『ニャーロック・ニャームズ』起動。
「始める」
耳のVRデバイスを起動させる。
このVRデバイスは耳以外にも指や爪にも臨機応変に変更可能だ。
耳なのはその日の気分。
エマが起動させて直ぐ、視界が白く染まる。
瞬きすると、街並みが目に飛び込んできた。
「もう早速街の中か」
「街並みは地球のロンドンを参考に制作。ニャーロックも架空の存在を参考に模範。謎解きは小さなものから始まるように設定済み。既に主人公は住人からの好感度が高い状態にしているから、依頼はひっきりなしに入る」
話を聞くことも、このキャラクターの好感度ならば快く会話をしてれるらしい。
製作者モードとか、ゲームクリエイトモードとか。
「製作者特権でやれるんだね」
「うん。取り敢えずミステリー要素をいれる前に試したいから」
猫のアバターに書き換えられていた体はどうやら、パッケージの猫だ。
私自身がニャーロック・ニャームズになって事件を解決するらしい。
「長毛だ。うわ、ふわもふ!肉球ぷにっぷに」
「この世界は全員猫獣人」
「皆雰囲気あるね」
エマはにんまりと笑う。
「因みに裏モードがあって、ワニロック・ワームズ、シャーロック・シャークズのタイトルもある。事件が起こったら犯人を食べる選択肢が出るようになってるから、事件の解決法がイージー」
「ミステリーなのに最後は原始的解決!?」
裏モードということは予め犯人が分かっているから、犯人を直接丸呑み出来るらしい。
それはそれで、その、猟奇的だけど生物的になんら可笑しいと言うわけでもないので、面白そうではある。
「その裏モードもやろうね」
「うん。ちな、カメラマンもスタンばってる」
空間を示してエマが浮遊する映像記録装置を出現させる。
これは、配信などに用いられることを想定したカメラ。
「浮遊するカメラもエマが自作したよね。凄いね、なんでも作れて」
今の所ホームカメラとしてしか使われていない。
私達は配信者でもなく、配信したこともないから。
宇宙でも配信行為は知られていて、チューバー的な人も居るけど。
これは、家族に後から見せるためだ。
私達は家族専用の配信者というわけ。
後からみんなで見てわいわいする。
面白かったら投げ銭もその場で貰える仕様に最近、追加要素が来た。
地球の投げ銭に触発された家族が投げ銭を面白そうだと言って、やりたいと言い出した。
本物のマネーでは両親が超廃人課金しようとするので、仕方なくエマが架空のお金を作り【エマ銀行】【エマ資金】を作り、おもちゃのお金を作り出した。
現実で本物のお金を出されても、家族間で延々と回るだけなのを両親は早く気付いてほしい。
お金の名前はハッピーだ。
お金はイコール応援。
100ハッピーも作成されているので、今の所両親が私たちでおもちゃとはいえ、破産する事はなさげ。
私達も母親の道場や父の仕事風景などに投げ銭していく。
しかし、主にウチでは私達の方が見たいと熱望されるので姉妹という偏りが出てくる。
特にゲームとなると母が一緒にやりたがるのだ。
「カメラオッケー。いつでもいける」
妹の声に街並みを観察していた目を相方に向ける。
エマはワトソンを主にリスペクトしているらしく、片眼鏡を掛けている。
2プレイにも対応しているゲーム。
「相方は少し悩んだ。もっと自由に動ける少年達の1人でも良いかなって思ったけど、今回はワトソンにしておいた」
そういえば有名な2人だけど、そのほかにも登場人物が居たような。
エマは今回のミステリーものを作るに当たってAIに本を読ませておいたようで、有名な本の内容をある程度把握しているらしい。
私達は読むことも出来るけど、内容を纏めて取り込むことが可能なのだ。
「ニャーロックさん、おはようございますます」
猫獣人がほわほわと話しかけてくる。
妹が、返事をした方が今後の活動を助けてくれると説明。
人間関係もそれっぽくて、探偵業してる。
「おはようございます」
「にゃふふ。よかったらこれ食べて下さい」
手渡されたのは、焼きたてパン。
本物みたいな香り。
「ありがとうございます。なにかお困りなことはありませんか?」
「そう言えば、二軒隣の方の猫が居なくなってしまったらしいです」
猫獣人、猫を飼ってるらしい。
「人間が犬を飼うみたいな感覚で?」
猫のキャラクターが猫を飼うのは珍しくない設定ではあるよね。
「実は猫獣人と猫はニュアンスを感じ取れるから飼いやすい」
「それも探偵要素?」
特殊能力ってゲームだからこそ。
「うん。少年探偵達が居ない代わりのシステム」
「おー、じゃあ二軒先の家に行けばいいのね」
パンをくれた人にお礼を述べて、2人で向かう。
ロンドンを基礎に作られた街並みは、猫要素を過分に含んでいる。
看板に猫のマークとかもあって、異世界に来た気分。
「すみません」
世界観的にノッカーを動かしてドアを叩く。
インターホンを鳴らす探偵だと一気に現実に引き戻されてしまうからかな。
花に蝶が止まる光景を見ていると、中から老人猫獣人が出てきた。
「んにゃ?どうかなさいましたかね」
〆説明する
〆一旦離れる
選択肢が出てきた。
説明するを選ぶ。
説明する←
選ぶと口が勝手に動く。
「私はニャーロック・ニャームズです。お宅の猫が居なくなったと聞き及び、失礼かと思いますが、寄らせていただきました」
こういうやり方かー。
たのしー!
電脳世界なので身体に影響はない。
「それはご丁寧に。どうぞ、立ち話もなんですから」
家の中へ誘われて私達はお邪魔する。
中へ入ると模様の煌びやかな椅子へと座る。
ふわあ、ソファの柄が猫じゃらしだ。
毛があるから地べたでも良いくらい、毛はモフモフ。
「紅茶は?」
紅茶について無知過ぎて困る。
「紅茶は、えーっと」
「にゃほほ。うちにはいろんな飲み物を
取り揃えていますよ」
先にエマが応答。
「私はル・ピコ」
「そ、それって、あの、猫のあれから作られたコーヒーじゃ?しかもめっちゃ高いやつ」
慌てる。
紅茶じゃないよ?
「おお!ル・ピコを飲まれるとはお話の分かる方ですな!」
おじいちゃんが興奮している。
「私は紅茶、あの、オレンジペコで」
「分かりました」
あの、スンッてなんのやめよっか?
わたしだって頑張って、高級紅茶の名前を頭から絞って言ったんだよ?
「これはシークレットの会話」
隠し会話らしい。
「一見紅茶にこだわり持ってるように見えて、興奮するのがコーヒーって、これほど酷い紅茶裏切り猫も居ないんじゃない」
とんだ猫人だ。
出された紅茶を飲む。