Q.キヴォトスの通貨単位って円だけど日本円なのかな?   作:剣亡今日助

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世を(おさ)めて民を(すく)

「こんな場所で、これ程の御方と話すのは緊張しますね……」

 

「諦めろ。お前が会談を求めて来たんだろう?」

 

 デモをするに当たって頭数が欲しいと思った俺はヘルメット団の後援をしているカイザーコーポレーションに連絡して貰ったんだが、こんな高級店の個室でカイザーコーポレーションのトップと思われるプレジデントと話す事になるとは……。おかしいな……俺は「キヴォトス唯一の男子生徒である俺が、お前の商品のコマーシャルに出てやる!だから俺の話を聞いてくれ!」と言っただけなのに……。

 

「それで、我々が必死になって支払っている忌々しい税金を、綺麗さっぱり無くせるとの事だが、それは本当か?」

 

「──えぇ、本当ですよ」

 

「にわかには信じられんな……税金によって提供される公共サービスは連邦生徒会にとって巨大な利権だろう?どうやってそれを手放させるんだ?」

 

「それは簡単ですよ。税は不必要だと彼女達に理解させれば自ずと徴税権を捨てますよ」

 

「──税金が、不要だと?」

 

「えぇ、それを理解する為には政府支出と国債……キヴォトスは国ではありませんが便宜上国債と表現しますね、返済のオペレーションを正確に把握する必要があります」

 

「政府支出と国債返済のオペレーションだと……?税金で支出し、税金で返済してるのでは無いのか?」

 

「それが違うんですよ。政府……キヴォトスでは連邦生徒会ですね、政府は徴税の前に支出しています。これを支出が先(スペンディングファースト)と言うのですが……これはそもそもの話ですが、新たに国……仮にカイザー王国とでもしましょうか、が興った際の事を考えて下さい。カイザー王国は独自の通貨単位カイを制定して、財源としてカイを徴税しようとします。さて、何が起こるでしょうか?」

 

「……国民はカイを持っていない。納税出来ずに刑務所行きだろうな」

 

「そうです!そして、先に支出するのは建国から年数が経っても変わりません。支出が必要ならどれほど集めた税金が少なくても支出しなければならない、支出が必要とはそういう事ですので」

 

「だが、税金も無しにどうやって支出するんだ?いや……成程、そこで国債というワケか」

 

「建国当初はまた別の方法でお金を調達しなけれはなりませんが……その通り、徴税の前に国債発行をする事で支出しています。国債は所謂借金ですから返さなくてはいけませんが……政府がどうやって返しているかと言うと……実は国債を発行して返しているのです!つまりは借り換えです」

 

「なんだと……!いやしかし、銀行のお金が100兆円しか無い時に110兆円返さなければならない時はどうすると言うのだ?」

 

「簡単です、分割払いすれば良いんです。55兆円ずつ集めて返す、そのように無限に分割すれば借金が幾ら積み上がろうと必ず償還出来ます」

 

「先程の例で言えば、借金を幾ら返しても銀行が使えるお金は100兆円以上には増えない……まるで詐欺だな」

 

「ふふ、そうですね……どうでしょう?国債で支出し、国債で償還している現状はお解り頂けましたでしょうか?」

 

 本当はもっとクリティカルなアイデアがあるのだが、これはもう少し頭の中に留めておきたい。

 

「あぁ……良く解ったよ。本当に……本当に信じ難い事だが、どうやら確かに税金は要らないらしい」

 

 プレジデントはぼうっと天井を見上げた後、こちらを正面から見据えた。

 

「デモの人足が必要なのだったな?手配しよう」

 

「──ありがとうございます!」

 

 俺は立ち上がり、プレジデントの手を握って感謝した。

 

 

 

 

 

「ご覧下さい!サンクトゥムタワー周辺を凄まじい数の人集りが埋め尽くしています!下に行けばカネ寄越せと無税にしろの大合唱!このようなデモが罷り通るのは最早世も末といった感じがします!──以上、クロノススクール報道部でした!」

 

 

 

 

 

「──よくもやってくれたわね、キヴォトス唯一の男子生徒さん?ここからでも声が聞こえて来るわ。ここまでの騒ぎを起こして何が目的なの?」

 

 目の前には連邦生徒会のお偉いさんと思しきキツい目つきの美人さんが、いやぁ緊張しちゃうなぁ〜。

 

「目的、と訊かれると……強いて言えば、経世済民でしょうか」

 

