私には親友がいる。雄英に入ってからできた最高に可愛い女の子。今でこそミスコンにも優勝するほどになったけれど、初めて会った時は不愛想で不機嫌な顔していっつもそっぽを向いていた。
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「午前の授業はここまで。復習を忘れずにな。」
雄英に入学して一週間が過ぎ、二週間が過ぎて、昼休みになっても波動ねじれに話しかける者はいない。彼女がクラスの中で孤立してきた頃、彼女の孤立に気づいていたのは私だけじゃなくて、でもいかにも話しかけてくるなというオーラを出す彼女に余計なお世話だと言い聞かせて触れないようにしていた。彼を除いて。
「ヒーロー、誰が好きなんだい?」
初めて彼女に声をかけたのは、あがり症で臆病な男の子。震える声でおびえて目線も会わせられないどころか顔ごと明後日の方向を向きながら、それでも彼女に声をかけるその姿は、ヒーローとしての高潔さみたいなものを感じた。余計なお世話だと自分に言い聞かせていた自分が恥ずかしくなる。
「あーそれ私も気になる。」
せめてもと、返答がなくて耐えきれなさそうな天喰君のサポートをしようと話題に乗っかる。ヒーロー科の生徒として定番な話題だ。クラスを共にして二週間もたってからする話題としては今更感が否めないのだが。
「お、俺はファットガムが好きなんだ。大阪を拠点としてるから雄英だと知らない人も多いかもしれないけど、個性の使い方がうまいし、親しみやすい雰囲気だからさ。」
沈黙に耐えきれなかったのか、自分の好きなヒーローを話し始める。そんな姿に私はますます彼との差を感じる。人と話すのが苦手なのに、それでも彼女を放って置けなかったんだと。
「知ってる知ってる。あの真ん丸フォルムが可愛いよね。」
眉間のしわがほどけて、笑顔に変わる瞬間、天喰君は顔を背けてたからそれを見てたのはきっと私だけ。反応を貰えたことに安心したような顔で話が弾み始める。
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授業での評価、試験での成績、数値に表せる評価なら私と彼ら二人に差はない。だけれど、プロヒーローの雄英教師陣からの評価には一段壁がある。ヒーローとして完成されている者と未だ未完成な者、その差。
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一方的に歪んだ友情、腐り始めた劣等感、そんな自分に気づかれたら二人と対等ではいられない。負けられない負けたくない。だけど。
「そこまで!勝者波動ねじれ!」
雄英体育祭三年の部、ヒーローの卵として最後の大舞台。勝ち筋はあったし、全力で手を伸ばして、それでも届かなくて、そしてはた目には当たり前のように負けた。特別な友達と普通な私。観客も歓声はあれど驚きはない。
「次勝てば決勝、ねじれなら勝てる、頑張って」
澱みなく激励できた私を褒めてくれる人は誰もいない。仮面をかぶって繕って、二人に追い縋った私の終着点。三人組から私が消えて通形ミリオが入る、
半年後その三本の一柱が欠けた。
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B組の一人が休学になっただけ。合同授業が頻繁に行われるわけではない以上A組にとっては大した影響はない。体育祭前の日常となんら変わらない。だけど、私が特別な二人と一緒に居ることはほとんどなくなった。
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「今年はミスコンでないの?」
ミリオが休学して一ヶ月。避けられてたように感じていた日々、偶然ねじれと二人きりになった放課後の教室。
「あー、えっと、そっか、もうそんな時期だもんね。どうしようかな。」
昨年準グランプリだったねじれの出場を期待する生徒は多い。そして期待に応えない波動ねじれはありえない、と思っていたのだけれど。
「やっぱりミリオ君に申し訳ない?」
「別にミリオに気を遣ってるわけじゃないの。私が自分たちだけ忘れたように浮かれることに納得できないだけ。」
そんなしかめっ面なねじれの顔は二年前の孤立していた時とそっくりで、そんな顔をさせたいわけではないのに。
「ミリオ君が個性を失ったのはあなたのせいじゃないし、そんな姿をミリオ君も環も望まないよ。」
たまにミリオ君とねじれが話しているのを見ることがある。笑顔で話しているはずなのに苦しそうで、それを見るたびに思い出すのだ。自分が何のためにヒーローを目指すのか。
「でなよ。ミスコン、負けっぱなしなねじれは可愛くないよ。」
個性を失った通形ミリオ、ねじれにとって敗北の象徴、それと全く意味合いは違えど絢爛崎美々美もまた、ねじれにとっての敗北の象徴なのだ。だから片方だけでも乗り越えるチャンスがある時に挑むべきだ。私の言葉にねじれは少しだけむくれて言った。
「すっごく不思議なの、有弓っていっつも私も気づいてない本音を拾ってくれるから。私そんなに分かりやすいかな?」
普段のあなたがやっていることをやっているに過ぎないのに彼女は気づいていないのだろう。
「有弓ありがと。完全に吹っ切れるのは難しいけど、ひとまず消化する。私が私らしくあるために。」
そうだよ。その笑顔が、そんな可愛い笑顔を少しでも多く守るために私はヒーローを目指すんだ。
当初は天喰君と波動さんと甲矢さんでどろどろ三角関係にするつもりだったんですけど、原作二人がさわやかすぎてそんな展開にはならずほぼオリキャラと化した甲矢有弓だけなんか湿度が高くなりました。