Q.キヴォトスの通貨単位って円だけど日本円なのかな?   作:剣亡今日助

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 これで終わり。


次の王

 2年生になって、何故だか連邦準備銀行総裁になった俺だが普段やる事といえば退屈な書類仕事、なのだが……。

 

「失礼するわ」

 

「七神先輩……」

 

 今のように、連邦生徒会長代行の七神リン首席行政官のような大物の応対をする事もある。

 

「単刀直入に言うわ、お金が欲しいの。連邦生徒会の預金が尽きかけていてね……このままだと債務不履行になりかねないの」

 

「態々連邦生徒会長代行の貴方が来る程の事情とは思えませんね……連邦準備銀行は連邦生徒会の所有物です。今までみたいに命令すれば良いだけの話では……?」

 

「それが無理なのよ。連邦準備銀行の命令権は連邦生徒会長にある、一介の代行には無いの」

 

「……そう言えばそうでしたね。しかし、それなら国債……債券を売り出せば──」

 

 そう喋っていると口を塞がれた。ナニで?……彼女の唇でだ。つまり、俺達はキスをしている事になる。ナンデ???

 

「──んっ、ちゅっ、ちゅぱ、れろぉ……」

 

 更に舌が入って来て口内を蹂躙し尽くす。完全にディープキスだ。

 

「ぷはっ……」

 

 何するんですか、と言おうとした、が、できなかった。彼女はジャケットを脱いでノースリーブのシャツをさらしてスカートをたくし上げていた。

 

「──笑いなさい、キヴォトスの為とは言え、娼婦の真似をして貴方の慈悲に縋るしかない私を」

 

 だから債券を……と冷静なツッコミは出来なかった。途轍も無い美人の年若い瑞々しい肢体に釘付けになった。さっきのディープキスで茹った脳味噌では目の前に差し出された禁断の果実にむしゃぶりつく事しか考えられなかった……。

 

 

 

 

 

「それじゃあ、こちらの書類にサインをお願いするわ」

 

「はいはい……」

 

 ()()が終わった後、私が提出した誓約書にサインをするタロウ。その眉は悩ましげに歪められている。それを見るとタロウに要らぬ心労をかけた事に対する自己嫌悪の気持ちが湧き上がって来る。

 そう、本来は私が直々に来て身体を売り渡す程の事では無い。タロウが言っていたように債券を売り出せばそれで片が付く。それをしなかったのは私の浅ましい肉欲だ。

 

連邦生徒会長(あのお方)が私を見たら怒るでしょうね……)

 

 連邦生徒会長が任命する連邦準備銀行総裁、往々にしてそれは連邦生徒会長の()()()()()が任命される事が多い。連邦生徒会長が唯一の男子生徒を連邦準備銀行総裁に任命した意図は解っている積もりだ。

 

(差し詰め、私は主人の留守中に主人のお気に入りに粉をかける泥棒猫と言った所でしょうか……)

 

 そう自嘲する。しかし、止める積もりは無い。いや、止められない。この身体が男を求めている、まるで砂漠をさまよった者が水を求めるかのように。それだけでは無い。

 

(全税撤廃……基礎所得保障(ベーシックインカム)……世界一の経済……過去の連邦生徒会役員で、これ程の改革を手掛けた者がいるでしょうか……間違いありません、あの子は次の連邦生徒会長(キヴォトスの王)になる)

 

 

 

 

 

 SRT特殊学園の閉校を検討する連邦生徒会に対し、連邦準備銀行総裁が異例の抗議を行った。

 

「連邦生徒会長の懐刀であるSRT特殊学園の閉校に反対である。連邦生徒会長は代々変わるものである。来年になってSRT特殊学園を再開するのか、SRT特殊学園に相当する新たな学園を設立するのか、それは当日にならないと判らないが、いずれにしても酷い茶番である。責任を負う連邦生徒会長が不在の為SRT特殊学園を持て余している連邦生徒会の現状は理解するが、それなら休校させれば良いだけの話である。いずれにせよ、SRT特殊学園生の学ぶ機会と権利が損なわれる事はあってはならないと考える次第である」

 

 連邦準備銀行は連邦生徒会の預金残高を増やす事が出来る。それはつまり、逆に残高を減らしてゼロに出来るという事でもある。連邦生徒会長なら連邦準備銀行に命令を下せるが、その連邦生徒会長が居ない連邦生徒会にはそうなったらもうどうしようもない。結果、SRT特殊学園は連邦準備銀行総裁の抗議通りに休校される事になった。

 

 

 

 

 

「お~、休校になっても自主的な訓練は欠かさないか……流石だな」

 

「連邦準備銀行総裁……森本タロウ様」

 

()()さん……先輩と呼んでくれ、年下の女の子に様呼ばわりさせて偉ぶるような趣味は無いよ」

 

「……では、森本先輩と呼ばせて頂きます」

 

 休校したとはいえ、SRT特殊学園の門は開かれたままだ。そこで自主訓練をしていると、森本先輩が来たので恐縮してしまう。匍匐前進をしていたから土臭い筈だし……うぅ、恥ずかしいです。