「お金を配って、税金を無くす事で民を済う?夢物語をどうもありがとう。大体、税金を無くしてどうやって支出を賄うというの?」

 

「えっ?」

 

「……?何かおかしな事を言ったかしら?」

 

「えぇ、まぁ、はい」

 

「……ほぉう?私の言った事のどこがどうおかしかったのかしら?説明して貰える?」

 

 容赦はしない、初手クリティカルで行く。

 

「……幾つか確認したい事があります。まず……連邦生徒会の預金は連邦準備銀行にありますよね?」

 

「そうね」

 

「連邦準備銀行は連邦生徒会長の命令に逆らえませんよね?」

 

「その通りよ」

 

「じゃあ、連邦生徒会長が連邦生徒会の口座残高を増やせと命令すれば、支出なんて幾らでも賄う事が出来るのでは……?」

 

「……………………」

 

 目の前の美人さんは暫く電源が切れたように停止し、その後はわなわなと震えながらポケットからスマホを取り出す。

 

「──こんな時間に電話してごめんなさいね。ちょっとね、連邦準備銀行総裁の貴女に訊きたい事があるの」

 

 どうやら電話の相手は連邦準備銀行総裁らしい。……え?俺これ聞いてて良いの?耳塞いだ方が良い?

 

「──えぇ、ありがとう。それでね、訊きたい事はね……連邦生徒会の預金、あるじゃない?それの残高を増やせる?──あぁいや、違うの!未計上の税金や債券があるワケでは無いの!そういった収入の裏付け無しで預金の残高だけ増やせる?って事!」

 

 聞かない方が良いってのは解ってるんだが……うぐぐ、気になる……。

 

「……えっ?多分出来る?キーボードを叩いてデジタルデータの数値を変えるだけ?──ちょっと待って頂戴!早速やってみようじゃないのよこのお馬鹿!検証は連邦生徒会長の正式な命令を待つの!解った!?」

 

 美人さんはスマホを切った後、額に手を当てる。……フフ、結局最後まで聞いちまった……罪悪感が凄い。

 

「……無税もお金配りも、出来る事が判った以上、拒否する合理的な理由は全て吹き飛んだわ」

 

「……!じゃ、じゃあ!」

 

「……えぇ、無税、お金配り、どちらもやりましょう」

 

 ……ほっ、これなら嘘つき呼ばわりされて八つ裂きにされるような未来は完全回避だな。いや〜良かった良かった。

 

「しかし──」

 

 美人さんは俺の顔を両手で挟み込み顔を近付ける。ちょ、近い近い近い!これ程の至近距離はシャイボーイには荷が重いって!

 

「──貴男がやりなさい。だってこれは、貴男の持ち込み企画だもの。それが筋という物でしょう……?」

 

「そ、それはつまり……?」

 

「──えぇ、その通りよ。ようこそ、連邦生徒会へ……歓迎するわ、盛大にね」

 

 ──こうして、俺は入学後数ヶ月にして目標としていた連邦生徒会入りを果たしたのだった。

 

 

 

 

 

 連邦生徒会統括室の行政官の末席に就いた俺は、首席行政官だったデモの応対をしてくれた美人さんに手取り足取り教えて貰いながら立法を進めて行った。

 

「全ての税を半永久的に廃止します!」

 

「とうとうやるのね……キヴォトスを襲う衝撃はとんでもない範囲になるでしょうね」

 

「だとしてもやるっきゃないですよ!だって税は要らないんですから!」

 

「そう、なのよね……今でも信じ難いのだけれど……しっかりしなさい私、税も債券も無しで預金残高が増えたのをこの目で見たのでしょう……?」

 

「だ、大丈夫ですか先輩……?」

 

「だ、大丈夫よ」

 

 ──全税撤廃で特に喜んだのはやはり企業だろう。全税撤廃を施行した日を税の日と名付け、森本タロウ万歳!と叫びながら出血大サービスのセールをするようになる。

 

「本当にやったのか……全く、とんでもない奴が飛び込んで来たものだ……」

 

 カイザーコーポレーションのビル内でプレジデントがそう呟いた事をタロウは知らない。税の日に神の如く崇め讃えられ祭り上げられる事も知らない。

 

「全税撤廃の次はお金を配りましょう!そうですね……ざっと一人頭月5000兆円くらいでどうでしょう?」

 

「多過ぎよ!?そんなに渡されても使い切れないわ!?」

 

「使い切れないという事は、どれだけ使っても安心という事です!全国民が莫大な安心を得る事が出来ます!」

 

