パイをムシャムシャしながら猫にも訪ねていく。
「あっちで見たよ」
というニュアンス。
一方通行の会話しか出来ないので方向を指したりするしかコミニケーションが出来ない。
しかし、少しずつ近づくのだ。
「某有名なアニマルフォレストも続編作った」
またも嬉しい報告。
「作っちゃったかー」
有名どころは作ったらしい。
「微調整したら一緒にやろ」
「うん。凄い楽しみ」
コンソールなのかVRなのか聞いてないけど、この子の事だからどちらも制作しているのだろう。
今から期待に胸が爆発しそうだ。
「あ、ママが視聴しにきた」
エマがぴくりと上を見上げた。
「道場は?」
『休憩だぞ』
限定的にシスターチューバーとなった私達は視聴者1人に見守られて、ストーリーを進めることにした。
「さっきから投げ銭音が煩いからミュートして」
「むん!」
母親からのエールのつもりなのかもしれないが、ゲームの進行に激しく支障をきたしている。
やむを得ない。
「あとは嗅覚システムを使うと良い。簡易的に話を進められて、詰まったら使えば良い」
救済システムみたいな?
「よし。くんくんくんっ」
「やり過ぎると大変なことになる」
忠告するのが遅いので、私の鼻は刺激臭に見舞われた。
「ぐは!な、なにこれ」
まるでコショウが一粒入ったような不愉快さだ。
遅過ぎるから、涙が出た。
鼻を抑えてごしごし。
「使い過ぎてもゲーム難易度に隔たりがあるから、使用過多にならない処置」
「お姉ちゃんと妹しかやらないゲームでここまでシステムを細かくする必要あるのかなあ?」
「やるならとことん作り込む」
頑固だ。
「なら、進めよう」
ストーリーを進めていけばネコも見つかるだろう。
「出来たら、ここを変えたら良いとか評価してね」
アプリをすると出てくる、評価をしてくるように念押ししてくる表示みたいなことを言い出す。
姉の意見を取り込んでくれる妹、プライスレス。
凄く近くで言われて、反射的に頷く。
「やるよ、やるやる。ちゃんと道中も」
てくてく再度歩を進め、言いたいことだけ言う。
「嗅覚モードの刺激警告の方法はやめておいた方が良いよ。結構辛いもん」
指摘してみたら、意外な秘話。
「世界一凄い匂いの魚にしようか迷った」
「選択肢が究極じゃん。エマの優しさあったかい」
かなりソフトな方を選んだと知って、ワタシは笑みを浮かべて喜ぶしかない。
なんせ、彼女には悪意などない。
魚のアレは単に魚つながりと有名な魚を検索したらそれが出てきたのだろう。
仮に私たちがそれを食べても美味しく食べられてしまうのだ。
だから、アレの脅威を理解できるかと言われると微妙。
私達も、いや、私もお父さんの味覚について深くツケやしないのかもしれない。
今思い出す過去のメモリー。
真っ黒い料理、真っ黒い炭。
やっぱり大丈夫だった。
ほっとした。
だって、エマのいうそれは保存食というちゃんとした食材として認知されているから。
我々の知るダークマターとは違う。
改めて味覚能力を発動させ、方角を知る。
ネタバレさせたくないエマはこのモードだけで完結させられないように試行錯誤したらしい。
【二人の猫姿、素晴らしいな。すくりーんしょっとなるものをやったぞ】
母はスクショを覚えた!
ミュートにしていたおかげでスクリーンショット音を聞かなくて済んだ。
「あっち、エマ行こ」
ストーリーを進めよう。
エマのもふもふな手を握って通りを行く。
肉球がしっとりじゃ〜。
「ここは猫じゃらし通り」
「名前可愛い。猫要素たっぷり」
猫のエッセンスたっぷりな街並みは見ているだけで満足度がデカい。
「猫は生物的に可愛さを金揃えている。キャラクター性も良い。ゲームに使われるのも分かる」
「可愛いよね。小動物なんて、地球にかなり存在してる中で奇抜さがなくて、もっと知られて欲しいな」
「配信すればいい。なんならママの名声を使えば視聴者がわんさか見にくる」
「あんまり母さんの娘って知られたくないなあ」
知られても私に接触はしないだろうけど、やっぱりプライベートは守りたい。
というウマをエマに伝えると、彼女は腕を組んで分かったと頷く。
「エマは配信されても良いの?」
「見るだけでエマのゲームに触ってないなら同じこと。影響はない」
配信はまだ考えてないから、後回し。
「でも今は私たちだけで楽しもう。ソロゲーはマイペースマイペース」
「編集しとけば良いから、生放送しなくていい」
「今配信ってそうなってるんだね」
前の人生も見る側だったから、配信の事情は分からない。
「今はタイトルを考えるくらいかな」
曲がり角を曲がると花が植えられたベランダが見えた。
「宇宙人姉妹」
「ざっくりだね?それに私達以外の宇宙人の姉妹なんてそれこそ、星の数程居るし」
うーん、と悩む
「家訓は?食い扶持を稼ぐ」
「知能が低そうなのは嫌……」
それを考えたのは母だよ、妹よ。
遠回しに知能がと言っているにも等しい。
「お、そろそろ目的の猫がいそう」
