よすがを辿りし炎は透き通る世界へ   作:紙コップ113

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フォドラの”先生”

フォドラ全土を巻き込んだ戦争はようやく終わった。

 

ついこの間までこの地を支配していた「アドラステア帝国」、「ファーガス神聖王国」、「レスター諸侯同盟」の三つの大国はすでに、この大地から消えた。

 

帝国の裏に、そしてフォドラの下に潜んでいた「闇に蠢く者」たちも、人々に知れ渡ることなく消えた。

 

さらには1000年の間フォドラに根付いていたセイロス聖教会の大司教レア、もとい「白きもの」は女神のもとへ召されるように永遠の眠りについた。

 

そんな戦争の傷跡が癒えぬときに建てられたのが「フォドラ統一王国」。自分はその国の初代国王になり、荒れ果てたフォドラを立て直した。

 

フォドラの情勢が安定し、自身の役目を終えたため、後継者に王位を譲った。その後自分は、傭兵として各地を旅していたのだが……………

 

 

 

 

 

 

 

 

「私のミスでした。」

 

これは夢なのだろうか。青髪の少女が自分に向かって話しているのか?

 

「私の選択、そして、それによって招かれたこの全ての状況…」

 

「結局、この結果に辿り着いて初めてあなたの方が」

 

「正しかった事を悟るだなんて...。」

 

選択…………………………あの時エーデルガルトと道を違えたことを思い出す。

 

「……今更図々しいですが、お願いします。」

 

「ベレス先生」

 

先生、か。かつて士官学校で共に過ごし、数々の戦いを乗り越えていった生徒たち以外は自分はそのように呼ばれなくなった。赤の他人にそう呼ばれたのはいつぶりだろうか。

 

「きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでもかまいません。」

 

「何も思い出せなくても、おそらくあなたは同じ状況で、同じ選択をされるでしょうから。」

 

「あなたにしか出来ない選択の数々。」

 

自分にしか出来ない選択?こちらから質問できない以上、彼女の言いたいことを十分に理解できない。

 

ただわかることは、彼女のは自身の選択によって、大切な人、ものを多く失ったことだ。

 

「責任を負うものについて、話されたことがありましたね。」

 

「あの時の私にはわかりませんでした。でも、いまなら……ですから先生。」

 

「この捻じれて歪んだ先の終着点とは、また別の結果を...。」

 

「だから、ベレス先生、どうか、どうか...」

 

 

 

 

 

 

「…い。」

 

声が聞こえる。

 

「……先生、起きてください。」

 

先生?自分をそう呼ぶのは……………

 

「ベレス先生!!」

 

自分の名を呼ぶ鋭い声に、ようやく覚醒した。

 

「…………………………君は?」

 

目の前に映るのは、紺髪に眼鏡をかけた女性だ。さっき自分を先生と呼んだのは彼女で間違いないようだ。

 

……………ここは、どこだ。宿屋ではなさそうだが。この周辺にある家具や小物もフォドラでは一切見たことのないものばかりだ。

 

そして目の前にいる彼女も、耳が”彼ら”に似ている。さらには頭上には何か文様のようなものが浮かんでいる。あれは紋章だろうか。

 

今目の前の状況を整理するのに精いっぱいの中、彼女は容赦なく話す。

 

「少々待ってくださいと言いましたのに、お疲れだったみたいですね。なかなか起きないほど熟睡されるとは。」

 

呆れたような声でそう言い放つ。

 

「夢を見られていたようですね。起き抜けに申し訳ありませんが、目を覚まして、集中して頂けると助かります。」

 

自分としては、今の状況こそが夢みたいだが、今は彼女の言うとおりにしよう。

 

「もう一度、あらためて今の状況をお伝えします。」

 

「私は七神リンと申します、学園都市”キヴォトス”の連邦生徒会所属の幹部です。」

 

この一言でも全く理解できなかった。学園都市、連邦生徒会と今までで見たことも聞いたこともない単語が二つも出てきたのだから。学園都市キヴォトス。おそらく地名なのだろうが、ガルク=マクとはまた違うところだろうか。

 

「そしてあなたはおそらく、私たちが呼び出した先生……のようですが。」

 

ちょっと待て、今確信していなかった?

