案内された場所でランチを食べ、彼女はクルーズ船に乗るよう足す。
飽きていたのではなく、人目が嫌だったらしい。
やはり、この姿は変えた方が良いのだろうか。
このままではまともに観光するなど、夢の夢。
今は大人しく観光しておく。
なんせ、折角ここまで来たんだから。
「赤い髪」「美女」「姉妹」etc。
他にもエトセトラエトセトラ。
ざわりざわりと私たちについての考察や想像を口にしては見ている。
レストランだって例外ではなく、客らがこちらへスマホを掲げている。
必要なのは、許可じゃないのかな?
流石に失礼が過ぎるんじゃない?
クルーズ船に乗って、また違う店に入った。
「なに頼む?最後になりそうだし、ラストオーダーにしよ」
「ん」
二人は食後の食べ物を済ませて、二人して店を出る。
出たところでやたら野次馬が集まっている事に気づく。
どうやら、レストランに居る間に呟きなどで拡散されて、情報が出回ったみたい。
「これは政府にクレーム入れる」
「そうだね。私もここまでは嫌かな?」
「あの、わたし、こういうものです」
突然女性が私達の前に出てきて、名刺を渡してくる。
見ると芸能事務所の人だ。
はあ、いつか来ると分かって居たが、いざ来たとなるとあしらうのすら、億劫。
「私達、未成年なんで」
「お母さんとお父さんにそれを渡してもはえれば」
いや、うーん、アウトなやり方じゃない?
ちょっとこれはどうかと。
エマも私も学校でいうなら小学生とかの年齢だけど、見た目は中学生くらい。
つまり、年齢と見た目が違う。
「期待はしないでください」
と、言って、その人から離れていく。
途中でエマが興味ありげに名刺を見ていた。
そういえば、エマは地球の芸能人的なものになろう、と姉に誘いをかけていたな。
入りたいのかな?
「エマ。エマが芸能界に興味があるんなら、止めないよ?」
エマはこちらを見上げて、幼くも知的な光を宿す瞳を向けてくる。
美人な妹、いつものこと。
「ナターシャと入りたいから、一人じゃ意味ない」
照れながら言われる私って、実は最強のお姉ちゃんなのではないのか。
という錯覚を抱かせてくれる。
「エマ……よしよし」
胸がきゅーんとなる。
頭を撫でると写真を撮る音が増えた。
気持ちは分かるが、永遠に私達を撮る事にしないのだ。
ブレたように写るか、真っ黒か。
全て写らぬようになっているから、どれだけ撮られても意味がない。
ナターシャらは街並みを眺めて、後ろからぞろぞろついてくる野次馬達に辟易していた。
他の星じゃこんなことされない。
治安が悪いというわけじゃなくて、宇宙人にあまり免疫がないって感じ?
それにしても、これ、案件になるよ。
見た目中学生にもならないような二人の女の子の後ろを、ね。
警察に向かった方が良いのかな?
考えているとエマがもう通報したと教えてくれた。
行動力強い。
「時期に来る」
「待ってた方が良いの?」
「コンビニに逃げ込む。それか、適当にトイレ」
トイレは嫌だな。
それならコンビニ?
