朝礼の時間がやってきた。
廊下から小林先生がやってきてみんなにおはようと挨拶をした。そしてその後ろに例の転校生がいた。
その転校生の風貌は実に平凡であった。黒髪で瞳の色も黒で、顔も平凡な日本人の顔であるといったところであった。
そして、先生の促しにやって彼の自己紹介が始まった。
「じゃあ自己紹介してもらってもいいかな?」
「わーかりました…。」
なんとも変な返事の仕方だ、とコナンは思った。
「わーたしの名前は岩形圭吾といいます…。どうぞ、お見知り置きを…。あっ、ついでに名前はこう書きます。」
と、いうと彼は自分の名前を黒板に書きだした。
コナンは驚いた。
小1の癖にこんな複雑な漢字をかけるとは…、と。
「書かれても漢字が難しいからわかんねーよ。」
そんなことを元太は言ったが、本来それが小1の普通である。
少なくともこの連中の中でこの漢字がわかるコナン、そして灰原が異常なのである。
さて、それから数時間がたち、時間はもう下校の時となった。
下校時間となったこともあって、歩美、元太、光彦、コナン、灰原は一緒に下校するのであるが…ここで、歩美がある行動をとる。
「ねー、岩形くん!一緒に帰らない?」
この転校生に話しかけにいったのである。
「んっ?あーまぁ、いいけど。」
「歩美、そいつと帰るのか?」
「いーじゃない。転校生でまだ知らないことも多いんだもん。」
「あーそうだな、それじゃこいつの家に遊びに行こうぜ。」
「いーねぇ。」
「ハハハ、元太くん、向こうで勝手におやつを食べないでくださいよ。」
「うっ、ウルセェ。」
(ハハハ、まだ転校生の方はなんも言ってねぇのに勝手にきめてらぁ。)
「ねっ、コナンくんも一緒に行こう!哀ちゃんも!」
「おっおぉ…。」
そういうわけで彼らはこの転校生の家に行くこととなったのであった。
杯戸町と米花町の境の近くにて
数十分後、彼らは杯戸町と米花町の境に来ていた。どうにも彼の家は杯戸町にあるらしい。
「へー杯戸町と、米花町のちょうど境に家があるんですねー。」
「うん、そうなんだ。もうすぐで着くと思うよ。」
「あっあれじゃねぇか?」
「なーに言ってるんですか元太くん。あれはかつて精神医学者の権威として知られていた斎藤博士の旧宅ですよ。」
「せーしんいがくしゃ?」
「心の病気を治す医者のことだよ。」
「心の病気?何言ってんだお前?」
「例えば元太が大怪我を負ったりインフルエンザか何かに罹ったら病院でお医者さんに見てもらうだろ?それとおんなじように心も病気や怪我を負うことがあってそれを治すんだよ。」
「はへー。」
「で、お前の家はまだなのか?」
「もうちょっとだよ。ほら、あの赤煉瓦の家がそうだよ。」
「あーあれかー。」
「結構豪華じゃないですかー。」
「へへへ。」
「でも…横にある廃工場?はなんだがくらーい感じだねー。」
「あぁそうだな…。なんでもぼくがここに引っ越すかなり前からあのまま放置されているらしい。」
「ふーん。」
その時、コナンの鼻が僅かに異臭を嗅ぎ取った。
(ん?なんか匂うな…。)
「なぁ灰原。」
「なに?」
「なんか匂わねぇか?異臭が…。」
「そうかしら…。」
そう言いながら灰原も嗅ぎ取ってみると
「本当だわ…匂う…。」
「おい!なんかクッセェ…まるで何かが焼けたような匂いがするぜ!しかもあの工場から!」
「えぇ?!」
そう言われて、光彦と歩実は二人とも嗅ぎ取ってみた。
「ほ、本当だわ…。なんか…僅かに臭い。」
「ば、僕も匂いを嗅ぎ取りました…。」
「おい、ちょっと見に行ってみようぜ!」
それを言い終わらない内に元太はすでに工場の敷地内に入って行った。
「げ、元太くーん。待ってよ〜。」
「元太くん!置いていかないでくださいよ!」
「おい!元太!まて!」
少年探偵団のメンバーがほとんど廃工場に入っていくのを見て、肝心の転校生は
「エッちょっみんな。」
それを見て灰原は、
「あの子たち、何か気になるものがあるとすぐ行っちゃうの。」
「は、はぁ。」
「まぁ、とりあえず私もついていくわ。」
「えっちょっ。」
そうして転校生が一人取り残された。
「えっちょっと、僕も行くから待ってよ〜。」
そうして、その場にいた者は全員、廃工場の中に入って行ったのであった。
「んー。昼なのに暗い…。」
歩美がそう言ったように、昼なのにもかかわらず、その工場は暗かった。
「全く、腕時計型ライトもつけてないのに無茶して入ってきて転んで…。」
「だ、だって〜。」
転校生が元太にそう詰められている間もコナンは廃工場の中を探索していた。
「うーん、やっぱり何も異臭のもととなる物は見つからないなぁ。」
「じゃ、じゃああの異臭は…。」
「うーん、とりあえず一旦外に出よう。」
そう言われたこともあって、彼らは彼らが入ってきたゲートとは別の所から外に出た。