 

「君が自分を呼んだのなら、なぜそんなに曖昧なんだい?」

 

「……ああ。推測系でお話ししたのは、私も先生がここにいらっしゃった経緯を詳しく把握していないためです。」

 

「つまり、君も自分がここにいる理由がわかっていない、ってことかな。」

 

「ええ……」

 

「混乱されていますよね。わかります。」

「こんな状況になってしまったこと、遺憾に思います。でも今はとりあえず、私についてきてください。」

 

彼女に聞いてもはっきりとした答えが返ってこなさそうな気もするが、一応聞いておこうか。

 

「自分がここに呼ばれた理由、教えてくれるかな?」

 

「理由、ですか……………」

 

しばらく沈黙したのち、彼女は答えた。

 

「学園都市の存亡をかけた大事なこと……………ということにしておきましょう。」

 

……………どうやら理由も重大なことらしい。自画自賛のようだが、かつて新生軍を率いて帝国を討ち、フォドラの戦乱を終わらせた自分を呼んだ重大な理由。

 

 

 

 

リンとともに”エレベーター”と言われる機械で下の階に降りていった。なんかこう、今まで触れたこともない技術に触れていると、闇に蠢く者たちの本拠地に進軍した時を思い出す。もちろん、あの時のような邪悪さは感じないが。

 

「キヴォトスへようこそ。先生。」

 

キヴォトス……………そんな場所はフォドラの地図に書いていなかった。ここから見える住民の姿形や服装も、初めて見るものばかりだ。

 

「キヴォトスは数千の学園が集まってできている巨大な学園都市です。これから先生が働くところでもあります。」

 

「数千もの学園?……………だからこそ”学園”都市なのか……………」

 

学園の規模がどのぐらいなのかはまだわからないが、士官学校が数千ほどあると考えると……………いや、まさかすべてを担当しろというわけではないな。

 

「きっと先生がいらっしゃったところとは色々なことが違っていて、最初は慣れるのに苦労するかもしれませんが……………。」

「でも先生なら、それほど心配しなくてもいいでしょう。」

 

傭兵から教師になった身としては否定したくてもできないよ。

 

「あの連邦生徒会長が、お選びになった方ですからね。」

 

「連邦生徒会長?それはこの国の王ってことで間違いないかな?」

 

「え、ええ。それは後でゆっくり話すとして……………」

 

”チン!”

 

どうやら一階についたようだ。

 

 

 

 

「ちょっと待って!代行!見つけた、待ってたわよ!連邦生徒会長を呼んできて!」

 

一階に着いた途端、青髪の少女がこちらに向かって来た。

若い……………おおよそ16~17歳ぐらいか。

 

「…うん?隣の大人の方は?」

 

青髪の少女が自分に目を向けた。彼女の頭上にも何かが浮かんでいる。今度は金属の輪だ。それはひとまず置いておくとして、彼女に自分の名前でも……………

 

「首席行政官。お待ちしておりました。」

 

「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が、今の状況について納得のいく回答を要求されています。」

 

こんどは長身の少女、眼鏡をかけた少女が次々とやってきた。一方は後ろに羽があり、もう一方はまたあの耳をしている。どうやら彼女達はあの連邦生徒会長に用があるようだ。

 

「あぁ……………面倒な人たちに捕まってしまいましたね。」

 

リンが気怠そうに言った。

……………何というか、彼女の態度には疲れが滲み出ている。

 

「こんにちは、各学園からわざわざここまで訪問してくださった生徒会、風紀委員会、その他時間を持て余している皆さん。」

 

「今、学園都市に起きてる混乱の責任を問うために……………でしょう?」

 

”面倒な人たち”からは、各学園に起きたことを話し始めた。聞き取れた中で、停学中の生徒が脱出したとか、治安の維持が難しくなったとか、間違いなく連邦生徒会が機能不全に陥ったことは確かだ。

 

「こんな状況で連邦生徒会長は何をしているの?どうして何週間も姿を見せないの?今すぐ合わせて!」

 

姿を見せない……………か。正直なこと最悪の事態が予想できた。

リンだけに聞こえるように耳打ちする。

 

「リン……………まさかだけど、連邦生徒会長になにかあったのか?」

 

「…………」

「連邦生徒会長は今、席に降りません。正直に言うと、行方不明になりました。」

 

「……………!!」

 

思っていた以上に最悪なことだった。

指導者が病気や失踪などで表舞台に上がれない、という情報だけでも国によっては大混乱に陥る。例を挙げればファーガス神聖王国だ。「ダスカーの悲劇」にて当時の国王が殺された際にはうまく国政を回せなかったそうだ。帝国が宣戦布告したときには空席だった王座をコルネリアが掌握し、ファーガス公国として帝国の傀儡となる、といった惨劇があった。

 

そのこともあり、統治者がいない、ということだけで他国からの侵攻や内乱が起こる可能性もあり、国を回せていないときはその情報を簡単に流してはいけないのだ。

 

「リン……………それはそう簡単に言ってはいけないと思うけど……………」

 

「結論から言うと、”サンクトゥムタワー”の最終管理者がいなくなったため、今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です。」

「認証を迂回できる方法を探していましたが……………先ほどまで、そのような方法は見つかっていませんでした。」

 

行政が回せないではなく、行政ができない、だったとは。話が進むたびに深刻さが予想を超えていく。

その後、羽のある少女が質問する。

 

「それでは、今は方法があるということですか、首席行政官?」

 

確か”先ほどまで、”と言っていた。ということは状況はマシになったということか?

