ヴァンガード・スターダスト&ダスト   作:栗山飛鳥

12 / 17
第十想「俺達のエースだ!」

 最近は色々とあったものの4月も過ぎて、ソロ達は無事に進級していた。

 界隈のカードショップで災害の如く猛威を振るっていた八雲(やくも)アヤメも姿を見せなくなり、星灯(せいとう)学園カードファイト部はオモシロおかしくファイトする和やかな部活に――

「進路希望……か」

 戻っていなかった。

 ソロとカケルは、カードではなく1枚の紙を前にして難しい顔をしていた。ふたりはもう3年生。将来の目標を決めなければならない時期である。2年生のイチニィサンもその重苦しい雰囲気に気圧されて、部活動を始められないでいる。

「なあ……お前達は将来何をするかって決めてるか?」

 ソロはその2年生にあえて話を振ってみた。参考にしたかったと言うよりは、しょうもない答えが返ってきて、それに少しでも安心したかったという打算があったことは言うまでもない。

「俺は進学できるほどの学もねぇからな! 実家の豆腐屋を継ぐつもりだぜ!」

「俺は近所のバイク屋に雇ってもらえる予定だぜ! そこの店長がいい人でさ! 俺のバイクのチューンを見て、筋がいいって褒められたんだ!」

「俺はバンド仲間と一緒にメジャーデビューを目指すぜーっ!」

 思った以上にしっかりとした答えが返ってきてしまった。

 だが、ソロは彼らのように実家が老舗でもなければ、馴染みの店も無く、夢に人生を捧げられるほどロックでもない。

 ほんの1年前まで不良として戦いの日々を送っていたソロである。将来のことなど考える余裕もなかったし、思ってもこんな心休まらない日々がずっと続くのだろうなと、漠然とした暗黒の未来が脳裏をよぎるくらいであった。

 それが今はこうして――トラブルこそあったものの――穏やかな日々を過ごせているのではあるが、それ故に、将来に頭を悩まされることになるというのも皮肉な話である。

「そーいや、カケルはもう進路を決めたのか?」

 自分の進路が決まらないのを誤魔化すようにして、今度はカケルに尋ねてみる。

「う、うん……僕は千堂(せんどう)大学を目指そうと思ってるんだ」

「千堂大学! 超難関じゃねーか!」

「ヴァンガードサークルもあって、超強いと聞くぜ!」

「大学生限定の大会では優勝候補常連だとか! プロもたくさん輩出してるっていう!」

 とイチニィサンが解説してくれた。便利なヤンキー達である。

「そっか……けどカケルならきっと行けるぜ! 成績もヴァンガードも俺達の中では一番だもんな!」

「う、うん……」

 だが当のカケルはソロの励ましに歯切れ悪く頷くだけだった。

「どうした?」

「……それでも僕の学力では、まだ千堂大学に届かないと思う。これからもっと勉強しないと……」

「何も問題ねーよ! まだ半年以上あるじゃねーか!」

「うん……だからもし千堂大学を目指すなら……僕はもう部活に出ている余裕は無いと思う」

「あ……」

 その現実にソロ達もようやく思い至った。志望校を目指すため、3年生に進級した時点で部活を引退する学生も珍しくないのである。

「そ、それは……」

 本音を言うと引き止めたかった。だが、カケルの将来もかかった話に軽々しいことなど言えるはずもない。カケルの目標を応援したいというのも本心なのだ。

「うん……僕だってもっと皆と一緒にファイトがしたい。したかったよ……!」

 俯きがちになったカケルの瞳から涙が零れる。

 カケルが進路希望を前に悩んでいたのは、進路が決まっていなかったのではなく、部を引退する踏ん切りがつかなかったからだったのだ。

 彼もソロと出会うまでは趣味(ヴァンガード)を共有できる友達がおらず、寂しい学園生活を過ごしていた。星灯学園カードファイト部が本格始動したのも、2年生の2学期からだ。しばらくヴァンガードができなくなっていた時期もあった(アヤメの馬鹿野郎!)。カケルもまだまだ遊びたい盛りの高校生。彼の青春はあまりにも短すぎた。

