最近は不調が続いていたのでリハビリ代わりに書いてみました。
凡人サラリーマンの俺が遊戯王デュエルモンスターズの世界に転生。
その時に自分の大好きなカード・No.107
「カード1枚のみでどう頑張れと?」
確かにタキオンは強力なカード。
特にOCGでもぶっ壊れな罠カード、タキオン・トランスミグレイションを手札が使えるようになるエクシーズモンスター。
アニメでもクソかっこいいCGを引っ提げて現れた時に一目惚れしてお小遣いを使って購入したカード。
大人になってもスリーブとローダーをして持ち運ぶほど好きなカードだったが、まさか転生先についてきてくれるとは。
「というか、ここは病院だよな……」
左腕に点滴が刺されている中、前世の記憶があるけど今の自分の記憶がないほとんどない。
なので少し痛む体を動かしてテーブルに置かれている鏡を手にすると、そこには銀髪碧眼の小3くらいのイケメン少年が当たっていた。
……前世の自分とは比べものにならないな。
「うーん、とりあえずナースコールのボタン」
前世でも検査入院をした事があるのでやり方がわかる。
そのため俺は紐付きのローダーに入ったタキオンを首元にかけた後、ベッドの上にあるナースコールボタンを押した。
すると扉の奥からバタバタとした音が聞こえ、ガラガラと勢いよく扉が開く。
「失礼します。ああ、
「あ、あの酷い交通事故にあっても生きてくれたか!」
「えっと?」
交通事故?
看護師さんの若い女性と白衣を着た30代中盤くらいの七三分けの男性が現れたので、俺は戸惑いながら彼らの声を耳にする。
というかここはやっぱり病院で、俺の体の持ち主はおそらく死んだっぽいよな。
「ま、まずは自分の名前はわかるかい?」
「うーん、わかりません」
「え? じゃあ家族は誰がいるかわかるかな?」
「……」
「まさか!」
何個か質問をしてくる白衣の男性。
その姿はかなり焦っているが、俺からすれば何を聞かれているかサッパリなので頭に疑問符を浮かべていく。
すると白衣の男性の隣にいた看護師さんが無言である事をつぶやいた。
「もしかして記憶喪失かもですね」
「……親御さんにはぬか喜びをさせるかもしれないな」
「そ、そうですね」
うん、明らかにやばい気がする。
ここは何かしら言いたいか特に思いつかないので黙っていると、さっきまで質問してきた病院の先生がおのずと立ち上がった。
彼の表情はどこか真剣で、口に手を当てながらスタスタと出口に向かって歩いていく。
「三笠さんは颯斗君と話していたくれ」
「わかりました! って、加賀先生はどうされるのですか?」
「自分は親御さんに連絡してくるよ」
部屋の外に出て行った病院の先生。
あっさりとした姿に看護師さんが固まっていたが、気を取り直したのかテーブルに置かれたテレビのチャンネルを手にした。
「えっと、テレビでも見ようね」
「あ、はい」
ピッとテレビの電源がついたので画面を見ると。
そこには見覚えのある機械・デュエルディスクをつけた人達……いや、デュエリストがモンスターを召喚したり魔法・罠カードを発動。
あ、そこでガード・ブロックを使うよりも後を考えた方がいい気がするんだけど?
「ちょうどプロデュエリスト達の試合がまとめられているわね」
「プロデュエリスト?」
「そうそう! わたしもなりたかったんだけどプロになれる人は一握りで無理だったわ」
「そうなんだ」
前世で言うところの野球選手みたいな感じかな?
そう考えると狭き門なのはわかるが、看護師さんは思うところがあるのか深くため息を吐いた。
なので俺はモヤモヤとした気持ちになっていると、面倒を見てくれている看護師さんは微妙な笑みを浮かべる。
「まあ、わたしよりも君の事だね」
「俺?」
「そうそう!」
体の持ち手の親御さんがきそうだな。
そうなると本来の自分ではないのがバレそうだし、記憶喪失でゴリ押すしかないのは辛いところ。
なので俺は頭が痛くなりながらベッドの布団を被り直すのだった。
〈余談〉
涙を浮かべる両親と小さな女の子が1人。
こちらの事情を聞いているのか、30代前半くらいの男性がゆっくりとコチラに近づいてきた。
「本当に私達を覚えてないんだな」
「えっと?」
「……本当に記憶喪失。ぐっ、あんな事故がなければこんな事には」
「悪いのはアナタじゃなくて轢き逃げした犯人でしょ」
「お、お兄ちゃんは留姫(ルキ)の事もわからないの?」
さっぱりわかりません。
涙を浮かべる母親さんと妹っぽい相手、父親さんは医者の肩を掴んで色々と叫んでいる。
どう考えてもカオスな状況なのに、何の情もない俺はアタフタしてしまう。
「ごめん」
「う、うぇーん!?」
「あの事故で生き残ってくれたのは嬉しいが、これじゃあ死んだも同然じゃないか!」
「旦那さん落ち着いてください!」
マジで空気が重いんだが?
