Q.キヴォトスの通貨単位って円だけど日本円なのかな? 作:剣亡今日助
やぁ、俺は森本タロウ。平凡な名前だけど非凡な特徴を一つ持ってる。それが実は前世の記憶を持った転生者って事だ。そんな俺は現代日本に転生、スリリングな異世界ライフでは無い事に安心したやらがっかりしたやら……複雑な心境だったが、どうやら俺は判断が早かったらしい。
「おぉっと!
そこで新聞読みながらコーヒー飲んでるマイファーザーの呟きが聞こえたのだ。丁度某清渓川のネットミームを思い起こしていた4歳の俺は、新品のタオルのような純真さでキヴォトスについて尋ねる。
「おとーさんっ!キヴォトスってなーに?」
「おぉ〜タロウ!キヴォトスか?そうだな……キヴォトスは超巨大学園都市だ。すんごくでっかい学園都市だ。タロウが6歳から通う事になる学校……勉強する所だな?そんな学校が集まって街を作ってるんだ。人のように二足歩行して喋る、とても頑丈な犬や猫……獣人、とても頑丈なロボット……機械人、姿は私達人類に似ているがヘイロー……天使の輪っかを頭にいただき、獣人や機械人と同じようにとっても頑丈な晄輪人。これらがキヴォトスで暮らしているんだ」
ふむふむ、成程……透き通るような世界観で送る、学園×青春×物語RPG、その実超銃社会で朝から晩までドンパーティー、美少女ゲームの皮をかぶったGTA、ブルーアーカイブそのままじゃねぇか!キヴォトスの外側ってこうなってんだ!知らなかったわ!
でもそうなると行きたくなるな……俺が求めていたスリリングでエキサイティングな生活がそこにある!
「おとーさん!僕、キヴォトスに──」
「だめだぞ」
「アッハイ」
「全く、腕白坊主に育ちおって……良いか?キヴォトスってのはとっても危険なんだ。銃って解るか?弾丸を凄い速さで飛ばす……人を殺せるとっても怖い武器なんだ。その銃を晄輪人の全員が持っているんだ。人を銃で脅してお金を巻き上げる不良もいるし、銃の撃ち合いは日常茶飯事だ。晄輪人との出会いが欲しいなら高校卒業まで待てば良いだけの話だしね……つまり!私達はタロウを愛してる!そんな大切な子供を預ける場所として、しょっちゅう銃の撃ち合いが起こっているキヴォトスは問題外なんだ」
ド正論で諭されてしまった……。父さん、母さん、ごめんなさい。でも俺は諦めないからな!必ずや説き伏せて、キヴォトスで理想のスリリングでエキサイティングな日々を過ごしてみせるッ!
そう覚悟を固めたのも10年前になるのか……年月が経つのはあっと言う間だ。今は中学3年生の半ば、そろそろ進路を決める以上、ここらがキヴォトス行きを決めるラストチャンスと言って良い。しかし親は10年前と変わらず頑として首を縦に振らない……全く、愛され過ぎて困っちゃうね。
「どうあっても、キヴォトスに行く気は変わらないのか……?本当に危険なんだぞ……?」
「それが良いんじゃないか!」
「それが良い!?」
「……やべっ、本音が漏れた」
「冗談じゃないのか……せめてキヴォトスに行きたい理由としてもっとマトモなものを持って来い。スリルを求めてとか、ハーレムを作りたいみたいなふざけた理由では私達も頷く事は出来ない」
それが本当の気持ちなんだけどなぁ……まともな理由かぁ……あっ。
「あるよ、マトモな理由」
「あるのか?……聞かせてみろ」
「うん、実は俺、政治家になりたいんだ」
「そうだな……昔、将来の夢で作文した時も政治家になりたいと書いてるのは知ってるが……本気で言ってるのか?」
「うん、俺は本気だよ。経世済民を成し遂げたい。俺が住んでる国を世界一の国にしたい」
「成程……それで?」
「キヴォトスってさ、生徒が自治区を治めてるだろ?それはつまり年若い生徒でありながら政治家の経験が積めるって事じゃん。政治家を目指してる俺にとって、これは良い経験に、糧になると思うんだよ」
「成程、成程……思った以上にまともな理由が出て来たな……」
父さんはうんうん唸りながら暫く思い悩んでいると、一度うんと大きく頷いた。
「──よしっ!タロウのキヴォトス行き、認めてやろうじゃないか!しかし!言ったからにはちゃんと政治家になるんだぞ?」
「ありがとう父さん!解ってるよ、絶対政治家になるから!」
とうとう俺の心が通じ、首を縦に振る父さん。やったぜ!待ってろよキヴォトス!