「うう……カケルぅー!!」

「俺達だってもっとお前とヴァンガードがしてぇよぉー!」

 滝のように涙を流すソロとイチニィサンがカケルを中心にして抱き合っていると。

「話は聞かせてもらいました」

 建付けの悪い扉がバァンと勢いよく開かれ、艶のある長い黒髪をなびかせた女が颯爽と部室に入り込んできた。

 理知的な漆黒の瞳に、それをより強調する黒縁のメガネ。

「ドキッ! その美しい容姿を見て、ソロは一瞬にして恋に落ちた」

「落ちねーよ! だから地の文を捏造すんなよ!」

 闖入者――この学園の生徒会長である鏑木(かぶらき)クロエ――にソロが怒鳴りつけた。

「俺はサジッタと婚約済みなんだ! お前との恋になんて落ちるわけねーだろ!」

『婚約してない』

 そしてクロエの背後には、彼女の手足であり頭脳であり雑用係でもある副会長が守護霊の如く控えていた。

「なんでも副会長に丸投げしすぎだろ!?」

副会長(それ)はともかく、さっさと本題に入りましょう。生徒会は暇ではありませんので……」

「いやちょっと待て」

 一通りツッコミ終えて、少し冷静になったソロがある疑問に思い至る。

「いかがしました?」

「なんであんたらまだ学校にいるんだよ?」

「……どういう意味でしょう?」

 一拍の沈黙を挟んでクロエが尋ね返す。

「あんたら3年生()()()よな? 俺らが進級してるのに、なんでまだ生徒会長してるんだよ」

「知れたこと。卒業してしまっては、生徒会長ではなくなってしまうではないですか」

「留年したのか!? まさか生徒会長であるためだけに留年したのか!?」

「というか留年しても生徒会長になれるものなのかな……?」

 疑問の声をあげたのはカケルである。生徒達の模範になるべき生徒会であるが、途轍もなく悪い模範ではあった。

「ネタばらしすると、このお話は3~4月あたりに公開する予定でした。今回が生徒会として最後の大仕事になるはずだったわけですね」

「それがもう6月だぜ?」

「2ヵ月ほど唐突な思いつきで番外編を挟んでしまったものですから」

「作者の無計画が原因だった!!」

「もう私達のことは学生ではなく、生徒会室に住まう妖精さんのような存在と認識してください」

「それもよくわからんが。まあ生徒会じゃないあんたらは想像できないけどよ……」

 大学に進学しても、就職しても生徒会をしていそうなふたりである。

「さて。疑問も晴れたところで、今度こそ本題に入りましょう」

「永遠の謎も生まれたけどな」

皆月(みなつき)カケルさん」

「は、はいっ!?」

 不意に名前を呼ばれて、カケルは上ずった声をあげた。

「どうやら進路にお困りのようですね。いい大学に行きたい。でもまだまだ遊んでいたい。と」

「しょうがねぇだろ。カードファイト部(おれたち)はこれからだったんだ。俺もイチニィサンも強くなったから、今年は高校生限定のチーム戦にだって――」

 クロエの言いぐさに突っかかったソロが、メガネの奥で鋭く輝く眼光に一睨みされて黙らされる。

「その我儘を叶える方法が一つだけあります。それは推薦を得ることです」

「!?」

「推薦があれば、志望校目指して努力するクラスメイトを後目に遊び放題の怠け放題。これほど優越感に浸れる1年は他にないでしょう」

「なるほど推薦かぁー」

「俺も推薦がいいなぁ」

「けど推薦大学ってどこにあるんだ?」

 そんなことをイチニィサンが口々に囁き合うが、それにツッコミを入れている余裕はカケルには無かった。

「……僕に推薦を得られるほどの実績なんてありませんよ」

「御謙遜を。成績優秀、素行も良好。不良4名の更生にも関わった。どこに出しても恥ずかしくない、我が校の誇りです」

「ソロ達はもともと不良なんかじゃありませんでした」

「そういうことにしておいた方が、老人(おとな)ウケがいいというだけの話です。誰が損するというわけでもありませんし」

「だからと言って、友達の誇りを売るようなことはしたくありません」

「さすがに成績優秀なだけでは、我が校から千堂大学に推薦は出せませんが」

「お、おい。俺達は別に構わないんだぜ? 不良扱いなんざ慣れてるし……」

 怪しくなってきた雲行きにソロが口を挟み、イチニィサンも何度も頷く。

「だからだよ。ソロ達の気持ちはありがたいけど、これだけは僕も譲れない」

