姉の好きな人をデータとして、残しておきたいのでありとあらゆる情報を得ておきたいらしい。
「騒ぎになったし、帰ろう」
もう手遅れだろうけれど。
撮影番組の彼らはこちらを認識しているし、こちらも彼らを見てしまったから、今は騒ぎを収めねばならない。
「ほら、ほら、ね?」
「エマたちが有名だから、騒ぐのであって、有名じゃなかったら無視して撮影を続ける」
「それはそうだけど」
「自分たちが有名ではなかったらなかったことにして、撮影を続けるから本来は問題にされない」
エマは全く帰ろうとしない。
ダラダラと珍しく座ろうとする。
「エマ……どうしたの」
「ねえねが好きな人は、リスペクト要員」
「私の安易な言葉に興味が出てしまったんだね」
でも、興味が出たからと言って、迷惑をかけてしまっているのは事実。
下に降りて、彼らに近づく。
有名俳優のいる人たちの近くに行くと、現場はピリッとした空気が走る。
それを感じながら、申し訳なさそうな顔を作り彼らへ話しかける。
「うちの妹がすみません。撮影を邪魔するつもりは全く、なかったのですが。目立つ行動で現場を止めてしまい……すぐに立ち去るので許してもらえませんか?」
謝りながら言うと、彼らは目を丸くする。
もしかして何か変なこと言われるのかと思っていたのかもしれない。
何を言われるのか、未知数だったから緊張されたのかと納得する。
彼らは言葉をじわりと浸透させていくと、お互いに顔を見合わせてどうしようかと言う顔をしていた。
「えっと」
それはどういう意味の顔つきなのかと首をかしげる。
「あの、参加してもらうってのは」
傾げる時に赤い髪がさらさらと肩に流れる。
今発言したのはスタッフの男性。
「え」
「え」
「え」
みんなが目から鱗の表情を浮かべてこちらを見遣る。
「ねぇね、どうしたの」
「あ、エマ」
エマも下に降りてきて、二人して隣り合う。
「あのう、ナターシャさんとエマさんで合ってますか?」
スタッフ達が問いかけてくる。
姉妹は揃って頷くと、現場も野次馬の人達もさらなる盛り上がりの場面に興奮した様子で、見てくる。
「すごい。生で宇宙人を見てしまったよ」
「ジローさん、宇宙人なんて失礼では」
というジローのこちらの言い方にナターシャは笑う。
「かまいませんよ。宇宙人でも未確認生命体でも、ルビー姉妹でもルビー家でもナターシャでも。呼び名なんてみんな違うのですから、好きに呼んでください」
宇宙人という言葉を失礼だと感じるのは、日本人というか、人間特有の感覚なのだろう。