 

「こちらへは何の御用ですか?」

 

「いや、大した用事では無いんだがな?ほら、今このSRT特殊学園は休校しているだろう?それで何か問題が起きてないか見に来たんだが……そうやって元気に訓練しているのを見ると、無用な心配だったかな?」

 

 森本先輩は微笑みながら訓練風景を眺めている。

 

「その、森本先輩は……私達SRT特殊学園に対して、格別の心配りをして下さってるように思います。……どうしてでしょうか?」

 

「ん?そうだな……簡単に言うと、他人事じゃなかったから、かなぁ……?」

 

「他人事じゃない……それはつまり、次の連邦生徒会長を目指す者として、SRT特殊学園の有無は重大な関心事……という事でしょうか?」

 

「──おっと!そう聞こえるのかぁ……まぁ確かにそれもあるけどね……大丈夫?野心的で挑戦的なデカい事言うだけが取り柄の政治屋仕草になってない?」

 

 そう言って頭をかく森本先輩、ご自分を卑下するような言動をして慌てる様は、前代未聞の改革を断行した傑物というイメージからはかけ離れていて……ちょっと可愛らしい。

 

「はい、分相応な望みかと」

 

「月雪さんも口が上手いなぁ!そんな事言っちゃうともっと調子に乗っちゃうよ?」

 

「ほぅ……調子に乗るとどうなるのですか?」

 

「ど、どうって……そうだ!キヴォトス中の生徒会長をコレクションしたり!キヴォトスのみんなは美少女ばかりだからね!」

 

 ……その『みんな』の中には私も入ってるのでしょうか。どきどき。

 

「各自治区の首長を手懐けて飼いならそうというのですね、自治区間の軋轢が減ってより平和になりそうです」

 

「……アレェ?そういう反応になる?」

 

 来年の事を想像してみる。森本先輩が連邦生徒会長になった時の事を。男子生徒は弾丸で死ぬ程脆弱だ、身辺警護がより必要になるだろう。そうなればその役割を担うのは連邦生徒会長の懐刀であるSRT特殊学園以外にあるだろうか?いや、無い。つまり、私達が連邦生徒会長となった森本先輩の一番近くに侍る事になる。そして有事には森本先輩が私達に命じるのだ、「解決せよ」と。それに私達はこう答えるのだ、「お任せ下さい」と。私達は連邦生徒会長という絶対者を支え、そしてそれに支えられる絶対の正義の撃ち手として在る。求められるのは絶対、そう思えばどれだけ苦しい訓練でも耐えられる。頑張ろう、何処までも純粋にそう思えた。

 

 

 

 

 

「アビドスにも人が戻り始めましたね……」

 

 アヤネちゃんがそう言って辺りを見渡す。私もつられて周りを見ると、工事用の重機を動かし、威勢のいい掛け声を上げるおっちゃん達があちらこちらに。

 

「うへ~、建築業の人ばかりで、一般人はまだまだだけどね~」

 

「もう!ホシノ先輩ったら~!こうなったら後はもうあっと言う間ですよ~☆」

 

 ノノミちゃんがそう言ってニコニコと笑う。どんな時でも笑顔を忘れない強い子だが、ここ最近は笑顔が2割増しで輝いて見える。

 

「ん、その通り。アビドスの復興はもう始まっている」

 

 そう言うのはシロコちゃん。表情に乏しい彼女だが、良く見れば笑顔を浮かべているのが判る。

 

「もうっ!しっかりして下さいよホシノ先輩!ここからが大事な所なんですから!」

 

 私をしかりつけるのはセリカちゃん。アルバイトもしている、お金の価値をしっかり理解している子だから、かつてアビドスに9億円もの借金があった事を知ったら酷く驚くんだろうなぁ。

 ……そう、借金が()()()のだ。月5000兆円の基礎所得保障(ベーシックインカム)で跡形も無く吹き飛んだのだが。だから基礎所得保障(ベーシックインカム)を打ち立てた森本タロウ君には感謝してもし切れない。

 莫大なお金を得た私達は、アビドス再興計画としてアビドスの大規模な再開発に着手しようとしたのだが……そこで障害に立ち塞がった。過去の生徒会がカイザーに土地を売り払っていたのだ。1京円出しても頷かないカイザーに対し、土地を取り戻すには戦争しか無いのかと思う所まで追い詰められた所……。

 

「え~、戦争の気配を察知したので調停に来ました」

 

 調停官として私達の許に来たのは、()()森本タロウ君だった。取り敢えず握手して貰った、ごつごつしていたなぁ……こほん。こうして、タロウ君を挟んで私とプレジデントによる話し合いが開始された。しかし、実際は連邦生徒会とカイザーコーポレーションの話し合いだったように思う。

 

「お久しぶりですね、プレジデント」

 

「……あぁ、久しぶりだな、森本タロウ」

 

「……二人は知り合いなの~?」

 

