よすがを辿りし炎は透き通る世界へ   作:紙コップ113

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必然の戦い

シャーレの部室まであとわずか。そう思った時、信じられない光景を目にした。

リンやユウカと同じ年の少女たちが、街の住民や建造物を破壊している。一応、リンの同僚であるモモカから、連邦生徒会に恨みを持った不良生徒が暴れていることは伝えられていたが、まさかここまでとは。ここがフォドラであれば、国や教団の正規軍が出撃するほどの規模だ。

 

それに彼女たちが持っている武器は何だ?何やら玉みたいなものを発射しているが、弓や魔法とは違う原理なのは確かだ。

 

「なんで私たちが不良たちと戦わないといけないの!!」

 

「サンクトゥムタワーの制御権を取り戻すためにも、あの部室の奪還は必要ですから。」

 

……………戦わないと話にならないか。一応、”各学園の暇そうな方々”の名前と戦闘での役割を道中で聞いておいた。

 

ユウカは最前線で敵の攻撃を引き付けるのが得意。いわゆるアーマーナイトやフォートレス等の重装兵にあたる。

 

黒い羽の生えた長身の少女が羽川ハスミ。彼女は後方からの狙撃が得意で、アーチャーやスナイパーといった攻撃役にうってつけだ。

 

眼鏡をかけた特徴的な耳の少女が火宮チナツ。表立っての戦闘はそこまで得意ではないが、治療などの後方支援に長ける。プリーストやビショップに当たるのが彼女の役割だろう。

 

最後に、白い羽のような髪が特徴的な守月スズミだ。彼女は”閃光弾”という強い光を放つ道具の扱いに長けており、切り込みや攪乱が得意のようだ。馬やペガサスには乗っていないが、ソシアルナイトやペガサスナイトの役割を担えそうだ。

 

「いっ、痛っ! 痛いってば! あいつら違法JHP弾を使ってるじゃない!」

 

「ユウカ!?大丈夫か!」

 

「い、いえ……お気遣いありがとうございます……………先生は危険ですので、安全なところに隠れて下さい。」

 

「そうは言ってられないよ……………君たち生徒を戦いに出して死なせてしまうは避けたいからね……………。」

 

そう言うと、自分の腰に隠していた天帝の剣に手を伸ばす。

 

「待ってください!私たちは撃たれても大きな怪我になりませんが、キヴォトスの外から来た先生では一発が命取りになるんです!」

 

ハスミの言葉に目を疑った。あの殺し合いともいえる戦いで、命に関わらないとは……………。つまり、彼女たちの戦闘は、カスパルがよくやっていた”喧嘩”と同じってことなのか?

 

「……………分かった。でも、君たちの指揮は執らせてほしい。」

 

「え、えぇっ?戦術指揮をされるんですか?まぁ、先生ですし……………。」

 

「問題ない。ここでの戦闘は初めてだが、過去に多くの部隊を指揮したことがある。」

 

「分かりました。これより先生の指揮に従います。」

 

「生徒が先生の指揮に従うのは自然なこと、ですね。よろしくお願いします。」

 

 

 

 

 

 

「ユウカ、前に出て敵の攻撃を引き付けるんだ!」

 

「分かりました、先生!」

 

ユウカは不良生徒の射撃を受け止めつつ、気をひかせるように射撃をする。どうやら彼女には、自身を守る防壁を展開できる魔法?のようなものを使えるらしい。

 

「ズスミは閃光弾で陣形を乱し、ハスミは隙をついて仕留めて!」

 

ユウカが引き付けた不良生徒を、スズミの投げた閃光弾で目晦まし、その隙にハスミが彼女たちの頭に玉を撃ち込んだ。普通の人間なら即死の威力だが、気を失うだけで済むみたいだ。

 

……………今のところは順調だ。自分が前に出られないのは歯がゆいが、順序良く数を減らしている。よし、この様子だと、そう時間がかからずに全滅できそうだね。

 

「!?先生!そこから離れてください!」

 

チナツ?離れろ、ってことはここに攻撃が届いたのか?足元に何かが転がっている。これはいった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………………………………………ここは…………………………

 

『おぬしおぬしおぬし!気を付けよ!』

 

!?この声は……………

 

『わしを殺める気か、痴れ者め!』

 

「ソティス!?」

 