「この地を踏むのは入試以来だな……うん?」
高校1年の春、無事にキヴォトスの高校に受かった俺は、空港にてキヴォトスの地を踏みしめる感慨にひたっていたが、向こうに人集りが出来ている事に気付く。
「ご覧下さい!この地に足を踏み入れる男子生徒、森本タロウ君を!このキヴォトスに、数年ぶりに男子生徒が現れました!キヴォトスの皆さん、これが男子です!肩幅が広く全体的にガッチリとした体格で、ヘイローが無く、銃で死んでしまう程に貧弱な存在です!キヴォトスの皆さんはく・れ・ぐ・れ・も!男子生徒の近くで銃撃戦をしないようにお願いします!」
クロノススクールの報道部みたいだ。どうやら俺の事をニュースにしているみたいだ。何だか気恥ずかしいな……と思っていると、報道部はこちらへ近付いて来てマイクを向けて来る。
「ようこそキヴォトスへ!しかし、どうして同じ男子が居ないキヴォトスに来たんですか?」
「──歓迎して下さりありがとうございます。キヴォトスへ来たのはここの特徴である生徒自治が理由ですね。将来の夢が政治家なので、自治区を治める経験がこれからの糧になると思いました」
「成程〜!政治家ですか!という事は学校の生徒会、もしくは連邦生徒会に所属する積もりでしょうか!?」
「そうですね、私としては連邦生徒会を狙ってます。入った学校も小規模な割りに連邦生徒会へ行く生徒が多い、政治・経済に強い所ですし」
「おぉ〜!野心の熱を感じられますねぇ〜!私、ハングリーでガツガツした人が
「おっと、持ち上げてくれますね……良いでしょう、もう一つデカい事言いますね。──目指すからには目的地はたった一つ……
「キャ〜!オトコって感じする〜!……失礼、取り乱しました。森本タロウ君のこれからの活躍をお祈りして……現場からは以上です!」
撮影はこれで終わったのか、カメラを下げる周囲のスタッフと、右手を差し出して握手を求めて来るレポーター、俺はレポーターと握手を交わして空港を後にした。
「お、おぅおぅおぅ!こ、ここはドカドカヘルメット団のナワバリだ!き、キヴォトス唯一の男子生徒だろうが関係ねぇ!こ、ここを通るなら通行料として1万円払って貰うぞ!」
キヴォトスに足を踏み入れてから数ヶ月が経ち、ここにも慣れて来た頃、不良達に絡まれた。しまったな……普段は同じ学校の生徒達に護られているのだが……居ない日に限ってこういう事が起こる。しかし……不良の皆さんは大丈夫だろうか?声は震えて度々詰まってるし、プルプル震えて照準が定まってない。
「……私は逃げませんから、どうか銃を下げて下さい。いつでも死ねる状況では怖くて怖くて、おちおち財布も取り出せやしません」
「──解った」
ホッと一息つきながら銃を下ろす不良達。いつでも目の前の相手を殺せるという状況はどうやら精神にクるらしい。不良と言えども殺人を忌避する心がある事に安心する。あぁ、同じ人間なんだなと思える。同じ人間なら話が通じる、わかり合える、怖くなんかな──いややっぱ怖い!銃はキツいって!
