STAND BY ME オマえもん   作:NEST中毒者

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映画オマえもん イグ太と大豊娘娘軍団(後編)

 

「大豊娘娘……その名に違わぬ、羽ばたくような樹大枝細ぶりだ……」

「面積の無い服を着て……スイカのような乳を揺らす……うんざりするが、それこそが大豊娘娘だ……」

「さあ……共に……性別の壁を超えようじゃないか……」

 

 大豊ミュージアムを訪れていたイグ太たちを、突如として襲った大豊娘娘化事件。

 その影響で、町は大豊娘娘と化した人々で溢れかえっていた。

 誰もが露出度の高い服装で歩き回り、その樹大枝細な体を見せつけている。

 

「大きすぎる……」

 

 そんな光景を上空から見降ろして、のらいぬが呟いた。

 その頭頂部にはルビコプターが装着されていた。今彼女はオマえもんの道具を借りて上空から町を俯瞰し、情報収集を行っているのだ。

 

「なんでみんな、あんな大きいのが好きなんだろう……」

 

 しばし、眼下の大豊娘娘たちを思うところありげに見つめていたのらいぬ。

 だがしばらくして、頭頂部に付いたルビコプターのプロペラが止まる。どうやら電池切れのようだ。

 

「あ……」

 

 落下するのらいぬ。とはいえ彼女はこともなげに着地した……が、その背後から話しかけてくる人影が。

 

「貴様、そのシルエット……樹大枝細を弁えていないな……?」

「えっ」

「樹大枝細に反する不豊者(ふほうもの)には、胸育(きょういく)が必要だ…………おあーっ!?」

 

 どうやら大豊娘娘だったようだ。

 襲い掛かってきたそれは流れるように重ショットガンで吹き飛ばされる。

 

「……はぁ」

 

 ため息とともに俯くのらいぬ。その視界を遮るものは何もない。自身の足元がはっきりと見える。

 彼女は肩を落として皆との合流地点に歩いて行った。頭頂部に電池切れのルビコプターをくっつけたまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オマ」

「オマオマ」

「オマ、オマ、オマ」

「オマ?」

「オマー」

 

 これはミニオマ。

 オマえもんのポケットに入っている小型のオマえもんであり、金、銀、銅と豊富なカラーバリエーションが特徴だ。そのキュートな見た目やオマオマというかわいらしい鳴き声によって各所で人気を博すかもしれない。

 

「オマオマ、オマオマオマオマ」

 

「なんと……そうだったのですか……」

 

 そんなミニオマたちは、先程ののらいぬと同様、現在起こっている異常事態を正確に把握すべく各地に散らばって情報収集を行ってきたところだ。そして今はオマえもんに対して集めた情報を報告している。

 

「オマオマオマ、オマオマオマオマ? オマオマオマオマ」

 

「なるほどなるほど……」

 

「オマ!」

 

 無数のミニオマに囲まれて、報告を聞いているオマえもん。

 傍から見ているイグ太にはミニオマが何と言っているのかさっぱり分からないのだが、オマえもんは神妙な顔で頷いている。

 

 しばらくして、オマえもんはある一つの結論に到達する。彼女は自信満々に立ち上がり、口を開いた。

 

 

「ふむ……さっぱりわかりませんね。一体何と言っているのでしょうか……?」

「いやお前にもわかんねぇのかよ」

「ふふふ……何も分からないという事が分かったのですよ。無知の知というやつです。まあ今は色んな人がムチムチになってるんですけどね!!」

「クッソつまんねぇ」

 

 実に和気あいあいと話すオマえもんとイグ太。そんな光景をミニオマたちがオマオマと見守っている。

 

 余談だが、今オマえもんたちがいるのは、彼女がポケットから出した道具である携帯型ストライダーの甲板上だ。

 これは砂漠でもどこでも快適に過ごせる便利な移動拠点だが、設計が破綻しているのでたまに爆発する。

 

「「ただいまー……」」

 

 そんなことをしている間に、ルビコプターで甲板に降り立つ人影が複数。別行動していたみんなが帰ってきたのだ。

 ルビコプターで飛んできたのはのらいぬとフロイトアン。そしてスネイル夫がフロイトアンに抱えられている。

 偵察中にのらいぬのルビコプターが電池切れになったため、なんやかんやあってこういう形になったのだ。

 

 ともあれ、これで全員が無事に合流したことになる。

 

 だが、のらいぬ……そしてフロイトアンの顔はどこか沈んだ様子だった。

 特に、普段は常に余裕そうにしているフロイトアンの調子が悪いというのは、なかなか珍しいことである。

 

 そして、そのフロイトアンに抱えられているスネイル夫の様子もおかしかった。

 とっくに着地しているというのに、フロイトアンにしがみついたまま離れないのである。

 彼……いや彼女の見た目は大豊娘娘化してしまっているため、傍から見た光景はなかなかアレなものである。

 その上、何やらフロイトアンを見る目がおかしい。

 

