ヤバいです…。
あんなに威勢の良かったチンピラも今ではユウの手から力無く、意識があるのか無いのかすら分からない状態で垂れ下がっている。
ユウが手を放せば一瞬でそのユウの足下に沈むだろう。
情けないが両サイドの二匹のチンピラはユウの圧倒的な勝利に対して腰を抜かしてしまっているようだ。
辺りで、この場を最初から見ている者は少ないと思われる。
今、目撃した者だっているはずだ。そんな人はこの光景を見てどう思うのだろう?
誰も声を発さない、少なくともこの現場を目撃している人々は…。
風が木々を揺らし、葉が鳴く音だけがこの広場を駆け抜けていた。
「ユウ…もういいよ。警察でも呼ばれたら…人、いっぱい見てるし…。」
ユウが私の為に行動してくれるのはありがたいが、やはり限度があるだろう。
既に意識が無いと言うのにユウは止めない限り殴り続けてしまう。
「…まだ足りないよ。トモミが良くても僕がダメだ。腕、痛いでしょ?」
チンピラを見つめていた哀れそうな目をこちらに向けユウは掠れるような声で言う。
時々ユウはこんな感じに、なんと言うか自分を制御できて無いような…そんな感じの時がある。
そう、我が儘の幼稚園児のような。
私はユウの目を力強く見ると少し嘘を混ぜながら、ユウが納得するように言葉を選びながらに言い始める。
「もう、十分だよ…その人は腕の骨が折れてるし、たぶん鼻も折れてる。それに私はたいした怪我じゃないよ。」
ユウが私を助けてくれるなら、私はそのユウにも出来ないユウ自体の制御をやらなくてはならない、それが責任と言う物だろう…たぶん。
「えー、でもなぁ…。」
頭に手を置き考え始めるユウに更に追い討ちをかけていく。
「私は大丈夫だって…それにそんな怖い顔してたらいつもの可愛い顔が出来なくなっちゃうよ…?」
可愛いと言う言葉に少し顔を歪めたが、ため息をつきながらチンピラの胸ぐらを掴んでいた手を乱暴に放した。
力無くその場に倒れこむチンピラ、なんだか可哀想に見えてくる。
そんなチンピラの姿になど少しも興味しめさずに、ユウは私の顔を見て笑う。
「しょうがない、トモミが言うんだし、もう止めるよ。」
とんでもない事をしたと言うのに呑気なものだ。
この場を見て恐ろしくなり、逃げ出す者まで出てきていると言うのに…。
「あ、そうだ!」
そんな感じですっかり人が居なくなってしまったこの広場でユウは何かを思いだしたかのように声を上げると、後ろで腰を抜かしているチンピラにリズムカルな歩行で進んでいった。
「君達さ、この人のお友達でしょ?処理をお願いできる?」
ユウはいつもの感じの可愛い顔に戻り、無邪気な笑顔を二人のチンピラに向けながら手を合わせる。
勿論、あんな姿を見てしまった後なのだ、答えなど限られているのだろう。
呆気に取られていたのか少し間は空いたが、その二人は「はい」とだけ答えると、大の字に倒れているもう一人を担ぎ上げ速やかにこの場を去っていった。
「はぁ、トモミは大丈夫?」
二人を見送る事など決してしようとしないユウは私をもう一度見つめてくる。
「…大丈夫だよ。少し血が出てるだけだし。」
今はそう言うしかなかった。チンピラ共がこの公園から完璧に姿を消すまでは。
オレンジ色に輝いていた太陽は山の向こうへと沈み蛍光灯が光り始めた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。