 普段のオドオドとした彼からは想像もできないほどきっぱりとカケルは言い切った。

「実に(おとな)どもが嫌いそうな、非合理極まりない友情ですね。わかりました。この話は無かったことに」

「はい。すみません。せっかくいい話をもってきてくださったのに……」

「ですが」

 頭を下げようとするカケルを、まっすぐ突き出された平手が押しとどめる。

「生憎、私はまだピュアな天使(こども)なもので――」

「さっきから大人のこと嫌いすぎるだろ」

「――そういうのは嫌いではありません。1度だけチャンスを与えましょう」

「チャンス?」

「私とファイトしてください」

 副会長から差し出されたデッキケースを手に取りながら、重々しくクロエが言った。

「ここまでのやり取りで、あなたの心の成長は把握できました。あとはファイトであなたの知の成長を見せてください。

 それが分かれば、我が校ではなく、この鏑木クロエが千堂大学にあなたを推薦して差し上げましょう」

「!?」

「留年生から推薦をもらってもなぁ……」

 余計なことを口走ったソロの背後に副会長が忍び寄り、こきゅっと首を絞められる音が狭い部室に響いた。

「……わかりました。よろしくお願いします」

 カケルも緊張した面持ちでカバンからデッキケースを取り出した。

 それもそのはず。クロエはたまにヴァンガードをしに部室へ遊びに来る(本人は忙しいと言い張っているが、部員一同は満場一致で生徒会は暇なのだと思っている)のだが、ソロ達はもちろん、カケルですら彼女に勝てたことは無いのである。

「大丈夫! 大丈夫だカケル!」

「リラックス! リラッークス!」

「生徒会長なら負けてもいつぞやのように『あなた達が真剣にヴァンガードに取り組んでいるかも理解できました』とか言って認めてくれるって!」

「はい?」

 サンの失言に、鋭さを増した瞳が視線だけで彼を斬り捨てた。

「千堂大学どころか、ハーバードも、ホグワーツも、バカだ大学すら顔パスで行ける、この鏑木クロエの推薦ですよ?」

「だからあんたいったい何者なんだよ!?」

 復活したソロがすかさずツッコミを入れた。

「それが得られる条件は勝利のみです。もちろん、私も本気でファイトさせて頂きますので悪しからず……」

 その証明とばかりにクロエはメガネをはずすと、無造作にそれを放り投げた。

 ズゥーン メキメキッ

 そんな漫画かアニメでしか聞かない非現実的な音がして、メガネが床板を突き破り、クレーターの底に埋まった。

「な、なんという重さのメガネだ! 生徒会長はこのメガネを装着することで有り余るパワーをセーブしていたのか!」

 やおら副会長が解説を始める。

「メガネの負担とヴァンガードの強さは関係ねーだろ!」

「ちょっと集中力は落ちるかも知れないけどね……」

 フォローを入れたのは、同じメガネのカケルだ。

「こうして全力を出すのは何年ぶりでしょうか。さあ、我が校の愛しき凡人よ。生徒会の威光を前に、せいぜい足掻いてみせてください」

 やたら眉間に皺を寄せながら、クロエがビッと鋭く指を突き付ける。

「……え? 俺っスかぁ!?」

 指さされたニィが素っ頓狂な声をあげた。

「こいつガチで目が悪かった!!」

 副会長が恭しく差し出した軽くて高級そうな新しいメガネを、クロエが手探りになってかけ直す。

 ファイトはまだまだ始まりそうになかった。

 

★彡

 

「「スタンドアップ ヴァンガード」」

「《憩いのひととき アルキテ》」

「《起点の魔法 スタリリ》!」

 吹雪舞う常闇の空の下、ブラントゲートの白き大地にふたつの魂と小さな依代(ファーストヴァンガード)が降り立った。

「私の先攻です。スタンド&ドロー」

 新しいメガネの位置を神経質に調節しながら、クロエがカードを引く。

「《怪獣の魂を探して アルキテ》にライドして、山札から《奔流エネルギーの研究》を手札に加えます。

《奔流エネルギーの研究》をセット。山札の上から5枚を公開……《甲鋏怪獣 フォルヴェクス》を手札に加え、《雷爪怪獣 レランガーラ》をドロップに。

 奔流エネルギーをレストして、レランガーラをオーダーゾーンに置きます」

 白の研究所(ブラン・ラボ)の地下深くにある研究室。立ち並ぶシリンダーのひとつに、今は小さな命が宿る。

「私はこれでターンエンドです」

「僕のターン。スタンド&ドロー!

