「――で《蒼天騎竜 ハルムヴェルド》にアタック!」
「うっ……ノーガード……僕の負けだよ」
「しゃあ! ようやくカケルに勝てたぜ!」
力強い歓声が狭い部室を震わせる。
最近ソロの成長は著しかった。
もともと素質もあったのだろうが、打倒
休日にはカードショップ『眠り姫』に赴き、
「…………」
だがソロはすぐに笑顔を引っこめると、浮かない表情でぼんやりと天井を見上げた。
「どうしたの?」
「あ、いや……」
カケルが尋ねると、明朗快活なソロにしては珍しく歯切れ悪く口ごもった。
「その……練習に付き合ってくれているカケルやイチニィサンには悪いんだけどよ。あの女……八雲アヤメの強さはこんなもんじゃなかったなって」
「それは彼女とファイトした僕達もよく分かってるよ」
カケルが仕方ないよとばかりに首を振り。
「カケルはともかく、俺達じゃもうソロの兄貴の練習相手にはならねぇのかぁ?」
「ちくしょう、不甲斐ねぇぜ……」
「ネネちゃんさんは1日1回しかファイトできないしなぁ」
イチニィサンも口々にボヤく。
「せめてもう一人、カケルと同じかそれ以上に強い練習相手がいてくれたらなぁ……」
そんなイチの呟きに答えるように。
「お忘れではないですか?」
バァンと勢いよく建付けの悪い扉が開け放たれ――
「あなた達に遅れてヴァンガードをはじめ、あなた達を圧倒した傑物がこの学園にいることを」
メガネをかけた長い黒髪の女が、右手にギプスを撒いて包帯で吊るした痛々しい姿で現れた。
「……生徒会長」
「そう。彼女こそ星灯学園が誇る天才少女にして、生ける伝説と謳われる美しき生徒会長。
「地の文を捏造するなよ!」
ソロのツッコミを無視して、クロエがズカズカと無遠慮に、それでいてモデルのように優雅に部室へと乗り込んでくる。その背後には、クロエと同じようなメガネをかけた長身の男が、彼女を護衛するように控えていた。
「八雲アヤメと会いました」
クロエはソロの耳元に顔を寄せると、囁くように言った。
「!?」
ソロは目を見開き、クロエの顔と彼女の腕に巻かれたギプスを交互に見る。
「まさか、あの女に何かされたのか……!?」
返答如何によっては、誓いを捨ててすぐさま報復に飛び出しそうなほど怒りに顔を歪ませる。
「はい」
クロエは首肯した。
「彼女にファイトで負けた後、苛々して拳をテーブルに叩きつけたら腕が折れました」
「自業自得じゃねーか!!」
「彼女の存在は危険です。これ以上の被害を出さないため、生徒会が動かねばならないと判断しました」
「言ってることはマトモなのに、もう逆恨みにしか聞こえねーよ」
「聞くところによると、どうやらあなた達も独自に八雲アヤメを追っているようですね」
「はい」
話に集中できなくなっていたソロに代わって、カケルが答えた。
「でも少しだけ待ってください! 彼女との決着はソロにつけさせてあげたいんです!」
「カケル……」
親友の訴えに、ソロの目頭がじーんと熱くなる。
「ええ。私もそれが最善とは考えています。生徒会権限で人ひとりを消すことは容易いですが、ファイターの業はファイトで清算すべきでしょう」
「おいあんた今とんでもないこと口にしなかったか?」
「ですが、状況は悠長にしていられるものでもありません。あなた方にそれを成す実力があるのか……今日はそれを確かめに来ました。意思に実力が伴っていないようであれば、この件は生徒会預かりとさせて頂きます」
「要するにまたあんたとファイトしろってことだな? 面白ぇ! いつぞやの借りを返してやるぜ」
ソロが手のひらに拳を何度も叩きつける。
「いいえ。この通り、私は
「傍点振ってまで強調すんなよ」
「今日は代わりに彼とファイトして頂きます」
スッと陽が落ちるように影が差す。クロエの背後に控えていた男が動いたのだ。
「御導ソロさんですね。私はこの学園の生徒会副会長です。よろしくお願い致します」
ただ長身なだけでは説明がつかない威圧感を漂わせ、クロエと同様に学園の制服を完璧に着こなした男が恭しく礼をした。
★彡
「それでは始めましょうか」
ソロと共にありあわせの椅子と机で作られたファイトテーブルについた副会長が、柔和な笑みを浮かべて言った。