一軒の家に着いた。
「誘拐?」
「保護かも」
予測を言い合いながらノッカーを叩く。
「はいはい。どうかしましたか?」
老女猫が現れた。
「すみません。私はニャーロック・ニャームズ。こちらは助手のニャトソン」
自己紹介をすると老女猫は名声は兼ね兼ねと言う。
新聞にも載ることが多いらしい。
娯楽的に見れば確かに記事にはされやすいのだろうな。
「こちらに依頼人の猫が居るようなのですが」
「どんな猫なのかしら。うちには沢山猫がいてね。増えても気付かないのよね」
家に入れてもらえ、ニャンズ達を見せられる。
ワオ、10匹以上は居るよ。
増えても気付かないのが良くわかる数。
「猫探しゲームで更に見つけなきゃいけないと」
嗅覚モードでくんくんした。
猫がい過ぎて嗅覚が機能しないと表示される。
こんなに目の前にいるのに。
「こうなったら依頼主を連れて来よう」
「正解の猫を当てるのが今の時間」
エマの助言にえーっとげんなり。
猫達に吹き出しが現れて、性格や思っていることなどが表示される。
これを元に依頼主の猫を見つけようということ。
「うーん。まだら模様では無い。と」
にゃーんにゃーんと私達の間で鳴く猫達。
すりすりと擦り寄られて、猫好きにはたまらない状態になっている。
「この子でも無い、この子でも無い」
結局最後まで当てられず、当ててない子が当たり、消去法でクリア。
「難易度高いよ、猫当てゲーム」
「後で調節しておく」
やらないかもしれないのに、調節するなんてマメだ。
「これでやっとあの人に猫を届けられる」
「はい、カゴ」
「よおし、はい、入って入ってー」
「ナーッ」
「お友達とはまた会えるように話してあげるから」
不満そうな声で反論されるから、ご主人様が待ってるよと声をかける。
猫にまでAI並みの知能を持っている。
猫獣人はそもそも、猫から枝分かれして進化しているので、猫の時点で賢いのだろうか。
「ほら、おやつあげるから」
おやつを中に入れ、老猫に挨拶をし、えっほえっほと運ぶ。
依頼主に猫が見つかって、保護されていたらしいと説明する。
友達が出来たのだと伝えて、許可を貰っていた住所を教えると、雇い主は猫の友達に会いに行かせるよと笑う。
猫達といるのが楽しすぎて行方不明になっていたという結末に、私は依頼クリア!の文字が上空に浮かぶ。
「あー、やっとクリア出来たー!難しかったあ」
「微調整しなきゃ。私、迂闊」
「ミステリーは難易度調整難しいのかもね。楽しかったよ。のんびりするのも、景色を見ているだけでも楽しかったし。時計塔の猫とか楽しみだし」
「メインストーリーの扱いだから面白いと、思う。プログラムに作らせたからエマも知らない」
エマが知らないのは、新鮮な気持ちで彼女も遊びたいからだ。
エマは天才だけどまだ子供である。
出来れば、シナリオなんて知らないまま遊びたい、という気持ちは、誰しも持ち寄るものだろう。
「さて、じゃ、現実に帰ろうか」
「ログアウト、起動」
視界が一旦白く染まるので目を閉じて、もう一度開けると我が家。
というよりホテル。
目の前には母。
手を広げている。
「さあ、母の胸に飛び込んでおいで」
「ママ、投げ銭もう少し控えられる?」
「音、煩い」
「そんなっ」
何故かショックを受ける。
でも、大当たりみたいな音をジャカジャカさせてたよ?
随分と派手だしなぁ。
「私はお前達の可愛い姿に耐えきれず全財産を入れただけだぞ」
「エマ銀行、また生産に向けて義金作らないとね」
「貯金されてる。いつでも貸せる」
エマの作った偽物のお金の単位はハッピー。
母はそれを使い切ったという。
使い切るのは良いけど、エマ銀行は値段に関わらず出し入れする時に日本円の一円がかかるようにしていた。
しかし、母の浪費がひどいので値上げするのもありだなと考えている。
しかし、私たちよりお金を持っている相手に値上げしたところで、母は喜んで払うのではないか?
寧ろ、親限定配信で投げ銭が許されてない分、嬉々として払うのでは。
「ニャーロック・ニャームズの世界観はずっと居たいと思うくらい良い街だったな」
「わかる。猫のモチーフとロンドンって最高の組み合わせだったよ」
「次はシャーロックで。鮫ならなんでも許される」
「全部プレーした後ね。流石に次は心の準備が」
「母はできるぞ!そういう武力にものを言わせるものは大好きだ。正直最後の猫さがしも良く出来た物だと思っていたのだ」
「その発言は母親として、生命体として、大丈夫なの?」
「ん?なにかダメだったか?」
「ううん。ジュスティヌはそのままでいて」
悟ったまま、私は告げた。
「そうか?うむ。そうしよう」
「道場は?終わったの?」
ゲームを始めて2時間も経過してないのに、帰ってくるのが早い。
ジュスティヌ母は、ドヤ顔で全員倒してきたから、休憩だという。
道場ってそういうことをする場所でもない。
教えるのに教えずに済ませているとは。
まあ、いつものことだから説明しても無駄なのだ。