……………間違いない、ソティスだ。でも、ソロンに嵌められた罠から脱出するために一体化した。彼女とはもう会えないと思っていたのだが……………

ソティスは深いため息をし、話を続ける。

 

『全く、あの小娘の言ったことを聞いておらんかったのか?能天気に突っ立っておって!』

 

「うっ」

 

相変わらずソティスは痛いところを突いてくる。

 

「ソ、ソティス……………また助けてもらったところで悪いんだけど、どうして前と同じように話せるし、時を止められるの?」

 

『話を逸らすでない!!』

『……………』

『……………わしはおぬしとともにおる、最後にそう言ったはずじゃが?』

 

「それはそうなんだけど、どうしてこう話せるのかなってことを聞きたかったんだけど。」

 

『ふむ、そっちか……………』

『わしにもよくわかっておらんが、この”キヴォトス”という地が関係するのではなかろうか?』

 

「ここが?確かに、ここにいる人たちは、普通なら致命傷となることが気絶するだけで済んだり、羽が生えていたり、それから頭に妙なものが浮かんでいたりと……………」

 

『それだけではない。犬や猫が二足で歩いたり、体が鉄や鋼でできた輩もおる。』

 

「ここがフォドラとは遠く離れた場所だというのは分かるけど……………どうやってここに来たかが行く分かっていないんだ。」

「ここで目を覚ます前、誰かが何かを託していたことは、うっすらと思い出せるのだけど。」

 

『……………ベレスよ。』

『わしらは別の次元と言える所に来たのかもしれん。』

 

「つまり、大陸どころか、空間ごと違うってこと?」

 

『あくまで推測じゃがな……………とにかく!』

『おぬしはシャーレとやらに向かっておるのじゃろう?だったら早く時を戻さんか!』

 

あぁ、そうだった。このまま時を動かせば死ぬことを忘れていた。

 

『この世界のことを考えるのは後じゃ!今は目の前のことをなんとかせい!』

 

……………ソティスと話したおかげで、少し自信がついた。見知った顔と話せるのは心強い。

 

さて、いまはこの戦いを乗り越えるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

時は戻り、自分がチナツが叫ぶ少し前まで戻る。

先ほどは見逃していたが、上から何かが降ってきている。

 

「アレか……………」

 

すぐさまそれを不良生徒に向けて蹴り飛ばす。

それは彼女たち目の前で爆発する。あれが直撃したならば、即死だった。ソティスに感謝だ。

 

「クソッ、あの女、手榴弾を弾き返したぞ!」

 

「どうなってやがる、指揮だけじゃなかったの……………グアッ!」

 

「何だ!?アレは、蛇か?」

 

なるほど、手榴弾というのか。爆発によってできた煙幕の裏で天帝の剣を伸ばし、彼女たちの武器を弾く。

 

「せ、先生?安全な場所にいてくださいと言ったじゃないですか!」

 

「そうだね。でもユウカ、自分はこういったやり方が性に合っているらしい。」

 

「……………分かりました。危ないときは、担いででも撤退しますからね。」

 

「その時は頼んだよ。」

 

……………やはり前に出て戦った方がいい。この世界の武器も、ある程度慣れれば避けるのも容易い。

 

こうして、暴れていた不良生徒たちを制圧することができた。

 

 

 

 

 

「なんだか、戦闘がいつもよりやりやすかった気がします。」

 

「やっぱり、そうよね?」

 

「先生の指揮のおかげで、普段よりずっと戦いやすかったです。」

 

「君たちの力になれたのなら、それは良かったよ。」

 

自分が培った経験も、ある程度はここでも通用するようだ。

 

「というか、先ほど先生が使っていた剣、何かおかしくなかったですか?先生が持った瞬間、全体が光り、鞭のように伸びたのを見ましたが……………」

 

「これ?これは天帝の剣と言って、自分が元居た場所の伝説では、女神さまがとある英雄に授けたものだって言い伝えがあるんだ。」

 

「ず、ずいぶんファンタジー小説のような言い伝えですね……………」

 

実際は、神祖の骨や心臓で作られたのが正しいけど、隠していた方がいいか。

 

シャーレまであと少しだ。残った不良生徒を5人で無力化しながら、目的地に向かった。

 

 

 

シャーレに到着した。

 

『シャーレ部室の制圧完了。私ももうすぐ到着予定です。建物の地下で会いましょう。』

 