でも、コンビニって別に入ってはならない場所じゃないから逆に追い詰められに言っているような。
「このまま交番に行く」
というわけで、私達は自ら交番に行った。
交番では警察官がわたわたしていた。
一応子供の通報はあったことはあったのだと思う。
しかし、野次馬を連れた人達と宇宙人は荷が重いんだろう。
「えーっと、一応、聴取を取るね」
警察官に私達は頷く。
同じことが繰り返されるのだろうし、警察官や警察に情報を共有してもらっとけば良いかな、と思って。
私達の必要最低限の情報を与えて、聴取を終わらせてホテルに戻る。
野次馬は減ったけど、少なくとも少しは遠くからだがついてきていた。
そのやり方は更なるストーカーだ。
「視線を検知、5メートル先に気配あり」
エマは超能力持ちなので察知なども出来る。
出来ないのってないんじゃないかな。
私もエマと同じスペックがあるんだけど、エマの方が遥かに使い方が上手い。
ホテルへ直帰、ヘリコプターで。
「ヘリコプター、良いね」
「持続する。契約」
そうだね、ヘリコプターのチャーターは良いね。
それとも、ヘリコプター自体買っていくというのもありだね。
いや、待てよ。
「エマ。車を改造して浮くようにしてさ、AI操作にしたらヘリコプターに一々乗らなくても済むんじゃない?」
今まで魔法を使って移動していたけど、地球ならばそっちの方が良いかも。
いやもう、テレポーテーションの方が良いのかな。
「自転車を飛ばそう」
ふと、例の映画を思い出し口にした。
「自転車、雰囲気があって良い。採用」
エマは早速魔法コードなどを起動し、自転車に付属するものを用意するらしい。
自転車を買いに行こう。
「エマ、自転車買いに行こうと思ってるんだけど。どうする?」
「エマはコード作るのに忙しい」
凄い速度で作っているから、本当に忙しそうだ。
「行ってくるね」
自転車が売っている店は有名なところにしよう。
自転車のある店を検索し、そこにテレポーテーションした。
観光が目的ではないからゆったり行く意味もないからね。
「いらっしゃいませ。今日はどうされましたか?」
この客対応、いつ見ても凄い。
他の星でもここまで丁寧なの、あんまりない。
そりゃ、高いところに泊まったらそれなりに対応されるけど、なにも払ってないのにこの対応はありえないこと。
尊敬ものだよ。
自転車を買いに来たのは分かっているとして、なににするのかと聞いているのだろう。
勿論、一番高い自転車だ。
おまけに耐久性に優れているもの。
しかし、店員さんは顔を引き攣らせて、お金はあるのかと直球で聞いてきた。
勿論、日本円の札束を用意している。
懸念はわかる。
あると頷き、とにかく買うのだと店員を催促する。
防犯のものは無しにした。
エマが防御ガチガチにするから傷や盗難は不可能だ。
保険は必要ない。
店員が疑わしそうに見ていくが無視する。
「30万2500円になります」
「どうぞ」
と、取り出すと店員は顔色を変えた。
まるで悪ガキを見る目だ。
ちょいちょい。
ま、いいか。
しかし、向こうは販売員なので売った。
自転車と共にテレポーテーションして、エマに見せた。
「エマ、自転車買ってきたよ」
「30万?60万でも良かった」
「値段はあんまり関係ないよ。エマがバフを永続的に付けるんだし」
とりあえず地球の経済を回すためにお金を使っただけだ。
頑丈なのを選んだのは使わなくなったら別に使おうかなって思って。
魔法を剥がしても新品のままだから売っても損は無いはず。
高級な自転車は狙われやすいから防衛の魔法は必ず必要だよね。
「この自転車がダメなら違うの買うよ」
「大丈夫。エマがこの世でさいかわな自転車にする」
「言葉の使い方あってる?さいかわなの?最強じゃなくって」
「サイカワで良い最強に可愛い」
「そっか。エマは自転車は可愛くしたいんだね」
自転車に亜空間も入れるから、ホテルの一室にいながらも移動できる、という仕様にするらしい。
「テレポーテーションがやっぱり使い勝手良いね」
本当はテレポーテーションばかり使いたい。
「私達の存在に慣らせる為」
「そうだね。某有名映画って言われまくるな」
カゴにエマでも乗せればいいのかもしれない。
もしかしたら、母が乗りたいとか言い出すかもしれない。
「それ、私も見たい。どれ?」
有料コンテンツから映画を検索して、エマはじっくり鑑賞し出した。
「エイリアン、人間、子供、友情」
エマはぶつぶつと解析を呟きながらコードを打ち込んでいく。
パトカーとカーチェイスしろって意味じゃ無いからね?
エマがさささ、とコードを打ち込む。
それを見ていると、だんだん私もなにかをしたくなり、VRゲームをしようと思い立つ。
「エマ、私、ゲームしてくる」
「了解」
一言告げて、私はVRを起動する。
私の贈り物というゲームをしよう。
まだ途中だった。
そういえば、恋愛相手の恋愛ストーリーがまだだった。
それと、作物が増えた。
アップデートされたんだったね。