よすがを辿りし炎は透き通る世界へ   作:紙コップ113

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FE風花雪月5周年おめでとうございます
サクラコ「もはや今生に救いの道はありません。潔く、その命をもって罪をあがなうのです。」


砂漠の救助戦

帝都アンヴァル、宮城の玉座の前で、かつて共に学び、肩を並べた皇帝が膝をついて息を切らしている。

 

「私の道は……………ここで……………途絶えるか……………」

 

彼女は再び”アイムール”を握ろうとするが、嵌められた紋章石の光は消えた。

覇道が自身の命とともに終わることを悟ったのか、彼女は自分の顔を見上げる。

 

(せんせい)……………」

 

何となくだが、彼女は自分のことを”先生”ではなく、”師”と呼んでいた気がする。言い方は同じだが、彼女の口から発する”せんせい”は、他と確かな違いを感じた。

 

「勝者の務めを……………討ちなさい、(せんせい)!」

 

彼女も血筋だけで皇帝になったのではない。彼女自身の死がフォドラにどれだけの影響を持つのかをよく分かっているのだろう。

今も各地で、多くの人が殺し合っている。自分の選んだ道は、彼女の屍を超えた先にしかない。

 

……………この光景が夢だということは理解している。だが、彼女の手を取らない、というか取ってはいけない。それは自分の選択を否定すると同時に、ともに戦ってくれた仲間たちを、何より目の前の彼女を裏切ることになるからだ。

 

いくらこの夢を見ることになろうとも、自分は彼女を討つ。それが自分への戒めであると同時に、勝者の義務だから。

 

天帝の剣を頭上に挙げ、彼女に向けて一気に振り下ろす。

 

「二人で……………歩き、たか……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

ピピピピピピ

 

この音は……………誰かからの着信か。

対策委員会から借りた空き部屋の寝床から起き上がり、シッテムの箱を起動する。

 

『ムニャムニャ……………まだ夜ですよぉ……………』

 

「お休み中悪いけど、通話をつないでくれる?」

 

誰からだろう……………これは、アヤネ?

 

「アヤネ、どうかしたの?」

 

『すみません先生、こんな夜遅くに電話して……………』

 

「大丈夫。何か急ぎのことなんでしょ?」

 

得意とまではいかないが、傭兵時代には夜中に起こされてそのまま戦闘になることは珍しくない。実際、三人の級長に会ったときもジェラルトに起こされたことを覚えている。

 

『セリカちゃんと連絡がつかないのです。』

『夜寝る前に、みんなとモモトークをするのが習慣になっているのですが、今日はセリカちゃんから既読が付かなかったから、何かあったんじゃないかと思いまして。』

 

「つまりセリカの身に何かあった、と言うことだね。」

「皆を学校に集めて。今すぐ救出の準備をしよう。」

 

そうアヤネに伝えて、自分はアビドス高校へ走った。

 

「あ、そうだ。アロナ、君からも手掛かりがあれば探してほしい。できそう?」

 

 

 

 

 

対策委員会教室

 

「さてみんな、セリカと連絡が取れなくなったという話は聞いてるね?」

 

セリカを除く対策委員会は少し眠そうながらもそろっていた。意外にも、四六時中昼寝のことを考えているホシノは一番目を覚ましていた。

 

「単刀直入に言うと、セリカは何者かに拉致された可能性が高い。」

 

シロコ、ノノミ、アヤネが目を見開く。

 

「うへー。やっぱセリカちゃんは手がかかる子だねー。」

 

やっぱりホシノは特に慌てる様子がない。過去に似た事例があったのだろうか?まぁそれは自分も同じなのだが。

 

『おぬし、探しておる小童の居場所が分かったぞ!』

 

『連邦生徒会のセントラルネットワークを経由して、セリカさんの端末の位置を特定しました!』

 

おぉ、それは助かる。早速アロナが示した位置を共有する。アビドス住宅街跡地だ。

 

「位置がズレている……………これは、歩いてるってことかな?」

 

「先生、違う。これは何かに乗せられている。徒歩はこんなに速くない。」

 

「あまり時間はなさそうですね。私たちもすぐに出発しましょう!」

 

どうやらアビドスにも車を所有しているようだ。早速乗り込み、住宅街跡地へ向かった。

……………気のせいであってほしいが、死神に遭遇しそうな気がする。

 

 

 

 

 

アビドス住宅街跡地

 

「ん、いた!」

 

セリカが積み込まれていると思わしき車を発見した。あの形から…おそらく”トラック”と呼ばれる機種だろうか。となると、後方の扉を破壊し、セリカを連れ出して早急に撤退するのが最善か。

 

「誰か、ここからあの扉を壊せる武器はある?」

 

「だったら私に任せて。」と言ったシロコがある機械を鞄から取り出した。

その機械が何かを尋ねると、彼女は「ドローン。道中で拾った。」と答え、それを空中に飛ばした。アヤネもドローンを所持していたが、一体どんな原理で浮かせているのだろう?