「そう言えば、先程円とおっしゃいましたが、その円は
「あ?んなワケねぇだろ!アタシ達が欲しいのは
「ふむふむ、成程成程……」
まぁ、キヴォトスの円は日本円ではない事は、以前から知っていたのだが。両替もしたしね。俺は近くに居たドカドカヘルメット団の二人の肩を掴んで抱き寄せる。
「!?!?!?」
「なっ、何だよ急に!や、やんのかオラァ!」
「もっと良いビジネスがある。それを1万円分と言わずとも良い、情報料をつけて欲しいんだ」
「……話してみろ、聞くだけ聞いてやる」
「ありがとう。で、そのビジネスというのは……」
「……ごくり」
「──デモだ」
「ズコーーー!」
「舐めてんのかお前!デモでカネ稼ぐってどうやるんだよ!ドストレートにカネ寄越せとでも騒ぐのか!?」
「──察しが良いな、その通りだ」
「は?いや、え?」
「実は連邦生徒会の支出に上限は無い。一人頭500兆円でも、5000兆円でも、幾らでもカネを配れるんだ」
「嘘だ!アタシ達を騙そうとしてる!大体、それだけのカネをどうやって調達するって言うんだよ!」
「……キヴォトス円を作ってる所は?」
「連邦生徒会だろ?──あっ」
「正確には連邦準備銀行だがな。まぁそこは連邦生徒会が所有しているので同じ話なんだがな。そんで。そこのお嬢ちゃんが勘付いたように、お金を作って配れば良い。簡単な話だろ」
「お、お嬢ちゃんって……えへへ」
「わ、解ったけど……何か騙されてる気がするよ……そんなに沢山カネを作ったら、水をたらふく入れたカルピスみてぇに、カネの価値が薄まっちまうんじゃねぇか?」
「貨幣数量説か……ちょっと例え話でもしようか。ここにホットドッグが1個ある、そしてそのホットドッグを欲しがってる人が2人いる。その先に待ってるのは値上げ合戦だ、どちらかが諦めるまでホットドッグは値上がり続ける」
「ふんふん」
「確かにそうなりそうだな」
「──さて、ここまででお金の量というのは話に出て来たか?」
「──はっ!出て来て無いッス!」
「例え話を続けるぞ。片方の所持金は1万円、もう片方の所持金は1京円だとする。お互いの所持金が判っている時、ホットドッグの値段は最大幾らまで値上がりする?因みに、日本のマネーストック……民間のお金の量は凡そ2100兆円だ」
「……1万1円ッスね」
「その通りだ。インフレ……値上がりというのは需要と供給の関係で起こる、お金の量というのは需要を決めるファクターではあるが、需要そのものでは無い。お前達は所得が100倍になったからといって、食べる量も100倍に出来るのか?」
「……出来ないッス」
「〜〜〜〜〜!やってやろうじゃねぇか!大声あげて連邦生徒会に圧力かけてカネせしめるぞ!」
「そうと決まれば横に広げるぞ!デモなら人は多い方が良い!そうだろ?」
「えぇ、そうですね。……それで、これの情報料は幾らになるのでしょうか?」
「あん?そう言えばそうだったな……文句なしの1万円だ!」
そう言うと不良はニカッと笑った。……しかし、あれよあれよとデモをする事になったが、デモなら不良達だけじゃなくもっと数が欲しいな……。
懺悔します。人型のモフモフこと獣人が銃で撃たれても「あいたっ」で済む人外なのか、自分は知りません。自分は無事では済まないと思ってるので獣人どもは全員、銃で毎日ドンパーティーな終わってるキヴォトスに適応して逃げ出さないキチガイになりました。もしくはキヴォトス以外に行き場所が無い被差別種族って事に。
→銃で撃たれても「あいたっ」で済んでるシーンを拝見しました。自分は障碍者です。