 ライド! 《インシジョン・エンジェル》! スタリリの効果で1枚ドロー!

《インシジョン・エンジェル》でヴァンガードにアタックします!」

「ノーガードです」

「ドライブチェック……トリガーはありません」

 まずは1点。クロエのダメージゾーンにノーマルユニットカードが置かれる。

「私のターンですね。スタンド&ドロー。

《微睡みの守り人 アルキテ》にライド。山札から奔流エネルギーを手札に加えセット。《発散怪獣 ラザレック》を手札に。《従機怪獣 サヴォワード》をドロップに。

 奔流エネルギー2枚をレストして、フォルヴェクスとサヴォワードをオーダーゾーンに置きます。

 バトルフェイズに進行し、アルキテでアタックします」

「《竪琴の騎士 リクラ》でガードです!」

「ドライブチェック……(クリティカル)トリガー。効果はすべてアルキテに与えますが、アタックは通りませんね。ターンエンドです」

「僕のターン。スタンド&ドロー!

《ディヴァインシスター がとーばすく》にライド!

 ライドコストとして捨てられた《ディヴァインシスター びすこってぃ》のEB3で1枚ドロー!

 がとーばすくでヴァンガードにアタックします」

「ノーガードです」

「ドライブチェック……★トリガー! 効果はすべてヴァンガードに!」

「ダメージチェック……1枚目はトリガーではありません」

 2枚目のダメージチェックでは(ヒール)トリガーを引き、これでクロエのダメージは2点に抑えられた。

「私のターンですね。スタンド&ドロー。

《怪獣は楽園を破壊する アルキテ》にライドします」

 それは何の変哲も無い緑髪の少女であった。実際、戦闘力という点においては皆無に等しい。だが、その背後に潜む何千何万という暴威が、彼女に破壊の化身にも似た気配を纏わせていた。

「!! 生徒会長がいつも使っているアルキテと違うぜ!?」

 イチニィサンのうちいずれかが声をあげる。

「本気だと言ったでしょう?」

 メガネのブリッジを押さえながらクロエ。

「今まではあえて《怪獣の創造者 アルキテ(ふるいカード)》を使うことで、僕達にレベルを合わせてくれていたんですね」

「そういうことです。奔流エネルギーをセットして、《巨岩怪獣 ギルグランド》を手札に。レランガーラをドロップに。

 3枚の奔流エネルギーをレストして、ラザレック、レランガーラ、サヴォワードをオーダーゾーンに置きます。

 オーダーゾーンにあるサヴォワードのスキル発動。このカードをスペリオルコールし、パワー+5000します。サヴォワードのスキルで、オーダーゾーンのレランガーラを手札に加え、ラザレックを捨てます。