「あぁ、以前にちょっとな。……さて、何故アビドスの土地を手放さないかは掴んでいます。宝探しでしょう?」

 

「……何故知っている?」

 

「企業秘密とでも言っておきましょうか。……続けますね、探してるお宝というのは『ウトナピシュティムの本船』、超古代文明が遺した飛空船型の巨大な量子コンピューターです。間違いありませんね?」

 

「……あぁ、間違いない」

 

「問題はこれ、起動する為にサンクトゥムタワーが必要になります。念の為お聞きしますが……連邦生徒会に叛旗を翻してサンクトゥムタワーを奪取するお積もりは?」

 

「…………そんな大それた野望、あるわけ無いだろう。そんな事した所で得られるのは量子コンピューター。コンピューターはミレニアム製の物で満足している。手に余るだろうな」

 

「それは良かった……なら何故1京円でも土地を手放さずにお宝探しにご執心なのでしょうか?使えなければ只のガラクタでしょう?博物館にでも飾るお積もりですか?」

 

「……………………」

 

「だんまりですか……まぁ良いでしょう。私達連邦生徒会の要求は二つです。お宝の採掘権を連邦生徒会に売却する事、アビドス高等学校に土地を適切な値段で売却する事」

 

「……誰のお陰で件のデモが成功したと思っている?」

 

「そちらこそ、誰のお陰でたっかい税金を支払わなくてよくなったのかお忘れですか?」

 

「──解ったよ、降参だ」

 

 こうして、私が見てる内に話は纏まり、アビドスの全ての土地が戻って来たのだった。

 

「……それでは、現在のアビドス復興計画のおさらいをしましょうか」

 

 大人に対して一歩も退かずに交渉する年下の男の子の雄姿を思い出していると、アヤネちゃんがそう言ってホワイトボードの前に立つ。

 

「まずは、砂嵐の反省を活かして砂を防ぐ巨大シェルターを建てるわよ!」

 

「ん、その中には居住区と校舎の他にカジノ、映画館、テーマパーク、ショッピングモール等の娯楽区を建設する」

 

「それで、アビドス自治区各地にシェルター型都市を建設し、その間を鉄道で繋いじゃいましょ~☆ハイランダー鉄道学園からは既に良い返事を貰ってますからね~!」

 

「……うんうん、こういうのは何度聞いても良いね~。ふあーぁ……夢のある話を聞いてたら夢に誘われちゃいそうだよ~」

 

「どういう理屈ですか!?しっかりして下さいって言ったじゃないですか!」

 

 セリカちゃんが肩をガックンガックン揺らして起こそうとして来る。うへ~、これじゃあおちおち寝てられないよ~。

 

「では次の、新たなアイデア募集に移りましょうか」

 

 アヤネちゃんはそう言うが、新しいアイデアというのは簡単に出て来ない。

 

「は~い!アイドルです!アイドルやりましょう~☆」

 

 出て来ちゃったよ。それにしても、アイドル、アイドルかぁ……。

 

「ノノミちゃんは兎も角、おじさんみたいな貧相な身体に需要は無いよ~」

 

「いや、あるかも知れない。タロウは『背が高かろうが低かろうが、胸が大きかろうが小さかろうが、可愛ければイケる』と言っていた」

 

「え、えぇ~?……それ、ほんとぉ?」

 

「ん、本当。それが載ってる雑誌はまだ持ってるから、後で見せるね」

 

 ひゃ~、何だか顔が熱くなって来たよ~。それにしても、森本タロウ君かぁ……。

 

「……あっ」

 

「──何か良い案が思いついたのですか?」

 

「いや~、大した事じゃないんだけどね?建てたお店をタロウ君に利用して貰うのはどうかな~?って」

 

「お~良いですね~☆キヴォトス唯一の男子生徒ですし、次期連邦生徒会長最有力候補ですもんね~。広告効果抜群ですよ~!」

 

「そうと決まれば後は行動あるのみですね!タロウ先輩をもてなす街を造る為にも、もっと都市計画を煮詰めましょう!」

 

 メラメラと燃え上がるセリカちゃんがそう言ったのを皮切りに、あぁでも無いこうでも無いと議論が活性化する。

 こうやって平和に語り合う事が出来るのも、全部タロウ君のお陰。──ありがとうね、本当に。




 娼婦の真似事とか死んでもごめんとか言う程にプライドが高い女が自分にだけ身体を許すって良いですよね。所でリンちゃんって絶対にプライド高いですよね。
 バレンタインの先生への反応に対してタロウに対する熱烈さに違和感を抱く方も居るかも知れませんが、この作品のリンちゃんは年下好きなんだなとでも思ってくれれば……。

 これ失踪するまでの連邦生徒会長は連邦準備銀行総裁であるタロウの許へ通い詰めてるのでは無いでしょうか……行ってナニをしているかは皆さんの想像に任せますが。

 連邦生徒会長が3年生だという前提でこの話は書かれてますが、もし違っていたらどうしましょうかね……。
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