 

「発射。」

 

ドローンから砲弾もといミサイルが発射される。扉が破壊され、拘束されたセリカが見えた。遠目で見た限り、特に怪我とかはしてなさそうだ。

だが、車は止まらない。まぁ人質が入っている以上、破壊させるわけにはいかないが。

 

「ごめん先生、エンジンを壊せなかった。」

 

「いや十分だよ。後は自分に任せて。」

 

懐から天帝の剣を取り出す。

剣を槍のように構え、突き刺すように伸ばす。先端が脆い部分に刺さり、固定された。

それを確認した自分は車から跳び、剣を縮めて一気にセリカの下へ向かう。

…これがあの時にできていれば、5年間も崖下で眠ることはなかったんだけどな。

 

「セリカ、生きてる?」

 

「……………先生、なんでここに!?」

 

ミサイルの爆発のせいか意識はあるようだ。暗闇で怖かったのか、すっかり涙目じゃないか。

セリカを担ぎ、車から飛び降りる。

 

「セリカちゃんを確認!先生に担ぎ込まれています!」

 

「こちらも確認した、半泣きのセリカ発見!」

 

「ママが悪かったわ!ごめんねセリカちゃん!」

 

「うわぁぁぁぁぁ!」

 

「うわっ、暴れないで!」

 

恥ずかしさのあまり、セリカが暴れ始めた。

……………とまぁ、目標は達成できたため、学校に戻りたいのだが、どうやらここは敵陣のど真ん中のようだ。多少の戦闘は想定内だが。

 

「前方にカタカタヘルメット団、多数確認!」

 

「まともに付き合う義理はないね。アヤネ、すぐにここから離脱しよう。」

 

アヤネが運転する車に乗り込みアビドスに全速力で戻る。

もちろんヘルメット団は追いかけてくるが、ノノミのガトリングで道を塞ぐ。

 

「お家に帰るまでが救出作戦ですよ~☆」

 

…まぁその通りだね。彼女以外にもシロコやホシノ、さっきまで半泣きだったセリカもヘルメット団への射撃を怠らなかった。

 

『先生!大型戦車が複数こちらに向かっています!今すぐ迎撃してください!』

 

ほら出た、死神が。とはいえ死神騎士(アイツ)のように、近くを通らなければ問題ないのだが……………

 

ドゴォォォォォォン!

 

爆音とともに自分の体が宙に浮く。一瞬思考が途切れてしまったが、すぐに受け身を取り、周囲を見渡す。

……………大型戦車と思わしき機械が銃口を向けている。みんなは……車が破壊されたようだが、何とか脱出できたようだ。

 

「キヴォトスの死神は……………ずいぶんゴテゴテしてるね。」

 

『冗談言っとる場合か!』

 

 

 

 

 

 

死神ことFlak41改良型の乱入により、作戦は大いに崩されることとなった。

元々少数精鋭なこともあり、砲撃が当たることはないが、こちらからの有効打がない。遮蔽物もせいぜい1発2発ほど耐えればいい方だし、休める暇もなく、持久戦に持ち込まれたこの状況では全滅もあり得るだろう。

 

「ヒャハハハハハハ!死ねぇ!」

 

ヘルメット団の一人が大型の銃を発射した。自分は咄嗟に回避するが、爆風によって吹き飛ばされた。一人でこんな威力を出せるとは、キヴォトスの技術はフォドラの何年先を行っているんだ?

 

……………いや待てよ?あれだけの威力があれば、戦車を破壊できるかもしれない。

天刻の拍動により、時間は攻撃される少し前に遡る。

天帝の剣を伸ばし、彼女が持っている銃に絡める。そして一気に剣を引っ張り、銃をこちら側に引き寄せる。

 

「貰うよ。」

 

「なっ!?か、返せ!」

 

急なことだったのか、反射的に手を放してくれた。

よし、これで反撃に出られる。とはいえ、どう使うんだコレ。

 

「それ、あいつらから奪ったの?」

「さすがは先生、私と心から通じるものがあるね。」

 

何故だかわからないが、シロコは何かを奪うときに自分を憧れの目で見てくる。正直なこと、戦闘だから許されるのであって、日常的にするものじゃないんだけどな。

 

「シロコ、これの使い方は分かる?」

 

「ん、任せて。」

 

シロコに銃を渡す。自分が前に出て、戦車に天帝の剣の斬撃を与える。当然傷を付けられるわけがないのだが、あくまで注意をひくためだ。生身と機械の差もあり、挑発にはこれ以上ない手だろう。戦車の銃口が自分に向かえば……………

 

ドゴォォォォォォン!