「ちょっと待って頂戴!?大人にもお金を配るの!?労働退出が起こるわよ!」

 

「……俺は人間の善意を信じる!」

 

「信じる前にアンケートを取りなさいな!」

 

 こうして施行された基礎所得保障(ベーシックインカム)は確かに一定数の労働退出者を生んだが、それはパイを奪い合うライバルが減った事を意味する。働き蟻は猛烈な勢いで縄張りを拡大する上に、ミレニアムの製品で機械化・自動化が進み、労働退出で問題が出る事は無かった。さて、基礎所得保障(ベーシックインカム)でどんな効能が発揮されたのか?()()()()()()()()()()()、それも格段に。お金を目的にした犯罪が撲滅され、お金を得て誰も彼もが消費したがっていた、当然の帰結だった。

 

「先輩先輩、世界一って良い響きですよね?」

 

「内容次第だと思うけど……世界一には憧れがあるのは確かね」

 

「でしょ?なのでキヴォトスを世界一の経済大国にしましょう!」

 

「キヴォトスは国では無いのだけれど……経済大国という事はGDPよね?お金の量ならもう世界一だけど、どうやって消費させるの?」

 

「三面等価の原則!解ってますね!……こほん、GDPを伸ばすのに先人達は大変苦労したのでしょうね。どれだけ付加価値が高い物を作っても、売れなければゼロ円です。100円の原材料で作った物を1万円で売るのは世界一の職人が手掛けでもしないと難しいでしょう」

 

「そうね……1兆円の付加価値を支払わせる事が出来れば、世界一の経済大国も夢じゃないと思うわ」

 

「出来ますよ?」

 

「──えっ?」

 

「賭博なら、人々は1兆円だろうと余裕で消費しますよ!なのでカジノを大至急整備しましょう!」

 

 こうして各地で大規模なカジノが建設され、人々のお金を容赦無く吸い上げた。その甲斐あってGDPは断トツの世界一となった。

 

「最近、賭博で素寒貧になった人が犯罪に走るケースが散見されます」

 

「あれだけの額を貰って素寒貧になる事が出来る人々が恐ろしいわ……」

 

「これは社会問題です!至急生活保護法を改正しましょう!」

 

「それは良いのだけれど……どう改正するつもり?」

 

「簡略化し、単発化し、絶対に食いっぱぐれないようにします!面倒臭い資力調査なんていうのは無くします!申請者は書類と共に一つの通帳を差し出し、行政は残高が1000兆円未満なら1000兆円を口座に振り込みます!これらは何度でも実行する事が可能です!」

 

「待って頂戴!金額はもう良いのだけれど……一つの通帳って言ったわよね?それってもう一つ口座を作って貰ったそばからそこに振り込めば幾らでも残高を増やせるじゃない!」

 

()()()()()()()なんですか?財源は無限ですよね?」

 

「そ、そうなのだけれど……不正を堂々と見過ごすというのは……」

 

「先輩、良い事を教えてあげます。犯罪じゃなければ何をやっても良いんです」

 

 これで駄目人げ──()()()()()()は救済され、安心して全財産を賭博に突っ込む事が出来るようになった。つまり、よりGDPに貢献出来るようになった。

 そうしている内に、月日はあっという間に過ぎて行き……3月になった。

 

「先輩……今まで、本当にありがとうございました……本当に、本当に、お世話になりました」

 

「もう……泣かないの、男の子でしょ?」

 

「はひ」

 

「全く……貴男と過ごす日々は本当に忙しなかったけれど、抜本的な改革を次々に行う貴男を直ぐ傍で支える日々は本当に楽しかったわ……こちらこそありがとう」

 

「はぃ……!」

 

 お世話になった首席行政官との別れ、新たな連邦生徒会長の就任……原作に登場する大きくなったアロナのような容姿だった、俺は連邦生徒会長より指名されて連邦準備銀行総裁になった。ナンデ???




 懺悔します。自分はエデン条約編第3章までしか把握しておらず、プレジデントの口調がサッパリ判りません。ピクシブ百科事典万歳!なクソ二次創作者です。

 連邦準備銀行総裁は連邦生徒会長が任命します。キヴォトスの王と言っても過言では無い連邦生徒会長がキヴォトス唯一の男子生徒を連邦準備銀行総裁に任命するって別の文脈が発生してる気が……。因みに連邦生徒会長が()()()()()を連邦準備銀行総裁に任命するのはキヴォトスじゃ良くある事です。
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