 怪獣が登場したのでアルキテのスキル発動。オーダーゾーンの同名カードをドロップに置くことで、サヴォワードのパワー+10000します。

 さらに、手札から捨てられたラザレックはスペリオルコールでき、オーダーゾーンのラザレックをドロップに置いて、パワー+10000」

 地下深くに眠るシリンダーが内側から破壊され、()()は天井を突き破り、永久凍土すらも貫いて。地の底から全身を刃で武装した怪獣と、電流を纏う怪獣が姿を現した。

「レランガーラ、フォルヴェクスをコールして、それぞれパワー+10000。

 そして、アルキテのスキル発動。ドロップからラザレック、レランガーラ、サヴォワードをオーダーゾーンに置きます。

 バトルフェイズです。レランガーラのブースト。フォルヴェクスでヴァンガードにアタックします」

「……ノーガード」

 カケルのダメージゾーンに1枚目のカードが置かれるが、トリガーは出ない。

「バトル終了時、レランガーラは退却し、1枚ドロー。フォルヴェクスは手札に戻ります。

 ラザレックのブースト。アルキテでヴァンガードにアタック時、スキル発動。オーダーゾーンの怪獣を2体、スペリオルコールできます。

 私がコールするのは、サヴォワードとラザレック。

 サヴォワードのスキルで、オーダーゾーンのレランガーラを手札に加え、手札の《光芒怪獣 レイヴィリス》をドロップに置きます」

 少女が指揮者のように指を振るうたび、氷の大地を突き破って次々と怪獣が姿を現し、暗黒の空に産声をあげる。

「……ノーガード、です」

「ツインドライブ。

 1枚目……ノートリガー。

 2枚目……(フロント)トリガー。前列のパワー+10000します」

「!?」

「サヴォワードでヴァンガードにアタック」

「ノーガード」

「ラザレックのブースト時、スキル発動。このユニットのパワー+5000。サヴォワードでアタックします」

「……ノーガード」

「ふ、防げるアタックが1度もねぇ……」

 あっという間にノーダメージから4点を受けてしまった。

「スキルを発動したラザレックは退却。私はこれでターンエンドです」

「僕のターンです。スタンド&ドロー!

 このくらいじゃ僕は諦めない! がとーばすくのスキルで、ライドコストをSB1に!

 ライド! 《蒼天騎竜 ハルムヴェルド》!!」

『よくぞ言った! 人の子の友よ!』

 2対の翼を広げ、1対のハルバードを両手に携えた星竜が豪快に笑い、常夜の空を流星の如く駆け抜ける。

「《ディヴァインシスター かっさてっら》をコール! かっさてっらのスキルで山札の上から7枚を見て……《ディヴァインシスター すぷもーね》をコール!

《碧天白鱗 アスプロニア&サフィラ》をコールして、ドロップから《ディヴァインシスター あまれってぃ》をスペリオルコール!

 オーダーカード《戦士の休息》! かっさてっらとアスプロニア&サフィラに効果を与え、1枚ドロー! オーダーをプレイしたので、ハルムヴェルドのスキルで前列のパワー+5000! 後列にブーストを与える!」

 星竜の咆哮が軍鼓の如く戦場に響き渡り、共に戦う仲間達に力と勇気を与える。

「《せるがおん》もコールして、バトルです!

 すぷもーねのブースト! かっさてっらでヴァンガードにアタック! すぷもーねのパワー+2000し、1枚引いて、1枚を山札の下へ。《戦士の休息》の効果でかっさてっらのパワー+10000! さらにこの2枚はあまれってぃのスキルでパワー+5000もされています! 合計パワーは――」

「43000ですね。ノーガードです」

 クロエがダメージゾーンに3枚目のカードをさっさと置いた。

「《せるがおん》のブースト! ハルムヴェルドでヴァンガードにアタック! スキルで山札の上から5枚見て……《我が身は御国の礎なれば》を手札に加えます! オーダーカードを公開したので、かっさてっらとすぷもーねをスタンド!」

「ノーガードです」

「ツインドライブ!!

