あまりにも長い待ち時間とトモミの一言でやむ終えずクレープのメニュー看板の所まで、両手の手のひらを合わせ、祈りながらに引き返してきた私だったがどういう訳かそこにはマキと思われる人物も先ほどの少女のような小さな子も居なかった。
二人を探すため周囲360度を体を回転して見るものの近くに見える物は皆、高校生の団体やら子連れの家族。
「…どこだよ…?」
溜め息混じりにそんなことを呟き、私は看板の前で途方に暮れる。
ボーっと近くにあった私の背丈ほどの小さな木を眺めながらどうしようかと考えるが、その木が答えを持っているはずもない。
そこで私はあることに気づく、これはラッキーなんじゃないかと。
これからの私の予定ではあの恐ろしき冷酷の女王に死刑判決を下されるはずだったのだが、居ないのだったらそんなことは出来ない。
蹴りで10メートル飛ばせれる心配もないし、そもそも、このまま帰ってしまっても気づかれないだろう。
そっちから居なくなったのだ、私だってこんな所に来たくて来たのではなのだから…。
「よし、帰ろう!」
心で決め、拳を腰辺りで握りながらすぐに口に出すと、私は今まで着ていたあの派手な服を着替えるため家から着てきたちょっと私には大きめの灰色の服を取りに静かにクレープ屋の裏へ向かった。
絶対に誰にも気づかれ無いように腰を低くし忍び足で進んでいく。
そこで私は広場から聞こえてきた声を聞き今まできた道を振り返った。
その内容はどうやら誰かが意識を失い倒れたという物だ。
私の体は動きを止める。私の脳があり得ないがちょっとした可能性を考えたからだ。
次の瞬間私すでにその声が上がった方向へ駆け出していた。
自分がそう動かしたい訳でもないのだが足が勝手に動いてしまう。
大量の風を切りながら私はその場所まで到達すると、様子を見に集まってきていた人達をかき分け、中央まで進む。
「マキ!?」
中央まで付くと私はまだはっきりと確認をしないままマキの名を呼んだ。
焦点がはっきりしないまま心の中でどうかあの憎たらしい顔が目に写らないよう祈る。
…が、その願い虚しく私の目に飛び込んできたのは何処からどう見ても私のよく知るマキの顔だった。
息を飲む。それしか出来ない…少なくとも今は。
辺りからは他人事のように回ったのであろう、噂で集まって来た野次馬共がザワザワと何とも分からない言葉を発し続け止まらない。
「…おい、マキ?何寝てんだよ、バカかよ…こんな所で。」
やっと出た一言目がこれだ。自分でも直ぐに分かる程の酷い現実逃避。
…何だろう…最近は無かったんだけどな…周りの野次馬のゴミの達が発する雑音が妙に頭に纏わり付き物凄く私を不快にする。
密室の中で私の周りをハエが飛び回り、蝉が叫びまくり、どうにか成ってしまいそうだ。
「…!!!」
マキに向けていた目線を上げ周りに並ぶゴミを睨む。
「黙れ!!!見てるだけなら必要無い!!!さっさと自分の泥臭いゴミ箱に帰れ!!!」
…しまったと思った時にはもう遅かった。
私の耳を襲っていた激しいノイズはピタリと止み、代わりに私に刺さるのは冷たい冷めきった多くの目線。
「あ…えっと、す、すいません…つい、はは…。」
慌てて頭を下げる。
何でこんなことをしてしまったのだろう?何時もなら絶対にあり得ないのに…。
その時頭を下げていた私の左手に明らかに今までとは違う重さを感じる。
何かに捕まれたと思われるその手はそのまま引っ張られるようにされ私の体は半回転しながら座り込む。
最初は気づかなかったがどうやらマキの手が私の手首を握っているようだ。
「マキ!?」
反射的にその名前を叫びまだ目を瞑ったままのマキの顔を覗きこむ。
私が見守る中、何の前触れもなく目を開けたマキは そのまま起き上がり高々とあくびを上げる。
「…?ミキ?どうしたの?」
何事も無かったかのようにキョトンとした顔で首を傾げ私を見るマキ。
「…あ、何か勘違いしちゃった?あまりにも日陰が気持ち良かったからさ、寝ちゃったんだよね。」
笑顔になりながら軽々とマキは話していく。
安心なんかはしない。私の左手に握られた拳は何に使うのだろう?
考えなくても分かる。
「紛らわしいわーーーーー!!!!!!!!」
「いったーーーーーー!!!!!!」
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