 

シロコの射撃が戦車に直撃する。さすがに効いたのか、戦車は内部から爆発した。まずは一つ。

 

二つ目はホシノが相手をしている。

 

「おじさん、いいこと思いついちゃったー。」

「アヤネちゃん、火攻め用の爆薬って生きてる?」

 

「はい、すぐ使えるものは2つあります!」

 

「うへへ、それだけあれば十分だね。じゃあそれを戦車の上に落としてくれるかなー?」

 

そう指示すると、ホシノは高く飛び上がり、戦車の上に乗る。

それから覗き穴らしき場所に盾を押し込み、視界を塞ぐ。

 

「今だよアヤネちゃん!」

 

アヤネが操作するドローンから爆薬が戦車の頭上に落とされ、戦車は炎に包まれる。

ホシノは爆薬が落とされる瞬間に戦車から退避していた。

 

「うへぇ、こりゃ中の子は干からびちゃいそうだね。」

 

とはいえすぐに、中のヘルメット団は脱出したようだが。これで二つ。

 

最後の一つはセリカとノノミが担当していた。ノノミが歩兵を、セリカは戦車の注意を引き付けていた。

 

「お仕置きの時間ですよ~♧」

 

「コイツ、どっかに弱点とないわけ!?」

 

「だったら真正面から壊せばいい。」

 

「シロコ先輩!」

 

先の二つを破壊し終えたシロコ、ホシノ、そして自分はセリカのもとへ向かっていた。

シロコの持つ大型の銃、ドローン、そしてあと一つの爆薬、最後の戦車を完全に破壊するのには十分だ。

 

「さてみんな、最後は派手に行こうか。」

 

自分が号令を出した瞬間、戦車は炎と爆発に包まれた。

中から指揮官が出てきた。昨日散々やられたというのによくやることだ。

 

「……………クソッ、あと一歩ってところなのによぉ…!」

 

だがセリカは逃がさない。拉致された分はきっちりケジメを付けなければならないからね。

 

「ま、待て……………はなs」 ダアン!

 

一発、二発と指揮官の眉間に銃弾が叩き込まれる。

……………正直捕虜にして話を聞こうかとも考えたけど、もういいか。

 

 

 

 

 

シッテムの箱の時計に目を向けると、5時13分を指していた。

 

「みんなお疲れ、この辺りは片付いたようだね。」

 

「いやぁ意外と何とかなるもんだねー。」

 

「これできっと、ヘルメット団も懲りたでしょう。」

 

「でも油断は禁物、なぜ彼女たちがアビドスを狙っていたのかも調べる必要がある。」

 

ここはシロコの言うとおりだ。実際、特別価値があると思えないアビドスを狙うのかは分かっていない。ヘルメット団の裏には何か隠されている可能性が高い。

 

今後の方針を練っていたところ、セリカがこちらに向かって来た。

 

「気は済んだかい?セリカ。」

 

「えぇ、おかげ様で。」

 

「……………借金のこと、自分にも手伝わせてほしい。」

 

「……………」

 

「セリカ、先生は助けてくれる大人。だから、私は信じてもいいと思う。」

 

「……………裏切ったら許さないわよ。」

 

ふぅ、ようやく信頼を得られたか。

 

「あらら?セリカちゃん、先生に言わなきゃいけないこと、ほかにもあるんじゃないでしょうか?」

 

「な、ないわよノノミ先輩!」

 

「全くセリカちゃんは薄情だな~。先生は深夜から助けに来てくれたんだよ~?」

 

「……………ホシノ先輩まで!」

 

確かに、アレを言ってもらわなければ、ここまでした理由はないね。

 

「……………えっと、その……………」

「助けてくれて……………ありがとう……………」

 

もっと大きな声で言ってほしかったが、黙っておこう。

 

東の空を見上げると、目を瞑りたくなるほどの光を出しながら太陽が昇っていた。

 

「……………夜明けか。」

 

夜明けは好きだ。あの光は自分に希望をもたらし、高く羽ばたく日まで進めそうな気がするから。




大変長らくお待たせいたしました。
ベレスで戦車をどう倒すかで滅茶苦茶悩んでいました。
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