 1枚目……ノートリガー。

 2枚目……治トリガー! ダメージ回復し、パワーはアスプロニア&サフィラに!」

 星竜が手にしたハルバードを振るうたび、凍土を埋め尽くさんばかりに増えた怪獣が斬り伏せられていく。

「ダメージチェック……前トリガー。前列のパワーを+10000します」

 これでカケルのダメージは3点。クロエのダメージは4点と逆転した。

「《せるがおん》のスキルで、山札の上から2枚見て、1枚を手札に。1枚を山札の下に。

 すぷもーねのブースト! かっさてっらでヴァンガードにアタック! 1枚引いて、1枚を山札の下に!」

「《エンディアリング・ベンダー メイティーナ》でガード。2枚のサヴォワードでインターセプト。メイティーナは退却時にソウルに置かれます」

「あまれってぃのブースト! アスプロニア&サフィラでヴァンガードにアタック!」

「2枚の《アメリオレート・コネクター》、フォルヴェクスでガードします。オーダーゾーンに研究が2枚あるので、フォルヴェクスのシールド+5000」

「僕はこれでターンエンドです」

「私のターン。スタンド&ドロー。

《怪獣は楽園を破壊する アルキテ》にペルソナライド。

 奔流エネルギーをセットして、アルキテを手札に。レイヴィリスをドロップに置きます。

 アルキテのスキル発動。2枚のサヴォワード、レランガーラをオーダーゾーンに。

 サヴォワードのスキルで、サヴォワードをスペリオルコール。アルキテのスキルでパワー+10000します。 

 奔流エネルギーを4枚レスト。サヴォワード、フォルヴェクス、2枚のレイヴィリスをオーダーゾーンに

 手札からフォルヴェクス、レランガーラをコールし、それぞれアルキテのスキルでパワー+10000。

 バトルです。レランガーラでヴァンガードにアタック」

「ノーガード」

「レランガーラは退却。1枚ドロー。

 サヴォワードでヴァンガードにアタック」

「ノーガード」

 瞬きする間もなく5点まで追い詰められる。

「ラザレックのブースト。アルキテでヴァンガードにアタック。ラザレックのパワー+5000。オーダーゾーンからサヴォワードとレイヴィリスをスペリオルコール。アルキテのスキルでレイヴィリスのパワー+10000。さらにレイヴィリスは自身のスキルでもパワー+10000、★+1されます」

 一際大きな地響きと地割れを伴い、少女の最高傑作(レイヴィリス)がついにその姿を現した。

 夜空や宇宙を想起させる藍の体色。星のように瞬く金色の瞳。他の怪獣より一回り巨大な体躯で白の研究所すらも足蹴にして。

「2枚の《竪琴の騎士 リクラ》、《騎機奮迅 ヴァルトロッサ&ライエル》でガード! かっさてっらとアスプロニア&サフィラでインターセプト! このアタックは(オーバー)トリガー以外では貫通しません!」

「ツインドライブ。

 1枚目……前トリガー。前列のパワー+10000。

 2枚目……★トリガー。効果はすべてサヴォワードに。

 ラザレックは退却……なかなかよい判断でした。ですがまだ終わりではありません。

 レイヴィリスでヴァンガードにアタック。アタック時、レイヴィリスのスキル発動。ヴァンガードのパワーを-5000します」

 怪獣の顎から、ブレスなどと呼ぶには生ぬるい破壊の奔流が放たれた。それは凍土すらも青白く輝く炎で覆い尽くし、常夜の世界を白昼の地獄へと塗り替える。

「想定の内です! 手札を1枚捨て、ブリッツオーダー《我が身は御国の礎なれば》! ヴァンガードのパワー+5000し、ドロップから3枚の治トリガー――《竪琴の騎士 リクラ》をガーディアンサークルにスペリオルコール!」

「フォルヴェクスのブースト。サヴォワードでヴァンガードにアタック」

「《パラディウムジール・ドラゴン》で完全ガード!」

「……お見事です。私はこれでターンエンド」

 目を閉じ、クロエが静かに宣言した。

「いいえ。このファイトは勝たなければ意味はありません。だからこのターンで決めてみせます!」

「では、お手並み拝見といきましょうか」

 8枚の手札を広げながら、クロエが再び目を見開く。少年の成長を見定めんとばかりに。

「僕のターン! スタンド&ドロー!

 ペルソナライド! 《蒼天騎竜 ハルムヴェルド》!! ……来てくれた!」

 ペルソナライドで引いたカードを見て、カケルが声を弾ませる。

「コール! エースユニット《聖白の騎士 イスクディート》!!」

「出た! エースユニット!」

 ソロも拳を握りながら歓声をあげる。

「イスクディートのスキル発動! パワー+5000して、山札の上から7枚を見て……あまれってぃをスペリオルコール!

 かっさてっらをコール! かっさてっらとすぷもーねは、あまれってぃ2体分の効果で、それぞれパワー+10000されています!

《戦士の休息》もプレイして、バトル!

