自室でのんびりしながら小説を読んでいるとエマが遊びに来た。
「ナターシャ!ナターシャ!聞いて!惑星が見つかったの」
やけにテンション高いな。
いつも惑星を見つけても冷静にデータ収集するのに。
「どうしたの?そんなに良い惑星なの?」
「もう!ナターシャ!地球だから!」
「……マジ?」
エイプリルフールじゃないよね?
え?
本当に地球?
「どええええ!?」
「ね?どええ!だよね」
「地球あったんだ……知らなかった」
「ナターシャって知らずに言ってたの?」
「いやー、エマたちにはあくまで空想の話のつもりで聞かせてたっていうか」
モニョモニョというと、エマはぱちぱちと目を瞬きさせる。
改めてみるとビクスドールみたいに可愛いよ。
「えー?私達は存在してると思っていたけど」
「そうなんだ。見つかったのなら良かった」
この時、あまりの驚きに呆然となっていて、無難な感想を言うので精一杯だったのだ。
***
地球へ着くまでと、地球に到着して暫くはそこへ停止して、どうするか家族会議を開く。
母が凄くワクワクした目でこちらを見ている。
ナターシャから聞いている地球に降りたくてたまらないのだろう。
ご飯を待つ犬のように澄んだ目だ。
エマはナターシャの補佐をする為に、メガネをかけたスタイルでホログラムデータを見ながら解説。
「地球。水が豊富にある惑星。こんなに水があるのに知名度がないのは銀河同盟に未加入。及び、科学力が同盟の加入域に到達していないから」
「異星人の形跡があるんでしょ」
父に聞くと頷くので、目を閉じる。
形跡があるといっても破壊行為などは確認されておらず、技術革新などを分析して調べたところ、ナターシャの知る地球の技術と乖離してない。
つまり、自分が居なくなって数百年とかではないと確信した。
もう少し調べたい。
「ナターシャ!私は降りるぞっ」
「マーマ、ナターシャの意見が先だよ」
エマが母をなだめる。
意見と言われても、降りようと決めるほか無さそうだ。
「言いたいこと、調べたいことがある」
「ん?」
ジュスティヌが優しく問いかけてくる。
こういうところ、本当にポイント高い。
「シマエナガはいるの?」
「「シマエナガ?」」
「フクロモモンガに、マヌルネコ。エゾモモンガ、パンダにハムスターは?」
エマがデータを操作して調べてくれたら、名前のヒットがあったらしい。
ホッ、よかった。
「地球には宝石が有るそうじゃないか」
「あるけど、希少だからね」
「なあにっ。買い占めれば良いだけだ」
からりと笑うジュスティヌ。
買い占めたら怒るのではないかと、少し心配になる。
地球の話はあくまで私の架空の世界という方法で教えていたのだが、なんだかごっちゃにしている気が。
それは間違いだと何度もいうが、幻想から抜け出せないらしく、夢見ている。
「エマはたこ焼きと餃子食べたい」
エマが食べ物の話に食いつくのは知っていたが、そんなに食べたいのなら食べに行こうね。
彼女の要望に両親はお腹がちぎれるくらい買ってやろうと笑う。
ちぎれるとか語呂悪っ。
両親がこんな風だから、エマの口癖が普通になるように頑張ったのである。
「地球ではどうやって稼ぐ?」
3人に向けて聞くと、エマはううん、と悩む。
ジュスティヌが挙手する。
「母は地球で道場をやる」
「父さんは宇宙のステーション施設があったら、機械技術でもやるかな」
今はエマの担当になっているが、父もだ技士としての腕はある。
必要不可欠なスキルだったのだろう。
「私は……」
「ナターシャは料理人になろっ」
「え?」
「地球の食べ物うちで作って」
「カップラーメンがギリギリの私には無理だよ?なにいってるの?」
本格なものを作らせようとしないで?
