今回アニオリの印照才子が出てきていますが彼女はこの作品において事情あって雄英普通科を蹴って私立のヒーロー科に進んでいるという設定があります。
絵に描いたような、ステレオタイプの美人。私はそういう人間だ。普通の美しさを追求していった先に、今の私がある。でもただ美しいなんてなんの足しにもならない、それが雄英サポート科、そういう世界に自ら足を踏み入れたんだ。
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雄英に在籍して一年が過ぎようとしている。自分の思う美しさの見識がいかに狭かったのかとここに入学して気づいた。何かに全力で取り組む生徒しか雄英にはいなくてそれが私にはとにかく美しいものに映った。
だから、意思をまげて雄英を辞退しようとしている幼馴染を私はーーー
「お母さまから雄英を辞退すると聞きましたけど本当なんですの?」
会話の相手、印照才子は紅茶を一口含み口を開く。
「ええ、私はヒーローを目指すことにしましたの。」
才色兼備を体現するような才媛だ、ヒーローだってなれるだろう。それでも自分が最高峰のヒーロー候補生を見てしまっているから本心から言ってる言葉ではないということが分かってしまう。彼女が心からヒーローにあこがれて目指すならば迷うことなく応援したのに、そんな取り繕ったような笑みで言わないでほしい。
「ヒーローのあなたも美しいでしょうけれど、あなたが最も美しくなれるのはそこではないと思いますよ。」
だからはっきりと反対の意思を示したけれど彼女の意思は固かった。曖昧に微笑んで、でも意見を翻すことはなかった。以前のあなたはもっと自分の生き方に自信を持っていたのに。強引にでも反対してほしそうな、そんな態度が透けて見えるようなのに。あなたを縛り付けるものは自分の人生よりも重いのか。
「とにかく、雄英に来れば決して後悔はしませんよ。無理強いはしませんがぜひ考え直してみてください。」
その言葉が届かないと半ば確信があったけど、それでもそう言って、この場はお開きとなった。
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新学期、新入生の中から幼馴染を探す。あれから連絡は取っていなかった。それが答えだったのだろう。当たり前のように印照才子はいなかった。それが残念に思うけれど、ほんの少しだけ羨ましいとも思う。自分の夢を捨てるほどに大事なものを持っているのだから。私にはそれがあるのだろうか。美しさを捨てさってまでも目指すべき、大切なものが。
「ねえねえ、あなたって去年のミスコンで優勝した人でしょう?全く不思議に思わなかった、すっごく綺麗だもん。」
雄英体育祭が終わり、文化祭までも時間がある。サポート科全体が少しだけ余裕がある時期に声をかけられた。反応を返そうと口を開きかけると彼女が自己紹介をしだす。
「ああ、ごめんごめん、私はヒーロー科二年の波動ねじれ。サポートアイテムの相談に来たの。」
「…パワーローダー先生なら席を外しておりますわ。」
「それにしても、あなたが作ってるこれ、すっごくコンパクトにまとまってるよね。どういう機能なの、不思議~」
「えっと、それは…」
「これはこれは?」
「あの、まだ何も…」
「すごーい。まだ一年半くらいしかたってないのにもうこんなにたくさんアイテム作ったんだ。」
「……見世物ではないのですけど、パワーローダー先生が来るまでの間気のすむまでどうぞ。」
この個性あふれる雄英においてもさらに個性的な人で、すぐに話が脱線するから要件を聞くのに苦労したが、逆に脱線してくれて助かったといっていい。落ち着きを取り戻すのに時間が必要だったから。
「いやーこんなにはしゃいだのは久しぶり。すごいね絢爛崎さん。」
「同学年のトップに言われるのは自信になりますわ。それで…私に何の用ですの?」
今年の雄英体育祭、思わぬ快進撃を見せた通形ミリオを撃破し、優勝した才媛。今最も雄英ビックスリーに近い人。そんな人がただ私のアイテムを見にきたということはないだろうと、話を始めた。
「そうそう、用事!お願い事があるの。」
そう言って彼女は話し出す。曰く、自分の個性は速度がない。それを克服するアイテムがないかとパワーローダー先生に相談したところ、そのようなアイテムなら絢爛崎だと紹介されたという。
「速度を克服する方法は考えていますの?」
「私の個性は溜め打ちができない。発射の有無、出力の調整はできるんだけど、留めておくことができないの。だから捻れるエネルギーを詰まらせるアイテムがあれば一気に勢いよく放出できる。」
溜めることができれば圧力が生じる、それを解放すればエネルギーが一気に発散し速度も出るだろうと彼女は語る。
「なるほど、だったらこれまで開発したやつに要件を満たすものがありますけど、そのアイテムに指向性を持たせないといけないですね。もともとは個性を持て余し垂れ流す人ように作った物ですので。」
高齢になったり病気になったりで個性を使いこなせない人用に作ったブレスレット型介護用サポートアイテム。
「ではこれつけて波動を込めてください。限界まで溜まるとアラートがなります。今の状態の何倍位耐えるようにして欲しいか、装置の大きさはどの程度までなら許容できるか、この二つを教えてください。」
とりあえずは理想の要望をお願いしますと続けてブレスレット型アイテムを渡す。1分ほどでアラートがなり、それに合わせて彼女の要望を聞いた。
それが彼女と初めて深くかかわった日々、そして彼女に巻き込まれて忙しくも充実した、できれば何度も味わいたいとは思わないほど目の回る日々の始まり。