ガチ泣きする留姫ちゃんにうずくまる母親さん、父親さんも地面に膝をついており。
戸惑っている看護師さんと医者さんの姿もあり、どうにもならない状況が進んでいく。
ただいちおう、記憶喪失でも俺のことは息子扱いをしてくれるらしいが……一般的な生活に戻るには遠くなりそうだ。
ーー
俺が目を覚ましてから3日後。
体が健康状態に戻ったので退院できたので小学校の入学式……ウチは違う街から引っ越してきたらしく編入になったが。
4年生のクラスには一応割り当てられたが、記憶喪失の影響で投稿する場所は教室ではなく特別学級に行く事に。
そのため、俺の場合は完全に空いた生徒になってしまいつまらない日常を暮らしていた。
「つまらない」
両親は共働きなので家にいないので小2の妹は学童で遊んでいる。
ただ俺にはどうにも合わなかったので、小学校の図書室で本を読みながら子供達が遊んでいる外を窓から見ていく。
「ねえ、貴方」
「……」
「ねえってば!」
「……」
「そこの銀髪はあたしの声が聞こえないの?」
「俺のこと?」
キンキンとした女性特有の金切り声が聞こえたので振り向く。
するとそこには眉を顰めた女子児童がいたので、俺は手に持った本をテーブルに置いて言葉を返す。
ただコチラの反応に不服だったのか、赤髪ツインテールの少女は頬を膨らませながらドスドスと近づいてきた。
「そうよ! てか、アンタはあたしと同じクラスなのになんで教室にいないの!」
「そんなの君に答えるつもりはないよ」
「は? このあたしが聞いてるのにその態度はひどくない?」
知らんがな。
百歩譲って教室や外ならともかく、ここは図書室なので静かにして欲しいが、向こうは図書室のルールを知らないみたいでギャンギャンと叫び始めた。
その結果、彼女は図書室にいる先生から怒られていたので俺は本を戻しながらしれっと出ていく。
「何なんだあいつは……」
遊戯王特有の話を聞かない相手か?
それなら一般人の俺は無視した方がマシと思いながら、校舎内にある特別教室に戻っていく。
その時に担当の先生からの生暖かい視線が飛んできたので、むず痒い気持ちになりながら置いてある本を読む。
「ほんと変わった子ね」
やっぱり外を駆け回った方がいいのかな?
特別教室には生徒がほとんどいないからほぼボッチ状態……。
何ともいえない気持ちになりながら本棚を漁っていると、一枚のカードがパラリと地面に落ちた。
「これって」
地面に落ちたカードはエフェクト・ヴェーラ。
攻守0のモンスターカードで効果は手札から捨てめ相手モンスターの効果を無効にできる。
優秀な手札誘発のカードだが、ステータス主義のこの世界では雑魚カードと扱われているみたいだ。
「こんなところにデュエルモンスターズのカードが入っていたのね」
「……」
「あらあら、もしかして興味があるの?」
「ん? ええ」
OCGは前世で楽しんでいたが。
この世界の遊戯王デュエルモンスターズはどんな感じかわからないので固まっていると、特別教室のドアが勢いよく開いた。
「ふうふう、やっと追いついたわ!」
「どちら様?」
「はあぁ!? 貴方はこの
「いやだって、いちいち覚えるのは面倒じゃん」
「くうう! さっきから手の上でコロコロして!」
あ、はい。
というか、さっきパリンとガラスが割れる音がしたぞ。
ふとドアのガラスを見るとヒビが入っており、彼女が勢いよく開けたせいで割れたっぽいな。
まあでも、ガラスよりもコッチにズンズンと大股で近づいてくる彼女を見て、俺は椅子に座りながらため息を吐く。
「えっと、それで朝川さんは何かよう?」
「その前に貴方の名前は?」
「俺の名前は
「なら颯斗、貴方にデュエルを挑むわ!」
「あ、はい」
まさかのソユパターン?