「私は会長に付き合ってヴァンガードを始めたのですが、会長ともどもすっかりハマってしまいましてね」
となるとヴァンガードを始めて半年足らずのはずだが、喋りながらでも、デッキをシャッフルし、準備を整えていく手つきに淀みは無い。
「このゲームは実に面白い! 特に自分のなりたい姿をイメージするというコンセプトが最高です。まるで自分でありながら自分ではない、もうひとりの自分と出会っているような、不思議な感覚になります」
「お、おお! あんた分かってるじゃねーか!」
はじめこそ人を寄せ付けない雰囲気があったが、いざ話をしてみると気のいい先輩だった。
「これは試験ではありますが、ヴァンガードはあくまでゲームです。緊張しすぎず、楽しむ気持ちは忘れないでくださいね」
「ああ! もちろんだぜ!」
「さて。あなたも準備はできたようですね。それでは……」
副会長の大きな手が裏向きにして置かれたカードにかかる。
「「スタンドアップ! ヴァンガード!!」」
そして同時に2枚のカードがめくられた。
「《憩いのひととき アルキテ》」
「《Absolute Zero リックス》!」
氷雪吹きすさぶ、凍土と金属に覆われたブラントゲートの地へと、霊体となったソロはひさしぶりに降り立った。
「私のターンですね。スタンド&ドロー。
《怪獣の魂を探して アルキテ》にライドして、山札から《奔流エネルギーの研究》を手札に加えます」
(副会長のデッキも生徒会長と同じアルキテか……!!)
「《奔流エネルギーの研究》をセットし、山札の上から5枚見て……《巨岩怪獣 ギルグランド》を手札に加え、《従機怪獣 サヴォワード》をドロップに置きます。
《奔流エネルギーの研究》をレストして、ドロップのサヴォワードをオーダーゾーンに置いてターンエンドです」
「俺のターン! スタンド&ドロー!!
ライド! 《Absolute Zero クラウ》! リックスのスキルで1枚ドロー! クラウのスキルで山札の上から7枚見て……《安らぎの天色 風紀乙女 アルハ》を手札に加えるぜ!
クラウでヴァンガードにアタックだ!」
副会長はノーガードを宣言し、ソロはドライブチェックで
「ふふ、やりますね。
それではターンを頂きます。スタンド&ドロー。
《微睡みの守り人 アルキテ》にライドして、《奔流エネルギーの研究》を手札に加え、セット。ギルグランドを手札に加え、サヴォワードをドロップに置きます。
奔流エネルギーをレストして、サヴォワードをオーダーゾーンに。
さあ、アルキテでヴァンガードにアタックです」
「ノーガードだぜ」
「ドライブチェック……トリガーはありません」
「ダメージチェック……俺もトリガーじゃないぜ」
「私はこれでターンエンドです」
「じゃあ俺のターンだな! スタンド&ドロー!
ライド! 《Absolute Zero カシュア》!
ライドコストで《随喜竜 プリストロ》が捨てられたので、このカードをスペリオルコール!
《小悪魔的メソッド ヴァレフル》をコールしてソウルチャージ&1枚ドロー!
バトル行くぜ!
カシュアでヴァンガードにアタック!」
「ノーガードです」
「ドライブチェック……トリガーは無しだ!」
「ダメージチェック……★トリガー! ヴァンガードのパワー+10000します。これで他のユニットのアタックは通りませんね」
「ちぇっ。俺はこれでターンエンドだぜ」
「それでは私のターンですね。スタンド&ドロー……」
とカードを1枚引いたところで、副会長が顔を俯かせて動きを止めた。
「…………」
「おい、副会長? どうした? 腹でも痛むのか?」
ソロがテーブル越しに副会長の顔を覗き込む。
「…………くくくっ」
いや違う。副会長は小さな声でずっと笑っていたのだ。
「ふっ、くくくくくっ、ヒャーッハッハッハッハァ!! いい子ちゃんのフリもここまでだァ!!」
「!?」
勢いよく顔を上げて高笑いする副会長は、あまりにも人が変わりすぎていて、別の人物が喋っているのかと錯覚してしまったほどだった。
「刮目せよ! これが真なる俺様の姿ァ!!
