よすがを辿りし炎は透き通る世界へ   作:紙コップ113

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お茶会 ユウカ編

シャーレの顧問になって、およそ一週間が経過した。

支援物資の調達や小さな騒動の鎮圧など、簡単にできる依頼をこなしながらキヴォトスの生活を学んでいる最中だ。

買い物はもちろん、”バス”や”電車”などの移動手段や、”モモートーク”と呼ばれる生徒との連絡もある程度できるようになった。

だが、今になってもまともにこなせないことが一つある。それは……………

 

「先生!ここの字が間違っていますよ!」

 

「えっ?あ……………ほんとだ。」

 

「まったく……………こんな些細なミスはそろそろ勘弁してほしいです。」

 

そう、書類仕事だ。

シャーレの活動の結果、活動によって生じた費用などをまとめた報告書を連邦生徒会に提出する必要がある。勿論、教師や国王を務めていたこともあり、それらの経験が全くないわけではないが、いかんせんやり方がフォドラとは大きく違う。

以前、報告書をペンで書き、リンに提出したところ、かなり怒られた。どうやらペンでまとめるのは駄目らしく、何か”パソコン”という機械で書いたものじゃないと都合が悪いようだ。

 

それを就任初日のシャーレ奪還で一緒だったユウカにモモートークで愚痴ったのだが、彼女は何か慌てた様子で

 

「今すぐそちらに向かいます!シャーレで大人しくして待っててください!」

 

何かの冗談だと思っていたが、本当にユウカがやってきて現在に至る。

 

 

 

「無線機を知らなかったのを見て、機械に弱いのは確信していましたが、パソコンで文字一つも打てなかったほどとは正直思いませんでしたよ……………」

 

「うぅ……………」

 

自分にとっては異端なものかもしれないが、彼女にとっては日常的に使っているのだろう。ならばこっちが何としてでも合わせなければならない。

 

「先生って確かフォドラ?という場所で傭兵をしていたんですよね?傭兵でも、こういった契約の書類を作らないといけないと思うのですが、その時はどうしていたのですか?」

 

「手で書いていたけど……………」

 

「……………それでよく不便と感じませんでしたね…」

 

「まぁ、それが普通だったからね。今となっては違うみたいだけど。」

 

「あっ先生、また手が止まっていますよ!」

 

「うぐっ」

 

こうしっかりと油断も隙もないのは、青獅子の学級にいたイングリットに似ている。よく女性を口説いていたシルヴァンに目を付けていたのを思い出すな……………。

 

 

 

 

ユウカに小言を言われながらも、何とか書類を片付けることができた。

 

「ようやく終わりましたね。お疲れさまでした。」

 

「いろいろと助かったよ、ユウカ。」

「そうだ、今日のお礼も兼ねて、お茶でも飲んでいかない?」

 

「え、いいんですか?じゃあ、ここはお言葉に甘えさせて……………」

 

実は、生徒とお茶を飲むために、いろいろと茶葉を集めていた。ハーブティーやベリーティー、果実茶など、フォドラでもなじみ深い茶葉をそろえている。まぁ、フレスベルグブレンドとかは流石になかったけど。

 

 

 

さて、これからお茶会となるのだが、もてなす側はそれなりに気を使う。

 

一つ目は茶葉の選び方だ。相手の性格や状態を見て、それに合ったものを選ぶ必要がある。

ユウカには……………リフレッシュしたいときにおすすめの、さわやかな味わいを楽しめるミントティーにしよう。

 

「私、お茶とかあまり詳しくないのですが、いい香りがしますね。」

 

よし、茶葉の選択は間違っていなかったようだ。

 

「今日は本当に助かったよ。そういえばユウカは、ミレニアムのセミナーで、いつもどんなことをしてるの?」

 

「私は会計を担当しています。」

 

「会計か……………いろいろ大変そうだね。」

 

「そうですね。ミレニアムは最先端技術の研究や開発をする以上、出費が多く、部によってはやむを得ず経費を削減することがあるのですが、それによるものなのか、噂では私のことを”冷酷な算術使い”と呼ばれているそうなんですよ……………」

 

二つ目は、相手の話を遮らず、適切な応答をすること。変に否定したり、間違ったことを言った時の空気は最悪の一言だ。

 

「”冷酷な算術使い”か……………。」

「でも、君のやっていることは学園のために大事なことだ。君がいることで生徒たちは活動ができているわけだし、本気で君を嫌っている人はいないんじゃないかな?」

 

「嫌っていないですか……………頭ではわかっているのですが、自分がやってきたことが悪く言われるのはやっぱり、ちょっと不服というかなんというか……………」

 

「自分は、君が頑張っていることを知っている。だから応援するよ。」

 

「フフッ……………先生にそう言ってくれると、気分も少し晴れますね。」

 

「それならよかった。お互い、これからも頑張ろうね!」

 

「はい!今日はおいしいお茶、ごちそうさまでした。」

 

会話が終わるころには、カップは空になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベレスがパソコンに苦労しているとき、シッテムの箱では……………

 

『やれやれ、小童に教えられて情けないのう……………』

 

『あはは……………人には得意不得意がありますからね。』

 

『というか、ああいうことは、秘書であるおぬしがやるべきじゃなかろうか?』

 

『あー……………それについてはちょっと……………』

 

『秘書を名乗るくせして書類の一つ書けんのか?』

 

『…………………………はい。』

 

『なんじゃと!あやつの手伝いもできんとは、このわしが裁きを下す!』

 

『わわっ!頭をポカポカしないでください~~』




今回はちょっと変わったものを書きました。ほとんど手探りだったもので違和感だらけかもしれません。
モモトーク関連はこういった形で回収していこうと思います。


次回からはアビドス編に入ります。
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