「スネイル夫……もういいだろ、離れてくれないか?」

「何故?」

「いや、何故といってもだな……」

「フロイトアン……私は気づいたのですよ……普段のあなたは傍若無人に振る舞い、私に対してもぞんざいな扱いをしていると思っていましたしかし地位や序列企業のしがらみといった色眼鏡にとらわれずに本当の私を見てくれていたのはあなただけだったのです今までは気づきませんでしたがいまこの大豊娘娘の姿になったことではっきりと自覚することができたのですそういう意味ではこの事件を起こした黒幕には感謝しなければなりませんねともかくそういう訳なので決して離れませんよフロイトアン……♡」

 

「くそっ、黒幕めよくもやってくれたな……! 絶対に許さんぞ!!!」

 

 熱い視線を送るスネイル夫と、未だかつてないほどの義憤に燃えているフロイトアン。

 大豊娘娘化が被害者の精神に与える影響というのは、想像していたよりもはるかに恐ろしいものだったのだ。

 

 

 ……まぁそんな感じの二人はいったん脇に置いておき、イグ太たちは情報共有を行うことにした。

 

「どうやら、ルビコンのほぼ全員が大豊娘娘になっているようですね……」

 

 なんやかんやでミニオマの言葉を解読したオマえもんが、ボソリと呟いた。

 もろもろの調査結果を統合した結果、男女を問わず胸囲が一定以下の者はすべて大豊娘娘になっているという事実が明らかになったのだ。

 

 すでに巨大な胸筋を持っているミシガン先生や、全体的にでかいキメ杉くんなどは例外的に影響を逃れているようだが、それを除けばほぼ全滅。つまりオマえもんが口にした通り、ルビコンの全人口が大豊娘娘になっている。そんな現状だった。

 

「いや待て、おかしくないか?」

 

 ふと、いままで聞き手に回っていたイグ太が口を開く。

 

「どういうこと? イグ太さん」

「それなら、俺やフロイトアンが影響を受けていないのはおかしい。なにより……」

 

 ……なにより、のらいぬが影響を受けていないのは絶対におかしい。

 そう言いかけたイグ太だったが、それを言うとマズいことになる気がしたのでやめた。

 

「………………イグ太さん」

「と、ともかく、俺が思うに大豊ミュージアムの一部が『大豊娘娘化の及ばないエリア』になってたんじゃないか? つまり……」

 

「黒幕は、大豊ミュージアムにいる」

 

 のらいぬのジト目を浴びながら言い切ったイグ太の言葉を、フロイトアンが補足する。

 

「よし今すぐ行こう。一刻も早くこの事件を終わらせて、元のルビコンを取り戻さないとな」

 

 彼はいつになく正義感に満ちていた。おそらく劇場版特有のアレだろう。

 

「フロイトアン、ひょっとして私のために……?」

「……さあ、一刻も早く向かおう。今すぐに」

 

 そんなわけで、彼らは再び大豊ミュージアムへと足を運ぶのだった。

 

 

「この感覚……樹大枝細を内に秘めるタイプか……着痩せするのかもしれん……」

「またそうやって人の胸を上から評価する……」

「………………」

 

 大豊ミュージアムに向かうイグ太たち。

 道中、大豊娘娘化した二人組を謎の人物が無言で蹴り飛ばしていくという一幕があったりもしたが、それを除けば順調に目的地へと近づいていく。

 

 もちろん大豊娘娘による妨害を受けることもあった。しかし、やたらと士気の高いのらいぬとフロイトアンがいる以上、半端な妨害は意味を成さない。

 

 そうして、ミュージアムの入口へとたどり着いた一行。

 

「ククク、どうやらお気づきになられたようですねぇ……この私が黒幕であるということに」

 

 彼らを出迎えたのは……かつてミュージアムで彼らを出迎えた、胡散臭い案内人の男であった。

 

「お前は……!」

「そう! この事件は全て、私が混乱に乗じて詐欺で大儲けするための計画だったわけです! いやはや、大豊が秘密裏に開発していた大豊娘娘化兵器をたまたま手中に収めた時は、まさしくこれが吉兆かと思いましたよ……! それと……」

 

 なにやらすごい勢いで裏事情を語り始める黒幕。おそらく尺の都合だろう。

 

「……さて、秘密を知られてしまったからには生かして返すわけにはいきませんねぇ! ここで消えてもらうとしましょう!」

 

 ……と、ものすごく理不尽なことを言い放った後、黒幕はイグ太たちに敵意を向ける。彼が指をパチンと鳴らすと、轟音と共に地面が振動を始めた。

 

「地中から巨大な機体反応……! これは……!」

 

 オマえもんの声と、地中からそれが飛び出してくるのは同時だった。

 

「ザンダク□ス……?」

 

 イグ太が、現れた機体の名を呟く。

 そう。ザンダク□スとは、鉄人兵団のアレである。

 

 第一話でさらっと流したが、かつて彼らは鉄人兵団の襲撃を経験しているのだ。

 だが、現れたその機体には、以前のザンダク□スと決定的に異なる部分があった。

 