ウルトラライド!!
《波紋震怪獣 エレドグレーマ》!!!!」
無数の蝙蝠が柱となって天に昇り、やがてそれらは天をも覆う漆黒の翼へと姿を変える。
常夜の空に現れた蝙蝠怪獣は甲高い咆哮をあげて、極寒の空気すら凍てつく恐怖に震わせた。
「なっ! なんだこいつは!?」
飛び交う蝙蝠を纏い羽ばたく怪獣を見上げながら、ソロが悲鳴にも似た誰何の声をあげた。
「ハッハァ! アルキテだとでも思ったかァ!? お勉強不足だなァ! だからテメーは偏差値が低いんだよォ!」
「うっせーよ! ていうかむしろお前がなんなんだよ!?」
「言っただろォ!? なりたい自分をイメージするのがヴァンガードだとなァ!!」
「いやさすがにキャラ変わりすぎだろ!!」
「楽しい楽しい俺様のターンは始まったばかりだぜェーッ!! エレドグレーマの登場時スキル発動ッ!
山札の上から5枚見て……そのうちのセットオーダーすべてをオーダーゾーンに置くことができるゥ!!」
「な、なんだとぉ!?」
俺様が置くセットオーダーは……
《ニートネス・メテオシャワー》!!
《蝕まれる月光》!!!
《世界は蒼き研究室》!!!!
この3枚だァ!!!!!!!!!!」
「いきなり3枚もセットオーダーを……」
「それだけじゃねェーーーーーッ!!!
各セットオーダーが置かれた時の効果がそれぞれ発動するぜェ!!
《ニートネス・メテオシャワー》でソウルチャージ&1枚ドロー!
《蝕まれる月光》で夜影兵・トークンをスペリオルコールし!
《世界は蒼き研究室》で山札の上から5枚見て……《結合怪獣 ジャンボスクラッシャ》をスペリオルコールだァ!!」
「な……! な……? な……!?」
「ヒャハァ! 驚きすぎて言葉にもならねーかァ!! だがまだ終わりじゃねェーッ!
手札から《奔流エネルギーの研究》をセェーット!
ジャンボスクラッシャを手札に加え、エレドグレーマをドロップに! 奔流エネルギーをレストしてエレドグレーマをオーダーゾーンに!
オーダーゾーンのサヴォワードのスキルも発動ゥ! このカードをスペリオルコールしてパワー+5000!
サヴォワードのスキルでオーダーゾーンのエレドグレーマを手札に加え、手札を1枚捨てるゥ!」
(これで次のターンのペルソナライドは確定した……!!)
「それだけじゃねェ! 俺様が捨てたのは《機動犬舎 アインガルテン》! このわんわんは手札から捨てられたら、オーダーゾーンに置かれるぜェ!」
「かわいい!」
「ブギャプフプ!(笑い声?) バトルだァ! 血祭りにあげてやるぜェ!
サヴォワードでプリストロにアタックゥ!」
「アルハでガードするぜ!」
「ジャンボスクラッシャでヴァンガードにアタックゥ! アタック時、ジャンボスクラッシャのスキル発動!
オーダーゾーンにセットオーダーが5種類あるので、1枚引き、パワー+10000! ★+1だァ!!」
廃品から生み出された怪獣が両腕に磁力を纏わせ、折り重なった鉄屑が巨大な鋏を形作る。さらに背中に生えた電極から高圧の電流を流し込むと、鋏は獲物を求める肉食獣の如くその顎を大きく開いた。
「プリストロでガード! ヴァレフルとプリストロでインターセプト!」
「エレドグレーマでヴァンガードにアタァーック!!」
「ノ、ノーガード!」
「ツインドライブ!!
1枚目……トリガー無し!
2枚目……トリガー無し!」
飛翔した蝙蝠怪獣が大きく翼を広げ闇で覆う。翼膜に目玉のような文様が浮かび上がり、不気味に紅く輝いたかと思うと、永久凍土すら粉々に分解する超音波が白銀の大地へと降り注いだ。
「ダメージチェック! ……俺もトリガーは無しだ」
「アタック終了時、エレドグレーマのスキル発動!!