私のことを料理の美味しい家族と思い込んでいる3人に断固拒否した。
「私はなにやろうかな……見た目レアリティ高いから、見た目を活かした仕事を」
「私とダンジョン星に行って母を壁に自動アタックさせれば、稼げるんだから私となにかのんびりしようよ」
エマの提案にジュスティヌは「それって母が全部やるのと一緒だぞ?」と微笑んでいる。
ジュスティヌにとってダンジョン星のモンスター討伐は簡単な事なのだ。
いや、今ダンジョン星のことは良いんだよ。
「地球に行ってからゆっくり考えれば良いさ」
父がそう締めくくる。
父は派手なの好きじゃないから、母みたいに戦闘でお金を稼ぐのは好まない。
私達も頷いてそうしようと決めた。
うちにはお金は潤沢にあるから、働かなくても大丈夫なんだけど、その星で働くことによって、楽しさが違う。
星を折角訪れたのだから、その星の良さを体験しに行くのが旅の醍醐味。
会議が終わりエマがニヨニヨして私を見ていた。
「おねえちゃん。実はね、話にあったゲームを再現出来るようにしたから、やってみてほしいの!」
母が仲間に入りたそうにこちらを見ている。
父は既に部屋へ帰った。
「母もやりたい」
「マーマはあとで!アイデアをくれたナターシャが先っ!」
「母は見てるだけでいいんだぞ」
母がチラッチラッと見ながらついてきたそうにこちらを見ていた。
「エマ、ジュスティヌ母も見せてあげよう?」
「むむむ、母にはちゃんと見せる予定を組んでいたんだけど……良いよ。もう」
母は愛娘の作品を見たいだけなのだ。
あと、娘が大好きなので、一緒に過ごしたいだけだ。
その気持ちが私にはわかるので、エマと母をフォローする。
エマは家族愛は知っているが、反抗期というか、母の愛情表現の強火に対応しきれてない。
ナターシャの知識を元に母の愛情を感じた時、溺愛というものはやはり、反応がかなり二分すると解析した。
「ナターシャよ、いつも感謝だ」
母は武者口調でナターシャを撫でる。
どういたしまして、と笑みを返す。
「言っていた施設に行こう」
「うん。こっち」
エマに案内されて向かった。
着いた先に建物があり、既視感が強くある。
「見たことあるかも」
「ナターシャの寝物語を再現したから」
エマは本当に天才過ぎる。
「インクサバイバルゲーム施設」
「言ったね」
懐かしい。
所謂サバゲー。
「建物は時間ごとにランダムで変化するの」
マジ天才過ぎる。
私には出来まい。
ゲーム知識を元に作ったもの。
「入った瞬間に服と武器を選べて、一瞬で着替えられる」
「おお、本格的」
「NPCが相手でも出来るようにしてある。やってみて」
「分かった」
中へ入るとホログラムボードが出現し、色々決めるように書かれている。
しかし、今は制作者のエマが懇切丁寧に指導してくれた。
早くしてほしくて仕方ないらしい。
私の専用戦闘服があると、得意げに教えてくれる。
ホログラムにオススメ!とマークがついていて、それを選び武器も決めた。
ウェポンが手元に現れて開始10秒前と表示された。
「隠れて様子見……敵の気配」
凄い、気配まで感じられるなんて。
「エマ。何故あんなに気配があるのだ?」
ママがエマへ質問する。
「それは」
説明には科学と生物学を合わせた答えだったせいで母は全くわからん、と終わらせた。
エマはだったら聞くな、と眉根を寄せてプイッとなる。
そういうところだぞ、母上よ。
ナターシャは向かってきた敵に向けて武器を向けて撃つ。
パシュ、と音がしてインクが出て来た。
「おー、質感良好」
「ナターシャ、動きが単調だ。もっと機敏に行け」
「ジュスティヌは黙ってて!今ナターシャはゲームしてるの!」
エマは口出ししてきた母に激怒していた。
姉妹は親から戦闘技術を教えてもらう日があるのだが、母がコーチなので、つい癖で指摘してしまうのであった。
「母、エマはゲームさせたいんであって、今は母の鬼スパルタ時間じゃないから、喋らないほうが良いよ」
指摘すると母はオロオロしてエマを見やり「す、すまない」とごめんねした。
エマは頬を膨らませて目を釣り上げている。
子どもの作ったゲームの邪魔をする親の光景そのままだったから、私は笑う。
「母もエマも、やろうよ。テスターは後から出来るし、見てるよりも実体感が一番のテストでしょ」
「お!良いことを言う!」
「まあ、一理ある」
母のテンションが上がり、エマもナターシャと遊ぶために作ったシステムに中へ入ってくる。
父は恐らく食後の睡眠をしているだろうから、後日で良い。
3人でたくさん競い合う。
優勝は当然母なので、エマは母にぶつけるNPCだけEXTRA【エクストラ】にすると決意していた。
それから、私が作った飲み物を飲んで、温かいお湯の銭湯で疲れを癒やす。
銭湯もエマに教えて作ってもらった。
それに家族はいたく気に入り、我が家のお気に入りスポットとなっている。
「楽しかったよエマ。凄く良く出来てたね」
「元はそっちの案でしょ」
サラツヤになった髪をお団子ヘアにして、2人でエマの部屋へ移動する。
マッマは(添い寝したい)という目からビームを出していた。
けど、エマにそういうのを強制させるのは悪いので、今回は諦めてもらう。
代わりに私があとで母の寝室を訪ねる予定。
「ほかにも鋭意制作中」
彼女は得意げに頷いて、ホログラムのプログラムを打ち出す。
「エマが言っていた架空のゲーム今日してもらったものみたいに、現実に拡張させる」
「VRゲームね」
「ん」
妹はこくりとする。
「眠いのなら寝よ」
「コード打ちたい」
「ゲームもコードも逃げないよ」
「時間は逃げる。心理」
「はいはい。分かったから、寝る」
ふにゃりとなるエマを寝かしつけて、よしよしと頭を撫でる。
まだ子供だから、眠気が強い筈。
眠るまでぽんぽんして、そっと抜け出し母の部屋を訊ねると、母も眠りかけていて、私の姿を認める。
パアッと嬉しそうに頬を紅葉させ、尻尾をふる犬のように顔をキラキラさせた。
キュッと抱きしめた途端、秒で彼女は寝落ちした。
眠りの質がエマと同等なのは流石である。
そのまま、ナターシャも甘いシャンプーの匂いに包まれながら目を閉じた。