「おっ、おいコナン!あっちの倉庫まだ見てねぇんじゃねぇか?」
「ん?」
そうコナンが言われて見てみるとそこには工場の影に入っていたのか外からは見えていなかった廃倉庫が見えた。
「なんだか匂いもあっちからする気がするしよ!」
「そうか…。じゃあちょっと見てみるか…。」
そういって、コナンは倉庫の中に入って行った。すると…
「こっ、これは…!」
コナンが見つけたものは黒焦げの焼死体であった。
数時間後
「じゃあコナンくん、君が第一発見者なんだね?」
そう言ったのは目暮警部であった。
「はい、目暮警部。僕たちがここに来た時にはすでにそんな状態になっていました。」
「フーム、またも君たちか…。ん?その子は?」
「あぁ実はあの子は転校生で、僕たちが早速あの子の家に行こうということになったんですけどその途中で、これを発見したんです。」
「フーン、そうかい。」(全く、転校して早々にこれを目にしてしまうとな…。)
目暮警部がこの街の厄に早々に遭ってしまったことに同情していると、そこに一人の男が近づいて来た。
「目暮警部!」
「ん?高木くん?」
「焼死体の下から手帳が出てきました!」
「手帳?」
「はい、中には写真が挟んであって書き込みがあるようです。」
「ふーん、その手帳の状態はどうであるかね?」
「いくらか使い古されたようではありますが、焼けておらず、無事な状態のようです。」
「ん?という事は該者はここで燃やされた訳ではないということか?手帳が無事であるのなら…。もし一緒に燃やされていたなら無事であるはずがないしな…。」
「ええ、実際ここには焼いたあともありません。死体だけが置かれている状態でした。」
「うーんということは犯人は焼いた後で、その手帳を下に敷いて、そこに該者をおいたということか…。まぁ、とにかくその手帳を持ってきてくれ!」
「はい!」
(焼けていない手帳…はて、何が書いているのか…。)
コナンが思考を巡らせていると、そこに高木刑事が戻ってきた。
「警部、これがその例の手帳です。」
「ふーむ、これがそれか…。」
その手帳は黒色の手帳で、一見なんの変哲もない手帳のようであった。
「写真…丸メガネの男性が写っているな…。ん、これは…。ガイシャハ…ハラ…ヨ…シアキ…?」
ハラヨシアキ?
コナンは以前にその名前を聞いた覚えがあった。はて、どこで聞いたか…。そして、丸メガネの人物が写っている写真…何かが糸で繋がりそうだが…?
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……………
……
「アッ!!!!」
思い出した思い出したそうだそうだあの男だ!
「コナンくんどうしたんだ?そんな大声出して。」
突然大声を出したコナンを見て目暮警部は驚いてそんなことを言った。
「原佳明だよ!原佳明!ほら、前に西多摩市でツインタワーの爆破事件が起きたでしょ?あの時にその関連で死んだ人だよ!」
西多摩市でのツインタワー爆破事件…これは以前黒の組織が灰原哀の殺害…そしてコナンは知らないがこの原佳明がハッキングしたTOKIWAのデータの破壊が目的におこなわれた爆破事件である。この時、偶然にも如月峰水という画家が自身の恨みから、恨みの対象のTOKIWAの社長の殺人およびタワーへの爆弾設置をしていたことから黒の組織は浮上しなかったが…この時、すなわちツインタワー爆破事件の時にはすでに組織を裏切ったことで組織の構成員ジンに殺害されていた。
そして、今手帳の中から発見された写真及び記述された文言…
コナンが見た原佳明は丸メガネをかけていたのだ…
「た、確かに…。この写真の人物は以前の爆破事件の関連で死んだ原佳明だ…。しかし…何故すでに死んだはずの人間が該者だというのか…?」
「捜査を撹乱するためじゃないでしょうか…?我々がこれを見て混乱すると踏んで…。」
「ウーム、とりあえずこの手帳は鑑識に回せ、それと念の為この遺体と原佳明本人のDNAを検査しろ、それから周辺の防犯カメラの確認及び、何らかの犯行の形跡を逐一調べろ。そして…高木くんから白鳥くんの方へ伝えて欲しいのだが、原佳明本人についての調査とその周囲の人間関係…そして、あの爆破事件の洗い直しをしてくれ、どうもあの爆破事件が何かしら関わっている気がするのだ…。」
「わかりました警部!それでは早速伝えてきます!」
「うん、頼んだ。」
(原佳明…黒の組織によって殺されたはずだが何故今になって…。黒の組織が関わっているのか…?そしてあの手帳…本当に捜査の撹乱が目的なのか…?)
そんなコナンや少年探偵団、そして刑事達をただじっと見つめる二つの目があった。
その二つの目の持ち主たる転校生はいかにも何から何まで全て知っているかのように全くもって小1とは思えないほど落ち着いていたのであった。