エレドグレーマはオーダーゾーンのカード5種類を山札に
俺様は《世界は蒼き研究室》と《蝕まれる月光》以外の5種類をデッキに還し、エレドグレーマとジャンボスクラッシャをスタンド! エレドグレーマのパワー+10000! ドライブ-2!」
「っ……! ジャンボスクラッシャはたしか……!!」
「べるべるらるらん! ヤンキーの分際で記憶力はいいなァ! そう! ジャンボスクラッシャは★2のままよ!
だが今度は簡単には防げんぜェ! 夜影兵のブースト! ジャンボスクラッシャでヴァンガードにアタックウウウゥゥゥ!!!」
「《暖かいうちに召し上がれ ウォルミア》で完全ガード!」
「小癪ゥ!! エレドグレーマでヴァンガードにアタアアァァァァックウウウゥゥゥ!!!」
「ノ……ノーガアアアァァドオオオオォォッ!!」
「ソロも
外野からツッコミを入れたのはカケルだ。
これでソロに3点目のダメージが入ったが、
だが対する副会長の手札は圧巻の12枚。
「お、俺のターン! スタンド&ドロー!
ライド! 《Absolute Zero サジッタ》!」
艶のある漆黒の羽根を撒き散らし、黒き翼と白い肌が星明かりを浴びて躍動する。
Coolを越えた精密無比なパフォーマンス。
故にAbsolute Zero。
絶対零度の歌姫が今宵、氷点下の夜空に舞う。
「カシュアのスキルで、ソウルのカシュアとクラウをスペリオルコール!
ライドコストとして《休息の羽衣 風紀乙女 クルノール》を捨てたので、カシュアのパワー+5000!
クラウのスキルで手札を1枚捨て、前列ユニットのパワー+5000を得る! 手札を捨てたのでサジッタで1枚ドロー!
ユイカとアルハもコール! サジッタのスキルを発動してバトルだ!」
「こいやあああああッッッ!!!」
「ユイカのブースト! アルハでヴァンガードにアタック!」
「ノーガードじゃあ!
ダメージチェック……トリガーは無ェぜェ!」
これで副会長のダメージは4点。
「ユイカのスキルでアルハを手札に戻す!
サジッタでヴァンガードにアタック!! アタック時、ドロップからアルハをスペリオルコール!」
「ギルグランドで完全ガアアァァドッ!! ガッチーン!!」
「トリプルドライブ!!
1枚目……引トリガー! 1枚引いて、パワーはアルハに!
2枚目……★トリガー! これも効果はすべてアルハに!
3枚目……こいつはトリガー無しだ!」
すべてを破砕する超音波を、朗々と響き渡る歌声が受け止め、相殺し、跳ね返す。
不利を悟った蝙蝠怪獣は、岩のような怪獣の影に身を潜めてそれをやり過ごした。
「★2のアルハでヴァンガードにアタック!」
「2枚の《オルタレートスフィア・ドラゴン》でガードォ! ジャンボスクラッシャでインターセプトォ!」
「手札を1枚捨て、クラウのブースト! カシュアでヴァンガードにアタック!」
「ノォォォガァァァド!!」
「カシュアを退却させ、1枚ドロー。俺はこれでターンエンドだぜ」
これで副会長に5点のダメージを与えたが。
「仕留め切ることはできなかったようだなァ! 弱い! 弱すぎるッ!! やはり一般生徒は脆弱よ!
この生徒会副会長が真の恐怖を惰弱なその心に刻み込んでやるるんるるるううんうううううるん!!!
スタンド&ドローゥ!!! からのォ……
ウルトラペルソナライドオオォォ!!
《波紋震怪獣 エレドグレーマ》!!!!!!」
蝙蝠怪獣がひとまわり巨大化し、放たれる超音波も力を増していく。空すらもひび割れ砕けるほどに。
「エレドグレーマのスキル発動!! 山札の上から5枚を確認……キタキタキターーーッ!!!
《虚ろなる月夜》!
《リファブリッシュメント・ドック》!
《実験大成功!》!
この3枚をセェェェット!!
