それでも私は死にたくない   作:如月SQ

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いつも閲覧ありがとうございます。
感想、評価、ここすき、いつも楽しく拝見させていただいております。
少し更新ペースが落ちてきてしまって申し訳ないです……。
ただ、後大体8話以内くらいで完結を予定しておりますので、それまでどうかお付き合いくださいませ。




「……この子達はどうした。鬼になっているようだが……」

 

 幾年かの時が流れ、不意に無限城に現れたのはまだ少年少女と言って良い兄妹らしき子供達だった。

 ギザギザした歯の歪な細身の少年に、白髪でとても見目の整った少女……。

 傍目にはあまり似ていない、兄妹とは思えない二人だが、兄の態度でわかる。

 基本的に妹を背にして、何があっても対応出来るようにしている。

 妹のほうも兄に対して全幅の信頼を置いているようで、その瞳は不安に揺れながらも、安心感が見てとれた。

 ……随分と仲の良い兄妹だ。

 

「ああ、無惨様、俺が拾って来たんですよ。

 色街で死にかけてたこの二人が、あまりに哀れだったので」

 

 へらりと笑って語るのは童磨……。

 ……成る程、随分と酷い状態だったようだな。

 生きたまま燃やすとはなんと惨い……。

 人というのは本当に……時折どうしようもない程に残酷になるな……。

 私は出来るだけ警戒させないように、静かに二人の前に膝をついた。

 

「初めまして。私は鬼舞辻無惨という。君達はなんと……」

 

「っ……!」

 

「近付くんじゃねェ!」

 

 ところが妹のほうは肩をビクつかせて兄の背に隠れ、兄は歯を剥き出しにして私に威嚇してくる。

 ……仕方ない、この子達がいたというのは色街……しかもこの子達が受けた仕打ちを考えれば、まともな大人の庇護下にいたとは思えない。

 にも関わらず兄妹の絆は強く感じられて、私はつい顔を綻ばせた。

 

「なにニヤついてやがんだ……!」

 

「ふふっ……いや、すまない。

 そうだな……ほら、これでも食べるか?

 金平糖という砂糖菓子だ……甘いぞ?」

 

「わぁ……!」

 

 私がちらと懐から取り出したのは、瓶詰めされた金平糖。

 色とりどりの砂糖菓子を見た妹は、キラキラと瞳を輝かせた。

 その様子に破顔し、兄へと金平糖を差し出した。

 

「……あ……?」

 

 私と金平糖を困惑した顔で交互に見る兄へと、金平糖の瓶を押し付けた。

 

「私から直接など受け取り辛いだろう?君から与えてやるといい」

 

 そう言って、思わず受け取ってしまった、という様子の兄へと笑みを向ける。

 そのまま立ち上がると、一歩、二歩と後退りした。

 

 むぐ、となんとも言えない表情で私を見ていた兄だったが、背後の妹に服の裾を引っ張られ、手元の金平糖に視線を落とした。

 パコッと音をたてて瓶の蓋を外し、中の匂いを念入りに嗅ぎ……。

 

「お兄ちゃん……!」

 

「待て待て!何仕込まれてるか、わかったもんじゃねェだろが!」

 

 催促する妹を押さえながら、そのうちの一つを摘まんでひょいと自身の口に入れた。

 

「あー!ズルイズルイ!」

 

「だから待てって!ガリィッ……ボリ……ボリ……」

 

 兄は口に放り込んだ金平糖を味わうことを一切せず、即座に噛み砕いてるようだった。

 ……本当に、余程ひどい目にあっていたのだな。

 贈り物をそう容易く信用出来ない……か。

 

「ん……よし、大丈夫そうだ。おら」

 

「あー……んむっ……あまーい!」

 

 兄の手ずから金平糖を頬張った妹は、その端正な顔を綻ばせ、可愛らしい笑みを浮かべた。

 その笑みを見て兄のほうもその顔を弛めていた。

 

「鬼は本来人肉と血以外体が受け付けないのだが、長年の研究で味わう事だけは出来るようになっていてね。

 お腹は膨れないが、嗜好品は問題なく楽しめるようになっている。

 私の配下の研究成果でね、本当に自慢の配下だったよ」

 