「リン!?どこから声が……………!?」

 

「先生……………機械に疎いのは薄々分かってはいましたが、ここまでだとは……………」

「これは無線機です!遠くにいる人と会話ができるものですよ。」

 

……………ある程度落ち着いたら、ユウカにいろいろ教えてもらおうか。

 

自分たちは、シャーレの建物に入り、地下への階段を発見した。

 

「ここだね。じゃあ、入るよ。」

 

階段を降り、扉を開ける。

 

「うーん……………これが何なのか、まったく分かりませんね。これでは壊そうにも……………」

 

あの生徒は……………やはり狐坂ワカモか。不良生徒たちを扇動し、今回の騒動を引き起こした主犯だと、リンから聞いている。

 

部屋を物色するワカモの後ろに立ち、天帝の剣を首に突き立てる。

 

「君が騒動の原因だね?おとなしく手を挙げて。そうすれば命を取らない。」

 

「フン、私に刃を向けるとは、とんだいの……………」

「……………あら?」

 

「もう一度言った方がいいかな?」

 

「あら、あららら……………」

 

自分にと目が合った。どう出る?

 

「……………」

 

「し、し……………」

「失礼いたしましたーー!!」

 

ワカモが急にシャーレから飛び去った。

……………何だったんだ今のは。

 

 

 

 

ひとまずシャーレの地下室にリンが到着した。

 

「?何かありましたか?」

 

「いや、何でも。」

 

正直なこと、さっきの出来事は自分でもよくわからなかった。別になかったことにしてもいいだろう。

 

「そうですか。ここに、連邦生徒会長が残したものが保管されています。」

 

リンが何かを拾い、こちらにあるものを渡してきた。

 

「これは……………板のようだけど。」

 

「これが、連邦生徒会長が先生に残したもの。”シッテムの箱”です。」

 

箱……………?箱というにはかなり薄い気がするけど……………。

 

「私たちが普段使っている”タブレット”という機械に似ていますが、どこで作られたのか、どうやって動いているのかも不明。」

「連邦生徒会長は、このシッテムの箱は先生のもので、先生はこれでタワーの制御権を回復できるといっていました。」

「私たちでは起動すらできなかったのですが、先生なら起動させられるのでしょうか。それとも……………」

 

起動しろ……………と言われているが、そもそもこの世界の機械すら全く分からないのに、それはちょっと酷じゃないのか?

 

「……………では、私はここまでです。ここから先は、先生にかかっています。」

 

「え?い、いやちょっと……………」

 

リンが行ってしまった。

 

……………

……………表面に触れると、それは光を放った。

 

”システム接続のパスワードを入力してください。”

 

ぱす…わーど……………?あぁリン!戻ってきて、助けて!

 

 

 

 

突然ある言葉が浮かび上がった。それは誰かが自分の頭に焼き付けるように……………

 

”我々は望む、七つの嘆きを。”

”我々は覚えている、ジェリコの古則を。”

 

”接続パスワード承認。”

”現在の接続者はベレス、確認できました。”

 

通った……………のか?

 

”「シッテムの箱」にようこそ、ベレス先生。”

”生態認証および認証書生成のため、メインオペレートシステムA.R.O.N.Aに変換します。”

 

そう聞こえた瞬間、目の前が真っ白な光に包まれ、目を開けると、晴天の空に、壁が崩れた教室のようだった。

これはまた違う世界に来たのだろうか。念のためソティスに聞いてみることにした。

 

「ソティス、聞こえる?」

 

『何じゃ?』

『……………また場所が変わっておる。今日という日は大忙しじゃのう。』

 

「これは、また違った世界に来てしまった……………ということかな?」

 

『知らん。あそこに寝ておる小娘に聞いてみるのがよかろう。』

 

ソティスの助言をもとに、机の上で眠っている少女を起こすことにした。

 

「起きて。君にいろいろ聞きたいことがあるんだ。」

 

優しく彼女の体を揺らしながら声をかける。

 

『むにゃ……カステラにはぁ……いちごミルクより……バナナミルクのほうが……』

『えへっ……まだたくさんありますよぉ……』

 

起きる気配、無し。

 

『ああもう!変な気遣いは不要じゃ!』

『おぬし!おぬしおぬし!早く目を覚まさんか!』

 