月夜とドックの効果で2枚ドロー!
《実験大成功!》の効果で1枚引いて1枚捨てる! 研究オーダーが3枚あるので、アルハをバインド!」
「くそっ! インターセプトできるユニットが……」
「震えろ! これがアドバンテージだァ!!
俺様は《雷熱怪獣 モエフラシ》をコール!」
鮮やかな青の体色を持つアメフラシ怪獣が凍土に降り立ち、何かを探るようにオレンジ色の触覚をピコピコと震わせる。
「モエフラシのスキル発動! このカードを退却させ、手札のセットオーダーをすべて公開!
《ニートネス・メテオシャワー》!
《虚ろなる月夜》!
《リファブリッシュメント・ドック》!
《蝕まれる月光》!
俺様はァ! この4枚をすべてセットして1枚ドローゥ!!」
「んなぁ!?」
「月夜とドックで2枚ドロー!
月光で夜影兵をコール!
奔流エネルギーをレストして、ジャンボスクラッシャをオーダーゾーンに!
オーダーゾーンからサヴォワードをコール! 元いたサヴォワードは退却! サヴォワードのスキルでジャンボスクラッシャを手札に加え、手札を1枚捨てる! 捨てられたアインガルテンはオーダーゾーンに! わんわん大活躍ゥ!!
そして2枚のジャンボスクラッシャをコールだァ!!!!」
廃墟と化した都市から、瓦礫を押しのけ2体の廃品怪獣が新たに姿を現す。
「うげぇっ! 1枚でも厄介なやつが2枚も……」
「奔流エネルギーをレストして、ドロップのサヴォワードをセット!
ババババババトルだァ!! 生徒会の威光にひれ伏せ、子羊どもォ!!
ジャンボスクラッシャでヴァンガードにアタックゥェーーーーーッ!! スキルで1枚引いて、パワー+10000! ★+1!」
「《スノウスキップ パルヴィ》でガード!」
「夜影兵のブースト! エレドグレーマでヴァンガードにアタタタッククウゥゥゥ!!!」
「ノーガード!」
「ツインドライブ!!
1枚目……★トリガーキターッ!! 効果はすべてエレドグレーマにィ!!
2枚目……
翼の文様が世界を睥睨し、不可視の破滅が降り注ぐ。
大都市が、研究所が、氷山が、ブラントゲートの誇るすべてが塵となって無へ還っていく。
「ダメージチェック!
1枚目……トリガー無し。
2枚目……俺も治トリガーだっ! ダメージ回復し、サジッタにパワー+10000!」
「ゲギャギャ! ダメージ回復したところで手遅れよ!
もはや俺様のユニットはすべて★2!! 4点からでは受けきれまい!
エレドグレーマのスキルで5種類のセットオーダーを山札に還し、エレドグレーマとジャンボスクラッシャをスタンド!
★2のジャンボスクラッシャでアタック!」
「ベトレアでガード!」
「無駄無駄な抵抗ォ! サヴォワードのブーストォ! ジャンボスクラッシャでヴァンガードにアタックゥ!」
「おっと! ここからのアタックは手札を1枚捨ててもらうぜ!」
「承知の上ェ! 俺様が捨てるのは《ニートネス・メテオシャワー》! そしてジャンボスクラッシャのスキルで1枚引いて、パワー+10000! ★+1!」
「2枚の《柔らかな光 プルエル》でガード!」
「手札を1枚捨てェ! エレドグレーマでヴァンガードにアタッキューーーーッ!!」
「《四精織り成す清浄の盾》で完全ガードッ!! ……どうだっ! 耐えきったぜ!!」
「オイオイオイオイオイオイィ!! 何を安心してやがるぅぅぅん!? これだから低学歴はよォ!」
「同じ学校なんだから、学歴は同じなんじゃないかな……」
カケルのツッコミはもはや誰も聞いていなかったが。
「あ? もうアタックできるユニットは……」
「いつ! 誰が! エレドグレーマのスキルが1ターンに1回だけだと言ったァ!?」
「!?」
「エレドグレーマのスキル! 再・発・動!!
5種類のセットオーダーを山札へと還し、エレドグレーマとジャンボスクラッシャをスタンド!」
「んなぁーっ!?」
「貴様も塵へと還る刻だ! 御導ソロ!!
