数分後、ワゴン車が報道陣の居るところへ来て、解散させる。
なんだかなぁ。
解散させても後から張り付くかもしれないので、私達は外出を控えた。
「これなら、CMやらなきゃ良かったなあ」
ここまで不便になるとは。
モヤる。
今までの星ならばちゃんとプライベートに入り込まず、適度な距離感で過ごせていたのに。
やはり、地球はまだ異星人に慣れていないと感じた。
「いつか慣れる、向こうが」
エマは特に気にしてないらしく、コードを打ち込んでいる。
「そうなると良いね」
ゲームの続きを始めて、やり込み要素を進めていく。
攻略対象を誰にするのか迷う。
「エマはどの人がタイプ?」
姉妹でこういう会話するのって良いね。
「鍛冶屋」
「じゃあ、エマは鍛冶屋攻略してるの?」
エマも自作であれ、楽しんでいた。
「してる。結婚間近」
エマがシナリオ面を作らないのは自分が楽しめなくなるからねと前に言っていた。
「おお。乙女ゲーム要素楽しんでるね」
ゲームのコメントを読んでいると気づいたのだが、どうやらゲームの住人の背景ストーリーや設定、その後の展開が皆違うらしい。
膨大な文章量に、みんなはこれを誰が作ったのか、と盛り上がっている。
それは、AIによってその場で書き加えられるフレーバーテキストのせいだとエマから聞く。
よって、攻略サイトも作れないらしい。
「私は鍛治の技術に悩んでたから、品質の良い鉱石をプレゼントすることが進める方法だった。エマは?」
攻略サイトがダメなら自力の他あるまい。
「母親との確執。手紙のやりとりさせてクリア」
そこはなんだか現実を感じる。
「エマは私より年下なのにしっかりしてる」
ナターシャはエマを撫でた。
母親に手紙をエマも書いてみるかと軽い気持ちで聞いたのだが「料理の腕が上がらないのに、送ることとなんの関係もない」と鼻で吹き飛ばされるだけで終わる。
確かに手紙を送ってもグレードアップすることはありえないけど。
「まだまだ」
エマが今後のロードマップを私に話し出す。
「人気ジャンルをかなり入れたけど、まだ完成とは言えない」
プロの域だよ、それはもう。
「そうかな。もう完成してるよね」
「配信要素が入ってない」
そこは外せないと頷く身内。
「配信、要素?」
1人用ゲームでおおよそ聞くことのないジャンル。
「ゲームの中で配信行為をしたらそこに済むNPC達が視聴者として参加する事が出来る。投げ銭も可能」
一つの世界だ。
「バース世界が本当に作れそうな勢い」
「でも、複数人が集まれるシステムを搭載する気はない。どれほど周りが望もうと」
所謂2人プレイモードの更に人が増やせるモードのことかな。
オンライン?
MMOのことかな?
オンラインやMMOにすると色んな思考が入り乱れるから、やる人とやらない人がかなり偏るのだと妹は愚痴る。
増やして、ゲーム人口が減るのならやらないと言い切るエマ。
「オンラインはキリがない」
エマのゲームだからエマの方針は絶対。
姉はそれを尊重しよう。
ゲームの中に配信を入れれば、配信をした事がない人でも楽しめる。
うんうん、エマの考えは素晴らしい。
「あと、ミステリー要素も入れる」
「ミステリー?」
街に起こる事件を解決するのだとか。
「その要素を満たすためのゲームを作ってみたからナターシャもやろう」
エマに見せられたのは、フルダイブ式VRのゲーム。
パッケージとして作られていて、タイトルは【ニャーロック・ニャームズ】とある。
確かにタイトルミステリーっぽい。
「猫だ。可愛いー」
パッケージには絵もあり、アニメ調のキャラクターが2人描かれていた。
長毛種の猫だ。
人間みたいに二足歩行している。
2人が背中合わせでいて、顔はこちらを向いている。
「クオリティがプロだね」
売られている商品だ。
「エマだもん。ほら、やろう」
エマと隣り合って椅子に座る。
時計を見遣るとまだ昼前。
「エマ、ご飯はどうする?」
「チュートリアル後ならタイミング的に終わらせておけば、丁度食べ頃」
母は道場で、父は百合の花が展示されている展示会に行っている。
母の道場では、CM効果により参加希望者がザクザクだとか。
エマの本来の目的は無事完遂ということ。
(あの美貌を抜きにしても、強さは桁違いだから、強くなりたい人にとっては、参加するのが吉なんだけど)
救急車のサイレンも同時に聞こえてくるに違いない。