 ……珠世の、長年の人に戻す為の研究の副産物だ。

 食、という楽しみはあったほうが良いと、優しく微笑んで……。

 ……いや、やめよう……これ以上思い出しても気分が落ち込むだけだ。

 

「その金平糖は二人にあげよう。仲良く食べると良い。

 落ち着いたら話をしよう。話したくなったらでいいがな」

 

 二人はちら、と私のほうを怪訝な表情で見ていたが、金平糖も貰ったし、なぁ、みたいな様子で顔を見合わせた後、小さく頭を下げてくれた。

 

「…………どうも……」

 

 警戒を完全にとくとまではいかなかったが、少しは弛めてくれたように思う。

 人の世で残酷な人の業に巻き込まれ、生きられなかった二人だ。

 鬼となってしまったからには仕方ない……可能な限り幸せに生きて貰いたいものだ。

 金平糖を頬張る二人を見て、私はそう願わずにはいられなかった。

 それらの様子を、童磨は扇子をヒラヒラとさせながら、黙って見守っていたようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無惨様ーっ!」

 

 童磨が連れてきた兄妹、名を忘れたという妹は、輝かんばかりの笑みを浮かべて私に抱き付いてきた。

 その可愛らしい様子に思わず頭を撫でようとすると、見事に結い上げられている事に気付いて手が止まった。

 

「ほう、今日はまた魅力が倍増しているな」

 

「でしょでしょ!鳴女さんにやって貰ったー!」

 

「ほう……鳴女が……器用なものだな」

 

 その髪型が崩れないように慎重に撫でてやれば、気持ち良さそうに目を細めた。

 ……可愛らしい。

 まるで無限城が一段階明るくなったようだ。

 

「まるでどこぞのお姫様のようではないか。ふふ……名を忘れたというなら、そうだな……これからは姫と呼ぼうか」

 

「姫!ふふん、私のびぼーからすれば当然ですわ!」

 

 ふはっ、もうその気になったか。

 少し言葉遣いもそれらしくなっていて、つい笑ってしまう。

 あまりに可愛くて、その小さな体を腕に腰掛けさせるように抱き上げた。

 妹……姫は嬉しそうに顔を綻ばせる。

 

「さて、今日は妓夫太郎は一緒ではないのか?」

 

「お兄ちゃんはこくしぼーと猗窩座さんに手合わせして貰うんだって。見てても面白くないから今は私だけ!」

 

「そうかそうか。では今日は何をしようか?お手玉かおはじきか……」

 

「無惨様が遊んでくれるならなんでもいーよ!」

 

「そうかそうか……姫は可愛いなぁ」

 

「えへへへ」

 

 無邪気に笑い、私の首に手を回して体を預けてくる姫の背中に、優しく手を回した。

 随分と馴染んだものだ……初対面時に比べて、よく笑うようになった……。

 

 兄妹以外の全てを信じず警戒し続ける二人には、そこそこ手を焼いたが……私の思いが伝わったようで良かった。

 鳴女にも懐いているようで一安心だ。

 鳴女に嫌われると、時折変なところに飛ばされるからな……黒死牟のように。

 黒死牟の奴、稀に海や川、山奥等に落とされるのだと愚痴っていたな……。

 ……黒死牟と言えば。

 

「何故黒死牟は呼び捨てなのだ?」

 

「目が六つもあって、虫みたいで気持ち悪いから」

 

「お前……そう思うのは自由だが、本人の前では言わないようにな」

 

「はーい」

 

 黒死牟……可哀想な奴だ。

 今も妹を守る為、と意気込む妓夫太郎を鍛えているだろうに。

 報われんな……お前も。

 私だけはお前が頑張っているのを理解しているからな……。

 

 そう思いを馳せ、姫を抱えながら、いつも遊んでいる部屋へと向かっていくのだった。

 

 ……なお、その後……幼さを残しながらも美しく成長した姫は色街で活動するようになり、名を堕姫、と改めていた。

 なんというか、複雑な気分だったが……本人は満足気だったからなぁ……。

 良しとするか。

 姫、私は肯定するぞ。

 少しアホっぽいくらいが可愛いというしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 それ、は嘴平琴葉、と名乗った。

 うちの、万世極楽教の門戸を叩いたのは、赤子を抱いて顔を腫らした女だった。

 どうにも言葉は支離滅裂……というよりは言いたい事の整理が出来ないでいる、のかな?