手札ァ1枚捨てェーッ! エレドグレーマでェヴァガードにアタキューーーッ!!」
「超トリガー《神恩天唱 グリザエル》でガード!!」
「テフダステェーノ! シャダダダダブー! ジャボラッャーキューーーッ!!」
興奮しすぎて何を言っているのか聞き取れないが、手札を捨てて、夜影兵でジャンボスクラッシャをブーストしてアタックしたのだろう。たぶん。
「ウォルミアで完全ガード! 手札0枚なのでコストは必要ないぜ」
「キィーーーーーッ!! 運のいい野郎ネッ!! ダンダン!」
ヒステリーをおこした副会長が、声で地団太を踏んで悔しがる。
「はは……自分でもそう思うぜ。完全ガード3枚に超トリガーも引けてなきゃ、確実に俺の負けだった。あんたフザけてるけど、すっげー強ぇわ」
「マッ! おだてても何もでないわヨッ!
それに生き残ったところで、手札無しに何ができるというのッ!?」
「そういうあんたもずいぶんと手札が減ってないか?」
「ギクッ!?」
副会長が分かりやすく肩を揺らした。ソロが指さす副会長の手札は7枚。
「そりゃそうか。サジッタに4枚も手札を切らされたんだからな。それに残りの手札もセットオーダーばっかだろ?」
「ギクギクッ!? ななななな何を根拠に!?」
「自分でギクッって言ってるじゃねーか!
それにな……手札が0枚だろうと、俺とサジッタは運命の赤い糸で結ばれてるからな――」
『結ばれてない』
「俺が望めばいつでも来てくれんのさ! スタンド&ドロー!!」
引いたカードに確かな温もりを感じ、一瞥もせずヴァンガードへと重ね合わせる。
「ペルソナライド!!」
《Absolute Zero サジッタ》
銀色の文字で記されたその名が、ヴァンガードサークルでやや不満げに輝いた。
「《花園を巡る光 風紀乙女 ルリーニア》をコール! 山札の上から5枚見て……クルノールを手札に加えるぜ!
クラウのスキル発動! コストでクルノールを捨てたので、クラウのパワー+5000! サジッタの効果で1枚ドロー……俺は《Absolute Zero カシュア》をコール!
これでAbsolute Zero完全復活だぜ!」
「にゃにゃにゃにゃにゃッ!?」
「サジッタのスキルも発動して、バトルだ!!
ユイカのブースト! ルリーニアでヴァンガードにアタック!」
「ノーガード……あぎゃぎゃーッ!! トリガーを引けなかったってェーッ!?」
「ユイカの効果でルリーニアを手札に戻すぜ!
サジッタでヴァンガードにアタック!! アタック時、アルハをスペリオルコール!」
「キョキョキョーッ!! ギルグランドでバリヤー!!」
「トリプルドライブ!!!
1枚目……治トリガー!! ダメージ回復し、パワーはアルハに!
2枚目……トリガー無し!