 

「この先生こそが、解決策になってくれるはずです。」

 

「……………自分が?」

 

自分が解決策か。今思えば、かつて一つの大陸の危機を救い、王として国を治め、さらには教師の経験がある。そんな都合のいい人間がいたとなれば連邦生徒会長が指名するわけだ。

 

「ちょっと待って、そういえばこの先生はいったいどなた?どうしてここにいるの?」

 

「キヴォトスではないところから来たようですが、先生だったのですね。」

 

そういえば、彼女たちに自己紹介をしていなかった。

 

「はい、こちらの先生は、これからキヴォトスの先生として働く方であり、連邦生徒会長が指名した人物です。」

 

「行方不明になった連邦生徒会長が指名?ますますこんがらがってきたじゃない……………」

 

こんがらがっているのは同じだ。

 

「あー、自分はフォドラという場所で傭兵をしていたベレスだ。よろしく。」

 

そう挨拶した。もしかしたらと思い、フォドラの名を挙げたが果たして……………

 

「フォドラ……………?」

 

「聞いたことがないですね。」

 

駄目そうだ。

 

「え、ええと、こんにちは先生、私はミレニアムサイエンススクールの……い、いや挨拶なんて今はどうでもよくて……!」

 

ふむ、この少女は礼儀正しく良識的な子だが、どうも効率主義な面が浮かび上がる。この混乱の最中だからかもしれないが。

 

「そのうるさい方は気にしなくていいです。続けますと……」

 

「誰がうるさいですって!? わ、私は早瀬ユウカ! 覚えておいてください、先生!」

 

「覚えておく、ユウカ。」

 

こう感情豊かな子を話していると、士官学校時代のころを思い出すよ。

 

 

 

「……………先生は元々、連邦生徒会長が立ち上げた、ある部活の担当顧問としてこちらに来る事になりました。」

「連邦捜査部”シャーレ”。」

「単なる部活ではなく、一種の超法規的機関。連邦組織運営のため、キヴォトスにそんざいするすべての学園の生徒たちを、制限なく加入させることも可能で、各学園の自治区で、制約なしに戦闘活動を行うことも可能です。」

 

「少し、質問してもいいかな?」

 

「どうぞ。」

 

「この都市の生徒を自分の好きに参加させ、その上戦闘もできる。それはキヴォトスを武力で統治しろと、ということかな?」

 

「……………それも可能ではあります。」

 

「はぐらかさずにちゃんと答えて。それに戦闘もできるってどういうことなの?」

 

「……………わかりません。この機関は連邦生徒会長が作ったのですが……………」

 

また連邦生徒会長か。どこの誰だか知らないが、下の人間に対する報連相ができていないのか。キヴォトスは彼女一人の力で今まで統治していたというのか?それからなぜ自分にここまでの権力を与えるのだろうか……………謎が深まるばかりだ。

 

……………戦闘。それはフォドラで起こったあの戦乱と同じようなことだろうか。

……………かつて知り合った生徒たちの断末魔の叫びが聞こえる。自分が殺した生徒……………グロンダーズ平原で戦死したディミトリ……………生死不明のクロード……………そしてエーデルガルト……………。

 

もちろん、お互いが自身の信じたもののために戦っての結果だということはわかっている。だけど、知り合った者同士で殺しあうのは何としても避けたかったことだ…………………………自分はまた、生徒を戦場に送り込むことになるのか?

 

「先生?少々顔色が悪そうですが、大丈夫でしょうか?」

 

「ん?あ、あぁ。ごめん、考え事をしていた。」

 

「…………とにかく、これからシャーレの部室に向かいましょう。そこに地下に”とある物”を持ち込んでいます。」

「先生を、そこにお連れしなくてはなりません。」

 

そういうとリンは、自分を連れて施設を出た。




読んでいただきありがとうございます。
意外となかったFE風花雪月とブルアカのクロスですが、書いてて分かりました。これは相当難しいと。
フォドラとキヴォトスとでは文化も技術も違うし、ベレスの人物像もブルアカの先生と結びづけづらいしでかなり解釈違いが多いと思います。
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