「いやソティス……………いくら大声を出しても届かないんじゃ……………」

 

『うわぁぁぁぁ!な、何事ですか!?』

 

「起きた!?」

 

『はっはっは!どうじゃ!わしは小娘を起こせたぞ!』

 

驚いた顔をしながら、少女は自分に目を向ける。

 

『せ、先生!?』

『この空間に入ってきたということは、ま、ま、まさかベレス先生!?』

 

「そうだよ。」

 

『う、うわああ!? もうこんな時間!?』

 

そういうと少女は、何とか気持ちを整理して、話し始める。

 

『えっと…あ、そうだ!まずは自己紹介から!』

『私はアロナ! このシッテムの箱に常駐しているシステム管理者であり、メインOS、そしてこれから先生をアシストする秘書です!』

 

システム管理……………メインOS……………?

 

『やっと会うことができました!私はここで先生をずっと、ずーっと待っていました。』

 

何というか、こういう出会い方はソティスと初めて会った日を思い出す。確か、あの時も寝ているところから始まった。

 

『まだ身体のバージョンが低い状態でして、特に声帯周りの調整が必要なのですが……これから先、頑張って色々な面で先生のことをサポートしていきますね!』

 

「うん、よろしく。」

 

『あ、そうだ! ではまず、形式的ではありますが、生体認証を行います!』

 

「生体認証?」

 

もう機械のことは正直勘弁してほしい……………

 

『えーっと……………生体認証というのは、指紋や光彩など、人体の特徴的な部分をセキュリティの情報として扱う認証システムのことです!』

 

「要するに、体そのものが鍵となるってことであってるかな?」

 

『はい!ですから、こちらに来ていただけますか?』

 

アロナに近づくと人差し指をこちらに向けてきた。

 

『さあ、この指に、先生の指を当ててください。』

 

アロナの指に、自分の人差し指を当てる。

 

……………

……………

 

『うふふ、まるで指切りをして約束しているみたいでしょう?』

 

「指切りは基本、小指でやると思うけど、違う?」

 

『実は、これで生体情報の指紋を確認するんです!』

『画面に残った指紋を目視で確認するのですが……すぐ終わります! こう見えて目は良いので!』

 

……………

 

『どれどれ……』

 

『うう……うーん……よく見えないかも……』

 

すぐ、終わる……………よね?

 

『……まあ、これでいいですかね?』

 

『こやつ、割と適当じゃな。』

 

「ソティス、それは言わない方がいい。」

 

『……はい! 確認終わりました!』

 

……………ちょっと怪しい部分もあったが、彼女なりに頑張っていたんだ。あまり言及しないでおこう。

 

『……………あの、先生?今更ながら、ちょっとお聞きしたいことがあるんですが。』

 

「どうしたの?」

 

『……………ずっと私たちの周りでウロウロしているその人って、先生の娘さん、ですか?』

 

『「!?」』

 

『まさか……………わしの声が、姿が見えるというのか?』

 

『はい……………起こされた時から見えてました……………』

 

……………まさかソティスを認識できるとは、彼女は何者なんだ?さっきOSとか管理者とか言っていたが、それと関係するのだろうか。

 

 

 

 

とりあえず、自分とソティスがどういう関係なのか、今のキヴォトスがどうなっているかを二人で説明した。

 

『なるほど……………先生の事情は大体わかりました。』

『連邦生徒会長が行方不明になって、そのせいでサンクトゥムタワーが制御できなくなったと……………』

 

「あとそれから、君は連邦生徒会長がどんな人か何か知ってることはある?」

 

「私はキヴォトスの情報の多くを知っていますが、連邦生徒会長についてはほどんど知りません。彼女が何者なのか、どうしていなくなったのかも……………」

 

知らない、か。どうやって彼女が自分のことを知り、どうやってここに呼べたのかの手掛かりになると思っていたが……………

 

『お役に立てず、すみません。』

 

「いや、気にしなくてもいいよ。」

 

このことについては、自力で探るしかなさそうだ。

 

『ですが、サンクトゥムタワーの問題は、私が何とか解決できそうです!』

 

「お願いしてもいいかな?」

 

『はい、わかりました!それでは、サンクトゥムタワーのアクセス権を修復します!』

 

タワーのことはいまいちわかっていない。だから彼女に任せるのがいいだろう。

 

そう思った十数秒後、何かが動く音がし、地下室の明かりが点く。

……………壁や天井に、光源らしきものは見えるが、燭台とは別の仕組みのようだ。

 

『サンクトゥムタワーのadmin権限を取得完了……』

 

「おわった……………?」

 

『サンクトゥムタワーの制御権を無事に回収できました。今サンクトゥムタワーは、私の統制下にあります。』

『今のキヴォトスは、先生の支配下にあるも同然です!』

 

支配下、ということは今は自分がキヴォトスの王になったということ……………やはりシャーレは連邦生徒会長の後釜ということなのか?