3枚目……引トリガー!! 1枚引いて、パワーはアルハに!」
「もんぎょーーーーーーーッ!?」
歌姫の絶唱が再び超音波を吹き飛ばし、その残滓が光り輝く氷雪となって廃墟へと降り注ぐ。
歌は壊れてしまったものを再生させるような奇跡は起こせない。
だが、残された人々に希望を与えることはできる。
人の心に希望の明かりが灯れば、文明は何度だって蘇るのだ。
「これでキメるぜ! クラウのブースト! カシュアでヴァンガードにアタックだ!!」
「△×%&@P☆~~~~ッ!!」
もはや文字に起こすことすら困難だが、恐らくはノーガードを宣言したのだろう。
副会長は震える手で山札に手を伸ばしカードをめくる。
「わんわんかよぉぉぉぉおおおおおおッ!!!!」
それが《機動犬舎 アインガルテン》であることを確認するや、もんどりうって吹き飛び、埃をあげて床をゴロゴロと転がると。
「ふぎゃあ!」
壁に激突してその動きを止めた。
「……勝てた、のか」
ソロが様々な意味のこもった汗を拭いながら呟く。
副会長もすぐさま立ち上がると、ヒビの入ったメガネをかけ直しながら、好青年然とした爽やかな笑顔を浮かべて握手を求めてきた。
「とても楽しいファイトでしたね。対戦ありがとうございました」
「いやもうツッコミきれねぇよ!?」
★彡
パフ パフ パフ
握手を交わすふたりを義務的に祝福するように、乾いた拍手が送られた。
鏑木クロエだ。音が変なのは片腕がギプスだからだ。
「実に素晴らしいファイトでした。あなたは生徒会役員を破ることで、その実力を証明したのです」
「なぁ生徒会長。生徒会ってストレス溜まるのか? 副会長、少し休ませてあげた方がいいんじゃねぇの?」
本気で心配しながらソロが言う。
「彼は副会長になる前からあんな感じでしたが?」
「じゃあよくアレを副会長に据えようと思ったな!?」
「そんなことより、あなたに渡しておくべきものがあります」
「……これは?」
「八雲アヤメの住所です。生徒会の情報収集能力の前では、プライバシーなどあってないようなものです」
「おい!」
割と本気で咎めようとしたソロの唇に、ピタリと細く長い指が押し当てられた。
「彼女を止めるのに手段は選んでいられません。彼女と再戦すると言っても、居場所が分からなければどうしようもないでしょう? まさかコンビニと同じ数だけある界隈のカードショップをしらみつぶしにしていくつもりだったのですか?」
「そ、それは……」
どころかどうやってアヤメと再戦するか考えてすらいなかったソロは口ごもるしかなかった。
「もちろん取り扱いには細心の注意を。彼女と再戦する覚悟のある者だけが見てください」
『……サジッタ』
本当に受け取っていいものか最愛の人に確認するが、サジッタは無言でそっぽを向いていた。風紀を司る乙女としては止めざるを得ないので、あえて聞かないフリをしてくれているのだろう。単純に呆れてものも言えないだけかも知れないが。
だがこちとら不良である。後ろ暗いことには慣れている。
「……受け取るよ。ありがとな」
「どういたしまして。それともうひとつ」
「まだあるのかよ」
「はい。八雲アヤメの住所を調べるついでに、彼女の過去も知ることができました。興味はありませんか?」
「いやさすがにそれは」
「そうでしょうか? 彼女をただ倒すだけなら必要の無い情報かも知れませんが、そうでないのなら必要かと思いますが?」
メガネの奥、怜悧な瞳がソロを見据える。
どうしてソロの目的を知っているかはもはや問うまい。生徒会の情報収集能力とやらの賜物だろう。
「まさかあんな怪物が何もないところから生まれて来ただなんて思っていませんよね?」
「……いや。聞かせてくれ」
「わかりました。気分のいい話でないことは保証しますよ」
そう前置きしてから、機械的に鏑木クロエは語る。
虫のように無垢で残酷な少女の
★彡
「こんなところか。もうお前は十分に強い。完成したと言ってもいいだろう」
「私、負けてるんだけど?」
6枚目のカードをダメージゾーンに置きながら、八雲アヤメが不機嫌な笑みを浮かべ、眼前の男を半眼で睨め付けた。浅黒く日焼けした、短髪の男だ。
「俺がそう簡単に負けてたまるか。だが俺以外のファイターにはそうそう負けることはあるまい。今のお前ならプロにだって勝てるだろう。……そうでなければ困るがな」
最後の呟きは小声だったが、耳のよいアヤメにはばっちり聞こえていた。
「それにこのあたりで訓練を切り上げなければ、またお前は逃げ出すだろう?」
「ええ。あなたとのファイトも飽きてきたし、そろそろ潮時だと思っていたわ」
まったく悪びれることなく認める。
「お前というやつは……。ならば行ってこい。欺瞞に満ちたこの世界をメチャクチャに破壊してやれ」
「あなたの目的に興味は無いけれどありがとう。行ってきます」
こうして、まるで家から散歩へと出かけるように軽く手を振り。
平和を侵す毒虫が再び世界に解き放たれた。
エレドグレーマ回でした。
次回はいよいよソロとアヤメが再激突!!
……とその前に番外編を挟みたいと思います。
3月の更新をお楽しみにして頂ければ幸いです。
感想等もお待ちしています。