 それでも教祖として、支離滅裂な話をする愚図と何度も対話した事で鍛えられた、俺の察する能力がある。

 どうにか読み取った結果、夫の暴力に困っている、という話だった。

 なんでこれだけの話でこうも時間がかかるのかな。

 まぁ、いいけどね。

 琴葉は随分と純朴だし、抱いている赤子を体を張って守り続けていたのは好感が持てる。

 

 だから、まぁ。

 

「聞いてるのか糞野郎が!教祖だぁ!?意味わかんねえ事言ってねぇで、さっさとのあの糞アマを――」

 

 この五月蝿い奴等は処理しといてあげよう。

 これでもう、暴力に怯える必要はないよ。

 氷像と化した、頭の悪そうな男と女を見ながらそう思った。

 

 十二鬼月が上弦と下弦に区切られ、俺が猗窩座殿を降して上弦の弐となって幾年か過ぎた頃の話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 琴葉をうちで面倒を見るようになってわかった事は、この女は頭が悪い、だった。

 とはいえこれは恐らく、教育の有無もあると感じた。

 多分まともな教育を受けてないんじゃないかな。

 まぁそれを差し引いても純朴……幼いと言ってもいいか、まぁこんな宗教の門戸を叩くような女の中にはなかなかいない性質の女だった。

 

「伊之助はあったかいねぇ」

 

 そう言って朗らかに微笑む琴葉は、心底幸せそうだった。

 花を巻き上げ、調子のズレた子守唄を口ずさむ。

 唄う度に歌詞の変わる子守唄に呆れながらも、それを眺める日々は悪くなかった。

 

 ……ただここで問題になったのが俺が鬼だってことだ。

 時折無惨様へ悪鬼だと知らせる為に信者の女を食い殺す事はあれど、あまり躍起になって食べる訳じゃない。

 とはいえ、共に暮らしていれば勘づかれるのも時間の問題だろう。

 

「て訳でね、実は俺は人間じゃないんだよ。世に隠れ潜み、人を食らう鬼なんだ」

 

 なのでさっさと暴露してみた。

 正直共にいる時間は居心地が良かったから、少し躊躇いもしたけど……まぁ、気付かれて突然拒絶されるってのも面白くないからね。

 ……で、肝心の琴葉の反応はというと……。

 

「わ、私は食べてもいいので伊之助は食べないでください!」

 

 涙目になって震えながら、そんな事を言うんだから参ったよね。

 琴葉も赤子の伊之助も、食べる気なんて更々ないってのに。

 仮に拒絶されたなら、ある程度親子二人でも生きていけるようなまとまった金を渡して解放するつもりですらあったのに。

 自分は食べても良いときたもんだ、なんとも予想の斜め上だ。

 

「食べないよ。琴葉も伊之助も、ね」

 

 苦笑して言えば、琴葉は安心したように息を吐いた。

 そうしていつも通り近くに寄り添って嬉しそうに伊之助を構い始める……。

 

「……いや、あのねぇ……なんですぐに警戒心を失っちゃうかな……?」

 

「え、でも教祖様、食べないって言ってくれましたし……」

 

「嘘言ってるとかは思わないのかな?」

 

「教祖様、いっつも優しいから信じます!」

 

 そう言ってぺかーと笑みを浮かべる琴葉にいよいよ俺は呆れ果ててしまった。

 なんて純朴なんだ……頭が弱いとも言えるけど。

 だけどまぁ……そういうところが個人的に好ましいと思ってるんだから儘ならないもんだなぁ。

 

「なんだいそれ……まったく」

 

 そう言って息を吐く俺の頬は、なんだか妙にひきつるような感覚がした。

 琴葉がこっちを見て……ニコリと笑っていたのが印象的だった。

 

「そうだ!教祖様も伊之助を抱っこしてやってください!」

 

