STAND BY ME オマえもん   作:NEST中毒者

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何か続きました。

今回、下ネタ、BLネタ、腐女子ネタ、メガネ等が多めなので苦手な人は注意してください。

念のためにスペース空けときます。



















帰ってきたオマえもん

 

「一体、私のレーザーランスに何をするつもりなのですか、フロイトアン……!」

 

「おいおい……私の、じゃあないだろ? スネイル夫」

 

「っ、どういう…………」

 

「忘れたのか? お前のモノは俺のモノ、俺のモノは俺のモノ……だよな?」

 

「くっ……私は、企業だぞ……////////」

 

「このまま、お前とやり合いたい……//////」

 

 ――――以下略――――

 

 

「なるほど、完全に理解しました……」

 

 昨今では珍しい紙媒体の薄い本を閉じ、オマえもんは一人呟く。

 なんだかんだあってイグ太くんと物理的にさようならしそうになっていたオマえもんだが、なんだかんだあってこうして元鞘に収まったわけだ。卑猥な意味ではない。

 

 そして今彼女が読んでいるのは、以前メテ子がバラ撒いた同人誌である。

 一時期は大騒ぎの元になったこの生モノBL同人誌だが、一部の界隈では大絶賛。

 噂ではなんとのらいぬも買っていったそうだ。彼女によると「友人が読みたいと言っていたから」だそうだが、詳細は不明だ。あとそれを知った彼女の父親が「火種から消さなければ……!」と言って大暴れしたそうだが、それも詳細は不明だ。

 

 まあそれは置いといて、オマえもんは常に新たな傭兵支援の方法を模索している。

 故に一部の傭兵に大人気だったこの薄い本を学習し、傭兵支援の一環として取り入れることも必定だった。

  

「早速、我々も執筆作業に入りましょう。傭兵たちに娯楽を提供するのもオマえもんの使命です」

 

 一人そう呟いたオマえもんは、胸ポケットからペンタブとパソコンを取り出し、黙々と執筆を開始するのだった。

 

 

 

 

 

「オマえもん、なんか面白い本を出して……」

 

「おや、良いところに帰ってきましたねイグ太くん」

 

 オマえもんが執筆を開始してからしばらく後。イグ太が部屋に戻ってきた。

 今日のイグ太はキメ杉の家に遊びに行ったのだが、キメ杉の姉君と何故か居たのらいぬに捕まり、謎の幻聴にメテ子の同人誌を音読されるという憂き目に遭っているのだ。

 その上、帰り道ではキメ杉家のお隣さんと思しき様子のおかしい人に付きまとわれ、耳元で「ご友人……ご友人……」と囁かれるという追い打ちまでも受けている。

 

 故にイグ太の精神は疲弊しきっており、気分転換というか癒しを求めているのだった。

 

「面白い本、ですか。ちょうど今完成したところですよ!」

 

 そんなイグ太の内心を露ほども知らないオマえもんは、自信満々に胸ポケットをまさぐる。

 

「てってれー。『某BLゲームのイケメンしかいないエリート企業に悪役令嬢として転生した件~誉を捨てたガチアセンで最強逆ハーレムを目指す~』です」

 

「…………」

 

「さあ読んでくださいイグ太くん! 貴方が記念すべき読者第一号ですよ!」

 

「ねえオマえもん、なんかいろんな意味で戦争が起きそうな内容なんだけど、大丈夫なのこの本?」

 

「ええ大丈夫です! 傭兵支援システムですから! 体は闘争を求めているのです!」

 

「分かっててやってんのかよ最悪だな」

 

「じゃあ早速バラ撒いて来ますね!」

 

 その後、()()()()()()()「某BLゲームのイケメンしかいないエリート企業に悪役令嬢として転生した件~誉を捨てたガチアセンで最強逆ハーレムを目指す~」は世界に発信される。

 

 ――――その内容は、メテ子とその同人誌に対する明確な宣戦であった。

 

 腐女子たちは安全(?)なCP談義を放り出し、狂気の解釈違い論争に対することを余儀なくされ、人々は覚束ない足元に初めて気づいたかのようにそれを恐怖するしかなかった――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……わざわざ呼び出して何の用ですか? フロイトアン」

 

 イグ太が謎の声に「今なら分かります、貴方こそがルビコンの戦火だったと……!」とか言われてボコられている頃。

 ある意味一連の騒動の中心とも言えるフロイトアンとスネイル夫は二人で空き地に集まっていた。メテ子垂涎の光景である。

 

「ああ、今日はお前に手料理を振る舞ってやろうと思ってな?」

 

 そう言って彼は鍋を取り出す。そこに満たされているのは青く輝いている謎の液体だ。

 

「フロイトアンシチューだ。さあ食べてくれ、スネイル夫」

 

「……一応、材料を聞いても?」

 

「大したものは入ってないぞ? まず、ミールワームだ」

 

「……下処理などは?」

 

「? そのまま鍋に放り込んだだけだが」

 

「…………」

 

「次に、味を調えるために泥水のようなフィーカと味気ないレーションを入れた」

 

「『味を調える』という言葉の意味は理解していますか?」

 

