近づくごとに、どんどん撮影している人たちの声が、よくよく聞こえてくる。
やはり何かの番組をしていた。
「皆様、今日もジローの歩いてみたら毎日エンジョイが始まりましたよ」
「今日も私の散歩に付き合ってくださりありがとうございます」
なるほど、散歩を一緒にするていの番組か。
自分が生まれている最中に始まったか、知らなかったかのどちらかだろうな。
俳優の男性は朗らかに、いい歳の取り方をした顔に微笑を浮かべる。
「さて、では日本にある〇〇県〇〇町へやってきました」
「ふふ。今日は楽しみで、昨日は眠れなかったですよ」
「ジローさん、毎回おんなじことを言っていますね」
「だって楽しみですからねぇ。毎回」
ジローはお茶目な様子で会話をする。
ドラマで見たことのある顔だ。
ドラマに出ている人が、地方ロケなどをすると、違和感があるけれど親しみが湧く。
「エマ、え、エッ」
「はーい、では先ずはこの晴天の中散歩ができっ……!?」
「ん、〇〇さん、どうしたのですか?」
「あ、い、いえ、あの……人が浮いているのですが」
「えっ?」
人の顔よりも上で浮いて近寄ってくる相手を、見ていた女性が指を頭上へやる。
それも見えた。
この宇宙人アイには、細かなことすらきっちり見えるのだ。
指に沿ってこちらを見上げる人たちは、驚きの声と驚きの顔を見せてくる。
あの赤い色の髪の毛。
と、なれば今話題のルビー家姉妹。
エマ、ナターシャ。
「あの真っ赤なルビー色」
「そんなん、あの宇宙人しかいないだろう」
「そうだそうだ」
「やっぱそうだよなぁ」
「やべ、空浮いてるの見ちまった」
「浮いてるだけなのに、可愛い」
こちらのことを完全に認識した人たちは、ざわりざわりと口ぐちに出す。
どうしようかな。
「エマ?」
エマは止まらずに、ロケ番組の撮影箇所へ降りていく。
カメラマンが、こちらを映す。
これは今現在の映像ではないので、まだテレビに映っているわけではないのが救いだろう。
後で消してもらえるし。
安心感を得てから、急にちょっとだけ緊張する。
宇宙人になろうと、地球人の感覚を今も持っているからこそ。
芸能人に会うとなると、宇宙人でも関係ない。
「どうしますか」
「勝手に撮ってはいけないかもしれませんね」
名俳優がこちらを見ながら相談し始める。
撮影を中断させてしまった申し訳なさで、エマの方へ急激に近寄る。
「エマ、エマだめだよ。今彼らは仕事中で邪魔しちゃいけないことなんだよ」
空中で止める。
「でも、エマ。ジローという男をモデルに調査してプログラムに取り入れたい」
「ん?いきなりだね」
ナターシャは驚いた顔をする。