 そう言って差し出された伊之助は布に包まれて、そのくりくりとした瞳で俺を見ていた。

 ……まあ、これも経験か。

 恐る恐る、差し出された伊之助をその手に抱いた。

 

「赤ん坊か……柔らかすぎて怖いね」

 

 手に抱いてみて改めてよくわかる。

 赤子ってのは本当に弱っちい生き物だ。

 それこそ、鬼じゃなくても簡単に潰してしまいそうだ。

 

「どうですか?あったかいでしょ?しあわせー!ってなりますよね!」

 

 ニコニコと此方を見る琴葉は、本当に嬉しそうだ。

 何がそんなに嬉しいのか……人食いの鬼だって言ったばかりの俺にこうやって赤子を預けるなんてさ。

 本当に危機感が足りないというか、なんというか……でも、そうだな。

 

「どうかな……でも……可愛い子だ」

 

 頬がつるような感覚がする。

 

「だぁうー」

 

 俺の腕の中で、伊之助は目を細めて、その手をパタパタと動かし始めた。

 その頬はつりあがっていて、笑っているように見える。

 

「あ、ほら、笑いましたよ!教祖様だっこもお上手!

 えへへへー、かわいいねぇ伊之助ねぇ、良かったねぇ」

 

 そのふくふくとした頬をつつき、琴葉も笑う。

 

「よしよし……そうかな……?

 でも……うん、確かにあったかいね……」

 

 なんて事のない一幕。

 けれど……腕の中の伊之助は温かくて、胸の奥が不思議とポカポカした。

 そんな、温かな日々。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 けどまぁ……人食いってのは業が深いもんだ。

 わかっていたけど理解しきれていなかった。

 隠すものだとわかっていたし、それを見た人間がどう思うかまでは察していた。

 でもそれを知った人間が()()()()()までは頭が回らなかった。

 そしてそんな人間が()()()()()()()まで考えられなかった。

 

 だから目の前で、琴葉は死んでいる。

 失明していた目も、無事だったほうも、どちらも抉り取られ血の涙を流す琴葉は、既に事切れていた。

 縛り付けられ、指は折れ曲がったり切られていたり……。

 それを為した外道ども、俺の信者だった視野狭窄な愚者ども。

 既に凍らせてバラバラに砕いてやったけれど、その言い分はひどいものだった。

 

 俺が人を食うのを見たから、傍らにいる琴葉も人食いだと思ったと。

 俺に手を下すのを恐れて、まずは弱そうな方からと赤子を抱えた琴葉を狙ったと。

 そうして……何故か琴葉を思うがままにいたぶりやがった。

 こんな、痛め付ける必要が何処にある?

 仮に琴葉が人食いの鬼だったとして、ここまでされる筋合いは何処にもないだろう。

 ましてや……琴葉には何の罪もないのに……。

 

ばき、ばき

 

 そんな愚か者達の破片を踏み砕きながら、俺は琴葉の前に立った。

 ズタズタで、ボロボロで。

 それでも琴葉の美しさは損なわれていないなぁ、なんて思った。

 

「ああ、琴葉、大丈夫かい?俺が来たからもう安心だよ」

 

「……」

 

 琴葉を、くくりつけられていた木の杭から外してやる。

 返事はない。

 

「酷い目にあったね。でもそれをやった奴等は全員殺しちゃったから、もう大丈夫だ」

 

「…………」

 

 抱きあげた琴葉の体は軽く、鬼じゃなくても容易く持ち上げられそうだった。

 返事はない。

 

「伊之助は……崖から落としたらしいね。大丈夫、後で探してあげるからね」

 

「………………」

 

 ちらりと覗いた崖の下は、漆黒に包まれていて……とてもではないが赤子が助かるような高さではなかった。

 返事はない。

 

「……なぁ、琴葉。返事しておくれよ」

 

 裂かれた腹からでろりと内臓がまろびでて、俺の服を汚す。

 

 返事はない。

 

「……あれ、雨かな。風邪引いちゃうね。まずは帰ろうか……」

 

 ポタリポタリと、頬を滴が伝っていく気がした。

 月のない夜だからか、雨雲があるのは気付かなかったな。

 俺の頬から垂れた滴が琴葉の頬に当たり、その血を押し流していく。

 その顔は動かない。

 その表情は変わらない。

 その瞳はもう開く事はない。

 

