雄英のビッグ3、雄英のトップに君臨する者たち。毎年いるわけではなく、偉大な生徒が自然とそう呼ばれる。基本的にはヒーロー科から選ばれるが雄英の歴史をさかのぼればヒーロー科以外から選ばれたこともある。そんな雄英生の憧れの的。そして今年、雄英ビッグ3は選ばれると確実視されている。それほど偉大な三人がいるからだ。
*
雄英体育祭、三年の部。本選の第二競技までを突破して、残ったのは十六名。雄英体育祭ビッグ3は体育祭本選の最終競技まで残ることが前提だ。ここまではこれた。でもそれだけだ。天喰環、波動ねじれ、そして通形ミリオ。圧倒的過ぎた。彼等を差し置いて自分がビッグ3に選ばれるわけないと、諦めている。雄英体育祭がヒーローになってからの予行演習とはよく言ったものだ。誰もがオールマイトを超えようとしないように、誰もがこの三人には勝てるわけないと思っている。それでも。
「そこまで!勝者、音留凪!」
準々決勝を勝ち上がり、残ったのは四人。運命が味方したのか、圧倒的な三人同士で潰しあうことはなく、全員残った。あと一回勝てば決勝、目の前の傑物に、勝てさえすれば。
「準決勝第一試合、波動ねじれ対音留凪、二人とも、準備はよろしいですね?」
学年主任の言葉にうなずき前を向く。自身の活力をねじれる衝撃波に変える個性・「波動」。個性の相性で言えばこちらが圧倒的優位。多少の実力の差なら覆せる。多少ならば。
「それでは、始めっ!」
「行くよ、凪ッ!」
開幕速攻放たれるは
「ルーム・サイレント」
個性・「防音」、音を防ぐ壁を作るただそれだけの個性。隠密には秀でているが戦闘には向かない。そんな個性だけどいくつかの個性の天敵になりうる。その一つがねじれる衝撃
むくれた顔一つ、波動ねじれがルーム内に入ってくる。音を通さないだけで出入りは自由。ルーム内に張った防音壁、それは彼女の攻撃を止める障害物だ。
「やっぱり不思議だなー、全然外の音が聞こえなくなるんだもん。こんな静かな戦いはなかなかできないよ。」
人気商売の側面もあるヒーロー業、目立ってなんぼの世界でこんな静かな戦いはそんな戦いを専門にしたヒーローでもなければ起こらない。そんないつもと違う環境、罠があると分かっている部屋に臆することなく飛び込んですぐにいつもの調子にセットする。
「こんな大舞台でもいつも通り適応早いよね。羨ましいな。」
「リューキューのところでいっぱい経験積んでるもん。これくらいで慌ててられないよ。」
言うが早いか波動攻撃を繰り出してくる。彼女の中で唯一の速射技
「音のバリアも無限には出せないでしょ」
「波動一発よりは低燃費だと思うよ。」
「どうでしょう?」
個性は身体機能、無限には出せないが、ただの防音壁ならそこまで負担はない。強がりだろうと再び波動を防音壁で受けて、ふと考える。思えば何十発と攻撃を受けているのに彼女の動きは全く鈍っていない。
バチッ!
一撃あえてかすらせる。威力があまりにも少ない。出力5%も出てないだろう。いつから、まさか初めから?
「バレちゃったなあ、それじゃあ、出力10%
そう言って放たれる波動を避ける。地面に当たった音から10%でも無視できないダメ―ジだろう。出力10%の当たったら不味い一撃と5%以下の当たっても問題ない一撃は見た目に判断できず、すべてに対応しないといけない。
「グッ、このっ!」
防ぎきれず直撃は避けれてもダメージは蓄積していく。でも時間は稼いだ。同じ絵面が続いて観客が焦れてくるころ、波動ねじれの戦い方はどこまで行ってもヒーローのそれだ。
「出力20%、
ねじれるエネルギーを身にまとう、唯一彼女と張れるレベルだった機動力、彼女の弱点が克服された、自分に勝ち目が限りなくなくなる瞬間。落胆はない。もとより彼女とはそれだけの差があると知っている。たった一つの勝機を掴むためにこの場に立っているのだから。
「
凄まじい速度で後ろを取られ、大技を放たれる。ルームの隅っこ、場外ぎりぎりまで弾き飛ばされたたらを踏む。
「出力30%!」
油断はしないとばかりにまとう鎧の出力を上げて場外に弾き飛ばそうと接近してくる波動ねじれの顔に動揺が浮かぶ。
「不可視の防音壁、あなたを倒すとっておきだよ。」
薄い壁を厚く高く、そして視えないように調整した防音壁、音を一切通さない完全なサイレントルーム。負担は大きく、乱発は出来ない。でも個性が使えなくなった彼女の動揺の隙を突ければ、場外に投げ飛ばせると腕に手を伸ばして…
(!?)
気づけば組み伏せられていた。彼女が得意げに何か話そうとして、こちらは全く動けない。降参だと防音壁を全て解除した。
「君は強敵だから、ちゃんと対策したの!」
得意げに話す彼女に対して、負けた悔しさよりも強敵と認められた喜びが勝ってしまってだから負けたのだと悔しさがあとから喜びを上塗りする。
「凪も有弓も、みんなが当たり前のように勝ちに来る。そんなところで決勝まで行ける。この学年でよかった。」
実感する。三人を傑物といって負けてもいい理由を探している人なんて自分以外いなかったのに、その事実に今更気づいた。
「ビッグ3の看板いつでも奪いに行くから。」
狭まっていた視界が一気に広がる解放感、もっと早くこの事実に気づけていたら、いやまだ。
「負けないよ!」
目の前の彼女に、いや、ビッグ3、オールマイトだって超える最高のヒーローを自分は目指せる。
音留凪:個性「防音」、音を通さない壁を作りだす。壁についてはいろいろと応用が利く。ワンピ知ってる人なら大体ナギナギの実と思っておけばいいです。どうせ一発ネタなので。
ちなみに途中で出てきた有弓さんはフルネーム甲矢有弓で、波動ねじれの親友です。空飛ぶ雄英で上鳴くんに一年集中って言ってた人ですね。