「あと、隠し味としてコーラルを少々」

 

「人体に有害なのですが??」

 

「ミールワームを生きたまま入れてるし大丈夫だろ。あと、最後にお前の大好物を入れてやったぞ」

 

「……貴方に好物を教えた覚えは無いのですが」

 

「そんなの、見れば分かるだろ? 最後に入れたのは……メガネだ」

 

「は?」

 

「大丈夫、ちゃんとスクエア型のメガネにしたぞ?」

 

「だから何だと……まさか」

 

 そこでスネイル夫は思い出す。予備のメガネが、いつの間にか無くなっていたことを。

 企業そのものである彼はその資金力に物を言わせ、予備のメガネを百個単位で保有しているのだが、先日その内の数十個が忽然と姿を消していたのだ。

 これは由々しき事態である。なんせ、スネイル夫は企業そのものであると同時にメガネそのものでもあるのだから。

 

 企業=スネイル夫=メガネ。つまり企業=メガネ。

 そのメガネが今、鍋の中で煮込まれている。これはスネイル夫にとっては紛れもない絶望だった。

 

「馬鹿な……」

 

「安心してくれスネイル夫。ちゃんと形が無くなるまで煮込んだからな」

 

「そんな……私は……メガネだぞ……?」

 

「さあ食べてくれ、スネイル夫」

 

 鍋をスネイル夫に差し出すフロイトアン。

 常識的に考えて、こんなものを食べられるわけがない。だが、そのシチューの中にはスネイル夫そのものと言えるメガネが溶け込んでいる。

 

 そう、鍋の中で溶けて崩れたメガネを取り戻すには、シチューを口にするしかないのだ。

 

「…………」

 

 覚悟を決め、鍋におたまを突っ込むスネイル夫。

 

「……!?」

 

 だが、おたまの取っ手越しに感じたのは予想外の感触。

 それは液状のシチューの感触でも、硬質のメガネの感触でもない。

 

 例えるなら――――鍋の中で、何かがおたまを掴んでいるような。

 

「これは…………!?」

 

 恐る恐るスネイル夫がおたまを引き上げてみると――――なんと、そこには大量のミールワーム齧り付いているではないか。

 

「――――――――!!!!」

 

 直後、奇怪な鳴き声と共に、鍋からミールワームが大量に飛び出す。

 シチューと同じ青い輝きを発するそれは、フロイトアンとスネイル夫には目もくれずにどこかへ走り去っていった。

 そしてミールワームが去った後の鍋を見ると、そこには何も残されていない。

 泥水のようなフィーカと味気ないレーションも、隠し味のコーラルも、そしてメガネも。

 どうやらミールワームがすべてを取り込んでしまったようだった。

 

「まさか、シチューに逃げられるとはな……」

 

 フロイトアンは、ミールワームが逃げていった方向を見やる。

 その先には、イグ太の家があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ……酷い目に遭った……」

 

 時を同じくして、トボトボと帰路に付いているイグ太。

 謎の幻聴にこっぴどくやられ、キメ杉の姉には「その本は笑えない」と言われ、悪友のヴォル太には「殺すぞ」と言われ、様子のおかしい人には「ご友人!」と言われる。

 率直に言ってイグ太はボロボロであった。

 

「ただいまー……」

 

 ドアを開け、部屋に入るイグ太。

 だがそこで彼は違和感に気付いた。オマえもんの姿が見当たらないのだ。

 

「イグ太くん、対処してください」

 

「…………?」

 

 不思議そうにイグ太は周囲を見渡す。

 今、確かにオマえもんの声がした……はずだが、姿は無い。

 

「オマえもん……?」

 

「対処してください」

 

 音の出処を探るイグ太。しばらく探していると、押入れから声と物音がすることに気付いた。

 

「オマえもーん?」

 

 ガラリと押入れを開けるイグ太。

 その中には――――

 

 

「た、対処してください! イグ太くん!!」

 

 ――無数のミールワームにたかられているオマえもんが居た。

 

「ミ、ミ、ミ、ミールワームです! 対処してください!!」

 

 全身の服を齧りとられたオマえもんが叫ぶ。

 そう、オマえもんはミールワームが大の苦手なのだ。 

 

「対処してください! 対処してください!」

 

「…………」

 

 ギリギリR-18にならない程度に服がビリビリになったオマえもんは、必死でイグ太に助けを求めている。

 だが、予想に反してイグ太の反応は芳しくなかった。

 

「イ、イグ太くん? どうして黙って見ているのですか?」

 

「………………」

 

「イグ太くん! ねぇイグ太くん!! 対処してください!! 助けて!!!」

 

 ――――このまま、しばらく眺めていてもいいのではないか。

 そんな考えがイグ太の足を止めていたのだ。

 

「対処してください!! 対処してください!! ギャー!!!」

 

 みっともない悲鳴を上げながら齧られ続けるオマえもん。

 

「こ、こうなったら……!」

 

 イグ太の助けが期待できないと悟ったオマえもんは、意を決して胸ポケットをまさぐる。

 彼女の服はR-18にならない程度に齧り取られているが、R-18にならない程度であるが故に胸ポケットのあたりは無事だったのである。

 