「やだなぁ……」

 

 ぼそりと呟いた言葉は闇に溶けていく。

 その言葉は誰にも届かない。

 なんだか、胸にポッカリ穴が空いたようだった。

 

「人は……脆いなぁ……」

 

 もう少し生きていてくれれば、堕姫達のように助けられたのになぁ……。

 いや……それは救いとも言えない、か。

 ……そうか、これが。

 

「これが、無惨様の気持ちか……」

 

 不思議な感覚だなぁ。

 上手く言葉に出来ないや。

 

 琴葉を抱いて、俺はそのまま帰途についた。

 その後その周辺を探したけれど……伊之助を見付けることは出来なかった。

 ……まぁ、結局は琴葉に会う前に戻っただけの話だ。

 何も変わらない。

 俺は、何も。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ただ、一つだけわかったことがある。

 人と鬼は……相容れないんだなぁ、って。

 鬼と仲良くしたい、だなんて宣う鬼殺隊に出会ってそれを俺はより一層感じていた。

 

「鬼は、可哀想な生き物です。だからこそ、仲良くしたいってずっと思ってて」

 

「へぇ……そっかそっか、ご立派なことだね」

 

 意識して笑みを浮かべた。

 

「私は鬼となってしまった貴方達も救いたいんです。

 どうか少しお話しさせて貰えませんか?」

 

 そうしないと、胸の奥で燻るナニかが飛び出してしまいそうだったから。

 

「別に良いけど、仲良くしたいって思ってるなら当然考えてるんだよね?俺達鬼の人食いをどうするか」

 

「それは……人の命を奪うことは罪深いことですから、出来るだけ我慢して貰って」

 

「ほう!面白いことを言うね、君は」

 

 沸々、沸々と胸の奥でナニかが沸き上がりそうだ。

 

「君達人間と仲良くする為に、俺達鬼は生きるための食事を我慢しろってことかい?」

 

「それは……きっと何か解決策が――」

 

「何か?これは驚いたなぁ、君は何も考えてないのかい?」

 

 目の前の女の顔が、あからさまに曇る。

 

「仲良くしたい、救いたい、大いに結構!素晴らしい志だと思うよ!とっても人間らしくて、感心しちゃうよ!」

 

 扇を取り出して仰ぐ。

 あまりにバカらしくて、なんだか顔が熱いや。

 

「そんな自分勝手な理想の為に、俺達鬼に不自由を押し付ける!実に人間らしい!

 本当に素晴らしい、愚かな(立派な)志だよ!」

 

 こいつは何もわかってない。

 鬼を有無を言わさず殺してきた鬼殺隊の分際で。

 俺から琴葉を奪った人間の分際で。

 何も知らない自分勝手な考えで。

 

「でも!人食いもきっと鬼の首魁が命じている筈!その鬼さえどうにかすれば、もしかしたら貴方達は人を食べなくても――」

 

「あ゛?」

 

 あははは、言うに事欠いてそれかい?

 救いようがないね。

 

「何も知らない癖に、無惨様を侮辱するのか?」

 

 いや、所詮は鬼殺隊で、人間だ。

 無惨様のお慈悲をずっと受けているのに、それが当然だと気付いてすらいない愚図ども。

 

「俺達を見下すのも大概にしてくれないかな?……心底不愉快だよ、鬼殺隊」

 

 俺が扇を翳せば、女は驚きに目を見開いて、ゴホリと血を吐いた。

 

血鬼術 粉凍り

 

 胸を押さえて苦しそうに此方を見る女を見下して、俺は口を開いた。

 

「君は、俺が会った中で最も愚かで、傲慢で、自分勝手な女だったよ。だから……救ってあげる」

 

ニコリ

 

さっさとくたばれ




鬼滅コソコソ話
本当は兄妹の口に指を突っ込んで体を調整する無惨様、っていうシーンかこうと思ったけど、事案……?て思ってやめました。
センシティブ過ぎるかもしれない。

誤字報告ありがとうございます。
修正しました。
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