 それは……色だ。

 

 

 

 ……そのザンダク□スは、金色に塗られているのである。

 

 具体的に言うと、コックピットの周辺は濃い藍色で、それ以外の大部分は煌めく金色に塗装されていた。だが誰が何と言おうとザンダク□スである。

 

「ククク、こんなこともあろうかと秘密兵器を準備しておいたというわけですよ! 名付けて百……」

「それ以上はまずい! 消されるぞ!」

「……δ(デルタ)ザンダク□スとでも呼ぶことにしましょう!」

 

 そうして、誰がどう見てもザンダク□スであるそれは、イグ太たちの前に立ちふさがる。

 

 

 

 ――――しかし、相手が悪かった。

 

 いくら特別な機体を用意しようとも、ここにいるのは闘志に満ちた精鋭のAC乗りたち、その上五対一なのだから。

 

「さあ、さっそく消えてもらい……」

 

 δ(デルタ)ザンダク□スが動き出す。だがのらいぬの動きははそれよりも遥かに速かった。

 

「樹大枝細なんて、キライ……」

 

 個人的な恨みの込められた重ショットガンの散弾が、攻撃に出ようとする黒幕の出鼻を挫く。

 

「うちのスネイル夫に余計なことをしてくれたんだ、その責任は取ってもらわないと困るよな?」

 

 そうして生まれた隙を、フロイトアンが衝いた。

 彼が放ったレーザードローンが瞬く間にザンダク□スを包囲し、黒幕の反応速度を超えた飽和攻撃を放つ。

 

「く……甘いですよ!」

 

 だが、黙ってやられるδ(デルタ)ザンダク□スでもない。

 どうやら特徴的な金色の塗装には、レーザーを軽減する効果があるようだ。

 そうして攻撃を耐えたザンダク□スは、反撃として手に持ったバズーカから散弾を発射した。

 重ねて言うが、誰が何と言おうとザンダク□スである。

 

「甘いのはどっちだ?」

 

 しかし放たれた散弾は、ドローンの数基を撃墜するに留まった。

 素早く敵の装甲特性を見破ったフロイトアンは、お返しとばかりに拡散バズーカを発射。金色の装甲が爆炎に焼かれる。

 

「フロイトアン、素敵……!」

「くそっ調子が狂う!!」

 

 スネイル夫は応援している。フロイトアンのコンディションが下がった。

 

「おのれ! この大豊娘娘化計画は完璧だったはずだ……! 最後の最後に力押しで崩されるなどあってはならない……!」

 

「ふっ……ただの人間に、完璧な計画など作れるはずがないのです……それを成しえる者がいるとするならば、我々のような完璧なシステムくらいなのですよ!!」

 

 にわかに動揺が見え始めた黒幕に、謎のドヤ顔を浮かべたオマえもんが追撃を加えた。彼女が主張する内容の正しさには疑問の余地があるが、それはそれとしてフルチャージされたKRSVの威力は相手の装甲を加味しても折り紙付きだ。

 

「さあ……イグ太くん! 決めてください!」

「ああ!」

 

 そしてザンダク□スが吹っ飛んだ先には、リニアライフルを構えたイグ太がいた。

 

「……いっけえええええええええええええ!!!」

 

 映画恒例のセリフと共に、正確無比な射撃がザンダク□スを貫く。

 

「ケツが…………見えぬううううううぅぅぅぅ!!!!!!」

 

 汚い叫び声を上げながら、黒幕は空の彼方へと飛んで行った。

 

 

 

 

 

 ……それから、少しの時が経った。

 

「もぐもぐもぐもぐ……もぐもぐもぐ……」

 

 ここはイグ太の部屋。エネルギーの過剰補給にいそしむオマえもんを、イグ太はあきれたように眺めていた。

 

 ……あの後、大豊娘娘化事件は収束していった。樹大枝細の姿に変えられた人々は元の姿へと戻り、イグ太たちは無事に日常を取り戻したのである。

 

 そうしていつも通り、だらだらと過ごしていたイグ太だったが、突如としてインターフォンの音が鳴り響く。

 イグ太が急いで玄関に向かえば、そこにいたのはフロイトアンだった。何故かひどく憔悴した様子だ。

 

「助けてくれ……イグ太……オマえもん……」

 

 懇願するフロイトアン。いつもであれば考えられない様子の彼……その背後に新たな人影が現れる。

 

 ――――それは、スネイル夫だった。

 大豊娘娘化した姿ではない。すっかり元の陰険メガネの様相を取り戻している。

 

 だが――――

 

「フロイトアン! 今日は何をして遊びましょうか? 私は企業そのものですから、どこにでも連れて行ってあげますよ? さあこっちを向いてくださいフロイトアン♡」

「タスケテ……タスケテ……」

 

 玄関のカギを施錠するイグ太。

 扉の向こうから悲鳴が聞こえた気がした。

 

 

 

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