エマが自作ゲームのスライムを3Dプリンタのようなもので具現化させた。
ナターシャは興奮に立ち上がる。
楽しくなって二人で出来上がるのを待つ。
父も母も仕事だ。
父はもしかしたら仕事じゃないかもしれない。
そういう時はどこかにフラフラ出歩いているかも。
散歩が好きなのだ。
「何色?」
「桜色。透明のグラデーション」
日本らしい。
「良いねぇ」
出来上がっていくスライムはまだ魂がない。
「データをダウンロードする。そこからゲームで出会った新種のスライムがここに入る」
「うん。私の会ったスライムと同じなんだね」
エマのゲームの中の生物。
「そう。あの後良く会いに行ったんだよね」
「そうそう。仲間申請をしたら良いよって言ってくれた」
ナターシャは出来上がった。
桜餅というよりは水饅頭の桜色って感じ。
データをインストールされ、桜のスライムはぷにっとこちらを見る。
キュー太郎も新たなる住人だろうかと気になっているらしい。
「ぷるもちだ。抱きついていい?」
「私も抱き付く」
許可をもらって2人してどっせいと飛び掛かる。
キュー太郎もチョン、と乗った。
のしかかられても擬似スライムはへっちゃらそうにしていた。
流石はエマの作成したボディ。
これ、夏ならひんやりして最高だ。
今はまだ寒いので運用はそこまで出来なさそう。
一頻りぷにぷにして堪能。
それをクッションにしながらテレビを見ているとCMが流れる。
目の覚めるような美人が歩きて、流れで化粧品を手に持つ。
化粧品を売るためのコマーシャルだったようだ。
それにしても、どこからどう見ても地球人ではない。
(宇宙人が流入してる地球だから、こういうこともありえるってわけか)
これではモデル業界とか、色々変化していそう。
地球に降り立つ前は芸能界の方が手っ取り早く馴染めるかと思ったけど、興味が薄らいだ。
エマにまだ芸能活動に興味があるかと聞いてみた。
「ない。ゲーム作るのに忙しい」
まだまだ企業の人たちとの話し合いは続いているので、忙しいのは知っている。
そのお金でまた違う技術を開発したりするのだろうと、想像は容易い。
「ねーねは?」
「私もないかなぁ」
今はぶらぶらしたい。
一度ふらりと土地を歩くと、前の人生では、目に入らなかったことが目に入っていく。
それと、こっそり回復のシールをあちこちに貼っている。
誰かが怪我をした時に出血を抑えられたり、なにか災害があったときの為に。
シールは小さくて効果は弱いが、たくさん貼っておけば良い。
あくまで、今はその実験をして様子を待つ。
人に使うのは早いと思っている。
教える予定はない。
仮に教えても医療の関係で大騒ぎになるし。
それならば知らせず、時が来るまで温存しておけばいい。
テレビを引き続き見ていると、例の王子の写真と共に説明文が読まれる。
「あ、トリモチ王子」
「ロケット王子でもいい」
あの、母親を口説き、ナターシャ達3人におしおきされた子供。
どうなったのか、これっぽっちも気にならなかったけど、なにかしらの進捗があったのかな。
公務をしばらく休むとニュースキャスターは発表して、然もありなんだと頷く。
あれだけされて、最後は地球の外に飛ばされたら誰だってそうなる。
「いやー、良いことしたなあ」
「うん。性格を矯正されて本人も今際の際にはきっと感謝する」
エマとナターシャは二人して褒め称え合った。
それから数日後、電話をかけられて家族写真どうですか、などという依頼が来た。
話を聞いて場所を調べれば今はもう殆ど残っていない写真館。
スタジオならば断っていたかもしれない。
人間だった頃の思い出が蘇る。
美容師に髪を整えてもらうのだ。
(七五三、やったな思い出がまだ残ってる。あんまりいい思い出じゃないけど)
3歳は覚えてないけど5歳と7歳は残っていた。
幼児なので1時間も3時間も髪を固まらせる為に椅子に座るように、ずっと待たされた。
その後の記憶はないが、子供にとって楽しくはない。
当時はスタジオなどという洒落た場所はなく、もっぱら写真館。
そんなすっぱい思い出を流れで思い出したけれど、写真館ならば撮ってもらおうという気になる。
早速写真館について家族に説明して、集合写真を撮影してもらうために、担当の人にお願いをした。
目的は家族の写真をガラス窓の真ん中に飾りたいからだと聞かされ、良いですよと互いに了承。
キュー太郎も勿論入ってもらう。
彼も家族だから。
当日、予約していた美容院に行くと終わったらスマホで撮影しても良いかと聞かれて頷く。
それも家族間で了承し合えば頷こうねと言い合っていた。
予想通り。
着々と身綺麗にされていく。
母なんて、ばっさりいってくれ、なんて無茶なことを言って困らせていた。
美容院から出る頃にはすっかりフレームみたいに纏まり、髪もサラ艶。
良いシャンプーを使ってくれたらしい。
写真館に行くと早速準備してあって、高画質そうな、大きいカメラが設置してある部屋へ通された。
「ふむ、ここが写真館」
「初めてだ」
両親があちこちに目を向けている。
「ルビーさんご一家の方々、このカメラのレンズに顔を向けて下さい」
「ピース、ピースピース」
「よくその言葉知ってたね」
エマが懐かしのピースサインを作り、指でVサインするのを真似する。
写真を撮影する人は、笑顔を浮かべて四人がそれぞれピースサインした写真を撮った。
キュー太郎は、片足をあげて足の形を用いた方法でVを作る。
他にもなにもしてない、しんなりとした写真。
プリクラ風もしてくれた。
最後は互いに並ぶ写真を撮って、撮影は賑やかに終わる。
プリントされた写真を手に、四人と一体のルビー家は、夕日がふんわり粉砂糖のようにまぶされる空を見上げた。
丁度カラスが飛んでいたから、目を向けたのだ。
「ふふふふん。ふーん」
その鼻歌はなんなのだ、と疑問を問われてカラスの歌だよと教える。
「カラスが鳴いたら、子供は帰る」
「カラスは精霊かなにかなのかい?」
父の言葉をきょとんとしてしまった。
思いがけない、新説のような内容のせいだ。
しかし、考えるとカラスが鳴いたら帰るように、と言い聞かせていた親はそういう風に思っていた可能性もあるかな。
「カラスも宇宙人かも」
エマがポソっという。
それならそれですごい。
「そうだったら良いねえ。夢あるよ」
カラスは賢いから、言いたいことは分かる分かる。
「よし、あそこにいるやつらを捕まえてくるか!」
母がカラスを捕まえようとして、慌てて止める羽目になった。
調べなくていいことも、世の中にあるのだ。