 

『連邦生徒会とやらに権限を渡してやれ。』

『キヴォトスに来たばかりのこやつには宝の持ち腐れじゃ。』

 

『でも……………大丈夫ですか?連邦生徒会に権限を渡しても……………』

 

「うん、問題ない。自分はまだここがどういうところかがまだわかっていないからね。」

 

『わかりました。これよりサンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管します!』

 

やっぱり、話にソティスが加わっている感覚にまだ慣れないな。

 

 

 

 

 

「どうかな?制御権は……………」

 

「はい、サンクトゥムタワーの制御権の確保が確認できました。」

「これからは連邦生徒会長がいたころと同じように、行政管理を進められますね。」

 

リンの顔には少し安堵するような表情が浮かぶ。どうやらうまくいったようだ。

 

「お疲れさまでした、先生。キヴォトスの混乱を防いだことに、連邦生徒会を代表して深く感謝いたします。」

 

「君たちの助けになれたのならよかった。」

「ところでリン。今まで余裕がなかったから言わなかったんだけど、シャーレは普段どんな仕事をするの?」

 

「あぁ、そうですね。最後に、連邦捜査部シャーレについてご紹介します。ついてきてください。」

 

 

 

 

「ここが、シャーレのメインロビーです。」

「長い間空っぽでしたけど、ようやく主人を迎えることができました。」

 

扉の前に、”空室 始業予定”と張り紙がある。前からある組織だと思っていたが、自分が来て初めて出来る組織なのか?

 

リンが扉を開け、自分もそれに続き部屋に入る。

 

『今日まで使われてなかった割には、中は整理されておる。』

『おぬしは相当、あの連邦生徒会長に期待されとるのう。』

 

本棚、ソファー、机の上には様々な機械があり、壁には生徒たちが使っていた武器がかけられている。

 

「ここが自分の仕事場となるわけか……………具体的に何をすればいいの?」

 

「シャーレは、権限はありますが目標のない組織なので、何かをやらなければならないという強制力は存在しません。」

 

なるほど。シャーレついて初めに聞いたとき、曖昧な答えだったのはそれが理由か。武力で統治することも「可能である」、間違いではない回答だ。

 

「じゃあ、今連邦生徒会が自分にやってほしいことはある?それをシャーレの仕事としよう。」

 

ということで、現在連邦生徒会長の捜索に全力を尽くしている連邦生徒会の手が回らない、寄せられた苦情、支援物資の要請、環境改善、落第生への特別授業、部の支援といった、細かいことを任された。要するにシャーレは、キヴォトスの何でも屋、となった。

 

 

 

 

リンが連邦生徒会に帰るのを見届け、入り口に待機させていたユウカたちにお礼を言ったのち、部室のソファーに腰かけた。悪くない、なかなか快適だ。

 

『ようやくひと段落ってところかの。』

 

『あはは……………なんだか慌ただしい一日となりましたが、お疲れさまでした、先生。』

 

「二人とも、今日はいろいろと助かったよ。ありがとう。」

 

『えへへ……………でも、本当に大変なのはこれからですよ?』

『これからは、キヴォトスの生徒たちが直面している問題を解決していくのです!』

 

「それは楽しみだね。こう見えても人助けは好きなんだ。」

 

『……………じゃがおぬし、そんな右も左もわからぬようでは、小童どもの足を引っ張りかねんぞ?』

 

「あぁ……………そうだね。」

「だったらまずは……………ここでの生活に慣れることから始めようか。」

 

まだまだ学ぶことは多い。ここで”先生”となるには、少し早そうだ。




読んでいただきありがとうございました。
ベレスだけじゃ苦労しそうなのでソティスも投下しました。
基本的にソティスはアロナと似た立場と考えております。



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