表と裏と
…車が走ってる。
高層ビルが綺麗に列をなして列ぶ。
狭い土地に幅なく家が固まっている。
畑や田んぼがあり、稲や野菜が青々と天へと向かう。
日常の風景…誰もが当たり前だと言う風景。
そんな当たり前も私には真面に目を開けて見るとこすら出来ない。
眩しくて、凝視できない。
私はここでいいのだ…。
そこが何処であろうと、たとえ人々がどれ程笑って暮らす場所であろうと、少し目線を変えてみれば…そう、そこはもう貴方の知らぬ場所。
日常風景なんかに慣れてしまった貴方達には真っ暗で何も見えないかもしれない…。
この世はまるでオセロのようだ…。
真っ白な面と真っ黒な面があって…。
どちらが大きいかなど誰にも分からないのだ…。
どちらが表でどちらが裏かなんて…誰にも…。
ジメジメとした高い湿度、光の差さない狭い道。
路地裏というのだろう、近道とかでたまに通る人もいるだろうが…まぁ、用もないのに来たいと思う人はあまりいないだろう。
そんな場所にも…そんな場所だからこそ好んで来るという人もそう珍しくはない。
暗い、風が通るような音しか聞こえない中…一人の、人の足音。
こんな気持ちのいい春の空だというのに毛糸帽子に黒ジャンバーというまるで冬真っ只中とでもいうような服装でこの路地を徘徊している。
「…はぁ、はぁ…ごぼっごぼっ!!」
理性を失った獣のようだ…人間の成れの果て…いや、人間そのもの…動物そのものだろうか。
なにかを求め進む、進み続ける…。
そんな獣を哀れむ目で見る者がいた。
首の後ろにぶら下がるフードを深く深く被り、顔には和かに笑う哀しい仮面…。
哀仮面…彼女は獣に近づいていく、人間のように。
「何してる?」
その言葉で獣の動きが止まる。
言葉を理解してか…はたまた本能にしたがっただけか、獣は振り返り仮面を視界にとらえた。
「あいつらは来ないよ…お前はもう失敗作なんだ。」
仮面は続ける、暗いこの場所の空気が更に暗く…重くなるようだ。
獣は何も言わないただ目の前にいる人間の言葉を待っているようだった。
「…お前が欲しいのはこれだろ?」
仮面はポケットに手を入れる、そんな姿を見た獣はようやく仮面に関心を示し出したようだ。
ポケットから出したその手にはカプセル状の薬のような何かが乗せられていた。
獣の息が荒くなる。
「欲しい…?辛い?今、楽に…幸せにしてあげる…。」
獣はまるで餌を求める犬のように仮面にへと近づいていった。
「私が…!!」
獣が仮面の手に手を伸ばす…が、それが届くことはなかった。
仮面は手を引くと共に手の上に乗っていたカプセルを自分の大きいな仮面の口の中に放り込む。
ガリガリという鈍い音が鳴り響く。
「あ…ああ、ああああああああああぁぁぁぁあぁぁぁ!!!!!????」
獣の叫び声が奥の闇に吸い込まれていく。
その次の瞬間、仮面の右拳が獣の顔面を捉えた。
大きな…何かが粉砕される音。
そのまま後ろに飛んだ獣は何度も地面やらに叩きつけられなが転がっていった。
「ヒヒ…ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!幸せににしてやるよぉ!!!!私がぁ!!!!!」
ここまで読んで頂きありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。