「こ、『コーラル破綻爆弾』!!!」

 

 そうしてボロボロの胸ポケットからオマえもんが取り出したのは、何やら物々しい名前の爆弾だった。

 これはその名が示す通り、コーラルの無限増殖による破綻を疑似的に引き起こす代物で、最低でも星系一つは焼き払えるだけの威力がある。

 

「オ、オマえもん……?」

 

「ふ、ふ、ふひひ! いくらミールワームといえど、星系ごと吹き飛ばせば……!」

 

 静観していたイグ太もさすがに焦り始めるが、錯乱したオマえもんは止まらない。

 万事休す――――そう思われたが、そこに救いの手が現れる。

 

「――――野良犬!?」

 

 どんがらがっしゃーんと壁をブチ破ってイグ太の部屋に侵入したのは、のらいぬだった。

 彼女は洗練された動きでオマえもんの手から爆弾を弾き飛ばすと、イグ太に向き直る。

 

「イグ太さんのえっち。すけべ。へんたい」

 

 困惑するイグ太にそう言い放ったのらいぬは、オマえもんに纏わりついたミールワームを引き剥がし始める。

 

 

 

 

 ――――そして、何を思ったのか引きはがしたそれを自分の服に押し当てた。

 

「………………」

 

「何やってんだ野良犬……?」

 

「痛い! やめて! 無理矢理剥がさないでください!!」

 

 オマえもんからミールワームを次々引っぺがし、自分の服にくっつけていくのらいぬ。

 だがミールワームはどういう訳かのらいぬの服には見向きもしない。

 彼女に一体何が足りないのだろうか。ワームは脇目も振らずにオマえもんの服へと戻っていく。

 

 関係ない話だが、ミールワームはコーラルの恵みに満ちた豊かな大地でのみ育つ。

 反面、恵みの少ない痩せた地ではほとんど育たないのだ。まあ関係ない話だが。

 

「………………」

 

 自身に目もくれないミールワームに対し、ゴミを見るような視線を投げかけるのらいぬ。

 だがそれで何かが変わるわけではない。彼我の間に横たわる絶対的な質量差を覆すことなど決して出来ないのだ。

 

「ねぇイグ太さん、大きければいいわけじゃないよね? そうだよね?」

 

「えっ……?」

 

 ヤケクソになったのらいぬは、何故か自主的に服を脱ぎ始める。R-18にならない程度に。

 そしてそのまま、困惑するイグ太に詰め寄っていった。

 一方、オマえもんも再びミールワームに齧られ、悲鳴を上げる。

 

「ねぇ、どっちを選ぶの? イグ太さん」

 

「そ、そんなことより早く対処してくださいイグ太くん!」

 

 助けを求めるオマえもんと、半裸のまま凄まじい圧力を発するのらいぬ。

 イグ太は今、絶望的な二択を選ばされているというわけである。

 だが選ぶのはいいことだ。選ばない奴とは敵にも味方にもなれない。

 

「…………………」

 

 突如突きつけられた運命の分かれ道に、イグ太は――――

 

 

 

「死んで平伏しろ!!! 私こそがメガネだ!!!!!」

 

 だが、そこにさらなる乱入者が現れる。

 先程のらいぬが破壊した壁の穴から現れたのは、メガネを取り込んで逃げたミールワームを追跡していたスネイル夫だった。

 

「スネイル夫……お前のメガネ、まさにメガネという感じだ。このメガネでメガネじゃないのが面白い」

 

 さらにその後ろから、愉しげな様子のフロイトアンも現れる。

 

 

 そして、二人が目にしたのは――――

 

「あ、フロイトアン、スネイル夫……」

 

「対処してください! 対処してください!! 助けて!!!」

 

 

「……………!?!?!?!?!?!?!!!!?!!?!??!?!」

 

 ボン、とのらいぬの頭の上で爆発音が鳴った。

 先程までは変なテンションのまま突っ走っていた彼女だが、ふと冷静になると今の状況がすごく恥ずかしいことに気付いたのである。

 

「何処までも破廉恥な駄犬め! 貴様に構っている暇は無い、私のメガネを――――」

 

 音もなく吹き飛ぶスネイル夫と、それに一瞥もくれないのらいぬ。

 その顔は、コーラルのように真っ赤になっていた。

 

「イグ太さんのえっち――――!!」

 

 直後、怒りと羞恥のアサルトアーマーが炸裂する。

 それは、近くに転がっていたコーラル破綻爆弾に引火し――――

 

 

 

 

 

 

 

 ――――コーラルを巡る争いに、勝者はなく。

 炎と嵐の後には、かつての開発惑星の痕跡のみが残った。

 半ば死に体となった企業勢力は、惑星封鎖機構との共同声明を発表。

 ルビコンは、廃星として永久に放棄されることが合意された。

 

 ――――そして。

 星系を焼き払った主犯、世界の敵は消息を絶ち、今はただその名だけが歴史に刻まれている。

 

 二度目の災禍、「イグ太の火」として。

 

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