。
この世界はファンタジー世界らしく、エルフやドワーフといった種族が存在する。
彼らは基本的に人族と交わらない場所に独自の文化圏を築いている。
交わることは稀だ。
別にお互い隔意があるわけではないが、寿命などの違いがあるからかこの世界であまり他種族同士が交流することはない。
なんかこう、長い年月で自然とそういう線引ができていった……って感じだな。
まぁ、一介の転生者である俺が考察してもしょうがないことだけど。
ちなみにどうしてエルフが作務衣――和服を着ているかって?
これにはまぁ色々と理由があるんだが、とりあえず今は置いておく。
そのうち話すこともあるだろう、そのうち。
「ああ、ここは宝剣の棚で間違いない。……君は?」
「あ、えっと。ボクはユズリア……といいます。エルフ……です」
「俺はアズマだ、よろしく」
どこか自信のなさそうな少年、ユズリア。
これは転生者としてこの世界をメタ的に見てしまいがちな俺の悪い癖なのだが。
如何にも宝剣に選ばれそうな少年、といった印象を感じる。
物語的にも、こういう自己評価の低そうな少年が実はすごい才能の持ち主、ってのはありがちだしな。
だが同時にこの世界でそこそこ冒険者として活動してきた俺の感覚が訴えてくる。
この少年の瞳には、力がある、と。
いい目をしている……というやつだ。
「それで君は、どうして俺の店にやってきたんだ?」
そんな少年から、話を聞いてみる。
「――母を、助けるためです」
やはり、彼は素質がある。
それまでオドオドしていたのに、自分がここにやってきた目的。
しなくてはならない使命を口にした瞬間だけは、目の色が変わった。
エルフということは、きっと
相変わらず、あの人も人が悪い。
だって、こんなにも将来有望な少年が店に訪れたら、どんな宝剣が似合うか考えるだけで垂涎ものだからね。
「え、えっと……アズマ、さん?」
「おっと、母を助けたい……君の願いはわかった。けれどどうしてだ? 君の母は何に苦しんでいるんだろうか」
「あ、その……ボクの母は今、病気にかかっているのです。緑石病という、エルフ特有の病気です」
ふむ。
前にあの人が話していたのを覚えている。
段々と身体が緑の石に変わってしまう病気だ。
回復魔術等の効果を受け付けず、治すにはとある薬草が必要になるとかなんとか。
「――その薬草を、取りに行きたいんです」
「なるほど。しかしそれが理由で俺の店に来るってことは、薬草を手に入れるのは非常に困難なことなんだろう?」
「……は、はい。危険なダンジョンに潜る必要があります」
ダンジョン、異世界物にありがちなその名前通りの代物だ。
モンスターと宝箱を定期的に排出する、冒険者にとっての狩り場でもある。
そんな場所に潜らなきゃいけない、こんな幼い少年が。
しかも――
「ボクには……才能がないんです」
「才能が?」
「はい……魔術が、全然使えなくって。エルフなのに」
ふむ、と頷く。
エルフとは、前世の創作におけるイメージ通り魔術に長けた種族である。
そんな種族が魔術に適性がないとなると、そりゃあ自己評価も低くなるというもの。
彼のコレまでの人生を、勝手に想起してしまう。
というか、俺も鑑定スキルが使えるようになるまで周囲からは才能ないってバカにされてたからな。
この世界では、自分のスキルを確認する方法は二つしかない。
鑑定スキルを使ってもらうか、自分で気付くかだ。
前者に関しては、正直普通ならあまり参考にはできない。
俺の鑑定スキルと違って、通常の鑑定スキルはよっぽどランクが高くないと正確に情報を抜けないのだ。
そして後者も、きっかけがなければ才能を腐らせてしまうかもしれない。
才能を可視化できると言っても、可視化するためには色々とハードルが大きいのがこの世界の特徴だな。
そんな中で、才能がないと自分を卑下するユズリア。
彼にも色々とここに来るまで、悩んだりうつむいたりすることがあっただろう。
だが、それをどうにかできるのが俺だ。
どんな情報でも閲覧し放題な俺の鑑定スキルが、彼の才能を引き出すというわけ。
「んじゃ早速、君のスキルを鑑定させてもらおうか」
「え、あ、……は、はい」
「ユズリアは、俺の鑑定スキルについてどこまで聞いてる?」
「ええと……あらゆる才能を、的確に見抜くことができる、と」
ふむ、どうやらあの人からは概ね話を聞いているようだな。
ここが宝剣の棚であることを知っている上に、空間を転移してエルフの里から渡ってきているのに驚いた様子がない。
であれば、俺の鑑定スキルについても説明は不要だろう。
俺が鑑定を使って、ユズリアにふさわしい宝剣をタダで授けることも聞いているはずだ。
「じゃあ、行くぞ」
「……お願いします」
俺の言葉に、ユズリアはおっかなびっくり同意した。
彼にとっては、自分の才能の無さを突きつけられる結果になるからだろう。
どこか、悲しそうにしている。
だが、心配はいらない。
あの人が店にユズリアを連れてきた以上――何より、俺の感覚が大丈夫だと告げている以上、君には大きな才能が眠っている。
俺は、それを掘り出すだけだ。
言っても慰めにはならないだろうから、心のなかでだけそう告げて、俺は鑑定スキルを使用した。
青い魔法陣が瞳の前に浮かんで、俺の視界に彼が映り込む。
どれどれ……?
<ユズリア>
◯能力評価
・総合力:E
・魔力総量:E
◯スキル
『剣鬼:☆』
『剣術:S』
『気配察知:A』
………
……
…
わぁ、剣の鬼。
この世界のエルフは和服を着る文化です。