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「速射技、何発も打てるようになりたいの、威力も調節できるようにして欲しい!!」
「はあ!?」
「空が飛べるようになりたいの!」
「正気ですか!?」
「リューキューの事務所にインターン生として参加することになったの!」
「…それで今度は何をお願いに来ましたの?」
「大技が欲しい!」
無茶ぶりに次ぐ無茶ぶり、何なら私の仕事かと疑いたくなるような相談まで来たが、不思議と断れなかった。いや分かっている、彼女に魅了されていたのだろう。あの時、最初に押しかけてきた瞬間から、彼女は美しかったから。
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「文化祭の準備大変?」
彼女が頼み事以外で自分の元に訪れることは珍しくない。雄英のヒーロー科、忙しいだろうに隙間を縫ってやってくる。たいていは他愛ない話をして終わることが多いが、それは候補生と言えどヒーローの生の声。サポート科である自分にとっては有益なものが多い。しかし今回は私に対してのことを聞いてきた。
「もちろん大変ですが、あなたが聞きたいのはそういう意味ではなさそうですね。そういう探りを入れてこないタイプだと思ってましたが。」
「確かに学校中で噂になってるけど、私は去年の結果がなくても今の美々美を見たら聞いてたよ。」
文化祭を間近に控え、ミスコンの参加者が公表された。その中に絢爛崎美々美の名前はない。昨年優勝者の不参戦の理由はまことしやかに噂されている。
「別に大した理由はありませんよ。優勝できないと確信があったので不参加にしただけです。」
「嘘って言いたいけど、本心みたいだね。」
白々しいと吐きそうになった棘を飲み込む。あなたが私を確信に導いたのに。
「公表されている参加者に美々美が敗北を確信する人はいないと思うけどな。私を含めても。」
雄英の、しかもヒーロー科に在籍しているのだ。人の心の弱いところに土足で踏み入るような真似をしながら、だからこそか、ねじれは人の機微に敏感だ。
「それにあなたを目指してミスコンに参加する私がばかみたいじゃん。」
「は、あ、えっと…」
あなたに振り回されていたばかりの私があなたの目標になるわけないととっさにこぼれそうになる言葉を飲み込む。
「お目が高いですわね。」
「いや、驚くことないでしょ。昨年優勝者が目標になるのは当然。あなたを身近で見てきた人なら特に。」
「あぅ…」
すぐに取り繕ったはずなのに気づかれる。咳払い一つして、会話を続けた。
「そうでしょうか。あなたに振り回されてばかりだったと思いますが。」
「美々美はさ、自分のこと凡人だって思ってるよね。ううん違うな、凡人だと思うようになった、だ。」
「そんなことはありませんよ。私はあなたの意に沿うようなサポートができた、雄英体育祭優勝者のお得意様ですもの。なかなかできることではないでしょう。」
「私以外には出来ないとは言わないじゃん。私は代わりの利く存在なんですーって言ってるように聞こえる。」
そう、そうだ。私は彼女を、ねじれを見て、確信したんだ。自分が凡人であるということを。雄英でステレオタイプの美しさを保ちながら成果を出せていたという私のアイデンティティは、雄英で最上級の成果と美しさを両立させるねじれの存在によって壊された。
「そのくせ、本当にそうであるという事実を突きつけられるのが怖いんだ。だから自分にしかできないことに挑戦するのをためらってる。」
雄英での成果は比べるまでもなくねじれのほうが上で、じゃあ美しさはどうなのか。その結果は私がミスコンに出なければ決まらない。決まらなければまだ、私はプライドを守っていられる。そう思ってしまった時点で私の中では結果が出ていた。だから不参加にしたのだ。
「美々美は私の無茶ぶりを実現してきたすごい人だと思ってる。私にとってあなたの代わりは存在しない。それじゃあダメなの?」
ふと、半年前に幼馴染に会ったことを思い出した。だから曖昧に微笑んで、誤魔化しの言葉を一つ返す。
「おだてるのがお上手なんですから。」
私はあの時その微笑みを突破できなかった。でも貴方なら、波動ねじれならあの時の模範解答を見せてくれるのではないかと、その期待に応えてくれるなら、私は。
「本心なんだけど、じゃあもう少しわがままに伝えようかな。」
「私は美々美と、対等に、真っ向勝負がしたいんだ。」
「私が輝けてるのはあなたがいるから。それなのに、その成果を評価している人はあまりにも少ない。みんな私を見て、私を評価する。私が誰を支えにその場に立っているかを知ろうとする人はもっと多くないといけない。
「だからさ、私は証明するんだ。あなたに勝って、あなたがそう思っちゃうのも仕方ないくらい
「美々美、私の挑戦を受けてよ。」
ねじれから出された解答は横暴で、そしてわがままで、こんなものが模範解答になるなんて納得したくないけれど。
「証明してあげますわ。あなたの心配なんて杞憂で、私が燻ぶってなんかいないことを。」
期待に応えてくれた分は返してあげないといけないと思った。私が特別な彼女と対等であるために。
本当は八月中くらいに書ききるつもりだったんですが、展開が想像できない上にキャラが動いてくれなくてこんな時期になりました。まあ短編だし続きあるとも言ってなかったしいいか!ちなみに存在するかも保証できないこの話に続きがあるならば、絢爛崎美々美:ライジング/発目明:オリジンになります。まあその前に不和真綿:オリジンを書こうかなあって思ってるんですけどね。