胸を張ってコチラに指差しをしてくる朝川さん。
見た目は赤髪のツインテールで目つきが少し鋭く、将来は気の強そうな女性に育ちそうな雰囲気が。
って、俺はデッキを持ってないからデュエルできないんだけど?
「デッキなら貸し出しがあるから使ってみる?」
「先生!? あ、ちなみにこのエフェクト・ヴェーラーはもらっていいの?」
「もちろんいいわよ」
「よし!」
いいカードが手に入った。
これで俺のデッキはメインが1枚とエクストラが1枚の2枚になったが、それではデュエルが出来ないので特別教室に置かれているデッキの束を受け取る。
すると胸を張っている朝川さんはニッコリとした笑みを浮かべた後、腰のデッキケースからカードの束を取り出した。
「これは面白い事になりそうね」
「おおう……。あの、先生には審判をお願いしても?」
「わかったわ!」
デュエルディスクはないので卓上デュエルになるが。
俺は中身が紙束レベルのデッキ内容を確認した後、自信満々に反対の席に座る朝川さんの姿を見ながらプレイマットにシャッフルしたデッキ置いていく。
「ムカつく貴方なんてボコボコにしてあげるわ」
「デュエルよろしくお願いします」
「ぐっ、よろしく!」
よし、相手の流れを潰したぞ。
俺がやっている事は大人気ないが、相手が相手なので容赦なく突っ込む。
すると担当の先生が電卓を用意してくれたので、俺達はデッキから5枚ドローしてデュエルを開始していく。
「「デュエル!!」」
桐原LP4000VS朝川LP4000
マスタールール1、先行は桐原。
うーん、マジでどう回していくかだな。
先行ドローがあるのに驚きながら手札にあるカードを確認、なんとか使えそうなカードをプレイマットに置いていく。
「俺はモンスターをセット&カードを1枚伏せてターンエンド」
「初手から守備なんてだらしないわね」
「そう思うなら攻撃してきたらどうだ?」
「言われなくてもやるわよ! あたしのターン、ドロー! よし、ハウンド・ドラゴンを召喚するわ!」
ハウンド・ドラゴン
ATK1700
いきなり攻撃力1700のモンスターを召喚か……。
俺が今使っているデッキに入っているモンスターでコイツに勝てる攻撃力を持つモンスターは2枚しかない。
そのため正攻法で勝つのは難しいが、それならまともに戦わなければいいだけ。
相手のフィールドに現れた鋭い刃を持つドラゴンは、ソリットビジョンが使われてないのに飛び出してくるように見えてしまう。
「バトル、攻撃力1700のハウンド・ドラゴンで攻撃!」
「コッチの守備モンスターは守備力2100の大木炭18」
「ええ!? そうなると、どうなるの?」
「朝川さんに反射ダメージ400ね」
「うそお!?」
朝川LP4000→3600(ダメージ400)
こゆことである。
小学生相手に大人げないやり方をしているから、子供相手に調子に乗っている大人になってしまう。
なのであんまり目立ちたくなかったが、相手が相手なので絡めながら対抗していく。
「くううっ! でも守備モンスターは攻撃できないからターンエンド!」
「なら俺のターン、ドロー。大木炭18を攻撃表示に変更した後にホーリー・エルフを攻撃表示で召喚」
「は、ハウンド・ドラゴンよりも攻撃力が低いのに守備表示にしないの?」
「もしかして自滅する気なの?」
「いや、魔法カード・右手に盾を左手に剣を発動。フィールドに存在するすべてのモンスターの攻撃力と守備力を反対にする」
「「へ?」」
・大木炭18、ATK100←2100
・ホーリー・エルフ、ATK800←2000
・ハウンド・ドラゴン、ATK1700←100
このデッキは紙束と思っていたがそうではないような?
いい意味で搦手が使えるので喜びながら、目が点になっている朝川さんと先生を尻目に俺はニヤリと口角を上げる。
「バトルに入って大木炭18でハウンド・ドラゴンを攻撃!」
「ちょっ!?」
「ダメージ2000&ホーリー・エルフのダイレクトアタックでピッタリ4000ね」
「そ、そんな……」
ガックリと首を落とす朝川さん。
その姿を見てやり口が汚かったと思ってカードを片付け、苦笑いを浮かべる先生にデッキを返す。
その時に担当の先生は何かしら言いたそうにしていたが、その前に朝川さんが勢いよく顔を上げた。
「ね、ねえ、貴方! あたしの師匠になって!」
「「へ?」」
この一言がキッカケで俺は朝川さんの師匠になるのだった。