 すぷもーねのブースト! かっさてっらでヴァンガードにアタック! 1枚ドローして、手札1枚を山札の下に!」

「ノーガード。ダメージチェック……治トリガー。パワーはアルキテに」

「これで5点目! あまれってぃのブースト! ハルムヴェルドでヴァンガードにアタック! アタック時、山札の上から5枚を見て……《戦士の休息》を手札に加えます! かっさてっらとすぷもーねをスタンド!」

「2枚の《スターアグレション・ドラゴン》でガード」

「ツインドライブ!!

 1枚目……ノートリガー。

 2枚目……前トリガー! 前列のパワー+10000!」

 振り下ろされたハルバードが、少女を守護する最高傑作の爪に受け止められる。

 白銀の斧と、黄金の爪。ふたつの刃は拮抗し、最大戦力の激突は膠着状態に陥った。

「あまれってぃのブースト! イクスディートでヴァンガードにアタック!」

 その隙を突くように、エースの称号を冠する天使が槍を手に翼を広げ、空を一直線に駆け抜ける。

「……ノーガードです」

 微笑とも苦笑ともつかない笑みを浮かべたクロエが静かに宣言した。

「おっしゃああああ!!」

「いけーっ! カケルーッ!!」

「やっちまえー!!」

 イチニィサンの声援が狭い部室に響き渡る。

(ああ……やっぱカケルは強ぇな。カケルこそ……俺達のエースだ!)

 黄金色の髪をなびかせ少女へと肉薄するエースの姿が、ソロにもはっきりとイメージできた。

 

 

★彡

 

 

「……完全ガードを奔流エネルギーでサーチした分しか引けていませんでしたし? 引トリガーが素引きばかりでしたし? これではカケルさんの実力を試せたとは言い難いのではないでしょうか」

「おいっ!?」

 敗北が確定するや言い訳をはじめたクロエに、ソロがツッコミ混じりの怒声をあげる。

「冗談です。カケルさんの強い意思が伝わってくるような素晴らしいファイトでした。私から推薦は出しておきましょう」

「は、はいっ! よろしくお願いします!」

「本当に大丈夫なんだろうなこの生徒会長? 推薦とか勝手に言ってるだけで、千堂大学とは何のツテもなかったりするんじゃないだろうな?」

「あはは……けど、きっと大丈夫だよ」

 なおも訝しむソロに、カケルが笑いかける。

「生徒会長はやっぱりすごい人だよ。さっきのファイトも、僕の運がよかっただけだなんて、自分が一番よくわかってる」

「理解されているのならばよろしい」

 当然とばかりにふふんと鼻で息をつき、カードを片付けたクロエが立ち上がる。

「高校生活最後の1年。存分に謳歌するとよいでしょう」

 穏やかな声音でそう言い残し、生徒会は部室を出て行った。

「……僕はまだ、みんなと一緒にヴァンガードができるんだね?」

 ようやく実感が湧いてきたのか、目尻に涙を浮かべながらカケルが確かめるように呟く。

「おおっ! もちろんだぜー!!」

「カケルーッ!!」

「これからもご指導ご鞭撻のほどをよろしくお願いしますーっ!!」

 イチニィサンがそんなカケルのもとに集まりもみくちゃにしていく。

「…………」

 ソロも表情では祝福しながらも、どこか距離を置いてそれを眺めていた。

(カケルは自分の進路を自分の力で決めた。イチニィサンだってああ見えて将来のことをしっかり考えてる。あのアヤメ先輩ですら今は就職活動をしている(たぶん)し、サナなんてもう神社で巫女として働いている……)

 生徒会長(クロエ)だけはよくわからないが。

(俺にできること……したいことってなんだろうな……)

 その日、ソロの進路希望に進路(ゆめ)が書かれることはついに無かった。




生徒会長VSカケル回。
そして、アルキテ回にして、ハルムヴェルド回にして、エースユニット回でした。
お楽しみいただけたなら幸いです。
感想などもお待ちしております。

次回の予定ですが、7月はお休みを頂き、8月に公開を予定しております。
6月がプライベートで忙しくなりそう……というのもあるのですが、サジッタが強化されるまで少しでも時間稼ぎしたいのが理由としては大きいです。
楽しみにしていただいている方にはもうしわけありませんが、もうしばらくダラダラとお付き合いくださいませ。

エースユニットもコスト面で相性悪いし、このまま最終回まで新カード無しで終わるのか!?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。